2. 主催者挨拶 岸本 周平氏 経済産業省商務情報政策局文化情報関連産業課長        (古屋経済産業副大臣代理)  ただいまご紹介いただきました、副大臣の古屋の代理でまいりました経済産業省の岸本周平でございます。本日は古屋がご挨拶を申し上げる予定にしておりましたが、あいにく国会でのテロ対策法案の審議の大詰めに入っており、どうしても東京に残らざるを得ず、「岸本、自分の思うところを代わりに一言述べてきてくれ」ということで承ってまいりました。  まず、本日お集まりいただきました皆様方には、心からお礼を申し上げたいと存じます。それからこのフェスタを開催するに当たりまして大変なご協力をいただきました、沖縄県や名護市をはじめ各機関の皆様方に厚くお礼を申し上げたいと思います。  皆様ご承知のとおり、政府は2003年という目標を設定しまして電子政府を推進いたしております。「IT戦略本部」で決定された「e-Japan重点計画」にありますように、2003年までにはインターネットを使いました色々な申請、これには納税も含みますが、ご家庭からパソコンを通じて納税ができる、あるいは各種のアプリケーションがインターネットを通じて利用でき、情報も情報公開法のもと、電子化された情報を役所から色々な形で、オンラインで取り出せるというようなことを目標にしております。そのような中で、皆様方の関心を集め、このような会が開けたことを大変心強く思っております。  基調講演をお願いしました早稲田大学の伊藤教授、沖縄県副知事の牧野先生、さらには各研究会の講師の皆様方には、講演のご依頼を申し上げましたところ、大変快く引き受けていただきました。この場をお借りしまして御礼を申し上げたいと思います。  また、フィンランドから特別ゲストとして、遠路はるばるアンネ・リンドブラッド−アホネン先生にお出でいただきました。心から歓迎の意を表したいと思います。ご承知のとおり、私ども経済産業省では現在総額170億円の予算を投じまして、全国21地域、50を超える市町村の参加を得ましてICカードの実験を始めようとしているところです。ぜひ、今日、アホネン先生からフィンランドのICカードの先進事例を聞いて勉強したいと思っております。  ところで、先ほど申し上げましたように、電子政府の実現を我々の目標としているところですが、インターネットを使っていろいろなことができる、あるいは役所の手続や役所の中の事務が電子化される、このことは電子政府でも何でもありません。意味がないとまでは言いませんけれども、そのことが目標ではない、ということをよくご理解していただきたいと思います。電子政府をつくる、中央政府や地方政府を電子化するということは、あくまでも納税者の便益を向上させるという大きな目的を達成することであります。  最初に、どうすれば納税者の皆さんに役に立つかがあります。確かにインターネットを使ったサービスの提供は納税者の便益につながります。さらに、納税者にお払いいただく税金を減らしていくということが真の目的なのです。人員削減をする、あるいは事務経費のコストをカットする。それをいくらカットするのか、何人減らすのかという目標を設定し、そのために業務フローを見直してシステムを開発していくというスタンスをおとりいただくようにお願いしたいと思います。人員が減らない電子政府には意味がありません。コストの減らない電子政府・電子自治体、そんなものは要らないと考えています。  例えば、12年前アメリカではVISAカードと提携をいたしまして、出張旅費あるいは会議費、こういうものにつきましては、職員にカードを持たせ、それで決済を始めております。現在では、備品や文房具なども、インターネットを使ったオークションで購入するときの決済はそのカードでやっております。これをパーチェシングカードと呼んでおります。この結果として、1件当たりの伝票処理費用が何と40%削減されました。電子政府を実現するということは、そういうことだと思います。コストを40%下げましょう、そのためにはどうすればいいか、一々現金決済をして伝票を回す、領収書を庶務に持って行く、そんな手数のかかることは止める。そういうことが、まさに電子政府だと考えております。  現在、政府調達は12省庁バラバラに実施しております。端的な例をお示しすれば、公務員の給与計算ソフト、12省庁がバラバラにオーダーしております。しかし、公務員の給与表は一つですから、人事院が一つシステムをつくればいい、しかもオーダーする必要はありません。給与計算ソフトですからパッケージでいのです。3,000以上ある地方自治体が、一つ一つ給与計算ソフトをオーダーするということは本当に無駄なことであり、一本のパッケージソフトを少しずつ変えればいいのです。そういうことがコストを減らしていくために必要な努力であろうかと思います。  