● 福祉情報化事業

                 「福祉情報化事業」のご紹介

                            推進本部 担当部長 福祉情報化担当 多湖 和男

1.平成12年度先進的情報技術活用型福祉支援推進(介護・子育て分野における革新的なサービス提供に資するIT活用事業)事業

 少子高齢化の進展の中で、高齢者の健康寿命を延伸し、生活をサポートする介護サービスは、今後、その重要性をいっそう増しています。また、女性の社会進出が進む中で、これまで家庭内で行われてきた保育・介護を支える多様なサービスの需要が高まっています。これらのニーズの拡大に応じた多様なサービスの提供が、民間の活力、地域の既存資源を最大限に活用した形で、的確かつ効率的に提供されていくためには、ITの進歩を活用した革新的なサービスの提供体制やサービス利用者との新しい関係の構築が求められています。
 本事業では、平成12年度、13年度を通じて、介護サービス分野ならびに子育てサービス分野の構造改革をめざすとともに、上記のニーズに対応した革新的なサービス提供を可能にするITの活用を強力に進めることをめざしています。
 具体的には、@サービスに関わる多様な関係者の時間的・空間的な距離感を克服するもの、A多様な選択肢の提示と、サービス利用者側による選択環境の整備を促すもの、B競争環境を整備し、サービス提供の効率化と質の向上に資する知的基盤の整備を促進できるもの等を実現する情報システム(ソフトウェアを対象とする)の開発と、それを活用した革新的なサービス提供に向けた実証・評価実験を対象に公募を実施したところ、全国から171件の応募があり、13件を採択候補として選定いたしました。(表1参照)

2.平成12年度高齢者・障害者等用情報通信機器等開発事業

 高齢社会、情報化社会が急速に進展する我が国においては、健常者のみならず障害者や心身機能の低下した高齢者等の国民一人一人が積極的に参画できる「日本型IT社会」の早期実現が緊急の課題となっています。このIT社会の実現は、豊かな国民生活と我が国の競争力の強化を実現する鍵となるばかりではなく、障害者・高齢者等にとっても、ビジネスをはじめとする経済・社会への参画をより容易にするポテンシャルを有しており、やりがいのある社会、生きがいのある社会の実現を可能とするものです。
 経済産業省は、このような見地から、平成12年6月に障害者・高齢者等情報処理機器アクセシビリティ指針を改訂し、社会の関心を喚起したところです。
 本事業では、平成12年度、13年度を通じて、下記の3事業を実施しています。

(1)高齢者・障害者等向け情報システム開発事業

 障害者や心身機能の低下した高齢者等が情報弱者にならないための情報通信機器・システムの早期実現をめざしています。
本事業では、障害者や心身機能の低下した高齢者等にとって使いやすい情報通信機器・システムの技術開発及び実証・評価実験を対象に、重点テーマに@生体信号等を用いた入力システム、A身体動作対応調節型入力システム、B情報端末接続用入出力インタフェース、C個人音声による音声合成技術、D個々の障害者・高齢者に対応する音声認識システム、EOS上の読み上げ/拡大表示システム、F聴覚障害者用会話支援システム、G読み書き障害補助システム、H社会生活行動支援システムを設定しました。
 開発要件に@開発のベースとなる理論・技術等は確証が得られていて、研究ではなく実用化できるもの、A実証・評価実験後に開発成果の活用方法、普及方策、普及体制及び計画が具体的であるもの、B成果が、ユニバーサル化など障害者・高齢者等の社会参加を促す上で大きな効果を有し、情報化社会の健全な発展に資すると見込まれるもの等を設定して、公募を実施したところ、全国から120件の応募があり、14件を採択候補として選定いたしました。(表2参照)

(2)高齢者・障害者等用電子投票機器等開発事業

 障害者・高齢者が自らの力で投票できる仕組みを構築することは、障害者・高齢者の社会参画の第一歩として非常に重要です。
 本事業では、障害者・高齢者が身体的ハンディに阻害されることなく、自力で投票できる選挙におけるバリアフリーを確保するため、情報技術を活用した電子投票システムを構築します。現行投票制では自分自身による投票が不可能な視覚障害者や、投票所へ行けない要介護(寝たきりを含む)老人、投票が困難な肢体不自由者等が投票を可能にするハード(可搬型電子投票端末ハード、視覚障害者インタフェースハード、肢体不自由者インタフェースハード、投票券発行読取機構及び巡回投票用バッテリー)とソフト(バリアフリー投票端末ソフト等)を開発し、模擬投票による操作性の観察及びアンケート調査による実証・評価実験を行います。

(3)高齢者のIT利用特性データベース構築等基盤設備整備事業

 IT経済・社会への高齢者の積極的な社会参画を可能とするため、高齢者が安心して使いこなせるIT機器の開発を加速化するための知的基盤として、高齢者の記憶・処理機能の低下に着目した高齢者のIT機器の利用特性に関するデータベースを構築する必要があります。
 本事業では、次の作業を実施し、基盤設備の整備を行うとともに、運用体制の確立を図ります。

 @高齢者の記憶機能の低下に関するデータの計測機器の開発
 A高齢者の情報処理機能の低下に関するデータの計測機器の開発
 Bデータを格納し、企業等に提供するための大容量データベースサーバの整備
 C自立的な運用に向けた運用体制の確立

