●地域情報化報告

 当協会では地域情報化推進事業の一環として、地域情報化に関する各種普及啓発活動を経済産業省と協力し行っています。最近実施した事業のなかから、「全国地域情報化推進会議(情報化フェスタ2001)」および「横須賀市の電子入札システム(平成13年度先進地域等検討部会、2日目の現地視察会から)」の概要をご報告致します。

1 全国地域情報化推進会議(情報化フェスタ2001)報告

1.開催日時・会場・開催関係者・プログラム等

  ◆開催日時:2001年10月18日(木)〜19日(金)
  ◆会   場:沖縄県名護市「万国津梁館」
  ◆主   催:経済産業省
  ◆共   催:沖縄県、名護市
  ◆実行事務局:財団法人ニューメディア開発協会
  ◆参加者数 :約330名
  ◆プログラム:表1:下記参照

プログラム
内    容
10月18日
 主催者挨拶
 基調講演 1

 基調講演 2

 講  演

岸本 周平氏 経済産業省商務情報政策局文化情報関連産業課長
伊藤 滋氏 早稲田大学教授 地域情報会議会長
 「都市再生の最近の動向〜21世紀型まちづくりの視点〜」
牧野 浩隆氏 沖縄県副知事
 「沖縄県のIT施策〜e-islandをめざして〜」
渡邊 昇治氏 経済産業省商務情報政策局情報政策課 課長補佐
 「今後の地域情報化政策のあり方」
海外事例紹介 アンネ・リンドブラッド-アホネン氏 ヴァンター市情報技術プロジェクトマネジャー
 「ICカ−ドを使ったセキュアな統合型行政サ−ビス」
10月19日 テーマ別研究会 A 「電子自治体の構築と地域情報化への対応」
テーマ別研究会 B 「ブロードバンド時代の地域コンテンツ流通の在り方」
10月19日 IT関連施設見学会 見学先 名護市 マルチメディア館
  NTT104センタ−
  宜野座村 サ−バ−ファ−ム
10月18日〜19日
展示・実演プレゼンテーション
 会期中、沖縄県内で展開されている地域情報化関連の経済産業省施策や県独自の事業のパネル展示や実演プレゼンテーションを行いました。

会場 沖縄県名護市「万国津梁館」


2.基調講演1(部分・長文注意)

