4. 基調講演2   講 師:牧野 浩隆氏 沖縄県副知事   テーマ:「沖縄県のIT施策〜e-islandをめざして〜」 ●概 要:  離島県である本県では、情報化のもたらす効果を最大限に活用することにより、時間的・空間的不利性を克服し、特色ある産業や文化の振興、県民生活の向上を図ることが最も効果的な方策の一つであると考えております。  平成10年に策定した「沖縄県マルチメディア・アイランド構想」は、本県における情報通信産業(IT産業)の振興・集積により自立的な経済発展を図るとともに、アジア・太平洋地域における情報通信分野のハブ機能の形成を通して国際貢献を果たすことを目指しています。また、本県経済の活性化を目指した「沖縄国際情報特区構想」の実現に向けて、国や市町村と連携して取り組んでいるところです。  本年7月には「沖縄e-island宣言」を行うとともに「情報通信関連分野の人材育成に関する基本方針」を策定し、本県が情報通信技術(IT)を活用して県民生活の向上と自立に向けた持続的発展を目指すこと、そして情報通信関連分野の充実した人材層の形成に向けて、すべての県民が一体となって取り組んでいく決意を県内外に表明いたしました。  また県と市町村では、県民への行政サービスの向上を図る行政手続きの電子化を進めるとともに、行政の高度情報化に対応した生産性の高い事務処理を行う電子自治体の構築を目指して取り組んでいます。  21世紀初頭における本県の将来を見据えて策定を進めている沖縄振興計画(仮称)においては、本県がアジアにおける国際情報通信ハブ化に果敢に挑戦し、IT機能・施設を集積・誘導するとともに、独自の文化、自然及び感性を活かしつつ、e-islandとしての今後の発展を目指しています。  皆さん、こんにちは。今ご紹介いただきました副知事を仰せつかっております牧野と申します。どうぞよろしくお願いいたします。  まず、はじめに、こうして沖縄のこの地で、全国の地域情報化推進会議が開かれますことを、非常にうれしく思います。これを開催していただきました経済産業省、それからニューメディア開発協会、事務局を担当された方々、それから後援していただきました名護市、そのほかいろんな意味でたくさんの方々の協賛を得まして、この会が開かれましたことを、この上なくうれしく思います。改めてお礼を申し上げます。特に私ども沖縄にとりまして、こういった情報関係の会議が開かれるということは、ある種の感慨を覚えます。  と申しますのは、今私ども沖縄の戦後史、ずっと沖縄の経済を見ていますけれど、従来の沖縄の産業構造から考えますと、ITがこんな早足で沖縄の地に定着して、私どもはまたそこをこれからの沖縄を支えていく産業として、育てていこうというような位置づけができたことを思いますと、非常にある種のうれしさを感じます。  まず1つは何かといいますと、この2、3年で約二十数社のIT関係の企業の方に来ていただいて、雇用の場、沖縄の場合は一言で申しますと、高失業社会と言われていますので、この2〜3年で約2,000人から3,000人近い若者に、IT関係の雇用の場をつくったということは、沖縄の高失業社会から見ますとうれしく思います。  それともう1つは、沖縄経済の自立で産業振興と申しますけれども、なかなか遅々として進まない中で、二十数社が沖縄のために進出していただいたということを思いますと、これまたうれしいことでございます。  もう1つは、去年、ちょうど1年前のこの場所でサミットが開かれました。そのときにもサミット宣言、サミットの中でIT宣言がなされております。同じように国際的にも、ITがサミットの中で宣言が発せられるような時代であるのと同時に、国内におきましても科学技術立国を目指して、いわゆるIT立国を目指すような形で、言ってみればITというのは、これからの経済社会・技術社会の大きな流れないわけですから、沖縄としましても、そういう大きなうねりの中に一歩、二歩乗り出すことができているということをみますと、非常にうれしく思います。  それともう1つは、何よりも政府をはじめお集まりの皆様、多くの方々が、沖縄におけるIT産業の定着に向けてがっぷり四つに組んで、強力な応援体制ができあがりつつあることを思いますとき、改めて皆さんにお礼を申し上げたいと思います。  さて、私に与えられましたテーマが「沖縄のIT施策e−islandをめざして」ということでございます。沖縄のIT施策につきまして、現状と目指すべきところを若干ご報告させていただきたいと思います。その後、これからどのような展開をするか、私どもも試行錯誤でやっていかなきゃならないわけですから、お集まりの皆様のいろんな意味でのご支援とご指導をいただければと思いますので、現状と沖縄の目指すところをご説明させていただきたいと思います。  お配りしました資料を開けていただきたいと思いますけれど、それに沿ってお話をさせていただきたいと思います。1ページ、2ページ、3枚目のものがございます。