●メロウ・ソサエティ事業報告
「シニア情報生活アドバイザー制度」事業のご紹介
推進本部 担当部長 メロウ・ソサエティ事業担当 村岡義弘
1.はじめに
現在、経済産業省が進めている「メロウ・ソサエティ構想」を実現すべく、情報システムを活用して、ゆとり豊かで活力ある高齢社会の創出を目指しております。
その中にあって、かかる目的を達成するに、優れた見識や豊富な経験を有する多くの高齢者(以下 シニア)の情報リテラシーを向上させることが極めて効果的であります。
しかしながら、世間一般的には、シニアがパソコンやインターネットを習うにも、未だシニアにとって、学び易い環境が十分整っているとは、残念ながら言い難い状態にあります。
こうした背景のもとに、メロウ・ソサエティ構想実現に向けた一施策として、シニアの情報リテラシー向上と普及拡大を狙って、日本自転車振興会の支援を頂きながら、「シニア情報生活アドバイザー制度」調査研究事業を実施してきました。
この間の調査研究で「シニアがシニアに優しく教える」こと、そして「シニアの生活に即し、情報技術を活用した生活の楽しみ方、社会参加の仕方等を教える」ことが重要であることを確認しました。
そこで、「シニア情報生活アドバイザー制度」を構築し、かかる役割を担う者を養成し、その活躍によってシニアの情報リテラシー向上を図ることとしました。
平成12年度は、平成10年度から始まった3カ年にわたる当事業の最終年度に当たり、これまで行ってきた事業(企画・試行等)の成果を受けて、本制度の本格的な運用を開始しました。
平成12年11月に実稼動を開始して以来、順調に立ち上がり、ほぼ10カ月が経過した現在、当初目標の3倍の約300名のシニア情報生活アドバイザー(以下 アドバイザー)が誕生しました。
2.シニア情報生活アドバイザー制度とは
(1)目的
シニア情報生活アドバイザー制度は、多くのシニアがパソコンやインターネットを活用して、社会参加を果たし、より楽しく、活動的な生活を送れるようアドバイスする「シニア情報生活アドバイザー」を養成し、その活動を支援していく制度です。
■シニア情報生活アドバイザーの役割
単にパソコン等の操作を教えることではなく、その主たる目的はシニアにパソコンやインターネットを活用して生活を楽しむ方法や社会参加に役立てる方法をアドバイスすることです。
(2)制度の仕組み
本制度は図1に示すような仕組みになっています。
図1 シニア情報アドバイザー制度の仕組み
■シニア情報生活アドバイザーの養成
シニア情報生活アドバイザー養成講座(以下、養成講座)を通じて養成します
養成講座は、全国から募集した協力団体において実施します。なお、協力団体には、本制度の主旨を理解され、ご協力頂ける各種団体とし、民間、自治体等のパソコン学習サークル等を想定しています。
また、審査により実施団体として登録された団体には「実施団体登録証」(図2)を発行します。
養成講座修了者を対象に資格審査を行い、合格者に「シニア情報生活アドバイザー」の資格付与を行い、登録します。同時に、「認定証」(図3)を発行し、付与します。
■アドバイザーの活動
パソコンやインターネットの講習会やパソコン学習サークルの講師、地域情報化に関連したボランティア活動、個人宅への訪問サポート等の活動を期待しています。
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図2 実施団体登録証
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図3 認定証
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(3)養成講座について
■講座の目的
下記に示すような、アドバイザーに求められる基本的な知識や能力を伸ばすことを目的としています。
「技術力」…… パソコンやネットワークに関する基礎的な知識と技能
「支援能力」… 講師やサポート活動をするための基本的な知識と技能
「活用能力」… 趣味や関心を生かした楽しい情報生活を創造する能力
■講座の受講資格
概ね50歳以上であること
パソコンを活用して、電子メールを日常的に行っていること
日常的にパソコンを活用していること
■講座の内容
全体は8講義(1講義3時間)から成り、24時間コースとなっています。そのカリキュラムは以下の通りです。
第1講義 イントロダクション
第2講義 パソコン操作の基礎
第3講義 インターネットの利用
第4講義 講義案を作ろう
第5講義 講師を体験してみよう
第6講義 いろいろな活動のための基礎知識