◆講師:伊藤 滋氏 早稲田大学教授 地域情報会議会長

◆テーマ:「都市再生の最近の動向〜21世紀型まちづくりの視点〜」

 『私は、この9月から都市再生戦略チームの座長をしています。総理に直結した小さいチームです。総理も忙しいから、会う時間は5分か10分程度でしょう。その与えられた時間に、総理の頭に都市再生がどれだけの意味を持っているかを知ってもらうために、今、2週間に1回程度チームのメンバーが集まって勉強をしています。』
 『アメリカに負けっぱなしのこの日本の再建を、都市再生の分野から手伝うということです。アメリカの企業が東京に進出してきています。証券会社がその最たるものです。アメリカの証券会社の名前を、この数年の間に町の土木建設業界関係者まで覚えました。国土交通省も、この国際経済の動向に敏感になってきました。何故なら、東京や大阪の街を良くしませんと、米国やヨーロッパの金融系企業を日本に引き留められないからです。』
 『海外の金融資本が、東京を避けて上海や香港にいったりしますと、東京に入る金融情報が減ってしまいます。当然金の流れも東京を避けます。それらが香港やシンガポールに行ったりするのです。これは決定的に日本経済に不利です。情報交換によって大企業は仕事をしていますから、遅れた情報には価値がありません。その結果、日本の企業でも、本社をシンガポールに持っていけということになります。そういう時代になりました。』
 『都市再生戦略の1つ目は、大資本が持っている土地を徹底的に使って国際的な都市づくりをすることです。しかし今までの大企業は土地を使う知恵がないのです。ですから情報産業系企業とか外資、あるいは知恵のある不動産企業、そういう人たちにそれらを使うことを考えてもらいます。それらの土地を外国の基準に合うように仕立てるのです。ここはロンドンスタイルの基準、こっちはマンハッタンスタイルに合っている、そういう土地開発をやるのです。そういう試みが成功すれば、東京や大阪や名古屋にだって、上海やシンガポ−ルに負けない住み心地の良い場所がつくれると思うのです。』
 『都市再生戦略の2つ目の仕事は、小さな工夫にかかわることです。都市にお住まいの方は県庁所在都市でも、大体40坪か50坪の土地に、戸建ての25坪か30坪のお家を建てられているというのがよくある話です。日本は皆さん資本家ですから、自分の土地はどういうふうに使ってもいいと考えています。その結果として、見えない複雑なしがらみがあります。それを解いて、それらの土地の集合体である街の再開発をしやすくするというのが21世紀の仕事になります。』
 『都市づくりでも3年から5年ぐらいの間でやれることをまずプロジェクトとして取り上げるという主張です。経済を活性化し金融システムを健全化するためには、地価が下落した土地に何とか付加価値をつけて、地価の底止まりをはかるべきです。その手法として、工場跡地や埋め立て地と言った大きな遊休地に住宅をつくったり、公園をつくったり、保育所をつくったりしなければなりません。現在国民貯蓄は、1,400兆円あると世の中で言われております。この国民資産を都市の構築に積極的に使うことを考えるべきです。その手法が民活とかあるいはPFIという方法です。それから、国際的に開かれたビジネスと文化活動の場を提供することも大事だと思っています。ただオフィスをつくるだけが能じゃない、少しは文化的にしないと海外諸国から相手にされないということです。文化のにおいがすごく、重要なのです。』
 『次に行政の効率的向上とは、どういうことでしょうか。例えばある埋立地の工場が休業したのでその工場を壊して、今度はそこに商業的施設をつくるとします。そうすると道路もつくらなければならない。工場的利用から商業的利用になると土地利用が変わるでしょう。もしかすると埋立地の護岸もみんなが楽しくなるように緑道にしなければならない。これは「区画・形状の変更」と言うのです。
 区画・形状の変更をするときは、必ず役所に開発許可を申請しなければなりません。その開発許可をもらうといったときに、いろんな法律が関わってきます。港湾法とか都市計画法、消防法、建築基準法、これ縦シリーズでやっていったら6年ぐらいかかっちゃいますよね。』
 『しかし、今の経済が目まぐるしく変わっていくときに、こんなことやっていて良いのでしょうか。気がついたら、申請した企業は他の企業と合併するということになってしまいます。ですから行政手続きを並列に並べたらどうだろうかという考え方が役所のなかから出てきました。そこで、担当課の職員が相互に情報交換をやりながら、担当責任者を1人決めます。その担当者が各課を回って「お前、これを半年でまとめろ」というわけです。こういうことをしないとスピードアップしません。』
 『もう1つ言いたいことがあります。新しい都市的雇用を創造する方策についてです。土木建設業界の55歳を過ぎた方の仕事探しは深刻です。今まで営業だといって酒飲んで、お客さんと話をして、仕事が取れた、口銭はいくらだということをやっていた人たちです。そういう人達が土木建設業界にいっぱいいます。50歳過ぎのベテランを、行政効率の向上という分野で使えないでしょうか。例えば工場跡地が土壌汚染されていたとします。汚染された土壌をどう取り除いて、それをどこに持っていったら良いのか、それには何年ぐらいかかるのかというような課題は、土木建設業界を退職したベテランに任せれば良いのです。』
