6.海外事例紹介   講 師:アンネ・リンドブラッド-アホネン氏(Ms Anne Lindblad-Ahonen)       フィンランド ヴァンター市情報技術プロジェクトマネジャー   テーマ:「ICカ−ドを使ったセキュアな統合型行政サ−ビス」        (Information Technology, Project Manager, City of Vantaa) ●概 要:  電子政府・電子自治体の実現においては、行政サービスの質的な向上や安全性の確保、あるいは住民サービスにおける利便性向上を目的として、ICカードの活用が重視されています。特に、フィンランドでは、健康保険証や自治体の行政カード(city card)を初めとしてICカードが広く普及していることを背景に、セキュアな統合行政サービスを実現するため、国民の識別機能(IDカード)とデジタル署名の機能を兼ね備えた多機能ICカード(FINEIDカード)の導入が政府、自治体、民間企業が協力して1999年から進められています。このフィンランドの取組みは、世界で最先端をいくものと評価されています。  また、フィンランドの自治体では、早くから障害者や高齢者向けの公共交通機関の無料乗車券等、様々な行政サービスでICカードが利用されています。現在、自治体では、行政カードとFINEIDカードの統合を進めています。この結果、市職員や生徒・学生,高齢者などの身分証明、市営図書館における図書の貸出や小額料金の支払い、市営プールなどの公共施設におけるチケット、市営駐車場の利用料金支払いなど広範な機能が、1枚のICカードで実現されます。 今回紹介させていただく事例はフィンランド北部の代表的な都市であるヴァンター市で、人口はおよそ20万人、同国第4の都市です。ヴァンター市は国際空港を持ち、IT産業の育成に力を入れています。古くから市の行政カードを導入し、幅広い行政サービスで活用してきました。たとえば、市の図書館やスポーツ施設などの利用、高齢者や障害者の無料交通券などがあります。また、政府が整備している国民IDカード(FINEID)への対応も早くから取り組んでいます。 (1) はじめに  皆様、こんにちは。私はバンター市よりまいりましたアンネ・リンドブラッド-アホネンと申します。今日は、このバンター市で利用されている行政カードについて、皆様にご紹介したいと思います。 【スライド「目次」より(9.プレゼンテーション資料集参照 以下同様)】  それでは、まずバンター市の概略についてお話をします。その後、行政カードの取り組みの経緯と行政カードプロジェクトについてお話をし、次にその中でも特に最新の技術を使っている電子的本人識別についてご説明し、最後に、今後どのような活動計画があるかということについて、それぞれお話をしていきたいと思います。 (2) フィンランド バンター市 【スライド 「フィンランド バンター市」より】  フィンランド バンター市は、フィンランド第4の都市です。人口は,約18万人です。バンター市はヘルシンキの首都圏の一部になります。そしてヘルシンキバンター空港が位置していますので、フィンランドの玄関口となります。フィンランドの首都はヘルシンキですが、先ほど言いましたように、バンター市はその首都圏の1つになるわけです。 【スライド「バンター市の風景」より】  さて、バンター市の生活環境について、少し写真を交えながら、どのような感じなのかということを見ていただきたいと思います。まずは、バンター市の四季の写真をご覧ください。また、ユーレイカ・サイエンスセンターという施設もございます。それから、バンター市民は、平均的に写真のような住宅に住んでいます。 【スライド「バンター市の行政サービス例」より】  さて、それではバンター市の行政サービスについてお話ししましょう。市は、いろいろな役割を担っています。例えば教育サービス、文化やレジャーサービス、デイケア、保健医療、社会福祉、土地利用計画、環境保護、そして交通、道路整備とそれの維持も含みます。このようなサービスを市民に対して提供しています。 (3) 行政カードと取り組みの経緯 【スライド「フェーズ」より】  さて、それでは行政カードのプロジェクトについてお話ししましょう。プロジェクトは、2つの段階を経て行われてきました。第1段階では組織に焦点を当てたもの、そして第2段階はオペレーションに焦点を当てたものになりました。 