レイティングとフィルタリングに関する各国の現状

(ダイジェスト版)

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19991


目次

1.欧州の現状

  1.1 EU

  1.2 イギリス

  1.3 ドイツ

2.北米の現状

  2.1 米国

  2.2 カナダ

3.アジアの現状

  3.1 シンガポール

  3.2 日本

4.大洋州の現状

  4.1 オーストラリア

  4.2 ニュージーランド

5.その他

  5.1 OECD


 

1.欧州の現状

1.1 EU(詳細版へ)

日付

出来事・状況

961016

欧州委員会「インターネット上の有害および違法なコンテンツに関するコミュニケーション」「オーディオビジュアルおよび情報サービスにおける年少者の保護と人間の尊厳に関するグリーンペーパー」を承認した。両文書では、国際協力、フィルタリングソフトおよびレイティングシステムの使用、およびISPの自主規制の促進が唱えられている。

982

欧州委員会のある委員はInternet Service Provision ’98 会議において、ISPはそのネットワークを使用して利用者が違法な活動を行った場合に責任を問われないように保護されなければならないと言っている。

981221 EUの評議会「グローバルネットワーク上の違法および有害情報への対処による安全なインターネット利用の促進に関する行動計画」を承認した。同行動計画は、「業界の自主規制を通して安全な環境を生み出すこと」「フィルタリングおよびレイティングシステムを開発すること」等の4つの行動指針からなっている。

〜現在

欧州委員会では、女性と子供に対する暴力に反対する非政府機関(NGO)に対し、財政的な補助を行うためにダフネプログラム(Daphne Program)を97年から導入している。本プロジェクトにおいては特に、インターネットを違法なポルノ画像が氾濫している媒体であるととらえており、こうした脅威に対抗しようとする各種プロジェクトの参画を奨励している。

〜現在

Inhope forumは、欧州委員会のダフネプログラムの資金の下で、イギリスのChildnet International IWFを始めとする欧米のホットライン同士の連携を促進し、ネット上のチャイルドポルノを削減することを目的とするフォーラムであり、982月から活動を開始している。各ホットラインは、主にチャイルドポルノ等の違法データの発信源を特定し、これを除去する活動を行っている。

 

1.2 イギリス(詳細版へ)

日付

出来事・状況

982月時点

ロンドン警視庁はusenet上の違法なポルノをフィルタリングしなかったISPを起訴することを考えている。

98928

イギリス政府はインターネット上の有害コンテンツから国民を保護するという従来の立場の上で、政府が主導して容易に使用できるコンテンツフィルターを開発するという提案を発表した。

9810 Developer Adsciences社は、インターネット上のすべてのポルノをフィルタリングするソフトを99年中に発売することを発表した。同ソフトはアダルトバナーを取り除き、ポルノを載せたすべてのWebサイトを識別することができるという。

(9810月時点)

インターネット監視財団(Internet Watch Foundationの理事長によれば、イギリスでは利用者はRSACに含まれているヌード、セックス、暴力および言語に加えて、その他のカテゴリーのコンテンツについても不安を抱いているという。

〜現在

インターネット監視財団はイギリスの自主規制団体であり、イギリス政府の支持も受けている。同財団には、違法なコンテンツに対処するためのホットラインを運営することと、合法的なコンテンツに対するレイティングおよびフィルタリングを促進することという2つの主要な役目がある。同財団はPICSに準拠したレイティングシステムの開発に参加している。

〜現在

Childnet Internationalという非営利団体は、産業界が積極的な主導権をもって子供に不適切なコンテンツを見せないようにすることを促進している。また、レイティングシステムの開発と促進に関与している。

 

1.3 ドイツ(詳細版へ)

日付

出来事・状況

9512 CompuServeはニュースグループ上でチャイルドポルノや他の違法コンテンツへのアクセスを提供したことによりドイツの法律に抵触したとして警告を受けた。その後、CompuServeは会員にフィルタリングソフトを提供している。
965

ドイツの調査技術相は、ドイツはインターネットの規制を最小限にとどめることを望むが、ネット上のコンテンツ提供企業に対しては、違法コンテンツを自主的に取り締まることを期待する旨を述べている。