 『地籍調査というのがあります。地籍調査法という法律に基づいて皆様の土地を少しずつ調査しているのですが、都会の民地では、測量はあまりされていません。都会の住宅地で敷地境界をきめることは、血の雨が降るような、けんか腰でやらなければならない仕事なのです。東京23区で、国土調査法に基づく地籍調査で公図がきちっとしている民間の宅地は2割ないのだそうです。まちづくりではこの境界を確定しない限り次の仕事は動きません。ですからそれで1年や2年、あっという間に過ぎちゃうのです。』
 『地籍を調査することは、21世紀にいい町をつくるための基盤としてものすごく大事なのです。これがきちっとしていれば、すぐに土地の面積が確定し、そこでの借地権が金額にすると幾らになるかもはっきりする。そのためには境界をめぐって争っている隣人同士を「まあまあ」となだめることが必要です。この「まあまあ」となだめる技術は、土木建設業界の用地担当の人が一番得意です。夜お酒を持って行って、何とかと話をする技術です。測量自体は単純な技術です。それから少しIT的なことを言えば、GPSで相当のことがわかります。相当のことがわかりますが、最後のつめのところは関係者が立ち会わなければなりません。最後は対人間関係です。』
 『地籍調査を東京、大阪、名古屋、京都、福岡、こういう大都会で実施すれば毎年何万人かの土木建設業界を定年退職した人の仕事を創ることが出来ます。職業意識を持ってまちづくりに貢献する仕事があれば、55歳定年の男達にとって、そのほうがかっこいいです。効率よく町をつくる制度だけでは、日本の都市空間はうまくつくれません。市民参加による多様なまちづくり運動を展開するということを強調したいのです。』
 『そのためにはNPOをいっぱい社会の中につくってもらう必要があります。NPOといっても株式会社とほとんど同じですが、違いは、配当をしてはいけない点です。多くのNPOがまちづくりに関わって、自らの経験を通してノウハウを身につけます。NPOがまちづくりの中でよくおきる役所対住民という対立構造の間へ入ることによって、先ほどの地籍調査の「まあまあ」という方ではないですが、対立関係をある程度早く収めることができると思うのです。要するに知恵を使ってちゃんと理屈を立て、街づくりの対立事項を整理する専門職がこれらのNPOです。』
 『今までのように、何だか知らないけれど陳情・請願をやって、代議士や県会議員を動かすというのはもう止めたほうが良いでしょう。頭を使わないで、義理・人情とか仁義とかやくざ路線につながるようなやり方での街づくりはすべきではありません。知恵を使って議論をして、お互いを信頼し、信頼の上に契約をつくり、その契約は必ず履行する。そういう公と民の対話を進めた結果として、公園をつくれ、保育所をつくれということになれば、市長は受けざるをえません。これは当然、税金をそのために使うということになります。』
 『情報のとり方にも役所と民間との間に決定的な差があります。しかし計画や事業の決定は役所の職員が職務上やらなければなりません。それならば、良い行政計画案であれば、それを民間がつくったものであっても、正式に認めてはどうでしょうか。いいかどうかの判断は、大学の先生などの専門家と一緒に考えれば良い。職員に必要なことは、この決定が手続き的に正しかったかどうか、もしも後で間違ったとしても、今まで住民とつき合ってきた過程で、正しいと自分に確信させた決断であったかどうかです。こういうことを役所の職員が思っていればいいのです。ところが今の行政の姿勢は、住民や企業を指導するというものです。建築指導課という名前は、その代表例です。何を指導しているのでしょうか。』
 『私は今インターネットのホームページで、まちづくりの話がどの程度議論されているかを調べています。わかってきたのは、まちづくりはフェース・ツー・フェースだけではなく、インターネットの中でものすごい勢いで動いています。例えば幕張にできた住宅団地を維持・運営するために、そこの住民が多摩ニュータウンの長沼にあるまちづくり運営のインターネットグループに話を聞きにいっています。日常の交流はインターネットで情報交換しています。
 この間東京では、小田急の高架化に対して裁判所が反対の判決を出しました。高架化はけしからん、つまり地下のことも考えるべきだから高架化は違法であると地裁が判決を出しました。それに対して、翌日インターネットのホームページで、ああいう裁判所の意見は全くナンセンスであるということを、堂々と書いている奥さんがいました。これはホームページに出ています。この奥さんの意見は小田急の沿線だけでなく、日本中でわかってしまうのです。
 港区役所が麻布十番で駐車場をつくった話も住民のホームページに出ていました。「あなた1台いくらかかるか知っているの、1台あたり4,800万円かかっちゃったのよ。」というホームページもありました。こういう会話が沢山ホ−ムペ−ジに出ているのです。これはすごいことですよ。ですから今日では、IT抜きに都市再生は進められないという時代になってきました。』

