2.カード発行機器システムの動向〜ICカード発行インフラの充実を目指して〜

凸版印刷株式会社

1.はじめに

 「カード」商品の特徴として、必ず何らかの発行作業を行いカード毎に固有なデータの設定が行われて、はじめてサービスが利用できるという特性を挙げることができます。言い換えれば、工業製品(規格品)として製造されたカード製品はカードとしては機能せず、発行というフェーズを経てはじめてカードに命が吹き込まれるといえます。皆様におなじみのクレジットカードやキャシュカードは磁気テープへのエンコードやエンボス文字の形成により始めて使用可能になりますし、プリペイドカードは固有番号やバリューの書込により金券としての機能が生まれます。
 凸版印刷株式会社は永年のカード製造事業でこのカード発行関連ビジネスを幅広く手がけてまいりました。特にカードシステムの普及とともに高まる、カードサービス最前線でのカード発行のニーズに対して、カードプリンターを中心としたカード発行システムソリューションを開発・提供しております。またICカード化の動きが急速に進む中でICカード対応システムの充実を図っています。

2. カードプリンター開発の動向

 凸版印刷では1991年に国内で初めてカラーカードプリンター「CP−2000」を開発いたしました。それまではIDカード用に顔写真等をカード券面に形成する技術はモノクロのみでありましたが、当時製品化した海外向け自動車免許証発行システムのノウハウを活かし、一般カード用にカラー写真の形成と文字印字さらに磁気エンコードが可能な画期的システムとして開発したものです。「CP−2000」及びその後継機種は、これまで学生証、従業員証や、自治体の地域カードなどの発行用に幅広くご採用いただいております。
 現在ではカードプリンターに要求される機能も多岐に渡り、そのいずれにも対応すべく「トッパンCPシリーズ」として、その充実を図っています。

 1 直接転写タイプと間接転写タイプのラインナップ化

 カード表面に画像を形成する技術については、従来から表面に直接画像をプリント(染料インキリボンを昇華転写)し、オーバーコート層を形成する技術を採用しています。これは後述する間接方式に比較し、高速発行が可能であるとともに機器及びランニングコストが低いという特長を持っています。現在「CP−1600」及びその簡易機である「CP−1700」をラインナップ化しており、一般磁気カードを中心とした社員証、学生証などのIDカードのローカル発行用に出荷しています。
 一方の間接転写タイプは、最近のICカード導入の進展、特に非接触カードの登場をきっかけに開発を実施しました。非接触カードにおいてはカード内にICチップやアンテナを内蔵するため券面に微妙な凹凸が発生する場合が多く、従来の直接転写では画像の欠けが生ずる可能性が高い。またカード材質も塩ビ以外の樹脂(PETなど)が用いられることが多く、従来の塩ビ基材に最適なインキ組成である直接転写タイプでは、そのままでは画像形成が困難でした。
 間接転写タイプでは画像保護層を兼ねる中間フィルムに一度画像を形成し、カードに転写する方式をとります。今回リリースした「CP300FX」では、凸版印刷が各国政府に納入しているパスポート発行用のプリンター技術を活用して開発を行いました。非接触ICカードの発行はもとより、エコロジーの観点で塩ビ素材からPETG素材に移行を始めた一般カードの発行ニーズにも対応してまいります。

 2 顔料インキの採用

 「CP300FX」では顔料タイプのインキリボンを使用しています。染料インキでは画像が鮮やかという特長がありますが、形成画像の耐性に課題があり、特に耐光性や、耐可塑剤性が弱く、長く太陽光に触れたり、可塑剤入りのカードケースで保管すると画像消滅の可能性がありました。顔料インキはこの染料インキに比べ格段の耐性を持っております。長期の使用が予想されるカードや、万一の画像損失を防止したい用途に最適です。

 3 ICカード発行機能の搭載

 これらのCP機器ではカードプリントと同時に磁気テープ上へのエンコード機能を備えています。さらにこれからのICカード時代に向けて、ICカード発行機能のオプション追加が可能となっています。対応するカードは、接触、非接触のいずれのICカードも対応可能でそれぞれをカードプリントとワンパスで発行対応するハードウエア構成となっています。ICカードのOSや非接触のインターフェース仕様は個別にカスタマイズする事になりますが、現在の主要ICカード製品には既に対応済みです。今後普及が予想される公的分野のICカードにも対応してまいります。

 4 カード発行ソフト

 カード発行機器とともにこれらの機器をコントロールして発行業務を行うカード発行ソフト「TopCard  Maker」をご提供しています。これは「CP-2000」導入以来ご利用いただいている多くのお客様のご要望、ご不満を反映して「使いやすさ」を最優先に改良を重ねております、カード発行関連で必要となる機能を幅広く搭載しパッケージ化するとともに、顧客の利用環境(ネットワークへの組込など)に合わせたカスタマイズも可能です。

図1 カード発行ソフト「TopCard Maker」

3. 点字カードプリンター〜カードのバリヤフリーを目指して

 視覚障害の方がカード利用に当たって、カード種別が分からない、カード挿入方向が分からない、利用後に返却されたカードがご自分のカードに間違いがないか不安だ、等の問題がありました。凸版印刷ではこれらの方にも安心してカードのご利用が可能なように、カード券面に点字を形成する点字カード発行システムをマクセル精器株式会社と共同で開発いたしました。カード券面のエンボス領域に任意な点字を形成可能で、点字は無色透明な樹脂で形成されます。
 点字品質は日本工業標準調査会医療安全用具部会の審議により標準情報として認められた「TRT0007」の基準を満たしております。
 塩ビ以外のカード素材(紙でも可)に対応しております。
 券面に樹脂を載せる方式なのでエンボス方式の点字に比べ、カード内にアンテナ等を持つ非接触ICカードへのダメージもありません。

図2 点字カード部分

4. 最後に

 ますます進展するカード社会にあって、カード発行機器に求められる機能はますます高度化が予想されます。凸版印刷では、ハード、ソフト両面での開発を継続しICカードの普及に寄与してまいります。

図3 カードプリンタとカードサンプル

執筆者:武藤 健
(むとう たけし)
凸版印刷株式会社 金融・証券事業本部
Eビジネス・ICカード推進本部
ICカード企画開発部
タクティカルマーケティングチーム
チームリーダ

〒112-8531 東京都文京区水道1丁目3番3号

TEL:03-5840-4086 FAX:03-5840-1822
E-mail:takeshi.muto@toppan.co.jp


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