順序が逆になりますけれど、「沖縄県のIT施策e−islandをめざして」という資料を皆さんにお届けしているかと思います。その3枚目をご覧になっていただきたいと思います。  その3枚目、ちょっと見にくい資料でございますけれど、沖縄におけるIT施策が出発したのは、ちょうど今から10年前でございました。そのときにどういうことがあったかといいますと、直接のきっかけは、その当時、自治省が「地方公共団体における情報化の推進に関する指針」ということを出しまして、各都道府県の自治体に、やはり地方といえども情報化に取り組めというようなそのような指針を出したいきさつがありました。  その背景は、当時はやっと情報が、これからの経済社会を変えていくという技術革新と同時に、一方では、国における政策が、その当時は第4回目の全国総合開発計画がつくられようとしている、あるいは進められようとしているときでした。皆さんご存じのとおり、全総、二全総、三全総、四全総とありますけれど、当時の四全総は、いわゆる多極分散型の国土を形成していくというのが、その当時の主題でした。  と申しますのは、三全総のときは皆さんご存じのとおり、いわゆる定住圏構想と言うことで、各地方の定住権を整備していくというような目標がつくられていたわけです。四全総はそれを踏まえまして、これから各地の拠点を、これから交通体系だとか通信体系をネットワークで結ぶことによって、多極分散型の国土を形成していくというような、そういう背景がありました。それを踏まえて、先ほどお話しました自治省による「地方公共団体における情報化の推進に関する指針」が出たわけでございます。ちょうどそれが出たときに、沖縄県では今進めております「沖縄振興開発計画」というのがあり、それの2次が終わって、3次をどのような形でつくっていこうかというような時代でした。  そのときに1次、2次までの沖縄における振興開発の難しさは、公共工事だとか観光などは割合に順調にいったわけですけれど、そのほかの産業振興というのはなかなか進まずに、大きな課題を抱えていたわけです。進まなかった理由の分析としまして、やはり沖縄が本土から遠く離れている遠隔の地にあるということと、離島県であるという距離的、時間的、空間的な疎外要因が、沖縄の経済社会の発展を疎外しているという認識があったわけです。そのときに、いわば情報化の進展というのは、その情報化を活用することによって、時間的、空間的な不利性を解消する大きな手段になり得るという問題が提起されたわけです。それをとらえまして、私ども沖縄県でも、いわゆる情報化を振興開発の有効な手段として、体系的に推進していこうという発想からできたのが、皆様にお配りしました3ページの真中の上にあります「沖縄県高度情報化基本構想」、俗に「インテリジェント・アイランドおきなわ」というハイカラな名前をつけたわけでございますけれど、そこから沖縄の情報化に関する作業がスタートしたことになっております。  そのときの、いわゆるインテリジェント・アイランド沖縄、「沖縄県高度情報化基本構想」を見ますと、理念としましては、その構想の中で、1つには沖縄の特性を生かして、離島の不利性を、いわゆる情報化を活用することによって克服して、沖縄の産業振興を進めようということと、もう1つはもっと積極的に情報化を活用することによって、快適で豊かな県民生活を実現していこうというような、そういう理念のもとにつくられたものでございます。  その中身は4つほどの柱がありました。1つは、いわゆる地域特性を生かして、離島の不利性を克服するために情報化を進めようと、2つ目には、快適で豊かな県民生活を実現するために、情報化を進めていこうと、3つ目には情報通信の基盤整備あるいは拠点を整備していこうと、4つ目には情報化を進めるための諸々の環境を整備していこうということで、この高度化推進計画はつくられたわけです。  そこに書いていますように、約3つほどの柱がありました。まず右のほうから見ていただきますと、沖縄県総合行政情報システム基本構想というのがあります。言ってみれば、行政用の情報化を進めるというのが1つの柱でした。  2つ目は右から2番目の、情報通信基盤を整備していこうというのが、2つ目の柱でした。3つ目は、その左にあります地域を情報化していこうというのが、その柱でございます。  若干遅れますけれど、一番左端にありますように、情報通信関連産業の振興、もう若干時間的には遅れてきますけれど、当初の発想のウエイトはどちらかといいますと、情報化を活用して、産業の振興だとか行政の効率化を図っていこうといって、情報の活用化というような状況だったと思います。  ところが今は若干ニュアンスが違いまして、情報の活用じゃなくて、情報を産業化していこうということにウエイトがあることは、もうご存じのとおりと思います。そういうことでスタートしましたけれど、あれからちょうど10年が経ちました。