2.地域情報化報告

 協会では、経済産業省(旧通商産業省)の施策に基づき、平成11年度後期より地域の活性化、産業の振興・新産業創生を目的として、サービス間、異業種・異業務間、異組織・異地域間の「連携」を推進する「広域連携事業」を実施しています。
 この事業は、平成11年度第二次補正予算事業である「中小企業経営環境改善支援ソフトウェア開発・実証事業」(情報処理振興事業協会公募事業)のうち、「ベンチャー・中小企業を支援する広域連携情報流通基盤の開発」として実施しているものです。


 広域連携事業のご紹介
            
推進本部 担当部長 広域システム担当 宮澤輝次

1.事業目的
 21世紀を見据えた国土づくりの基本構想として、東京を中心とする一極構造から、地域間の『連携』と『交流』による新たな生活空間を創造する地域連携の必要性が高まっている。一方で、インターネットを利用したグローバルな企業間取引の急速な発展は、「情報流通リードタイムの短縮」を切実な要因として求められている。
 しかしながら、日本活力の源泉たる中小企業は、限られた企業間・販売網の中で事業を展開しているため、優れた固有技術やサービスをその企業活動の中で十分に生かすことが出来ずに、ある種の機会損失を生じているといえる。
 このような現状認識から、産・学・地方自治体等が情報技術を活用して有機的に結合し、地域のベンチャー・中小企業等の優れた製品・技術等の経営資源を相互に流通させることができる仕組みづくり、すなわち「共通プラットフォーム」構築の必要性が求められてきた。共通プラットフォームの構築で、地域に分散する情報資源の中から、その情報を求めている利用者にタイムリーに必要な情報を提供することが可能となり、中小・ベンチャー企業等の新たなビジネスチャンスの創出や経営環境の改善を効率的に支援することができると考えている。
 本事業では、広域に分散する情報をシームレスに連携する機能や認証・課金等の付加価値サービスへの連携を実現する機能を「共通プラットフォーム」として提供し、その上で様々な分野の産業振興アプリケーション(ビジネスアプリケーションサービス)を展開し、自治体や各企業が小さな負担で大きな効果を享受できる情報利用環境の整備を目指している。

2.事業内容
 本事業は、各地域・企業活動を「連携」させることで、21世紀型の社会システム構築支援を目的としている。具体的には、「効果的な情報流通手段の構築」、「経済面・運用面における低コスト運営」、「データベース運用管理業務の軽減」を実現するため、基盤ソフトウェア[情報HUB]等を手段として提供し、「連携」による新産業創出、生活コミュニティの充実を支援するものである。 

 図1 連携コンセプト

(1)社会的に見た事業課題
【経済・社会的な課題】
 地域経済発展の担い手として、ベンチャー・中小企業等の創造性・機動性を発揮させる社会基盤整備が進展しているが、地方自治体等が地場産業振興を包括的に支援できる情報流通基盤構築へのニーズはますます顕在化してきている。こうした情報基盤を整備する上での社会的コンセンサスも形成されつつあることから、具現化に向けた産官共同プロジェクト等の推進母体の確立が急務となっている。
【ビジネス的な課題】
 前項でも述べた通り、優れた製品、技術等を保有しながら、技術情報やマーケティング情報を適宜マーケットに流通させるための情報基盤を独自に開発することは難しい。限られた企業間・販売網の中で、事業を超えたビジネスドメインの拡大に乗り出すことができないベンチャー・中小企業等が数多く見受けられる。
【技術的な課題】
 現在、情報流通の実現手段として、ホームページ型情報発信やデータベース型情報発信が存在する。ホームページ型発信は個別自由発信であり、目的とする情報の所在が不明確で検索の効率面で課題がある。世の中には多くの検索エンジンがあるが、冗長度の多い検索が行なわれるため、本当に必要な情報を絞り込むことが難しい。データベース型発信は、多くの場合に閉ざされたあるいは専用システムであり、不特定多数の利用者からの情報アクセスを想定していない。


 図2 システムイメージ

(2)「情報HUB」機能の提供

 1 情報共有空間提供機能
 エージェントや自律分散技術を活用し、公開されている異種データベースを接続することで、広域に分散するデータベースの場所、構造を意識することなく、利用者の要求に対して最適な情報を提供する機能である。中小企業等が保有している優れた製品、技術、ノウハウ等の情報を対象マーケットに適切且つ効率的に流通させることを可能とすることで、新規事業創出や新製品開発等への展開を目指す。

 2 情報提供基本機能
 ビジネス展開(市場拡大・事業運営等)していくプロセスにおいて、企業間で情報を流通する際にベースとして必要となるDB-WWW連携、セキュリティ、フィルタリング、情報蓄積等を実現するための基盤を提供する機能である。  

