● 地域情報化報告

 当協会では地域情報化推進事業の一環として、「地域情報化の再活性化及び先進的情報システム導入のための調査事業」及び「地域情報システム開発事業」を行っています。
 平成12年度事業として、下記のテーマによる事業を行いました。今回は、それらの事業の中から北海道美唄市及び岩手県田野畑村の開発事例を報告します。

 1.地域情報化の再活性化及び先進的情報システム導入のための調査事業
  ・十勝圏観光情報システムの構築に関する調査(北海道十勝圏地域)
  ・京都府木津町に関する調査(京都府木津町)
  ・歴史文化活用ネットワーク構築に関する調査(奈良県橿原市)
  ・黒崎ターミナルを核とした地域情報システムに関する調査(北九州市黒崎地区)

 2.地域情報システム開発事業
  ・OneStop統合型行政GISの開発(北海道美唄市)
  ・田野畑・銀河図書情報システムの開発(岩手県田野畑村)
  ・地域ものづくり産業支援情報システムの開発(静岡県浜松地域)
  ・ホスピタリティ型石垣観光情報システムの開発(沖縄県石垣市)


        1 北海道美唄市「OneStop統合型行政GISの開発」
                               URLhttp://gis.net-bibai.co.jp

1.背景と目的
 美唄市は、人口約32,000人、面積約277平方Km、世帯数約13,500世帯で、札幌と旭川のほぼ中央に位置し、国道12号線が南北に縦断し、南北に19km、東西に32kmの広がりがあり、ほぼ中央に人口が集中しています。西地区は西側に石狩川が流れ道内有数の米作地帯、東地区はかつて隆盛した炭鉱地帯で、集落散在型の地域特性であります。
 札幌とは比較的近距離にもかかわらず、インターネット通信インフラ整備が遅れており、首都圏はもちろん札幌と比較して情報、文化、医療、教育、産業面などにおける格差が大きく、さらに広がる傾向にあります。同時に、人口の減少、少子化、25%を超える高齢化率が速い速度で進んでいます。

 本市では、昭和61年に市のOA化、地域情報化を目的に「株式会社美唄未来開発センター」、平成元年に情報関連の人材育成などを目的に「美唄情報開発学園」(北海道中央コンピュータ・カレッジ)、平成3年に情報関連の企業誘致などを目的に「株式会社美唄ハイテクセンター」の3つの第三セクター方式の法人を設立し、早くから情報化の推進に取り組んでおります。
 「OneStop統合型行政GISの開発」は、以下の背景により、美唄未来開発センターが中心となり、美唄市ならびに北海道GIS・GPS普及推進研究会の協力を得て、今回の開発となりました。

●平成10年度補正予算で財団法人日本立地センターより委託を受け、地域産業振興を目的とした住宅地図レベルのデジタルデータの整備と観光・農産物・施設建物・商店・企業などのマッピングされたコンテンツのインターネット上への発信を可能とするシステムを開発・構築し、実証実験を行いました。
●平成11年秋より、市の有志による自主研究グループ「GIS研究会」において、美唄市はもちろん他市町村の動向・実態を含め「行政におけるGIS」について研究を進めております。
●美唄未来開発センターが入会している『北海道GIS・GPS普及推進研究会』では、平成11年度にGIS普及セミナー(国土地理院共催)を北海道5地区(道北、函館、胆振、十勝、北見)及びGIS普及活用セミナーや分科会活動を7回開催しました。この活動を通して、行政や地域における『GIS』のニーズ調査を行った結果、「理論や説明では、その効果の多大さがよく理解できるが、実際に動くものを見ないとイメージできない」、「WEB対応によって一般市民が利用可能なシステムの構築が重要」などの意見が寄せられた。
 そこで今年度の研究会目標を行政、経営、農業、福祉、観光などの5つの分野を支援するGISを開発することとし、その実現に向けて活動しています。