10年経った去る7月に私ども沖縄県は、お配りしました資料の1ページ目をご覧になっていただきたいと思います。そこにありますように、去る7月に、私どもは「沖縄e-island宣言」をいたしました。  遠大な計画でございますけれど、読ませていただきますと、1つには、ITの時代認識としまして、情報通信技術の飛躍的な発展は、国境や距離を越えて人々の生活や経済活動に大きな変化をもたらせていきます。これをどのように活用するかによって、私たちは新たな時代を切り開く先駆者として、先端分野を積極的に開拓し、すべての分野にITを生かして、人、モノ、情報が行き交う沖縄、世界を舞台に活躍する「平和で豊かな沖縄」を実現します。その成果をどういう形で見るかといいますと、この島に生まれる者には輝く歓びを、学ぶ者には未来を切り開く力を、働く者には希望と誇りを、暮らす者には健康と長寿を、訪れる者には安らぎを、羽ばたく者には限りない未来を、そういうことを活用することによって、私達は沖縄が国際社会に貢献することを願い、世界とともに共生する「e−island」を目指すという遠大な計画を宣言したわけでございます。  これから沖縄県が目指していこうという、まさに目指すべき目標でございますけれど、これに向かってどのようなことをやっていかねばならないのか、あるいはこれらをするために、今何を沖縄県がしているかをご報告できればと思います。  続きまして、2枚目を開けていただきたいと思います。その宣言を実現するための手段として表示しましたのが、私どもの右側の三角のものをご覧になっていただきたいと思います。「沖縄e−island宣言」を実現するためにどのようなことが必要かというのを、約4つにまとめております。  @は、人材育成をするために、情報通信関連分野の人材育成に関する基本方針、これを策定しております。Aは、情報通信産業振興と集積を図るために、「沖縄県マルチメディア・アイランド構想」を策定しております。それからBの情報通信基盤の整備、Cの地域の情報化を図るために、その基盤としまして「沖縄県総合行政情報通信ネットワーク基本構想」をつくっております。そしてDの行政の情報化、電子県庁をつくるために、沖縄県行政情報化推進計画、その4つをつくって進めて、宣言しました「e−island」をつくっていこうというようなことを、今進めているところでございます。したがいまして、私の報告はこの4つがどういうものであるかを、皆様にご報告させていただければと思います。  順序が逆になりますけれど、この4つの中の最初のほうに「沖縄県総合行政情報通信ネットワーク」についてご説明したいと思います。これは沖縄における情報通信基盤を整備するとともに、地域の情報化を推進するために、1997年の10月に策定したものでございます。その目的は、県の行政の情報化を推進するために、情報通信基盤を総合的に高速大容量に整備することによって、行政の情報通信化を進めていこうというものです。その範囲は県と市町村をネットワークで結んでいくこと、もう1つは産業化のための基盤整備として活用するということ、もう1つは沖縄では防災のための行政の無線設備がございますが、たまたま古くなっておりますので、これの更新も含めまして、今の情報通信ネットワークをつくろうという意味で進めているところです。  この場合の基盤ですけれど、4つほどの基盤を今準備しております。1つは、マイクロ波の多重回線と、2つ目はMCAの回線、3つ目は光ファイバーの回線、それから4つ目は離島のたくさんある所ですから、衛星通信回線のその4つを使うことによって、基盤整備しようとしております。これが完成しますと、どういう活用ができるかはある程度イメージでございますが、行政の情報をネットワークで各市町村と結ぶということができますし、保健だとか医療などに活用できるということ、先ほどの防災関係にできるということ、あるいは教育関係、観光関係、農林水産業、その他などに活用していこうという状況でございます。今その整備を進めまして、供用開始を2003年の4月を予定しております。それができた暁には、先ほどのイメージのものがうまく運用できることになるかと思います。  2つ目には、沖縄県の行政情報化推進計画がございます。これは一言で言いますと、電子政府と言われている沖縄版で、電子県庁をつくっていこうというようなことです。この背景としまして、先だって政府で「高度情報通信ネットワーク社会形成基本法」が制定されました。それに基づきまして去る1月に政府は「e-Japan戦略」を発表しております。これは皆さんご存じのとおり、5年以内に、日本を世界最先端のIT国家につくり上げていくというような宣言がなされており、その中に4つの柱があります。1つは超高速のネットワークのインフラを整備していくということ、2つ目は電子商取引の新たな環境整備をやっていくということ、3番目に電子政府を実現するというような項目があります。