● 関連技術の研究報告
      1.これからの「地域情報サービス」について
                        
富士通株式会社
1.地域情報システムの動向

 十数年前より地域活性化を目的に、地域特性及び情報技術の進展に合わせて様々な形態で地域情報システムが構築されております。弊社も当初よりCATVの活用や情報提供システム導入等でご支援させて頂いておりますが、近年IT技術の高度化により、より質の高い多種多様な地域活性化の運用手段が実現されています。例えばインターネットの急速な普及は、個人がパソコンや携帯端末で欲しい情報を容易に入手できる環境をもたらしています。
 また、「e-Japan重点計画」が発表され、電子行政構想が政府レベルで謳われていることから、地方公共団体の情報化計画のなかでも、より明確に地域情報化が位置付けられてきています。
 これからは、行政の情報化と地域の情報化という従来の概念ではなく、電子行政という新しい観点でシステムの検討をしていく必要があります。さらに、ブロードバンドや電子認証などの新しい技術にも対応していくことが求められます。

2.GtoCソリューション
 地域情報化の実現にあたっては行政、住民、地域企業、民間団体等の地域に関わる全ての人々とのコラボレーションが必要となります。本稿では、その中での中心要素となるGtoC(行政から住民へ)ソリューションにつきご説明いたします。
 地域が必要としている情報は、情報公開、行政窓口案内、事業案内、施設案内、観光情報や介護福祉情報などが中心となります。近年では一方的な情報提供だけでなく双方向の情報交換が行えるシステムを構築するのが主流となっております。情報公開、行政相談、申請/問い合わせ、申請書ダウンロードなどや施設の空き状況検索/予約、図書館の蔵書検索/予約などがそれにあたります。それらのサービスを一ヶ所にアクセスするだけで享受できること(=ポータル)が利用者の利便性の向上に繋がるといえます。

 このような背景を踏まえ、GtoCに求められる機能は以下と考えます。

  ●常に最新の情報を住民の視点で提供
  ●バリアフリーを実現し様々なメディアからのアクセスが可能
  ●住民参加の行政・住民交流支援
  ●一ヶ所のポータルサイトから総合的なワンストップサービスを実現

◇住民の視点でのサービス
 様々な地域情報をタイムリーに発信するためには、行政の情報発生源から、職員が容易に登録/更新できる仕組みが必須となります。
また、より住民の視点でのOnetoOneサービスを実現するためには、サービスにより得られた「地域住民のこえ」を次の行政に反映させる仕組み作りも重要となってきます。

◇バリアフリーの実現
 インターネットが広く活用される環境が整いつつありますが未だパソコンや携帯端末に不慣れな人も多くいるのが現状です。障害者対応と合わせて、情報格差是正のためバリアフリーが重要視されています。家庭のパソコン、携帯端末(i-mode等)、情報KIOSK、電話/FAX等の多彩なメディアからのアクセスが不可欠です。

◇住民参加の行政・住民交流支援
 地域の活性化を目指すには「行政と住民との情報交流」及び「住民間の情報交流」を活性化させ、双方のパートナーシップを維持/発展させる基盤作りが必要となります。全国的な動向としては、このために電子会議室、掲示版、アンケート等のシステムを構築する自治体が増えています。

◇地域ポータルへの拡張
 利用者が一カ所のホームページにアクセスするだけで統一されたビューで各種情報の閲覧、予約申込み、相談、情報交流が行える様な拡張性を考慮する必要があります。将来的には地場企業などの民間の情報も含めたポータルを検討していくことも必要です。例えば、引越しの際に行政の手続きに加え、電気、ガス、電話等の諸手続きにワンストップにアクセスできると、更なる住民サービスの向上につながります。

                 図1 自治体ポータル画面イメージ


3.GtoCソリューションの事例
 富士通では上流工程からポータルに繋がるホームページ運用システムまで、本ソリューションにおいて様々なツールをご用意しております。今回は、@ポータルの基盤ともなる行政情報提供システム「i-City」、Aネットワーク上でのバーチャル総合目録を可能とする図書館関連システムについてご紹介いたします。

   [i-City事例]兵庫県加美町
   http://www.town.kami.hyogo.jp/

◇行政情報提供システム「i-City」
 i-Cityは自治体の職員が簡単な操作で、きめ細かなホームページ(Webサイト)の運用管理が可能となるシステムです。ホームページの専門知識なしに最新の情報をわかりやすく住民へ提供することができます。以下に特長を示します。

  ●各課毎に容易に情報発信ができます。
  ●既存のホームページ資産を有効活用し統一したビューでの情報提供ができます。
  ●1回の情報登録でi-modeや音声/FAXなど様々なメディアからの情報発信機能ができます。
  ●作成されるホームページはキーワードやジャンルなど様々な切り口の情報ナビゲートが可能です。
   (図1 自治体ポータル画面イメージ 参照)
  ●行政相談、掲示版などの双方向サービス機能も備えています。

◇iLis横断検索エージェントシステム
 図書館は地域住民に最も身近な公共施設です。最近は蔵書検索/予約をインターネットでサービスする市町村図書館が多くなっています。この公開情報を結ぶことにより、独立している公共図書館や学校図書室の蔵書情報を利用者がひとつのキーワードから一度に検索できるようになります。図書館の地域へのサービスがますます拡充されます。

4.今後の取り組み
 IT社会の基盤整備に伴い、今後ますますソリューション実現の可能性は広がります。行政と地域の情報化全体をとらえた仕組み作りのなかで、住民向けであるGtoCソリューションでは特に利用者の使いやすさ分かりやすさが求められます。
富士通では今後もブロードバンドなどの新しい技術を積極的に取り入れた、誰もが使いやすい地域情報システムをご提供してまいります。

著者:栗原恵満子(くりはらえみこ)
   富士通株式会社公共営業本部
   自治体ソリューション推進部
   E-mail:kurihara.emiko@jp.fujitsu.com
   TEL:03-5210-5366FAX:03-5210-5398

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