まず、開始は1993年です。フィンランドの運輸・通信省が初めの段階から参画しました。そして、これに対して興味を持った市が参画をしたわけです。94年の春、通信省がこのようなアプリケーションシステムを搭載したカードを発行しようということで、計画を立てました。95年にも法整備が行われました。  それからエスポー、バンターを含めた各都市が、その後第2段階になって参画をしてまいりました。このように2つの段階に分かれてカードのプロジェクトが行われてきました。 【スライド「コンセプト」より】  それでは、誰がカードや電子財布と言われるものを発行しているのかということですが、もちろん銀行がその1つです。メリッター、サンポーを含めた3つの銀行が三大フィンランドの銀行ですが、その間でいろいろな共同作業が行われてまいりました。  その後第2段階になりまして、もっと柔軟性を持った活動が出てきました。それぞれのサプライヤーから個別のアプリケーションが出てきたのが第1段階、そして第2段階になりますと、共通のアプリケーションが現れてまいりました。そのように出てきたそれぞれの仕様が、現在このカードに使われてきています。  さて、このカードのコンセプトについてですが、まずカードの発行者、そして電子財布と呼ばれるものの発行者は、銀行であったり市であったりするわけです。第2段階になりますと、市と銀行、そして電子財布については銀行のみが発行者となっています。 【スライド「行政カード」より】  行政カードはこのような形になっています。第1、第2段階とデザインは同じです。この顔写真をつけるものとつけないものとがあります。 【スライド「バンター市における行政カード」より】  さて、周辺の都市との共同ですが、オウル市、ポール市、エスポー市、バンター市というような市が連携して、このカードの活動を行っています。バンターとオウル市は600キロほど離れています。ということで、同じアプリケーションを各市で使っていこうということですが、どのようにして始まったかということです。 【スライド「バンター市における行政カード」より】  まず、95年に各市が計画の公表をします。96年に首都圏が計画の公表をします。そして97年、この行政カードプロジェクト2が始まりました。それから各銀行と電子財布ということで、協同の作業が始まります。98年の春になりますと、入札の招請が行われまして、98年の秋には構築が開始され、2000年に利用開始となりました。 【スライド「市にとっての便益」より】  さて、このような行政カードを利用しますと、どのようなメリットがあるのでしょうか。 行政側にとりましては、新しい行政サービスを開発するための知識が得られるということです。それからスポーツ関連施設の管理や市民への利用状況の管理ができます。例えば、スイミングプールなどで、どのように管理をしていくかというようなこともできます。  それから電子財布と呼ばれるものによる支払いができます。 そして、いつでも、どこでも24時間、年中無休のサービスが得られます。それからサービス利用の安全性、これは非常に重要な部分になります。このような行政サービスを提供することで、市のイメージアップにもつながります。現在私がここでお話申し上げていること、これも市のイメージアップになるわけです。 【スライド「市民にとっての便益」より】  それでは行政側ではなく、今度は利用者の、市民とってのメリットとはどういうものでしょうか。まずカードの保有枚数が少なくなります。大体1人10枚、20枚ぐらいのカードを持ち歩いているというのが常ですが、この行政カードが登場することで、財布に入れておくカードの枚数が少なくて済むわけです。  それから紙によるチケットの発行数も少なくて済みます。いろいろな紙のチケットを使ってきましたが、それにとって代わることができます。それからデータ・セキュリティを高度化できるということ、サービスは24時間受けられるということ、このようなサービスによって、市民の時間とお金の節約につながるというメリットが出てきます。 【スライド「(無題)行政カードのアプリケーション」より】  では、実際このカードで何ができるのかということです。 現在、10のアプリケーションがあります。1つのカードで10のアプリケーションです。今8キロバイトになっています。オペレーションシステムは4.3になります。  