4つ目には人材育成の強化とありますけれど、その3番目の電子政府をつくっていくというものに対応した、沖縄県庁を電子県庁にしていこうというのが、この沖縄県の「行政情報化推進計画」でございます。これの内容は当然のことながら、質の高い行政サービスを県民にどのように提供するかというような視点と、それから県庁の中の行政事務自体をいかに簡素化・効率化していくかという意味での情報化を進めるかというようなことです。そのためには,私どもは当然この目標を達成するために、3つほどのものをやらなきゃならないと思って、今作業を進めているところです。  1つは、情報化するためのインフラづくりです。このインフラづくりにつきましては、たまたま2、3日前から県庁の中のLANの整備を進めているところで、約10日ほどかけて、10メガビットから100メガビットのものに県庁の中のLANを張り替えるという作業を、今進めているところです。それをするためには、当然県庁を挙げて全庁体制で取り組んでいくわけでございます。  この電子県庁を進めるため、いろんな意味のシステムをつくらなければならないわけですが、そのシステムも1つは当然のことですけれど、県民生活の利便性の向上を図るために、行政情報を積極的に提供するための、いわゆる県民との接点のためのシステムをつくらないといけないと思っております。そのシステムの具体的な内容は、例えば、インターネットによって行政の情報を提供するとか、あるいは税金、公金などの支払いをオンラインで行うとか、あるいは住民登録とかなどの諸手続きをオンラインで行うとか、あるいは公共施設の予約をオンラインで行うとか、場合によっては電子選挙制度の投票を行うとか、税の申告などもオンラインを通じて行うとか、そういう意味での、行政と県民生活の接点のためのシステムづくりが必要になってきます。  もう1つは、行政内部の効率化でございます。その意味ではペーパーレスだとか、文書管理をどうするかとか、県内の行政事務を情報化しようという意味でやっているのがそのものでございます。  次に、そういうのを含めまして、私ども沖縄県庁が一番重視しているのが、お配りしました資料の3枚目の、左端にあります「沖縄県マルチメディア・アイランド構想」です。  今沖縄の経済を見ますと、非常に財政依存あるいは基地依存、高失業社会ということで、産業振興をどう進めていくかが大きな課題になっております。その産業振興のために、IT産業を沖縄のリーディングセクターに育てていこうというような位置づけでつくったのが、この「沖縄県マルチメディア・アイランド構想」です。これは、前身はちょうど今から4、5年前に、当時の郵政省それから通産省の中で、沖縄のマルチメディアあるいはデジタルアイランド構想などのいろんな調査がなされました。ご提言をもとにして「沖縄県マルチメディア・アイランド構想」ができ、1998年の9月からスタートして、今それが実行段階にあるわけです。その中では、3つほどの目標を掲げております。  1つは、情報通信産業の振興集積によって、自律的な経済発展を図ろうということです。従来のIT施策とニュアンスの一番大きな違いは、従来は情報を企業の中に活用しようということで、言ってみれば企業を情報化しようというような、産業を情報化しようというような面でしたけれど、今回はそうではなくて、情報そのものを産業化しようというような面に大きなウエイトがあるのが特徴かと思います。  2番目には、高度なITを活用した特色ある沖縄振興策の道しるべにしようというのが1つです。もう1つは沖縄の地理的な、あるいは歴史的な経緯を踏まえまして、アジア・太平洋地域におけるIT分野のハブ機能とした、国際交流拠点としての役割を何とか発揮できるような、交流拠点をつくっていこうというのが3つ目の目標でございます。  それともう1つは、やはりこれらの3つをフィードバックするための、評価するための1つのメルクマールとしまして、やはり産業ですから、自立に結びつける他の産業と、もう1つは沖縄の高失業社会をどう解決していくかということで、その場でどれほどの雇用の場をつくり得るかということを目標と掲げまして、10年後には約2万4,500人のIT関係の職場をつくっていこう、新たな雇用の場をつくろうということで、2万4,500人を目標に掲げております。  そういうことで掲げておりますけれども、それをするためにはいろんな具体的な施策をしなければならないわけですが、そのための先導的なプロジェクトとしまして、私どもは4つ挙げております。  1つは情報通信産業を、まずもって集積しなきゃならないということです。何もないところからスタートするわけで、いろんな意味での民間の活力を導入するために、国内外の企業誘致を図らなければならないし、あるいは県内企業の育成を図らなければならない。そのための行政としての諸々の支援措置をとらなければならないということで、まずもって、情報通信産業の集積を図るための仕組みをつくっていこうということが1つめです。  