2 岩手県田野畑村「田野畑・銀河図書情報システムの開発」
                   http://www.tanohata.ed.jp/toshyo/

1.はじめに
 岩手県下閉伊郡田野畑村は、人口約5,000人の美しい自然と魅力ある一次産品を特徴とする三陸海岸沿岸の村です。教育立村と交流を村の基本方針として早くからむらづくりに取り組んできましたが、第一次産業の衰退、高齢化、若年人口の都会への流出など様々な問題に直面しており、地域情報化を通じた地域の活性化は村の重要な課題となっています。
 こうした地域の課題解決に向けて、平成11年度には情報化推進基盤整備事業により「田野畑・銀河情報ネットワークに関する調査」が実施され、田野畑村にふさわしい地域情報システムのあり方が示されました。村の情報化の目標は、インターネットを利用した情報ネットワーク基盤の整備による産業振興、地域振興の実現をめざす「田野畑・銀河情報ネットワーク構想(図表1)」としてまとめられています。

 そこで、村の情報化の進捗状況や村の財政規模等を勘案し、この「田野畑・銀河情報ネットワーク構想」を段階的に実現することとし、平成12年度には村の文化化と情報化を具体化する方策として「田野畑・銀河図書情報システム」の開発を実施しました。

               図表1 田野畑・銀河情報ネットワークのイメージ

2.田野畑・銀河図書情報システム(実証実験システム)の概要
 「田野畑・銀河図書情報システム」は、村内に分散立地している村民図書室や駅の図書コーナー、学校図書室などの図書施設を有機的に活用し、情報ネットワークで連携したネットワーク型図書館の整備をめざす情報システムです。
 このネットワーク型図書館システムを「たのはた銀河図書館」と名付け、図書館業務の電子化、ネットワーク化を進め、バーコードによる蔵書管理、利用者管理を実現しました。
このシステムでは、施設内端末からの図書の検索・予約・リクエストに加え、村内外のインターネット接続端末からこうした図書館サービスを利用できるシステムです。
 また、インターネットホームページを利用した新たに村内、村内外との情報交流を実現するコミュニティシステムを開発しました。

(1)実証実験システムの基本仕様
図書の受入、登録、貸出返却、蔵書点検などを行う図書館業務システム支援
ネットワークを利用した近隣自治体図書館との蔵書の相互貸借、および図書の予約・配送など、ネットワークを活用した図書館の運営を実現する情報図書館システム
インターネット(携帯電話を利用したWebサービスを含む)により村内外との情報交流を行う場を提供するコミュニティ情報サービスシステム

(2)実証実験システムの構成
本システムは、主要機能である「図書情報システム」と「コミュニティ情報サービスシステム(webサービスシステム)」の2システムから構成されます。このうち、「図書情報システム」は3つのサブシステムから構成されます。
「図書情報システム」の3つのサブシステムと「コミュニティ情報サービスシステム(webサービスシステム)」の概要は次の通りです。

 1 図書館業務サブシステム
  図書室からの図書検索・予約・貸出・返却業務と利用者登録および図書データベースの維持管理を担い、図書情報システムの全機能が実行できる運用・管理サブシステム
 2 インターネット図書検索・予約サブシステム
  村内外からのインターネット接続端末とNTTドコモi-MODE端末へ図書検索・予約サービスを提供し、在宅や出先等から検索や情報発信ができるなど地理的な利便性を図るシステム
 3 移動図書館サブシステム
  移動図書館車内での図書検索・予約・貸出・返却業務と利用者登録を行い、業務の前と後で図書データベースとの同期をとることでデータの一元性を維持するシステム
 4 コミュニティ情報サービスシステム
  図書に関連する教育、文化情報を主体とした、村内および村内外との情報交流、情報交換の場を提供するシステム

 システム機器は、webサーバと図書情報システムの端末からなる構成としました。将来的には庁内LANとつなげ、拡張する予定です。

(3)ホームページのコンテンツ
 村民は、<たのはた銀河・情報ネットワーク>のホームページを通じて、図書情報システムを利用することになります。このホームページは、主に<たのはた銀河図書館>のページと、その他の教育委員会関係ページに分かれています。将来的に文化・経済・産業の交流の場として、このホームページを充実する場合を想定して、メニュー構成、ディレクトリ構成を設計しました。(図表2)