 美唄市の現状は、地図データの一元管理が成されておらず、各部門ごとに業務対応した紙図面を委託制作しています。また、行政における窓口業務については、市民よりの問い合わせについても、目的の図面及び付随する情報を見つけるまでかなりの時間を要しています。

                  図1地域情報化システム開発事業「OneStop統合型行政GISの開発」

1.1システムの目標・目的
 本システムの目的は以下の通りです。

  地図管理に要する諸経費の削減を図ることができること。
  市民サービスの向上に繋がること。
  窓口業務におけるOneStopサービスの実現に向けた基盤整備を図ること
  地域及び行政の地理情報の共有化を視野に入れた、統合的な地理情報システムの構築を行うこと。

1.2導入で期待される成果
 本システムの導入は行政の新しい取り組みであり、以下の成果が期待できます。
  ●統合型行政GISの立上げ
  ●窓口業務のOneStopサービスの立上げ
  ●他の業務へ展開
  ●他地域への応用・展開

 統合型行政地理データベースやコンテンツを活用するため、下記のアプリケーションを開発しました。統合型行政地理データベースの構築及びコンテンツの制作を行う際に、美唄市の協力はもちろん、「美唄未来開発センター」が入会している「北海道GIS・GPS普及推進研究会」の会員企業の協力・支援を得たことにより、システムの開発・構築をスムーズに行うことができました。

2.システムの内容

2.1開発したアプリケーション

(a)基本アプリケーション
 開発したアプリケーションの基本となるものであり、編集・シンボル情報追加・データベース管理・ユーザ認証機能から構成する「メンテナンス機能」、マッピング登録・マッピング解除機能から構成する「マッピング機能」、「ユーザ認証機能」、閲覧履歴保存・編集履歴保存機能から構成する「ログ機能」、「印刷機能」、地図表示・レイヤ設定・グリッド設定表示・属性表示機能から構成する「表示機能」、検索表示・検索結果表示・該当図形反転/ブリンク/アイコン表示機能から構成する「検索機能」、距離計算・面積計算機能から構成する「計算機能」、XMLインポート・DXFインポート・Simaインポート機能から構成する「インポート機能」で構成されます。

(b)業務支援アプリケーション
(ア)施設防災設備管理業務支援アプリケーション
消防本部における業務支援を行うために、危険物貯蔵所、高層階建物図面、消化栓、防火水槽の位置情報、詳細情報等を閲覧できます。
(イ)都市計画管理業務支援アプリケーション
都市計画課における業務支援を行うために、地価公示、住居表示実施区域、都市計画道路、都市計画公園・緑地、都市計画用途区域の詳細情報を閲覧できます。
(ウ)農業管理業務支援アプリケーション
農政課における業務支援を行うために、土地利用計画、農業振興地域・除外地
(エ)道路付属・占有物管理業務支援アプリケーション
管理用地課における業務支援を行うために、認定路線、橋梁、雨水・汚水管、側溝、普通河川の詳細情報を閲覧できます。
(オ)上水道施設情報管理業務支援アプリケーション
上水道課における業務支援を行うために、上水道経路、上水道仕切弁の詳細情報を閲覧できます。
(カ)下水道施設情報管理業務支援アプリケーション
下水道課における業務支援を行うために、下水道経路、マンホール、ボーリング調査結果、水洗化状況、下水道計画の詳細情報を閲覧できます。
(キ)福祉業務支援アプリケーション
福祉課における業務支援を行うために、独居老人・身障者の詳細情報を閲覧できます。

              図2 AllJavaによる統合型GISの開発

2.2統合型行政地理データベースの構築内容
 統合型行政地理データベースの構築内容は、「(b)業務支援アプリケーション」で活用する情報、危険物貯蔵所、高層階建物図面、消化栓、防火水槽、独居老人・身障者、開発行為、地価公示、都市計画道路、町名区画、住居表示実施区域、上水道配管、上水道弁栓、転作地、道路台帳、橋梁台帳、地番・地籍、住民基本台帳、高齢者台帳、や市勢データマップなど地理情報を構築しました。