第7講義 活用方法を考える
第8講義 発表・認定試験
なお、教材としては独自に編纂した「養成講座テキスト」(図4)を使用します。
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図4 テキスト
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図5 実施マニュアル
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(4)運用管理について
本事業の中で「総合管理システム」の開発を行い、本制度の運用管理に活用しています。
具体的には、実施団体やアドバイザーの登録認定等の一連の管理業務を効率的に行うと共に、本制度や実施団体・アドバイザー等をWebサイトで全国的に広くPRしています。
3.実施状況
(1)実施団体の登録状況
平成13年9月30日現在、実施団体は21団体になりました。当初計画を上回る状況です。今後とも、引き続き全国展開を目指し、実施団体の開拓を加速していきます。
地域別に実施団体をまとめたものを表1に示します。
地区
|
実施団体名
|
所在地
|
北海道 | せんべい・プロジェクト | 札幌市 |
東 北 | 仙台シニアネットクラブ | 仙台市 |
会津NPOセンター | 会津若松市 | |
関 東 | いちえ会 | 東京都 |
メロウ倶楽部関東グループ | 横浜市 | |
わらびパソコンクラブ | 蕨 市 | |
NPO自立化支援ネットワーク | 東京都 | |
NPOイー・エルダー | 東京都 | |
雪の下パウロ会パソコン教室 | 葉山町 | |
桜美林大学オープンカレッジ新宿校臼倉教室 | 東京都 | |
(株)ホーム・コンピューティング・ネットワーク | 東京都 | |
WACパソコンクラブ | 東京都 | |
中 部 | メロウ倶楽部東海グループ | 岐阜市 |
富山社会人大樂塾 | 富山市 | |
NFUジャンプシニア | 半田市 | |
近 畿 | シニアネットワーク金曜サロン | 京都市 |
メロウ倶楽部関西グループ | 大阪市 | |
中 国 | シニアネットひろしま | 広島市 |
九 州 | メロウ倶楽部福岡グループ | 福岡市 |
パソコン教室シュガーロード | 福岡市 | |
沖 縄 | 沖縄市ハイサイネット3rdライフステージ | 沖縄市 |
表1 養成講座実施団体(平成13年9月30日現在)
(2)養成講座実施状況
前項の一覧表に記した実施団体によって、アドバイザー養成講座が随時、開催されてきました。
これまで、合計42回実施されてきています。
その内訳は下記の通りです。
平成12年度(11月〜翌3月) 20回
平成13年度前期(4月〜9月) 22回
(3)アドバイザー登録者数
平成12年11月に、第1回の養成講座が札幌で開催され、全国展開の活動が幕を開けました。以来、平成13年9月30日までに、アドバイザーが304名誕生し、各地域で活動をされています。なお、年度別の内訳は下記の通りです。
平成11年度(試行時) 29名
平成12年度(11月〜翌3月) 134名
平成13年度前期(4月〜9月) 141名
また、地域別にまとめますと表2のようになります。
地 区
|
養成講座実施回数
|
アドバイザー数
|
北海道 |
7
|
45
|
東 北 |
1
|
21
|
関 東 |
8
|
79
|
中 部 |
11
|
49
|
近 畿 |
8
|
46
|
中 国 |
4
|
49
|
九 州 |
1
|
6
|
沖 縄 |
2
|
9
|
合 計 |
42
|
304
|
表2 地域別アドバイザー数(平成13年9月30日現在)
4.まとめ
平成12年11月より札幌地区を皮切りに、本格的に全国展開を開始しました。この9月末で10カ月が経過したことになります。この間、制度の立ち上げに全力を傾注してきましたが、各地域のシニア・ネット団体を中心に、熱心なご協力を頂き、順調な滑り出しができたと思っております。目標を大きく上回るアドバイザーの方々が誕生してきております。
アドバイザーの方々も国のIT講習会や自治体主催のパソコン教室の講師を務めたり、養成講座実施団体のご尽力により、活動の場も徐々に拡大されてきています。
多くのシニアの方々にパソコンやインターネットをツールとして、生き生きと社会的な活動を果たして戴くことを狙って始めた制度ではありますが、一方で教える側のシニアの方々の意欲の高揚にもつながっています。運営していく事務局も、責任の重さを痛感しています。今後とも、より一層充実したものにしていく所存です。