9774

ドイツ議会はインターネット上のチャイルドポルノに関する標準を定めた「情報通信サービス法」を可決した。同法では、ISPはその提供するサービス上で利用者によって提示された違法コンテンツに対して一概に責任を負うものではないが、「ISPがそのようなコンテンツについて知っており、それらをブロックすることが技術的に可能であり、当然に(reasonably)期待される」場合に限り、責任を負うものとされている。

98528 CompuServe Germanyの元社長は、ニュースグループ上でチャイルドポルノや他の違法コンテンツへのアクセスを提供することによってそのような情報を配布したかどで、有罪判決を受けている。

 

2.北米の現状

2.1 米国(詳細版へ)

区分

日付

出来事・状況

政府の動き

97716

クリントン大統領とゴア副大統領はインターネットを「family friendly」にするというストラテジーを発表した。このストラテジーは、子供たちがインターネット上で不適切なコンテンツにアクセスすることを防ぐためのツールを親と教師に提供し、子供たちを質の高い教育情報源へと導こうとするものである。

法規制および判例等

98722 「インターネット学校フィルタリング法(Internet School Filtering Act)」が上院を通過した。同法は「e-rate」のインターネット助成金を受けている学校と図書館とに、年少者が「不適切な」コンテンツにアクセスすることを防ぐためにフィルタリングソフトを使用することを要求するものである。
981021 「児童オンライン保護法(Child Online Protection Act)」が大統領により署名された。同法は、子供をネット上のポルノから遠ざけるために、クレジット番号など「大人」であることを証明する情報を入力しない利用者には一切有害なコンテンツを見せてはならないとするものである。
981116

テネシー学校委員協会の総会において、テネシー州のすべてのK-12学校が州の教育ネットワークを通したインターネットのアクセスを自主的にフィルタリングする旨が発表された。

981123

ヴァージニア州にある連邦裁判所は、ヴァージニア州のLoudoun County Public Libraryにおけるフィルタリングソフトの使用は憲法上の言論の自由に抵触するとの判決を下した。判決の理由は、フィルタリングソフトの利用が子供のみならず大人のアクセスをも制限してしまうというものであった。

98121

テキサス州議会に、州内でパソコンを販売しているコンピュータメーカーにインターネット上の猥褻なコンテンツをブロックするソフトを搭載することを要求する法案が提出された。

99113

カリフォルニア州のLivermore Public Libraryはインターネット端末にフィルタリングソフトをインストールしていないという理由で告訴されることになっている。

民間部門の動き

(977月時点)

米国では全米の145以上のISPがフィルタリングソフトを利用者に無料または少額で提供している。

(977月時点)

AcerApple ComputerCompaqIBMPackard Bellのような大手コンピュータ企業はパソコンにフィルタリングソフトを実装している。

(9810月時点)

RSACはワシントンDCにある非営利団体であり、先導的なレイティングシステムであるRSACiを運営している。RSACiInternet ExplorerNetscape Navigatorに組み込まれている。
97129 EFFElectronic Frontier Foundationは“Draft Policy on public interest principles for online filtration, ratings, and labeling systems”という、ラベリングとフィルタリングの責任ある使用に関するガイドラインを作成している。
981013

検索サービス会社AltaVistaはAV Family Filterという新しい検索サービスを立ち上げた。AV Family Filterは不適切なWebサイトをブロックし、有意義なサイトにはアクセスしやすいようにしている。このAV Family FilterにはSurfWatchのフィルタリング技術が使われている。

981112 Computer Software ManufakturCSMは新しいインターネットスクリーニングシステムを発表した。同システムは、ネットワーク管理者がネットワーク内から端末利用者のインターネットアクセスを完全にコントロールすることを可能とする。
981124 N2H2WebSurferは共同でインターネット上のコンテンツをフィルタリングする技術を開発した。WebSurferはインターネットTVセットトップボックスを提供し、N2H2はスタッフを用いてWebサイトをカテゴリーに分類したデータベースを作り、ポルノや暴力のような望ましくないコンテンツをブロックする技術を提供する。

 

2.2 カナダ(詳細版へ)

日付

出来事・状況

988

カナダのラジオ、テレビおよび通信委員会(Radio-television and Telecommunications Commissionは公式にカナダ国民に対し、政府がインターネット上のポルノや言語等のコンテンツを規制する役割を果たすべきか、またどのような役割を果たすべきかについての意見を求めた。