ITといいますのはあくまでも道具であり、これを使いこなせるかどうか、ITの持つ本質は生産性を向上することができるということです。生産性の向上ができる自治体とそうでない自治体の差は、これからどんどん開いていくと思います。私どもが公募をいたしましたICカードの事業も同様で、たくさんの応募があった中で50自治体ぐらいしか選べませんでした。私どもは来年度、今回選に漏れた自治体の方にも参加していただこうと考えましたが、財政再建ということで予算がございません。残念ながら遅れた方はもう国の補助で研究することはできず、自費で行っていただくほかはありません。  この差は、一生懸命ICカードを研究してこられた自治体が勝って、努力を怠ってきた自治体が負けたということです。これからは、明らかにそういう差がどんどんついていくことになります。これがITの導入された日本で起きていくことであります。今は交付税がございますから、財政再建の努力を怠けていても国からお金がきますけれども、それもとても続きません。そうなると、地方公共団体自らが地方債という借金を払って行かなければならない。そうすると、もちろん倒産する地方公共団体も出てくるかも知れない、そういう厳しい競争の時代に入っているということを申し上げたいと思います。それを乗り越えるために、賢く使えば生産性向上を必ず達成してくれるであろうITを使って、コスト削減や人員削減を行う電子自治体を作って行けるかどうかにかかっているのではないかと思います。  そしてもう1つ、今、国・地方合わせまして電子政府を作るためのソフトウェアやハードウェア等のシステム開発の費用が1兆8,000億円、約2兆円ございます。これは来年、再来年右肩上がりで伸びていきます。しかしながら、私ども経済産業省も含めて、果たして賢い消費者であったのかどうかということも、今私たちは検討を始めております。本当に2兆円もかかるのでしょうか。公共事業では、大体単価は民需の倍と言われております。私たちが行っているシステム開発の単価が正しい単価なのか、正しいクオリティのものを納入していただいているのか。残念ながら私たちはエクスパティーズがありませんので、断言するわけにはまいりませんが、おそらくそこには超過利潤があるのではないかと推察ができます。私ども経済産業省は、来月から内外のソフトウェア及びシステム開発の価格調査に入ります。アメリカと比較してどの程度高いのか調査をいたしまして、次年度以降の契約に生かしていきたいと思っております。  一方では、先月、東京都のあるシステムが750円で落札されるということがありました。世間があっと驚きました。私ども普段は政治家に問題点を説明するとき、紙に書いて国会で説明に回るのですが、今回はあの新聞記事だけで「これはけしからん」ということで、一気にムードが盛り上がりました。結果として、経済財政諮問会議の改革工程表に情報処理システムに係る政府調達制度の見直しが織り込まれ、これを14年度中に実施することになりました。ただ、これはベンダーさんが悪いのではありません。発注者としての我々が悪いのです。といいますのは、単価が低ければ落札できるような方式にしてあるからです。総合評価落札方式という単価を分母に持ってきて、技術点がどんなに低くても単価が1円だったら絶対勝てるような計算式を我々が作って、使っているのが問題なのです。  従いまして、我々は要求仕様書、提案書、RFP(リクエスト・フォー・プロポーザル)も書けない愚かな発注者でありますけれども、今後はきちんと外部のコンサルタントを雇い、そのコンサルタントにRFPの書き方を教えてもらって、そこから先はまた別の会社に発注して行きたいと考えております。また、できるだけ分割発注をするとともに、中小企業の参入を進めたいと考えております。現在2兆円のうち、4分の3は大企業が受注しており、四大グループで50%から60%のシェアを占めております。このような寡占状況が効率の良い競争をもたらしていないのではないかということについて、私どもは大変深い関心を持っております。今後はできるだけ中小企業やベンチャーが育つような仕組みをつくっていきたいと考えております。そのためにも、我々発注者側が厳しいユーザーの目を持って、努力をして行きたいと思います。その結果として、日本の情報システム産業の国際競争力を向上させることにもつながると確信しております。  最後になりましたが、本日、明日の2日にわたりますこの情報化フェスタ2001が、皆様方にとりまして、大変勉強になったなと思っていただけるように、スタッフ一同努力をしたいと思います。どうか最後までお付き合いいただきたいと思います。  本日は本当にお出でいただきまして、ありがとうございました。 (文責:情報化フェスタ実行事務局)