●その他の事業報告

 当協会では関連団体と協力し、「農村情報システムに関する調査研究」や「情報機器のマニュアルに関する調査研究」を実施しています。それらの事業の中から「今までの農村情報システムの経緯と現在推進している主な事業」及び「Webサイトのユーザビリティおよびアクセシビリティに関する調査研究」をご紹介致します。


1 今までの農村情報システムの経緯と現在推進している主な事業

       社団法人日本農村情報システム協会 事業企画統括部 統括部長 秦 章人

1.経緯

 社団法人日本農村情報システム協会は昭和50年1月20日に創立されました。
 これに先立つこと、昭和46年に農村CATV研究会が、昭和47年には、農産物流通情報化システム研究会がそれぞれ発足し、農業・農村における有線テレビジョン放送施設の利用方策について調査研究を行い、この研究会報告ではじめて農村MPISという呼称が生まれ、「その意味するところは、農村における多目的に利用する多元情報システム」と説明されています。
 この後、農林水産省は、農村にCATV施設を設置することは、農村の情報化によって地域が活性化し、農林漁業の振興にもつながるとして、地方自治体や農業協同組合が事業主体となる施設の開設を補助することとなり、昭和48年に発足した農村総合整備モデル事業において事業化されました。
 こうした背景のもと、農業・農村の情報化に取り組む地方自治体、農協を支援・指導する組織として、農林水産省、郵政省(現総務省)、通産省(現経済産業省)の3省共管により地方自治体、農林水産関連団体などを構成会員とする当協会が設立されるに至りました。
 その後、農林水産省の補助事業等における農村無線連絡情報施設の設計やコンピュータを用いた農業管理施設の設計やコンサルテーションを行い、農山漁村地域における情報化の推進を支援してまいりました。

2. 主な事業内容

(1)調査研究事業
 農林水産省をはじめ、財団法人ニューメディア開発協会等の委託による農村地域の高度情報システムに関する種々の調査研究。

(2)地域情報化支援業務
 市町村等からの委託による農山漁村地域の情報化に関わる構想づくりをはじめ、農村MPIS、地域有線情報システム施設、コンピュータ情報システム施設、無線情報連絡施設に関する基本計画の策定、実施設計、設計管理など情報システム整備に至るまでの情報化支援業務及び情報システム施設の運営に関する指導など。

(3)ソフトウェア開発事業
 農林水産省をはじめ、県・市町村等からの委託により、ソフトウェアの開発、助言、グリーンチャンネル(通信衛星を利用した農林水産情報受発信システム)を活用した新たな映像情報のネットワークの確立を図るための映像ソフトの制作・供給。

(4)研修事業
 農村MPISや同報無線施設等の管理者やオペレータなどを対象にした運営管理・保守管理・番組編成・制作技術等の研修、セミナー、シンポジュウムの開催。

(5)気象情報農業高度利用システム推進事業
 市町村等からの委託により、気象情報の地域農業への高度利用を図るため、地域微気象情報の配信(予報情報含む)。

(6)啓発宣伝活動
 農村MPIS施設や同報無線施設、コンピュータシステム施設等の健全な普及と育成を図るため、機関誌「MPIS」や「農業管理センター」「農業情報」等の発行、情報システム施設紹介ビデオ制作による情報施設導入を計画している市町村等へのPR活動。

(7)海外情報の収集
 先進各国の農業・農村情報化の実態や動向等海外情報の収集。

(8)行政庁に対する協力・助言
 行政政策として進められている農村地域の情報化施策に対する積極的な提言・助言等。

(9)関係協議会の設置
 農村地域に導入された情報化施設の運営と高度利用等を図るため、「全国有線テレビ協議会」「全国農業情報管理センター連絡協議会」「全国農村情報連絡協議会」「全国グリーントピア構想推進協議会」の事務局を担当。

