●技術開発研究報告 

 財団法人ニューメディア開発協会では、高度情報化社会の円滑な実現を図るため、時代の要請に応える先進的な情報システムの開発を行っています。最近実施した事業の中から、「汎用電子申請システムにおける受付審査処理の高度化と負荷分散の開発および実証実験」と「インターネットにおける有害情報問題および個人情報保護問題への対策」を取り上げ、その概要を報告します。


1.汎用電子申請システムにおける受付審査処理の高度化と負荷分散の開発および実証実験

                   http://www.nmda.or.jp/nmda/soc/egov.html
                    開発本部 次長 行政情報システム担当 足立和夫

1.はじめに

 経済産業省では、「申請・届出等手続の電子化推進のための基本的枠組み」(平成12年3月31日行政情報システム各省庁連絡会議了承)に基づき、当省所管法令に係る申請・届出等手続のオンライン化を計画的かつ着実に推進するためのアクションプランを策定し、運用や手続を順次拡大しています。
 また、「2003年度までに民間から政府、政府から民間への行政手続にインターネットを利用し、ペーパーレスで行える電子政府の基盤を構築する」という、ミレニアムプロジェクトに沿って、従来から開発してきたインターネットを活用した汎用電子申請システムをベースとして、年度毎に段階的な高度化及び機能追加を実施しています。
 本開発では、受付審査等事務処理の高度化とオンライン申請増加に対する負荷分散等の対策を実施し、さらに実証実験を行うことにより、受付可能な手続を拡大することを目的としており、これにより電子政府の早期実現を図ることを目指しています。

2.システムの概要

(1)全体構成(図1参照)
 汎用電子申請システムは、大きく申請者側と官側の2つのシステムに分けられます。官側のシステムはローカルなネットワーク上で接続された受付系システムと業務系システムから構成されます。そして、申請者側システムと官側システムとはインターネットを介して通信を行います。
 申請者側システムで作成された申請書はインターネットを介して官側システムに送信されます。申請者から送信された申請書は官側システムの受付系システムで受信され、業務系システムで審査・公文書発行が行われ、インターネットを介して申請者側システムに受け渡されます。
 また、本システムでは申請書、公文書に真正性検証のための証明書が付加され、各省庁認証局、ブリッジ認証局、民間認証局と連携し、申請者の本人確認、官職の確認、文書の改ざん検証の機能を実現しています。

                    図1 システム全体構成

(2)他システムとの関連(図2参照)
 認証局は、別途開発・構築が進められている各種認証局と接続することを前提とします。すなわち、官側システムにあっては政府認証基盤(GPKI)を構成する経済産業省認証局および総務省が開発・運用するブリッジ認証局と、また申請者側システムにあっては商業登記制度に基礎を置く認証局等の民間認証局およびブリッジ認証局と、おのおのを接続することを前提とします。
 文書事務システムとして、通商産業省(現、経済産業省)で平成12年度に改修した「文書事務処理システム」の成果物を利用します。
 DOMS(文書管理システム)として、経済産業省で平成12年度に開発した「政府から民間への情報発信電子化事業(うちクリアリングシステム)」の成果物を利用します。
 商業登記認証局として、法務省で平成12年度に開発した「商業登記認証局」の成果物を利用します。

                 図2 他システムとの関連

3.システムの機能

(1)官側の処理(図3参照)
 申請者からの申請書は、最初に受付系システムの申請書受信機能により受信されます。
 申請書受信機能が受信した申請書は原本保存機能により保存され、申請書受付機能により受付処理が完了します。受付処理の完了した申請書は、申請書様式ごとに設定された担当者に処理が振り分けられます。
 担当者に振り分けられた申請書は、業務系システム上で公文書発行までの処理が行われます。
 認証・検証機能により申請者の本人確認、文書の改ざん検証が行われます。また、審査支援機能により、担当者による申請書の審査が行われ、決裁のための準備が整えられます。決裁された申請書に対しては、公文書発行機能を用いて公文書を発行します。公文書発行機能では、公文書の作成および公印付与が行われます。
 発行された公文書は、受付系システムの原本保存機能により保存され、申請者は発行された公文書を受信することが可能となります。