2番目には、やはりこの世界はつまるところ人材と言われておりますので、人材育成あるいは研究開発のための仕組みを、どのような形で進めるかということで、目標としましてはもちろんのことですが、情報リテラシーは引き上げていく、あるいは情報通信技術者を育成していくなどの人材開発、研究開発などを目標として掲げております。これについては、後ほど詳しくご報告させていただきたいと思います。  3つ目は、そのための先導的なアプリケーションを構築していかなければならないわけです。これは当然のことながら、1番目には県民生活の向上に結びつくようなアプリケーションとすること。2番目には、産業振興の柱となるようなものとしていくというようなことがあります。4つ目には、これを支えるために当然のことですけれど、情報通信基盤の整備を図っていくということでございます。特に情報通信基盤の整備につきましては、沖縄の場合、離島がありますので、そういう意味では基盤整備をすると同時に、やはり通信コストが問題になってきます。通信コストをどのような形で低減するのか、通信コストを低減することによって、先進地域と競争できるような環境をどのようにつくっていくかというようなことで、通信コストの低減、基盤整備などが目標として挙げられております。  そういう仕組みをつくりまして、一番重要なことは、沖縄にどのように情報通信関係の産業を集積するかということでございます。そのために、私どもは3つのステップをつくって同時に進めております。第1次ステップとしまして、集積の中核となるような、そういう地域を形成しようということで、コールセンターなどを中心にした情報サービス産業を、まずとにかくここに集積しようということで、実施しました。  2番目はそれをもとにしまして、若干高度化しなきゃならないわけですから、それを活用することによって、コンテンツ産業の段階へレベルアップしていこうということです。このコンテンツにつきましてはいろいろありますけれど、沖縄の場合は主にエンターティメントなどの分野から進めることがいいだろうということにしております。  第3番目のステップとしまして、高度情報化社会の極致でありますソフトウェア開発の段階に進んでいこうということで、これもGISの分野から進めているところです。  そういうことを段階的に進めると同時に、もう1つは、やはりこの「マルチメディア・アイランド構想」を実現するための実行機関、あるいは実行体制、応援体制のようものをつくる必要性があるということで、私どもは産・官・学に参加していただきまして「フロム沖縄推進機構」というのをつくりまして「マルチメディア・アイランド構想」、今お話ししましたようなものを実行するための体制を整えております。そういうのを進めながら、これまで3年ほどやってきましたけれど、どのような実績があるかを若干報告させていただきたいと思います。  驚くことに、従来の沖縄では30年かけてなかなかできなかったことが、この2、3年でびっくりするようなスピードで進行しております。ちなみにどのような産業、企業に来ていただいたかと申しますと、情報通信関係の高度の製造業が今4社来ていただいており、そこでの従業員が約100余名おります。その中には、従来の沖縄の産業構造では全く考えられなかったような、半導体素子の製造企業、まさに世界水準だと言われているような方に来ていただいている状況もあります。  もう1つは、ソフト開発あるいは情報サービス、コンテンツ製作などの関連企業が21社来ていただいていまして、そこでの従業員数が1,000名を上回っております。それから最後になりますが、第1ステップのコールセンター、これは驚くのですけれど21社来ていただいていまして、約2,800名に従業員として雇用の場を与えることができたという状況があります。全部で約40社近くなりますけれど、そこで約4,000名の新たな雇用の場をつくれたという状況があります。  もちろんこれだけの企業の方に来ていただくためには、私ども行政としましても、それなりの仕組み、それなりの支援体制を一生懸命やらせていただきました。これもいろんな意味での政府のバックアップ、いろんな皆様のご指導をたくさん得ましたが、主なものをご紹介させていただきますと、まず1つは直接的に来ていただく企業の支援措置としまして、まずは沖縄の高失業社会の中で、若年層の雇用が大きな問題ですので、もし30歳以下の方たちを雇用する企業がありましたら、その人件費の3分の1を、3年間にわたって補助しようということをさせていただいております。これは労働省のご支援が大きな力となっております。  それともう1つは、その関連の企業の方々が従業員を県外や海外などに、いわゆる研修のために派遣するなら、その研修費も30万円、80万円というような莫大な金をおあげしようという形で、企業の方が技術レベルのために従業員を県外、海外に派遣する場合の旅費などを補助しております。  