(文責:情報化フェスタ実行事務局)

3.基調講演2(部分・長文注意)

 講師:牧野 浩隆氏 沖縄県副知事
 テーマ:「沖縄県のIT施策〜e-islandをめざして〜」

概 要
 離島県である本県では、情報化のもたらす効果を最大限に活用することにより、時間的・空間的不利性を克服し、特色ある産業や文化の振興、県民生活の向上を図ることが最も効果的な方策の一つであると考えております。
 平成10年に策定した「沖縄県マルチメディア・アイランド構想」は、本県における情報通信産業(IT産業)の振興・集積により自立的な経済発展を図るとともに、アジア・太平洋地域における情報通信分野のハブ機能の形成を通して国際貢献を果たすことを目指しています。また、本県経済の活性化を目指した「沖縄国際情報特区構想」の実現に向けて、国や市町村と連携して取り組んでいるところです。
 本年7月には「沖縄e-island宣言」を行うとともに「情報通信関連分野の人材育成に関する基本方針」を策定し、本県が情報通信技術(IT)を活用して県民生活の向上と自立に向けた持続的発展を目指すこと、そして情報通信関連分野の充実した人材層の形成に向けて、すべての県民が一体となって取り組んでいく決意を県内外に表明いたしました。
 また県と市町村では、県民への行政サービスの向上を図る行政手続きの電子化を進めるとともに、行政の高度情報化に対応した生産性の高い事務処理を行う電子自治体の構築を目指して取り組んでいます。
 21世紀初頭における本県の将来を見据えて策定を進めている沖縄振興計画(仮称)においては、本県がアジアにおける国際情報通信ハブ化に果敢に挑戦し、IT機能・施設を集積・誘導するとともに、独自の文化、自然及び感性を活かしつつ、e-islandとしての今後の発展を目指しています。