                 図3 官側における処理の流れ

(2)申請者側の処理(図4参照)
 申請者側では、最初に申請書様式リストを官側のシステムから取得し、さらにそのリストの中から必要な申請書様式を選択して官側のシステムから取得します。
 取得した申請書様式を用いて申請書を作成し、申請書に電子署名を行います。署名済みの申請書を官側システムに送信すると、(1)で説明した官側の処理が行われます。審査の結果、申請書に不備があった場合は、官側からの補正要求の通知を受け、申請書を訂正、署名した後、再度官側システムに送信することになります。
 審査が完了し公文書が発行されると、申請者は公文書発行の通知を受けます。公文書が発行されると、申請者は発行された公文書を取得することが可能となります。
 申請者は取得した公文書に対して、取得した公文書の真正性を確認するための検証を行うことができます。

                    図4 申請者側の処理

4.実証実験

 本事業では、汎用的な申請業務において、汎用電子申請システムを使用し、電子申請を行うことが有効であることを検証・評価するために以下の項目について実証実験を行いました。

 (1)申請書作成時、申請書処理時、公文書作成時の操作性
 (2)発行文書取得、申請書送受信の確実性
 (3)申請書受付に関するシステム管理、申請書審査に関するシステム管理の利便性
 (4)システム異常時におけるバックアップ系動作の確実性
 (5)ヘルプデスク導入による保守性向上

 実証実験の結果、汎用電子申請システムの確実性は十分に検証されましたが、操作性についてはいくつかの課題も明らかになりました。汎用電子申請システムをより有用なものにしていくために、今後さらに改善を実施していく必要があります。

5. おわりに

 本システムは平成13年11月より、ITEM2000の名称で、経済産業省における汎用電子申請システムとして運用が開始されており、申請者用ソフトウェアについては、経済産業省のポータルページ( http://www.meti.go.jp/application/item2000exp/index.html )よりダウンロードが可能となっています。
 なお、現在、当協会にてITEM2000の申請者用ソフトウェアに関する問合せ窓口業務を行っています。
 さらに、本事業の一貫として、「電子申請用XML様式の設計ガイドライン」をとりまとめ、当協会ホ−ムページにて公開しています。(http://www.nmda.or.jp/nmda/soc/tag.html)
 申請・届出手続の電子化にあたっては、共通的な利用が期待される電子申請様式のデータフォーマットについて世界的なインターネット関連の技術動向やシステム構築時の適応性に配慮し、申請書の文書形式としてインターネットでの次世代文書形式であるXMLを採用しています。申請書をXML化することにより、省庁内の業務システムでの自動処理が促進されるだけでなく、他省庁や他事業者とのデータ交換が容易になることが期待されます。
 XMLは、業務要求に応じてタグを柔軟に定義できます。これはXMLの大きな特長である反面、約3,000件におよぶ経済産業省の申請手続に対して、無方針にタグの設計を進めると、「申請者に対し、様式データごとに別のシステム環境を要求するおそれがある」、「他省庁等他機関との間に業務横断的な申請の仕組みが実現しにくくなる」、「特定の人しか保守できない」といった問題が生じる可能性があります。本ガイドラインの策定は、これらの問題への対処を目的としています。
 本ガイドラインは、電子申請システム開発における申請書様式の作成者が、XML形式の申請書のタグを設計する際に参考にできる情報を提供することを目的とします。なお、本ガイドラインの作成にあたっては、経済産業省および国土交通省の電子申請システム開発関係者が検討作業に参画し、実際の申請書様式を考慮した上で内容をまとめています。


 以上、今回実施しました事業の概要を報告いたしましたが、汎用電子申請システムについては、今回の実証実験の結果を踏まえ今後さらに、電子手数料納付機能など、引き続きシステムの機能拡張、機能追加を行なって行く予定です。


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