もう1つ一番大きな問題は、いわゆる沖縄に企業が来ていただくわけですけれど、情報通信産業は場所を問わないといいますけれど、やはり本土から1,600から2,000キロ離れますと、通信コストがかかるわけでございますから、来ていただいた企業が要する通信費のコスト、本土・沖縄間の通信費のコストの80%を県が補助しております。そういった面から見ますと、こちらに来ていただいた方の通信コストというのは、従来の20%ですから、こちらで仕事をなさいますと、むしろ東京で仕事をやっているのと全く同じような通信コストの負担しかないという意味の80%の通信コストの補助をしております。  もう1つは、急にこれだけの企業に来ていただいたわけですから、沖縄の企業の方は当然のことです、ペイ、収支を考えなければいけないわけですから、即戦力になるような従業員が欲しいわけです。しかしながら、沖縄の産業構造から見まして、こういった社会の経験者というのはそうたくさんいたわけではありません。即席的に指導、研修しなきゃならないわけですから、人材を育成するために、急きょ私どもは10日間コースというので、何百名というような莫大な数の方々の講習を無料で展開いたしました。  それともう1つは、今沖縄で一番大きな産業は観光産業でございますけれど、これからは情報通信産業がそれに次ぐ2番目のリーディング産業として育っていくと、私どもは思っております。沖縄の振興開発につきましては、いわゆる「沖縄振興開発特別措置法」というのがございますけれど、その中に情報通信産業の振興制度を設けていただきまして、沖縄に進出する企業に対しては、法人税あるいは所得税、地方税、諸々の税の控除制度というのをとって、バックアップしているというような状況がございます。  そういうバックアップ体制と、もう1つは、やはり沖縄でも情報通信産業を育成する緊急性に鑑みまして、インキュベートの施設をつくりまして、そこでオフィスを無料で開放するというような意味で、今そのインキュベートの施設が県内に約7カ所あります。那覇に2つあり、那覇の企業化支援センターとありますけれど、入居企業が12社ございます。それから名護市のほうにも共同利用センターがございます。そこも十数社が入居しております。それから北谷のほうにもそういう施設があります。さらには沖縄市にも、沖縄テレワークセンター、今建設中でございますが本島中部の宜野座村にもそういう施設ができます。それからお隣の嘉手納町にもそういう施設ができまして、インキュベーター施設が7カ所ありまして、無料で事務所を開放するという状況と、もう1つはもう少しレベルアップしましたデジタルメディアセンターとしまして、産業化に直結するような諸々の機器を整備したものを、そこで安価で提供するという状況のものがございます。これはインキュベートの施設でございます。  もう1つは、そういった方たちをサポートするための研究開発施設がございますけれど、これも急きょですが、今までの沖縄では考えられなかったような状況で進めております。  1つは、沖縄情報通信研究開発支援センターというのがございます。そこの施設も情報分野における共同利用型の諸々の施設を配備することによって、産業化を支援するというような研究施設が、那覇市、名護市、北谷町に整備されている状況でございます。それともう1つは、人材を育成するための施設でございます。これは沖縄本島と宮古と八重山にそれぞれ1カ所ずつ置きまして、諸々の機器を備えて指導者を置いて、フリーで育成に当たっている状況でございます。  ちなみに去年の那覇市におけるマルチメディアセンターの人材育成の利用状況を見ますと、平成12年度で約2万人近い方がご利用なさっております。八重山の場合ですと約1万5,000人、宮古の場合はスタートが若干遅れましたので、13年度に入ってですが、これまでに4,000人余の方たちが利用しているような状況にあります。  こういう支援施設を沖縄に集積すると、いい意味での相乗効果がありました。何かといいますと、沖縄に陸上げされている海底ケーブルが4本あるということでございます。1つはChina−USライン、80ギガと言われています。2つは、ヨーロッパ・中近東から日本へ向かっている40ギガのものがございます。3つはKDDのJIHのものが陸上げされまして、これが100ギガ、それからMOCが5ギガという4つの海底ケーブルが沖縄に陸上げしているということです。他の都道府県とは違って、まさに沖縄が持つ有利性だろうというようなことで、その積極的な活用を図ることが期待されています。  去年サミットがこの地で行われました。そのサミットとの関係で、その残った施設などを活用することによって、さらにレベルアップしようということで、名護に国際海洋環境情報センターというのができます。これは地球情報を収集するというような意味と、デジタルアーカイブの機能を持つだとか、大変先端のものができることになります。  お隣の恩納村では、軍用地が返ってきた跡地を活用する1つの成功例として沖縄亜熱帯計測技術センターが脚光を浴びております。