2.3コンテンツ制作の内容
 コンテンツ制作の内容は、「(b)業務支援アプリケーション」で活用する、航空写真、主な3階以上のビル、下水道計画情報や橋梁現況写真などの画像情報を構築しました。

3.システムの実証実験体制
 システムの実証実験体制は、財団法人ニューメディア開発協会の指導の下で、第3セクター「美唄未来開発センター」が基軸に「美唄市各課各係」において、実証実験を行いました。実験環境は、「地域インターネット導入促進事業」で整備した100BASEのネットワーク及び端末、統合型GISサーバを接続し、各業務ごとのアプリケーション、地理情報データベースやコンテンツを各課各係において、実証実験を行いました。その際仕様の確認はもちろん、修正、追加等の意見も収集しました。
 さらに、「北海道GIS・GPS普及推進研究会」の会員企業の協力・支援を得たことにより、システムの開発・構築から運用・保守に係る業務まで、スムーズに行うことができる体制とすることができました。
 システム構築によって、以下の内容を整備することができました。

都市計画現況図(モデル地区)、市全報(13,000件)、施設情報(1,900件)
施設防災情報危険物貯蔵所台帳(32件)、消化栓台帳(412件)、防火水槽台帳(77件)
都市計画情報地価公示台帳(12地区)、住居表示実施区域台帳(全域)、都市計画道路台帳(全域)、都市計画公園・緑地台帳(16件)など
農業管理情報転作地台帳(132筆)
・道路付属・占有物管理情報認定路線台帳(49路線)、側溝台帳(49路線)、橋梁台帳(1件)、雨水・汚水管台帳(全域)、普通河川台帳(61河川)
上下水道施設情報上水道経路台帳(全域)、上水道仕切弁台帳(946件)
下水道施設管理情報下水道経路台帳(モデル地区)、マンホール台帳(モデル地区)、ボーリング調査結果台帳(49箇所)など
福祉業務情報独居老人・身障者台帳(785名)
市勢データ町名区画、選挙投票区域、工業団地・工場分布、防災施設・避難場所、宗教施設、交通網、計37項目以下に本システムの構築による効果を示します。
 道路、河川、鉄道、建物・施設の輪郭などの地図の基本となるデータ、基図を共有化、共通化を図ることにより、基図の管理運用コストが低減されます。
 同一システム上で各業務アプリケーションが動いているので、操作性の統一が図られたことにより、職員の異動によるシステムの操作の混乱、再教育の必要がなくなります。
 数多くのコンテンツをデータベース化したことにより、検索時間の短縮、必要な情報の重ね合わせ、などにより、災害時に、多角的なシミュレーションが可能となります。また、市民窓口におけるサービス向上となります。
 多くの種類の地理情報を持つ事により、他の行政分野へ応用も期待できます。


 写真 実証実験の様子

4.成果及び効果
 北海道美唄と言えば農業であるから、農業管理情報業務アプリケーションに重点を置き、その充実を図りつつ、他の業務アプリケーションの普及に務めていきます。さらに、農業を基軸として他の産業とのクラスタ的な役割を果たすために、他の組織との連携を深めていきます。
 しかし、本事業はまだ始まったばかりであり、具体的な効果を創出していくために、美唄市、「北海道GIS・GPS普及推進研究会」など関係者各位と十分協議を行いながら、より良い「OneStop統合型行政GIS」の実現を積極的に推進していきます。

連絡先
当協会推進本部 部長 地域情報化担当 西村英保
Mail:nisimura@nmda.or.jp

株式会社 美唄未来開発センター 情報技術部 取締役部長 牧野 修一
Mail:makino@bmc.net-bibai.co.jp
http://www.net-bibai.co.jp、http://www.bibai.com、http://gis.net-bibai.co.jp
TEL:01266-5-2121FAX:01266-5-2122

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