 3 情報循環機能
 利用者から要求があった場合、または情報の更新が行われた場合に、自動的または定期的に必要な情報を配信する機能である。的確な情報をタイムリーに利用者に提供することにより、意思決定の迅速化、顧客創出機会の増大を図ることが出来る。

 4 他系統システムとの連携機能
 本共通プラットフォームでつながれたグループ以外の他系統システムとの情報流通を実現する機能である。既存の情報提供サービスや付加価値サービスなどとの連携により、自グループで不足する情報やサービスを利用者が効率的に受けられるようにする。また、他系統システムへの情報流通により、更に広範囲なビジネス展開の機会を創出する。

 5 共有DB連携機能
 地図情報等の分野を超えて共通的に活用することが可能な情報を共有データベースとして情報流通するための連携機能である。利用者個人または自治体、企業毎に情報整備や情報を受けるためのシステム整備をすることはコスト負担が大きく困難なため、基盤のサービスとして実現し低コストで利用可能とする。
 また、各種情報を共通的に扱えるデータ形式に変換し提供するため、他の情報と組み合わせて付加価値の高い情報とすることが容易であり、ベンチャー・中小企業等の製品戦略、マーケティング戦略等への活用を可能にする。

 6 取引関連機能
 企業間の取引、一般利用者と企業との取引を行う際に必要となる証明書を取得するための認証サーバへの連携機能と、有料コンテンツやサービスの履歴情報を蓄積し、課金サーバへ連携する機能である。
 各コミュニティ毎に規定する個人の認証方式、課金方式に合せて、必要な情報を連携することが可能なため、低コストで取引環境を整備することが可能となる。

(3)21世紀型社会における有用性
 地方自治体等が中小企業育成の一環としてこうした情報流通基盤を整備することで、中小企業・ベンチャー企業等が自らのアイディアやフロンティアスピリットを発揮させ主体的な経済活動を実践することが可能となり、国際的な変革の激しい21世紀型社会ににおいての企業競争力強化や地域産業の発展を期すことができる。
さらに、生活圏を中心とした連携や全国的な水平連携、国から市町村、民間までの垂直連携へと展開させることで、活力ある個性豊かな地域社会の実現を図っていく。

(4)波及効果
 本事業により、情報価値を流通させる事で、「情報財」としての社会資本の蓄積を生み出すと共に、有益であるが流通していない情報をフロー化し、あらたな事業を生み出す社会的側面をもたせることが出来る。
 中小・ベンチャー企業等が、既存のマーケットに加えて自らの情報をシームレスに提供・流通させ新規ビジネスを展開させることにより、下記の波及効果を期待している。

 1 経済の新陳代謝の促進

 2 新技術や新業態の創出

 3 新規雇用の創出

 4 市場構造変化への円滑な適応等

 さらに、中小企業振興だけにとどまらず、地域あるいは、観光、生活コミュニティなど、幅広い分野での効果をもたらすと考えられ、同時に、地場を中心とする数多くのシステムインテグレーター、コンテンツプランナー育成等の効果も併せて期待することができる。

3.推進体制
 事業の推進に当たっては、経済産業省、ニューメディア開発協会及び産業界等が一体となって推進していく。


 図3 事業推進体制

4.今後の展開に向けて
 情報システムや情報機器の進展、すなわち「情報手段」の急激な変革が、「IT革命」として社会や産業のあり方、行政等に求められるサービスのあり方に強く影響を与えている。
 従来の区分では定義できない産業・企業の出現や、従来の常識を超えた異組織体・異事業間の連携による新たな発想での事業展開・運営が求められている。インターネットや携帯電話の急速な普及によるネットワーク社会に代表される生活圏の広がりなど、私たちの日常での生活も大きく変わりつつある。
 21世紀を迎えて、既に言い尽くされているように、わが国は高齢化社会、環境問題等の重要な課題を抱えている。鉱物資源、エネルギー資源が乏しいといわれているわが国が、少しでも心豊かな社会を実現するため、現状を変革する努力を怠るわけにはいかない。
 本事業は、まだ緒についたばかりである。具体的な効果のあるシステム構築を行うため、関係者各位と協力し、よりよい社会の実現を微力ながら進めていきたい。

【用語解説】

コンポーネント

概  要

コンポーネント

概  要
情報HUB 利用者の要求に対応する最適な情報をデータベースより検索し提供するための仲介機能を実現。 共有DB 分野に関係なく共通的に利用する情報を集約した提供。
DB−Agent システムの保有情報・サービスを情報HUBに登録、情報HUBの検索要求に対応した情報を提供。 他システム 本プラットフォームを搭載していないが、システム間で情報の流通を実現。
アダプタ 既設システムの保有情報を検索可能にする機能を提供。 認証・課金サーバー 利用者の認証やサービス利用料金徴収等を行う機能。業者毎など個別アプリ毎に設置。

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