沖縄県副知事 牧野 浩隆氏

 『ITがこんなに早足で沖縄の地に定着し、これからの沖縄を支えていく産業として、育ちつつある現状をうれしく感じています。去年、ちょうど1年前のこの場所でサミットが開かれて、IT宣言がなされております。ITというのは、これからの経済社会・技術社会の大きな流れですから、沖縄としましても、そういう大きなうねりの中に一歩、二歩乗り出すことができていると感じています。』
 『沖縄におけるIT施策が出発したのは、ちょうど今から10年前でございました。直接のきっかけは、当時、自治省が「地方公共団体における情報化の推進に関する指針」を出し、地方といえども情報化に取り組めというようなそのような指針を出したいきさつがありました。』
 『沖縄における振興開発の難しさは、公共工事だとか観光などは割合に順調にいったわけですけれど、そのほかの産業振興というのはなかなか進まずに、大きな課題を抱えていたわけです。進まなかった理由の分析としまして、やはり沖縄が本土から遠く離れている遠隔の地にある、離島県であるという距離的、時間的、空間的な疎外要因が、沖縄の経済社会の発展を疎外しているという認識があったわけです。そのときに、情報化を活用することによって、時間的、空間的な不利性を解消する大きな手段になり得るという利点が提起されたわけです。』
 『そのときの、インテリジェント・アイランド沖縄「沖縄県高度情報化基本構想」を見ますと、その中身は4つほどの柱がありました。1つ目はいわゆる地域特性を生かして離島の不利性を克服するために情報化を進めよう、2つ目には快適で豊かな県民生活を実現するために情報化を進めていこう、3つ目には情報通信の基盤整備あるいは拠点を整備していこう、4つ目には情報化を進めるための諸々の環境を整備していこうということです。』
 『沖縄県総合行政情報システム基本構想というのがあります。行政用の情報化を進めるというのが1つの柱でした。2つは、情報通信基盤を整備していこう、3つは、地域を情報化していこうというのが、その柱でございます。当初の発想のウエイトはどちらかといいますと、情報化を活用して、産業振興だとか行政の効率化を図っていこうといって、情報の活用化というような状況だったと思います。ところが今は若干ニュアンスが違いまして、情報の活用に加えて情報を産業化して、10年経った去る7月に、私ども沖縄県は「沖縄e-island宣言」をいたしました。』
 『情報通信技術の飛躍的な発展は、国境や距離を越えて人々の生活や経済活動に大きな変化をもたらせていきます。すべての分野にITを生かして、人、モノ、情報が行き交う沖縄、世界を舞台に活躍する「平和で豊かな沖縄」を実現します。この島に生まれる者には輝く歓びを、学ぶ者には未来を切り開く力を、働く者には希望と誇りを、暮らす者には健康と長寿を、訪れる者には安らぎを、羽ばたく者には限りない未来を、そういうことを活用することによって、私達は沖縄が国際社会に貢献することを願い、世界とともに共生する「e−island」を目指すという遠大な計画を宣言したわけでございます。』
 『「沖縄e−island宣言」を実現するためにどのようなことが必要かというのを、まとめております。
 @は、人材育成をするために情報通信関連分野の人材育成に関する基本方針、これを策定しております。Aは、情報通信産業振興と集積を図るために「沖縄県マルチメディア・アイランド構想」を策定しております。それからBの情報通信基盤の整備、Cの地域の情報化を図るために、その基盤としまして「沖縄県総合行政情報通信ネットワーク基本構想」をつくっております。そしてDの行政の情報化、電子県庁をつくるために、沖縄県行政情報化推進計画、その4つをつくって進めて、宣言しました「e−island」をつくっていこうというようなことを、今進めているところでございます。』
 『私ども沖縄県庁が一番重視しているのが、「沖縄県マルチメディア・アイランド構想」です。沖縄の経済を見ますと、財政依存あるいは基地依存、高失業社会ということで、産業振興をどう進めていくかが大きな課題になっております。その産業振興のために、IT産業を沖縄のリーディングセクターに育てていこうというような位置づけでつくったのが、この「沖縄県マルチメディア・アイランド構想」です。これは、前身はちょうど今から4、5年前に、当時の郵政省それから通産省の中で、沖縄のマルチメディアあるいはデジタルアイランド構想などのいろんな調査がなされました。ご提言をもとにして「沖縄県マルチメディア・アイランド構想」ができ、1998年の9月からスタートして、今それが実行段階にあるわけです。』
 『その中では、3つほどの目標を掲げております。
 1つは、情報通信産業の振興集積によって、自律的な経済発展を図ろうということです。従来は産業を情報化しようというような面でしたけれど、今回は情報そのものを産業化しようというような面に大きなウエイトがあるのが特徴と思います。
 2番目には、高度なITを活用した特色ある沖縄振興策の道しるべにしようというものです。
 3つ目の目標は沖縄の地理的な、あるいは歴史的な経緯を踏まえて、アジア・太平洋地域におけるIT分野のハブ機能とした、国際交流拠点としての役割を何とか発揮できるような、交流拠点をつくっていこうというのでございます。
 これらの3つをフィードバックするため、評価するためのメルクマールとしまして、どれほどの雇用の場をつくり得るかということを目標に掲げました。10年後にはIT関係の職場をつくって新たな雇用の場をつくろうということで、2万4,500人を目標に掲げております。』
 『それをするためにはいろんな具体的な施策をしなければならないわけですが、そのための先導的なプロジェクトとしまして、私どもは4つ挙げております。
 1つは情報通信産業を、まずもって集積しなきゃならないということです。何もないところからスタートするわけで、いろんな意味での民間の活力を導入するために、国内外の企業誘致を図らなければならないし、あるいは県内企業の育成を図らなければならない。そのための行政としての諸々の支援措置をとらなければならないということで、まずもって、情報通信産業の集積を図るための仕組みをつくっていこうということです。
 2つ目には、やはりこの世界はつまるところ人材と言われております。情報リテラシーを引き上げていく、あるいは情報通信技術者を育成していくなどの人材開発、研究開発などを目標として掲げております。
 3つ目は、そのための先導的なアプリケーションを構築していかなければならないわけです。これは当然のことながら、県民生活の向上に結びつくようなアプリケーションとすること、産業振興の柱となるようなものとしていくというようなことがあります。
 4つ目には、情報通信基盤の整備を図っていくということでございます。沖縄の場合、離島がありますので、そういう意味では基盤整備をすると同時に、やはり通信コストが問題になってきます。通信コストをどのような形で低減するのか、通信コストを低減することによって、先進地域と競争できるような環境をどのようにつくっていくかというようなことで、通信コストの低減、基盤整備などが目標として挙げられております。』
 『驚くことに、従来の沖縄では30年かけてなかなかできなかったことが、この2、3年でびっくりするようなスピードで進行しております。ちなみにどのような産業、企業に来ていただいたかと申しますと、情報通信関係の高度な製造業が今4社来ていただいており、そこでの従業員が約100余名おります。その中には、従来の沖縄の産業構造では全く考えられなかったような、半導体素子の製造企業、まさに世界水準だと言われているような方に来ていただいている状況もあります。
 もう1つは、ソフト開発あるいは情報サービス、コンテンツ製作などの関連企業が21社来ていただいていまして、そこでの従業員数が1,000名を上回っております。それから最後になりますが、第1ステップのコールセンター、これは驚くのですけれど21社来ていただいていまして、約2,800名に従業員として雇用の場を与えることができたという状況があります。全部で約40社近くなりますけれど、そこで約4,000名の新たな雇用の場をつくれたという状況があります。』
 『今沖縄で一番大きな産業は観光産業でございますけれど、これからは情報通信産業がそれに次ぐ2番目のリーディング産業として育っていくと、私どもは思っております。』