98113 Net Shepherd社は98930日までの四半期の収益が、630日までの前四半期(約98万ドル)に比べて41%増加した旨を発表した。Net Shepherdの全収益のうち、フィルタリングおよびレイティング事業による収益は61%もの割合に上った。

 

3.アジアの現状

3.1 シンガポール(詳細版へ)

日付

出来事・状況

(9811月)

シンガポールでは各ISPに、「Family Access Network」と呼ばれるインターネットの「殺菌」版を親が選択できるように要求がなされている。この「殺菌」版では、ISPがサーバのレベルでフィルタリングソフトのインストールと更新をすることになる。

981123日から1220

シンガポールのナショナルコンピュータ評議会(National Computer Board)は、広帯域ネットワークであるSingapore ONEを奨励するために1万人の子供と大人を対象にトレーニングキャンプを行った。同キャンプでは、親たちがIT(情報テクノロジー)を子供の教育に有効に利用したり、フィルタリングソフトを使用する方法を学ぶための教育セミナーも開催された。

 

3.2 日本(詳細版へ)

日付

出来事・状況

98121 IIJは「IIJダイアルアップEレート」というダイアルアップ接続サービスの販売を始めた。「IIJダイアルアップEレート」は、小中高等学校におけるインターネット接続を容易にするためのサービスである。オプションとして、有害なコンテンツをフィルタリングするプロキシサービスを選択することもできるという。

 

4.大洋州の現状

4.1 オーストラリア(詳細版へ)

日付

出来事・状況

97715

オーストラリア政府は、Australian Broadcasting Authorityが承認し実施する行動規約によって各ISPにその利用者のネット上のコンテンツを取り締まる責任を負わせることを目標としたフレームワークを提案した。

9712

司法長官は、ISPの利用者が発信するネット上のコンテンツに対してISPに法的な責任を負わせるという法案の下では、利用者とISPの両者に刑罰が適用されることを確認した。

987

情報経済のための内閣評議会(Ministerial Council For The Information Economy)が発表したレポートの中で、オーストラリア政府はコンテンツのラべリングとフィルタリングの世界標準を設立するために、国際的なコラボレーションを追求する旨が述べられている。

981130

オーストラリアと米国は、電子商取引に関する共同声明を発表している。同声明において両国が、ネット上のコンテンツに関しては、業界の自主規制を支持し、子供にとって不適切なコンテンツに関する教育と、コンテンツをフィルタリングするシステムの促進を支援する旨が述べられている。

981221

ブリスベンのClairview Internet社はインターネット上のポルノをフィルタリングするCVueというソフトを発売した。CVueはサイトへのアクセスをサーバ上でブロックする。Clairviewの最高経営責任者は家庭でダウンロードされるコンテンツ量の約70%はポルノだと言っている。

 

4.2 ニュージーランド(詳細版へ)

日付

出来事・状況

(9810月時点)

ニュージーランドのローソサエティ(Law Society)はISPに対する行動規約を準備中であり、同規約にはポルノ画像のフィルタリングも含まれることになっている。

 

5.その他

5.1 OECD(詳細版へ)

日付

出来事・状況

98325

インターネットコンテンツの自主規制に関するフォーラムがOECD OECDの諮問委員会であるBIACBusiness and Industry Advisory Committee)の後援でパリにおいて開催された。同フォーラムでは、不適切または違法なコンテンツ、個人情報の保護、検閲、スパムメールおよび著作権の自主規制に関して議論がなされた。

98107 OECDの電子商取引会議初日に、ドイツの電子商取引フォーラム(Electronic Commerce Forum、イギリスのインターネット監視財団(Internet Watch Foundationおよび米国のRSACの3組織がインターネットコンテンツレイティングアライアンス(ICRA)を結成する協定にサインした。ICRAは、共同で非営利目的の国際的なセルフレイティングシステムを開発することを目的としている。ICRA99年末までに新しいレイティングシステムを利用可能にしようとしている。
98107日から9 OECDの電子商取引会議では、インターネット上のコンテンツを査定する最良の方法がWebサイトによるセルフレイティングであるのか、それともコミュニティによるサードパーティーレイティングであるのかという論争が持ち上がった。

(c)1999 NEW MEDIA DEVELOPMENT ASSOCIATION