これも地元とのつながりを大切にしていただきまして、情報交換の場だとかあるいは研修の機能だとか、いろんな意味で地域に配慮していただいたものをやっているのがございます。  「沖縄国際情報特区構想」というのがつくられて、沖縄のこれからの情報化を進めていくための指針として、国によってつくられたものがございます。たまたまこの4、5年、沖縄の政治・経済というのは大変激動したいきさつがあります。そういった中で政府におかれましても、沖縄の経済開発は国策として進めるというような、ありがたいご支援をいただきまして、その中の1つとして、沖縄の情報通信産業を振興することによって、沖縄をさらに国際情報特区の拠点をつくっていくというようなものがつくられています。その中の指針として5つほど挙げられております。  第1に、アジア・太平洋地域の情報通信拠点形成に向けた、グローバルなインターネットエクスチェンジを沖縄でつくっていく。これは沖縄の持っている、いわゆる東南アジア・太平洋における地理的なポジションと、先ほどご紹介しました海底ケーブルが沖縄に上がっているということを生かすことによって、アジア・太平洋の情報通信の拠点をつくっていこうというような、1つの指針でございます。  第2は、これらを活用することによって、地域情報通信ネットワークの高度化を図っていくこと、第3は国内外の情報通信関連企業や、研究開発などの機関を沖縄に誘致、集積することによって、沖縄の振興開発をバックアップしていくこと、第4は国内外のコンテンツ、アプリケーションの集積を図っていく、第5は情報通信技術などに明るい人材を大量に、早期に育成していくという構想です。このような内容を持った「沖縄国際情報特区構想」というのが、国によってつくられて、これが推進されていくことになっております。  そういう面から見ますと、沖縄のこれからの産業育成という意味では、インキュベート体制、研究開発体制あるいは国の諸々の施策体制という意味では、私どもはそれを最大限に活用することによって、大きく実行していこうというような形を持っております。  この世界というのは何といいましても、行き着くところは人材の一言に尽きるわけです。人材を育成するために、去る7月に「情報通信関連分野の人材育成に関する基本方針」というのをつくらせていただきました。学校におけるこの世界の教育状況、あるいは産業界の人材育成、地域における産業人材育成というような状況を、ご参考までにお話しさせていただきます。今沖縄の教育機関におけるインターネットの接続率なんですけれど、小学校で平均71.3%、これは全国が約50%と言われていますので、小学校におけるインターネットの接続率は高い状況になります。中学校で84%、全国平均が67%と言われております。ところが残念ながら高等学校にいきますと67%、全国平均が80%ですから、高等学校における接続率が若干劣っております。  一方、教育機関における先生たちの状況でございますけれど、コンピューターを指導できる先生の比率が、残念ながら小学校で30%、中学校で25%、高等学校で26%、平均しますと27%です。まず若い頭脳を育成していく教育機関の場で、指導できる指導者の比率が27%ですから、非常に大きな問題を抱えています。どのあたりに課題があるか明確にご理解いただけるかと思います。  地域における人材育成といたしまして、先ほどお話しましたように、沖縄本島、宮古、八重山にそれぞれ1カ所、マルチメディアセンターを設置しておりまして、2万人近い利用者がいるということです。  沖縄の人材育成は、どちらかといいますと遠大に教育しながら大切に育てていくというのはもう間に合わなくて、あれだけの企業が急速に来ていただいたわけですから、即戦力的な従業員を育成しなきゃならないということで、実務・実践型の研修が先行したという、若干のそういう特徴を持っております。  ちなみにその教育研修実績をご紹介させていただきますと、まずは一番人手を多く採用していただきましたコールセンターでございますけれど、そういうコールセンター関係の人材育成は、平成12年度が約1,800人、それから13年が現在までに1,700人ほど、大急ぎで企業の方々の戦力となるような人材育成を、コールセンター関係では一生懸命進めているところでございます。  それだけではなくて、ハイレベルの人材育成ということが必要でございます。日本オラクルにいろんな意味でのバックアップをいただきまして、その研修も進めております。平成12年度が初級段階で60人研修しまして、資格を取ったのが42名、上級段階で研修したのが30名で、資格を取ったのが12名、エキスパート段階で研修したのが13名で、資格を取ったのが7名ということです。現在この分野のエキスパートの数は、日本オラクルによれば全国47都道府県の中で十五、六位に位置する人数だそうです。