(文責:情報化フェスタ実行事務局)

4.海外事例紹介(部分・長文注意)

講 師:アンネ・リンドブラッド-アホネン氏(Ms Anne Lindblad-Ahonen)フィンランド ヴァンター市情報技術プロジェクトマネジャー
テーマ:「ICカ−ドを使ったセキュアな統合型行政サ−ビス」(Information Technology, Project Manager, City of Vantaa)

概 要
 電子政府・電子自治体の実現においては、行政サービスの質的な向上や安全性の確保、あるいは住民サービスにおける利便性向上を目的として、ICカードの活用が重視されています。特に、フィンランドでは、健康保険証や自治体の行政カード(city card)を初めとしてICカードが広く普及していることを背景に、セキュアな統合行政サービスを実現するため、国民の識別機能(IDカード)とデジタル署名の機能を兼ね備えた多機能ICカード(FINEIDカード)の導入が政府、自治体、民間企業が協力して1999年から進められています。このフィンランドの取組みは、世界で最先端をいくものと評価されています。
 また、フィンランドの自治体では、早くから障害者や高齢者向けの公共交通機関の無料乗車券等、様々な行政サービスでICカードが利用されています。現在、自治体では、行政カードとFINEIDカードの統合を進めています。この結果、市職員や生徒・学生,高齢者などの身分証明、市営図書館における図書の貸出や小額料金の支払い、市営プールなどの公共施設におけるチケット、市営駐車場の利用料金支払いなど広範な機能が、1枚のICカードで実現されます。
 今回紹介させていただく事例はフィンランド北部の代表的な都市であるヴァンター市で、人口はおよそ18万人、同国第4の都市です。ヴァンター市は国際空港を持ち、IT産業の育成に力を入れています。古くから市の行政カードを導入し、幅広い行政サービスで活用してきました。たとえば、市の図書館やスポーツ施設などの利用、高齢者や障害者の無料交通券などがあります。また、政府が整備している国民IDカード(FINEID)への対応も早くから取り組んでいます。