駐車システム、パーキングシステムもそのうちの1つになります。このカードによって本人を識別して、そして駐車場の支払いがこれでできます。これを電子財布でも行うことができます。  もう1つはアクセスコントロールです。これを行政カードで行うわけですが、今アクセスコントロールカードというものを、それぞれ施設の職員と利用者が別々に持つのではなくて、この行政カード1枚で、誰が入場して、そしていつその施設から出たか、ということの管理が可能になります。  またスポーツやレジャー面でのアプリケーションも可能です。例えばスイミングプールなどの施設に利用が可能です。あとは博物館やコンサートの会場というような場所でも使うことができます。  それから、高齢者並びに障害者向けのタクシーバウチャーというのがあります。これはどのようにしてこのような人たちがタクシーを利用するかということの、利用の向上につながるわけですが、このタクシーの料金を市が負担しようというものです。しかし、それにはどの程度タクシーを利用する頻度があるかとか、どのぐらいの障害の程度かということが決め手となります。タクシーの運転手は有効なカードかどうかということを確認して、高齢者を乗車させる、するとその高齢者は、タクシーの料金を全く払わないで済むというふうになります。  それから、ディスティンクトと呼ばれるものがありますが、これもIDアプリケーションの1つです。これは現在EUの5カ国が参画しているものですが、フィンランドを含めたオランダですとかイタリアですとか、そういう国々が参加をしています。これは例えば、ギリシャに私が行くとしますと、あるいは逆にギリシャからフィンランドへ来られた場合、観光情報を得るというものです。しかし、まだこれは余り普及されておりません。  次は、図書館のアプリケーションです。来年もっと新しいシステムが出る予定ですが、暗号を使いますので、この行政カードを利用して、そして図書館の利用を図るほうが安全であるということです。ですから、図書カードではその暗号化ということができておりませんので、行政カードをなるべく図書館に利用してもらいたいと市では考えています。  また、食堂でもこのカードを使うことができます。食堂で食事をして、このカードで支払いをするか、若しくは電子財布を用いることもできます。何回、今月この食堂で食事をしたかというような記録が残っていきます。これは、例えば高齢者ですとかそのような人達にもいろいろ食堂を利用してもらおうということにもつながっていくと思います。いろいろなプロダクトをいろいろな人達のために開発しています。どのような人であってもサービスを使っていただけるようにということです。  それから、学校への通学サービス。これもこの行政カードでやってしまおうと考えています。それぞれ交通機関には違ったものがありますが、接触型、非接触型両方のアプリケーションが出てまいります。というようないろいろなアプリケーションが利用、利用可能になります。このようなアプリケーションは全て、銀行カードにも同じく活用することができます。このようなアプリケーション全て、銀行のカードに搭載することができてくるわけです。行政カードと同じ機能を持たせることが可能です。  企業向けのタクシーバウチャー、これも現在考えているところです。これはタクシーの運転手がそのバウチャーを受け取れないということや、まだお金がかかるということで、まだ利用はされてはいないのですが、今後活用していきたいというようなシステムです。  それから、公衆電話での利用、これは電子財布でもできますが、これも活用していきたいと考えています。  さらに、議会においてもこのカードを活用していこうとしています。市民がその議会に参画をしていけるようにということです。将来的には、そういうこともやっていきたいと考えています。  ということで、さまざまなアプリケーションがあるということで、これが市民向けのアプリケーションになっているということと、あるアプリケーションは市の職員向けのみのものもあります。それから、高齢者、障害者向けに限られているアプリケーションもあります。 【スライド「カードの利用方法」より】  では、実際にどのようにしてカードを利用するのでしょうか。 サービスポイントと呼ばれるところがバンター市には9カ所あります。このサービスポイントでアプリケーションの申し込みを行います。そして、ここでカードへのロードを行いまして直ぐにカードを発行してもらいます。  