そういった面では急速ですけれど、沖縄県内にもエキスパートの資格を持った方たちがこれだけいるということは、将来を明るくするうれしいことでございます。  それだけではなくて、IT人材育成ということで、JAVAのプログラミングの講習なども進めています。こういうようなハイレベルの研修を含めて、平成12年度は760名92コースの研修を行いました。平成13年度になりますと、約100コース850名の研修を行っております。沖縄にはこういった上級レベルの方たちがいるということと、今後も増やしていきたいと思っておりますので、沖縄の人材を大いに活用していただきたいと思います。今後は、現状を上回るようなITの高度人材育成事業を県内で検討していきたいと思っております。  もう1つ、県内における人材育成で、先だって内閣府沖縄担当大臣の尾身大臣が突如ご発表なさいました、沖縄に大学院大学をつくるというものでございます。早い時期に開校にこぎつけたいということで、既に第2回の準備会議が開かれております。まだ具体的なものは明確になっておりませんけれど、目指すところは、いわゆる科学技術立国を目指す日本の中で、世界最高のIT関係を中心にした大学院大学を沖縄に設置すると言うことです。沖縄のために置くということではなくて、日本の科学創造立国を目指して、最先端の大学院大学を、たまたま場所を沖縄に置くんだというようなことでございます。研究大学で世界最高のものができるということは、沖縄の持っているその世界に与えるインパクトあるいは影響などを考えますと、ほんとにうれしくなるような状況です。  大学院大学の構想によりますと、英語の教育、教職員の半分以上は外人をあてるということで、まさに国際レベルの最高のものを持っていくという状況でございます。沖縄の人材育成ということにとっては、その持つ意味は、本当にびっくりするような状況だろうと思います。そういう研究機関ができることによって、それを求めて世界各地からいろんなレベルの方たちが来るわけですから、その人たちの影響をみると、もう涙が出るくらい私どもは嬉しくなるという状況と思っております。  最後になりますけれど、こういうのを踏まえながら、今後沖縄県がどのような施策を進めていこうかということでございます。幸い私どもは1972年に本土復帰しまして、国の援助によりまして、10年計画を三度進めてまいりました。今年度で三度目の沖縄振興開発計画が終了することになります。来年から、また新たな振興開発計画をつくるわけでございますけれど、今その準備を進めています。県としましても去る7月に、これから21世紀の10年の沖縄振興開発計画の基本的な考え方を、国に提示させていただきました。もちろんその中の産業振興の柱として、情報通信産業を位置づけたことは言うまでもありません。国へ要望を出しまして、それに基づき、去る8月の下旬に国からうれしくなるような回答が出ております。これからの沖縄の情報通信産業というのは、いろんな意味で先ほどの「沖縄国際情報特区構想」、いわゆる国の政策としても進めていくんだというような状況があります。それをサポートしていくための諸々の法制度あるいは仕組みが必要になってきます。仕組みとしましては、例えば、沖縄の中に国際情報特区の地区を指定することによって、そこの地区の中で営業をなさる企業に対しては、行財政上の諸々のバックアップ体制をとっていくことが上げられます。  この名護市は皆さんご存じのとおり基地の問題で若干いろんなご苦労をかけておるわけでございます。名護市としましては、これからの振興開発の1つとして、国際情報金融特区をつくって、名護市開発の核にしようというような政策を準備しております。私ども沖縄県としましても全面的にバックアップするという意味で、名護市と協力しながらそれを進めていくこととしております。国としましても、それについてもご理解をいただきまして、それなりのバックアップ体制、沖縄国際情報金融特区がこの地に実現して、日本にはなかったような制度として、新たな脚光を浴びるところになっていくと思います。  駆け足でお話させていただきました。去る7月に「沖縄e−island宣言」をさせていただきまして、そのために行政的なものを進めるだとか、あるいはインフラを整備するだとかありますけれど、沖縄にとって一番重要な問題は、やはり情報通信関係をいかに産業化して、沖縄を支えるような企業につくり上げていくのか、その結果として県民生活の向上だけではなくて、東南アジア、太平洋アジア諸国における情報通信拠点としての役割を、沖縄がどのような形で果たしていくのかという夢を描きながら、私どもは宣言させていただきました「e−island沖縄」の実現に向かって、全力を尽くしていきたいと思っております。もちろん遠大な計画ですけれど、それを実現するためには、皆様の絶大な応援が必要になってくると思います。  今後とも引き続き皆様のご支援とご指導をお願いいたしまして、報告を終わりにさせていただきます。ご静聴ありがとうございました。 (文責:情報化フェスタ実行事務局)