Ms Anne Lindblad-Ahonen

 『バンター市は、ヘルシンキ首都圏の一部になりフィンランド第4の都市です。人口は約18万人、ヘルシンキバンター空港が位置していますので、フィンランドの玄関口となります。市は、市民に対していろいろな役割を担っています。例えば教育サービス、文化やレジャーサービス、デイケア、保健医療、社会福祉、土地利用計画、環境保護、そして交通、道路整備とそれの維持も含みます。』
 『行政カードのプロジェクトの開始は1993年です。フィンランドの運輸・通信省が初めの段階から参画しました。そして、これに対して興味を持った市が参画をしたわけです。94年の春、通信省がこのようなアプリケーションシステムを搭載したカードを発行しようということで、計画を立てました。それからエスポー、バンターを含めた各都市が、その後参画をしてまいりました。誰がカードや電子財布と言われるものを発行しているのかということですが、もちろん銀行がその1つです。メリッター、サンポーを含めた3つの銀行が三大フィンランドの銀行ですが、その間でいろいろな共同作業が行われてまいりました。』
 『それぞれのサプライヤーから個別のアプリケーションが出てきたのが第1段階、そして第2段階になりますと、共通のアプリケーションが現れてまいりました。そのように出てきたそれぞれの仕様が、現在このカードに使われてきています。』
 『このような行政カードを利用しますと、どのようなメリットがあるのでしょうか。行政側は、新しい行政サービスを開発するための知識が得られるということです。スポーツ関連施設の管理や市民への利用状況の管理ができます。例えば、スイミングプールなどで、どのように管理をしていくかというようなこともできます。それから電子財布と呼ばれるものによる支払いができます。そして、いつでも、どこでも24時間、年中無休のサービスが得られます。それからサービス利用の安全性、これは非常に重要な部分になります。このような行政サービスを提供することで、市のイメージアップにもつながります。』
 『市民とってのメリットとはどういうものでしょうか。まずカードの保有枚数が少なくなります。現在1人10枚、20枚ぐらいのカードを持ち歩いているというのが常ですが、この行政カードが登場することで、財布に入れておくカードの枚数が少なくて済むわけです。それからいろいろな紙のチケットを使ってきましたが、それにとって代わることができます。データ・セキュリティを高度化できるということ、サービスが24時間受けられるということ、このようなサービスによって、市民の時間とお金の節約につながるというメリットが出てきます。』
 『現在、1つのカードで10のアプリケーションが利用できます。
 駐車システム、パーキングシステムもそのうちの1つになります。このカードによって本人を識別して、そして駐車場の支払いができます。支払いを電子財布で行うこともできます。
 もう1つはアクセスコントロールです。この行政カード1枚で、誰が入場して、そしていつその施設から出たか、ということの管理が可能になります。
 またスポーツやレジャー面でのアプリケーションも可能です。例えばスイミングプールなどの施設に利用が可能です。あとは博物館やコンサートの会場というような場所でも使うことができます。
 それから、高齢者並びに障害者向けのタクシーバウチャーというのがあります。タクシー運転手は有効なカードかどうかということを確認して、高齢者を乗車させる、するとその高齢者は、タクシー料金を全く払わないで済むというふうになります。
 それから、ディスティンクトと呼ばれるものがありますが、これもIDアプリケーションの1つです。これは現在EUの5カ国が参画しているものですが、フィンランドを含めたオランダですとかイタリアですとか、そういう国々が参加をしています。これは例えば、ギリシャに私が行くとしますと、あるいは逆にギリシャからフィンランドへ来られた場合、観光情報を得るというものです。しかし、まだこれは余り普及されておりません。
 次は、図書館のアプリケーションです。来年もっと新しいシステムが出る予定です。暗号を使いますので、この行政カードを利用しての図書館利用が安全であるということです。
 また、食堂でもこのカードを使うことができます。食事をして、このカードで支払いをするとか、若しくは電子財布を用いることもできます。これは、例えば高齢者ですとかそのような人達にもいろいろ食堂を利用してもらおうということにもつながっていくと思います。
 それから、学校への通学サービス。これもこの行政カードでやってしまおうと考えています。それぞれ交通機関には違ったものがありますが、接触型、非接触型両方のアプリケーションが出てまいります。というようないろいろなアプリケーションが利用可能になります。このようなアプリケーションは全て、銀行カードにも同じく活用することができます。
 市民向けのアプリケーション、市の職員向け、それから高齢者・障害者向けに限られているアプリケーションもあります。』
 『では、実際にどのようにしてカードを利用するのでしょうか。
 サービスポイントがバンター市には9カ所あります。このサービスポイントでアプリケーションの申し込みを行います。ここでカードへのロードを行いまして直ぐにカードを発行してもらいます。
 次に、カードへのロードが行われた後で、このカードを利用したい所へ持って行って、このカードを使います。その際、暗号、暗証番号を利用するということです。例えば、図書館ですとか、劇場、タクシーの利用ということのさまざまな用途に使うことができます。
 利用した後は、その次がクリアリング、決済という段階になります。誰がどのカードを持っているのか、利用した製品の価格はどれくらいだったか、どのくらいの金額を使ったかとかいうようなことで決済を行います。カードを紛失した場合でも何回位この市民がカードを使ったかというような記録が残ります。
 このカードの発行には、40マルカ(約800円)かかります。有効期限は現在3年ですが、後には5年位に延長したいと考えています。銀行カードを使いますと、最初は、銀行がサービスポイントとなります。その後、市のサービスポイントになるわけです。
 カードの保有者数はどのくらいかということを表にまとめました。広域で利用していますが、バンター市は現在2,000名弱の人々がカードを持っています。もっとこのカードの普及率が上がり市民全員が持つくらいになればいいなと考えています。』
 『この行政カードとは別に、フィンランドの電子国民IDカードというのがあります。ネットワーク上でビジネスや職務を遂行していく場合、例えば、電子署名が必要になる場合もあります。そして、データ交換の安全性を図るために、文章の暗号化ということも必要になります。もちろん、利用者の識別が必要になります。
 利用者の識別方法ですが、秘密鍵と公開鍵と呼ばれるものを使います。一つは本人識別のためです。そして電子署名の際に利用するということがあります。このカードは現在3年間の有効期限がありますが、来年度からは5年間有効になります。このIDカード発行には、160マルカ(約3200円)のお金がかかります。』
 『では、この電子国民IDカードを発行してもらうにはどうすればいいんでしょうか。まず、警察に行きます。ここで、本人かどうかの識別を対面で行います。このとき、自分の写真を2枚用意します。
 次に、まずは匿名で、そのカードの発行業者からカードを発行してもらいます。それから、この人の情報がデータベースの所に行って処理をされます。そして、すぐに匿名で発行されたカードにこの情報を載せてカードを発行してもらいます。それから暗号、暗証番号をもらいます。
 それがまず、国民登録センターに行きまして、ここで登録されます。それから、X.500という形式で作成されているファイルにも行きます。