                         図表2 コンテンツ構成と主なコンテンツの内容

(4)実証実験システムの特色
 平成12年度の調査で明らかになった村民ニーズや、開発実験構築と稼動後の運営を支援するために組織された「田野畑・銀河情報ネットワーク推進委員会」から出された意見を反映して、以下のような特色をもった実証実験システムとしました。

 1 図書館のない自治体向けの簡便な図書システムのモデルとして構築し、村内各地に分散して置かれている既存の図書施設を結ぶ“ネットワーク上”の図書館である「たのはた銀河図書館」を開設しました。
 2 図書管理の電子化やバーコードによる図書、管理、利用者管理方式を導入して利用者の利便性を向上させるとともに、インターネットによる図書サービスの提供などネットワーク型図書館運営のための基盤を整備しました。
 3 図書検索・予約機能については、“所蔵場所別に検索・予約条件を変える”、“どこの蔵書の予約でも村内を循環するはまなす号で届けられる”など村の現状に対応し工夫しました。将来的には、利用者の最寄りの施設等への配達も検討します。
 4 平成12年より携帯電話の受信地域となったため、携帯電話からホームページを閲覧したり、図書の検索・予約ができるシステムとしました。
 5 図書サービスに関連して、コミュニティサービスにも重点を置いており、「みんなの本棚」や懐かし村民(村との交流制度の会員)に協力依頼した「銀河図書寄贈制度」など、村外在住者も参加しやすい交流のしくみをつくりました。
 6 村民文化展での写真撮影(村民写真館)や、高校生・子どもたちの本棚のアンケート調査など、平成12年度中に本システムのPRを兼ねた情報収集を行い、子どもから高齢者まで、広く村民の関心を喚起するメニュー構成としました。
 7 村の情報ネットワークの基盤づくりに資するため、専用線を敷設しました。また、村内の全学校(小・中・高)のホームページを収納できるサーバーのスペースを確保するとともに、今後、関連分野のホームページ追加にも対応できるシステム構成としました。

                  図表3-1 ホームページ・画面サンプル

                  図表3-2 ホームページ・画面サンプル

3.今後の課題と展望
(1)期待される成果
 実証実験システムの整備ならびに将来的なシステム拡充により、次のような成果が期待されます。
 1 図書利用の利便性向上による村民の文化学習活動の活性化
 2 地域住民の交流促進、コミュニティレベルでの助け合い意識の復活
 3 情報ネットワークを利用した新しいサービス産業の振興、情報関連産業の誘致・展開
 4 インターネットを利用した全国規模、国際的視野による情報交流の促進
 5 情報発信を通じた地域アイデンティティの醸成

(2)本稼動に向けた課題と対応策
 1 村民等への広報
  新しい図書貸出制度やたのはた銀河情報ネットワークの広報について、積極的に広報活動を行い、本システムの活用を促進し、村民の情報リテラシ向上を図っていく必要があります。
<対応策>
 →紙媒体での広報:広報たのはた、利用者ガイド(全戸配布を予定)
 →ホームページ(HP)での広報:村、高校等のHPとの相互リンク
 →IT講習会・学校の授業などでの活用

 2 運用体制の確保
  図書検索・予約等に関する問い合わせへの対応、定期的な情報のアップデート、サーバー管理など、次年度以降の運用体制を明確にする必要があります。
<対応策>
 →教育委員会での継続的な村内体制の確保
 →地元システムハウスと連携したサーバー管理体制の強化
 →イベント情報など、村内関係団体への情報提供の協力依頼

 3 図書データベースの拡充
  実証実験段階では、利用頻度の高いはまなす号の蔵書を中心に3,000冊をDB化しました。次年度以降は、新着本・その他の蔵書のDB化を進めるとともに、学校や田野畑駅の蔵書など、教育委員会以外の蔵書を含めた総合DBへの拡充が必要です。
<対応策>
 →庁内、ボランティアなどの入力体制確保
 →学校図書・パソコン講座などでの協力の依頼

(3)今後の展望
 今後は、村の総合計画の進捗にあわせ、情報拠点となる「中央公民館(仮称)」(メディアセンター)の整備、経済・産業など多分野の情報ネットワークへの拡張、県や近隣市町村との広域連携に取り組み、多くの村民に身近に利用される情報システムとしての拡充が期待されます。

連絡先
 推進本部 担当部長 地域情報化担当 水頭雅弘
 Mail:suitou@nmda.or.jp

 田野畑村教育委員会教育次長中嶋昭男
 Mail:takyoi@ns1.tanohata.ed.jp
 TEL:0194-34-2111FAX:0194-34-2155

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