関連技術の研究報告

1.インターネット電話システムへの取組み(IP電話)

三菱電機株式会社

1.はじめに

 電話は世界で最も普及率の高い通信手段です。この「電話」を従来の電話網ではなく、インターネット通信網を利用して実現した電話が「IP電話」です。ここ数年で指数関数的な普及の伸びを示している急成長のインターネット通信網上に電話が普及することで膨大な市場の形成が予想されています。
 日本におけるIP電話の利用は当初、企業支店間の内線電話として電話料金の低減化を図ることが主でしたが、xDSL、CATV等によるインターネットへの常時接続(=固定料金)サービスの普及、及び、地域情報化施策による情報通信基盤の整備も進み、都会でも地域でも個人利用として脚光を浴びるようになりました。
 三菱電機では、個人でも簡単に導入及び利用できるIP電話の開発に取り組んでおります。本稿ではIP電話のしくみと当社の取り組みについて紹介します。

2.IP電話のしくみと長所

 IP電話は、音声信号をデジタルデータに圧縮し、IPパケットに変換してインターネット網上にパケット方式で送信し、通話先で、再度、アナログの音声信号に変換します。この技術はVoIP(Voice over Internet Protocol)と呼ばれており、データと音声を「パケット」として混在させることで、ネットワークの効率を高めています。
 これにより、従来の回線交換方式の電話と異なり、通話中に回線を占有しないため通信料金を安くできる利点があります。会社によっては、社内イントラネットを内線電話網として利用するところも出てきています。
 また、従来の公衆回線網では専用の高価な交換機による設備が必要であったのに対して、より低価格のルータ機器等でIP電話のネットワークが構築できるため、キャリア会社の中にはバックボーンの電話網をIP回線網へ積極的に置き換えるところも出てきています。

図1 IP電話のしくみ

3.IP電話関連製品の動向

 IP電話関連製品は、1995年頃から、パソコン用のソフトウェア製品や、小型のアダプタ装置から、大規模なゲートウェイ装置など様々なものが開発されてきました。最近では、電話機、PBX、ルータ機器等の各種メーカが積極的にIP電話関連製品の開発を進めています。
 また、一般の公衆電話から利用できる格安の長距離通話が可能なIP電話サービスも、インターネット接続業者等により運営されています。
 一方では、標準化活動も進められてきており、国際標準機関ITU-T におけるマルチメディア通信のための標準(H.323)がその代表的なものです。
最近では、インターネット関連技術を標準化する組織であるIETFにおいてSIP(Session Initiation Protocol)標準が検討されており非常に脚光を浴びています。このSIP準拠の製品も徐々に市場に現れつつあります。これらの標準では、IPネットワーク上で音声通信を行うための発呼、通話、切断にわたる一連の動作に関わる呼制御手順や音声符号化方法などが規定されています。

4.三菱電機の取り組み

 当社では、専門的な知識がなくても使用できる家電のような使い勝手をもつコンセプトの製品について検討を行っています。
 今後、xDSL、CATV、FTTH等のインターネット常時接続環境が爆発的に普及すると言われており、近い将来、どの一般家庭でも24時間いつでもインターネットにアクセスできるようになることが予想されます。
 そこで、インターネットやコンピュータのことにあまり詳しくないお客様にも手軽にIP電話を利用できる製品として、既設の家庭電話等に接続できるIP電話アダプタを開発しました。
 一般にIP電話アダプタでは、インターネット上で通話相手先のIP電話アダプタを特定して通信するためにIPアドレスを認識している必要があり、そのため、何らかの形でIPアドレスをお客様に入力してもらう必要があります。ところが、利用者としては今まで使ってきた公衆回線の電話番号をそのまま使いたいというのが本音です。そこで、当社のIP電話アダプタでは、一般の電話機から入力された電話番号をIPアドレスに変換するしくみを備えています。
 但し、これまでのIP電話アダプタは、その電話番号とIPアドレスの変換テーブルの設定をパソコンなどから入力する作業を必要としていました。
 また、セッション管理サーバとHTTP音声中継サーバを組合せ、固定IPアドレスに対応するだけでなく、動的に割り当てられたIPアドレスにも対応し、広範囲に適用できるようにしています。
 今回、試作したIP電話アダプタは、下図に示すように、そのIPアドレス情報を自動的に学習し設定するしくみを備えていますので通常の固定電話と変わりなくご利用いただける製品です。今後地域情報化の製品レパートリーとして拡販してまいります。

5.おわりに

 今後数年間、更なるインターネットの普及や通信事業の規制緩和により、一般家庭へのIP電話の普及が促進すると予想されます。当社では、IP電話アダプタを始めとして、様々なVoIP関連製品の開発に取り組んでいきます。さらに、今後主流となるデジタル家電等の動向も踏まえ、映像配信技術、暗号化技術等の最先端技術を持つ製品の充実を図っていく所存です。


図2 IP電話システム構成と利用イメージ

執筆者:中田 雅文(なかた まさふみ)

三菱電機株式会社
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