 これらが全て完了した時点で、警察に行き、もちろんその国民登録センターで登録を済ました後ですけれども、その市民の方には暗証番号とカードが発行されます。ですから、まずは警察に行って、対面で本人の識別を行って、カードをもらう時も自分がその警察署に赴いてカードを受け取るということです。』
 『最近、電子政府とよく言われていますが、それは一体どういうふうに発展していくかということを表した図をご紹介します。
 フィンランドでも皆さんの所でもそうだと思いますが、まずインターネットで情報を提供するということがあるでしょう。それから、電子メールを利用します。それからウェブ上の印刷可能な書式の利用、ICカードによる様式、カード所有者の識別を行います。そして、オンラインアクセスによる手続き等を行って、いろいろなサービスを複合して自動的に行うということがあります。この中で、電子的に本人の識別を行うという作業も出て来るわけです。パソコンを家庭に持たない市民ももちろんいるわけです。パソコンの利用ができないという人もいます。このカードがあってもPCと共に使えないという人もいます。その辺の対応をしていかなくてはいけません。それから、このような様式を必要とする人は一体誰なのかということです。様式というのは本当にいるのかどうかということを考えなくてはなりません。市民はいろいろな文書を必要としていますが、電子的にそれが本当に必要かどうかということです。』
 『このような電子的なサービスと従来やってきたサービス、これをどういう風に組み合わせていこうかという問題もあります。一番いいのは同じ文書をインターネットでも公開することです。そして従来型のサービスも続けていくということでしょう。メタファイルの使い方も重要です。フィンランドではどのようにして、電子記録の保存、管理を行うかということで、いろいろな計画を持っています。それから、電子文書、電子署名の申請システムを考えなくてはなりませんし、手続全体をもう一度明らかにして見ていく必要があります。そして、文書を申請して送ると、いつその文書に対して決定が下りるのかということも分かっておかなくてはなりません。ということで、各家庭からあるいは公共のワークステーションから、あるいはその図書館の端末などからこういうサービス、アプリケーションに到達できるようにしなくてはなりません。インフォメーションキオスクと呼ばれる設備もあります。』
 『この電子政府のソリューションとは一体どういうふうに行われているのでしょうか。まず、家庭で市民がカードリーダーを持たなくてはなりません。また、国民電子IDカードを持っておかなくてはいけませんし、そして、この行政カードというものが必要です。この行政カードにこのIDカードが格納されるということになります。画面の左側にあるカードのうち、真中のものは社会保険庁が発行しているケラーと呼ばれるカードです。病院の情報ですとかそういうものが使われています。これを用いまして、各家庭でカードリーダーにより読み込んでいくわけです。インターネットを通じましてサーバーにこれがつながる。家庭のパソコンに例えば文章が送られてきます。それに署名をして、書き込みをして送ります。それが、e−メールの形で市の職員の方に送られてくるわけです。そして、カードを持ちまして、インターネットを通じてサーバーにコネクトするということです。この市の職員も市民の方も同じカードを利用していくわけです。それから、国民登録センターがこの間に入っていますので、本人の識別も可能ですし、もし、カードが利用できない、あるいは使用不可能という場合は、ここに連絡をすることができます。ということで、この電子識別カード、つまり行政カードと国民IDカードをいつか統合して、一つにできるのではないかと我々は期待しています。』
 『フィンランドでは、今、電子識別カードが一万種類も作られています。さまざまな所でこれを入手することができるので、それに伴って問題も発生しています。サービスが上手くいかないとか、そのためにそのカードが利用できなくなる、ややこしい問題が起きています。
 そこで、銀行による、銀行カードによる本人識別が主流になってきています。フィンランドの銀行では全てこのようなカードが発行されますが、銀行間の協定がありまして、同じようなカードを同じように使えるように協定が結ばれています。銀行の本人識別の利用も先程のe電子政府によるソリューションに似たような形態になっています。これをソロ識別と呼んでいるのですけれど、市民にとってはカードリーダーがなくても使えるので、導入がしやすい仕組みになっています。』
 『では、新しい電子取引システムは市民にとってどのような利益があるのでしょうか。まず、公共部門と民間部門双方が将来提供できるさまざまなサービスを、市民が利用できるようになります。これらのサービスは、年中無休で利用することができます。また、時間と費用が節約できます。何処にも行かなくても、自宅からさまざまな情報がアクセスできます。わざわざ出かけて行かなくても、ケラーカードなどを使って情報を得ることができます。大切なことは標準化されたソリューションがあること、そして、市民の自由な選択があることです。このようなことを実現するためには法制度の整備も必要です。』
 『あまり細かく申し上げる必要はないと思いますが、フィンランドではさまざまな法律が施行されています。たとえば、個人データ法、データ保護法、政府活動公開法、国民登録法、国民IDカード法、そして最後に電子行政サービス法などといった法律が施行されています。また、新しい法律が2つ予定されておりまして、電子サービスの問題が起きた時のために対処するための法律などが考えられています。本人識別ですとか、署名において問題がある場合にどのように対処するかということが検討されており、来年から施行される予定になっています。』
 『これまで学んだこと、教訓として得たことを上げてみたいと思います。まず、互換性がとても重要だということです。国際的なコラボレーションがぜひとも必要です。次にサービスが何よりも大切な部分であるということです。ですから、市民の役に立たないプログラムは何の意味もありません。サービス提供者のための簡単なパッケージも必要です。エンドユーザーへの支援は組織的に行われる必要があります。自宅で使っている時に、さまざまな問題に直面するユーザーがどのように支援を受けられるかと、このサポートシステムを発展させることが大切です。インターネットにアクセスして情報を検索するとかコールセンターがあって問い合わせができるとかこういった仕組みが必要です。利用の統合が重要です。認証やデジタルの仕組みがしっかりしていること、そして、暗号などが必要です。カードリーダーの提供、そして広報が組織的に行われなければなりません。カードリーダーをどこで入手できるのかなどといった情報を市民が皆わかるようにならなければいけません。国民電子IDカードを使うにあたってこのカードリーダーが必要なのですが、今はカードリーダーが非常に高価ですので、なかなか普及させることができません。』
 『今の時代、インターネットを使って、さまざまな取引が急速に増加しています。情報の検索だけではなく、もっとあらゆるサービスに活用できるようになると思います。これを安全に行うためにはデータ・セキュリティ−、暗号の高度化、信頼できるデジタル本人識別、デジタル署名などが必要です。これらは急速に開発されていますので、情報社会の重要な部分になっていくと思います。』

(文責:情報化フェスタ実行事務局)

連絡先
 注:講演内容の詳細については、下記のホームページをご閲覧ください。
 URL:http://www.nmda.or.jp/rio-net/


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