 表1 平成12年度先進的情報技術活用型福祉支援推進
   (介護・子育て分野における革新的なサービス提供に資するIT活用事業)事業採択候補一覧

項番

事業主体

事業名

事業概要
1 藤沢市社会福祉事業協会 自立支援を目指した地域ケアマネジメントサービスの構築〜シニア人材による地域介護サービス資源情報基盤の運用〜 地域介護サービス資源の一元化、介護作業における効率化をめざすことで、ケアマネージャーの業務軽減と、サービス事業者と利用者の信頼関係の構築を促進する。また、各情報化に関わる負荷を軽減するため、ITスキルと人生経験の豊かなシニアの人材を有効活用する。
2 日本訪問看護振興財団 ケアマネジャーの質向上に向けた統合的ASP支援システム開発 ケアマネージャーの業務効率化と人材育成を図るため、ケアプランのモニタリング、リソース管理ができるようにする。
3 岡崎商工会議所 介護利用者・家族の配食 多重メディア・ツイン・エージェント 要介護者だけでなく、周りにいる家族等も含めたトータルな給食サービスを実現するとともに、地域住民にむけて、多様なサービスの周知徹底を各種のメディアを通じて行う。
4 生活福祉環境づくり21 介護関連地域情報ネットワークシステムの開発及び実証実験 地域ぐるみで介護サービスの活性化と新しいサービスの創出を図るため、足立あんしんネットワークをベースに協力機関・協力員のサポートシステムを構築する。
5 R&Dアソシエーツ 高齢者・障害者の自立を支援する地域福祉総合情報ネットワーク 各福祉施設の相談に関する情報を共有化し、より、効率的な福祉相談を実施するとともに、各施設の業務連携を強化する。独自のセキュリティ確保に配慮したデータベースを構築する。
6 日本エル・シー・エー グループホームを核にITを活用したネットワークシステムの構築 グループホーム間のネットワーク化、ならびにグループホームを核にした周辺地域の在宅介護支援、遠隔ケア、癒しサービスの提供をITを活用して効果的に実現する。
7 キメック ITを活用した介護事業者間の連携支援 介護情報の標準化、共通インタフェースの確立をめざすとともに、簡単な操作によるグループウェアの運用によって、介護事業者間、ケアマネージャ間における介護情報流通の効率化をめざす。
8 産業能率大学 ヘルパー向けスキルアップを目的とした自学自習システムの開発 介護サービスを担うヘルパーの人材育成に寄与する学習ツールを提供する。特に、職能として確立できるプロの育成、フレキシブルな学習環境、スキルレベルの自己チェク、事業者として顧客満足度につなげる導入も可能な教材とする。
9 アイオニクス沖縄 広域促進型長寿応援ネットワークシステムwellness 介護サービス利用者が、自分自身で各種サービスの活用シミュレーションと、利用者評価を発信できるようにするとともに、そのデータを活用しながらケアマネージャーやサービス事業者がビジュアルにサービス実施状況が確認できるようにする。
10 まちづくり三鷹 地域全体による子育て支援ネットワークの構築及び実証 ワンストップポータルサービスの実現を基盤とし、ファミリーサポート等を含むサービスと利用者とのマッチング、ライブラリー化、コミュニケーションの促進等をめざす。
11 ポピンズコーポレーション ITを活用したWorking Mother子育てサポート事業 画像等を活用して、働くお母さんと保育園の間の機動的で安心できるネットワークを実現するとともに、緊急時の迅速な人材派遣のIT化を図る。
12 日本フィランソロピー 音声認証活用によるボランティア参加型緊急子育て支援システム 音声認識技術による本人認証を活用した緊急時等子育てサポートシステムを構築する。保育園・保護者・子供・ボランティア等の信頼関係をつくることで円滑なサービスの提供をめざす。
13 慈愛園子供ホーム プライベートウェブを活用したキッズ・ケア・クマモトの起業化 病児保育、延長保育、緊急時保育等、子育てサービスの利用者にとってメリットのある横断的なサービス情報の提供をめざす。プライベートウェブを活用し、おかれた環境によらず、機動的、効果的な情報の伝達・共有を実現する。


 表2 平成12年度高齢者・障害者等向け情報システム開発事業採択候補一覧

テーマ名

企業/団体名
聴覚・発語障害者のための通信・電話装置 株式会社 自立コム
ブルートゥースインターフェースを持つ視覚障害者向けPDA クリエートシステム開発株式会社
トーキングエイドを利用した重度身体障害者向け携帯端末 株式会社 ナムコ
既存電話によるバリアフリー型インターネットポータルサイト 三菱スペース・ソフトウェア株式会社
視覚障害者向け録音図書ネットワーク配信システムの開発実証実験 シナノケンシ株式会社
ワイヤレスで情報アクセス可能な肢体不自由者向け携帯端末の開発 テクノツール株式会社
脳血液量変化を利用した重度ALS患者用のYes/No検出装置 株式会社 日立製作所
視覚障害者等の生活支援のため、音声で情報提供のシステム 凸版印刷株式会社
重度身体障害者向けPC操作支援ツールのカスタマイズ方式の開発 日本電気株式会社
音声認識ソフトを使った肢体不自由者のパソコン利用支援 日本アイ・ビー・エム株式会社
視線入力ヘッドマウントディスプレイによるITシステム利用支援 「視線入力ヘッドマウントディスプレイによるITシステム利用支援」プロジェクト推進コンソーシアム
障害者・高齢者等向け聴取補助システム 日本ビクター株式会社
障害者・高齢者向け情報伝達通訳携帯機器 イーエヌジー株式会社
ユニバーサル・キーボードとそのプロソディ・システム 日本エコロジー有限会社

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