3.農村情報基盤の新しい展開

 このように当協会では、21世紀の高度情報化社会を展望した新しい農業・農村の基盤整備を推進しておりますが、最近では、地域情報システムを相互に連結した広域ネットワーク化、さらには通信衛星を利用した全国ネットワーク化という農村情報基盤の新しい展開が始まり、その利活用の成果が注目を集めています。
 その1つが農村MPISです。農村MPISは当初難視聴解消のために設置されたCATVの空きチャンネルの利用ということから始まりましたが、平成元年のBS衛星放送の開始、平成4年CS放送の開始を初めとした技術の進歩や、放送と通信の融合といった行政面の変化により、現在では、光ケーブルを使用した光・同軸ハイブリット770MHz双方向伝送路を利用し、従来の放送サービスの高度化や高速・常時接続のCATVインターネットを初めとする各種通信・情報サービスが行われるようになって来ています。(図1参照)

                    図1 双方向CATVがつくる情報ネットワークイメージ

 放送サービスでは、デジタル技術を駆使した高画質の自主放送サービス、CSデジタル放送の多チャンネル再送信サービスにより20チャンネルを超える放送サービスも可能となってきています。そのほか、農業気象高度利用システム、在宅健康システム、多重情報伝送(CATV電話)システム、情報検索(MIOD)システム等の地域特性に応じたシステムの構築も行われており、当協会では、こうしたシステム整備の支援活動を行っております。
 今後は地上波放送のデジタル化や、CATVインターネットを利用したインターネット電話(VOIP)システムや、各種予約システム、映像配信(VOD)サービス等の通信サービスの充実に向けて、当協会でもさまざまな活動を通じ、積極的に支援することとしております。また、広域化に向けて農村MPISと農村MPISの連携や農村MPISと都市型CATVの連携など農山漁村地域のニーズに対応した地域情報化を支援・推進しております。
 農業は気象に最も左右されやすい産業です。このため気象の変化を的確にとらえ、農業気象災害の予防・軽減を図る一方で、気象情報を栽培管理等に積極的に利用しようとする動きが見られます。当協会では農林水産省が推進する「気象情報地域農業高度利用対策」の考えに基づき、全国レベルの広域な気象データのほか、当該地域で観測された気象データを加味した地域のきめ細かな農業気象情報を提供しています。(図2参照)

                        図2 気象情報システム

 このシステムは衛星通信を利用した全国双方向ネットワークにより、各地域に設置した気象ロボットの観測データを衛星回線(上り)により中央センターに収集、(財)気象協会から得た全国データと地域データをスーパーコンピュータに入力して、1kmメッシュ単位で気象の解析・予測を行うものです。
 各地の予測情報は、再度衛星回線(下り)により地方センターに伝送され、各地域の対応可能なメディア(CATV、FAX、パソコン(Web)等)に変換されて、農家に提供されます。一方、地域センターに配信されたデータは蓄積・解析されて、作物の育成診断や育成予測等に利用されます。
 今後は、解析・予測のアルゴリズムを最適化することにより、さらなる予測精度の向上と、地域センターから携帯電話により気象データを提供するなど、作業現場でより使い易い情報入手手段の検討を進めております。
 これまで見てきたようなネットワーク化や気象情報の高度利用に加え、もう一つの柱として、平成17年度打ち上げ予定の超高速インターネット衛星を利用した情報化の推進も検討しております。
 今後光ケーブルを始めとするブロードバンドインフラが都市部を中心に拡大していくことが予測されますが、農村が多く立地する中山間地や離島といった地域では、同様のインフラ整備が遅れることは必至であり、情報格差が生じることは目に見えております。そこで、こうした情報格差を解消する一つの手段として、超高速インターネット衛星の利用による情報ネットワークの構築も検討しております。(図3参照)
 地域条件に関係無く、常時接続のインターネットブロードバンドインフラが整備されることにより、市町村内はもとより、近隣市町村、農村と都市部など高速通信回線が確保されることとなり、新たな地域情報化の展開が期待されます。
 そのほか平成13年度より、情報化の人材育成にも積極的に取り組んでおり、パソコンの操作方法から、産直Web構築のノウハウ、流通、販売戦略の立案、地域や農業者に対してITの企画・立案を支援できる農業分野での地域情報化の旗手となるリーダーの育成を目指した「情報アグリスクール」の展開も行っております。

                    図3 運用時システムイメージ

連絡先
社団法人日本農村情報システム協会
〒170-6056 東京都豊島区東池袋3-1-1
サンシャイン60 56階
TEL:03-5985-6015 FAX:03-5992-2263
URL http://www.syskyo.or.jp


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