次に、カードへのロードが行われた後で、このカードを利用したい所へ持って行って、このカードを使います。その際、暗号、暗証番号これを利用するということです。例えば、図書館ですとか、劇場、タクシーの利用ということのさまざまな用途に使うことができます。  利用した後は、その次がクリアリング、決済という段階になります。ここで、誰がどのカードを持っているのか、利用した製品の価格はどれくらいだったか、どのくらいの金額を使ったかとかいうようなことで決済を行います。もし、カードを紛失した場合ですが何回位この市民がカードを使ったかというようなことで記録が残ります。そしてクリアリングが終わりまして、他のアプリケーションを使うことができますし、何回サービスを利用したかという記録が残されるわけです。  このカードの発行には、40マルカかかります。有効期限は現在3年ですが、後には5年位に延長したいと考えています。銀行カードを使いますと、最初は、銀行がサービスポイントとなります。そして、その後、私達のこの市のサービスポイントになるわけですが、銀行カードを使う時はまず銀行に行くというのがポイントとなります。 【スライド「現状」より】  さて、カードの保有者数はどのくらいかということを表にまとめました。表の左の列には、都市の名前が書かれています。そして、その各都市の人口とカードの保有者数を書いてありますが、バンター市は一番下になります。現在2,000名弱の人々がカードを持っています。もっとこのカードの普及率が上がればと考えています。市民全員が持つくらいになればいいなと考えています。 (4)フィンランド国民IDカード(FINEIDカード)と電子政府 【スライド「フィンランド国民IDカード」より】  この行政カードとは別に、フィンランドの電子国民IDカードというのがあります。これは、そのカードの見本なのですが、大体こういうふうな形、デザインをしています。 【スライド「フィンランド国民IDカードとは何か」より】  では、この電子国民IDカードとは一体何でしょうか。  ネットワーク上でビジネスや職務を遂行していく場合、何が必要になるでしょうか。例えば、電子署名が必要になる場合もあります。そして、データ交換の安全性を図るために、文章の暗号化ということも必要になります。もちろん、利用者の識別が必要になります。 利用者の識別方法ですが、ICカードを使います。そして、秘密鍵と公開鍵と呼ばれるものを使います。一つは本人識別のためです。そして電子署名の際に利用するということがあります。このカードは現在3年間の有効期限がありますが、来年度からは5年間有効になります。このIDカード発行には、160マルカのお金がかかります。 【スライド「認証機関/カード」より】  では、このIDカードを発行してもらうにはどうすればいいんでしょうか。 まず、警察に行きます。そして、ここで、本人かどうかの識別を対面で行います。このとき、自分の写真を2枚用意します。  次に、まずは匿名で、そのカードの発行業者からカードを発行してもらいます。それから、この人の情報がデータベースの所に行って処理をされます。そして、すぐに匿名で発行されたカードにこの情報を載せてカードを発行してもらいます。それから暗号、暗証番号をもらいます。そしてカードの発行になります。  それがまず、国民登録センターに行きまして、ここで登録されます。それから、X.500という形式で作成されているファイルにも行きます。  これらが全て完了した時点で、警察に行き、もちろんその国民登録センターで登録を済ました後ですけれども、その市民の方には暗証番号とカードが発行されます。ですから、まずは警察に行って、対面で本人の識別を行って、カードをもらう時も自分がその警察署に赴いてカードを受け取るということです。 【スライド「電子政府におけるインターネットの活用」より】  最近、電子政府とよく言われていますが、それは一体どういうふうに発展していくのかということを表した図をご紹介します。  フィンランドでも皆さんの所でもそうだと思いますが、まずインターネットで情報を提供するということがあるでしょう。それから、電子メールの形で電子メールを利用します。それからウェブ上の印刷可能な書式の利用、ICカードによる様式、カード所有者の強い識別を行います。そして、オンラインアクセスによる手続き等を行って、いろいろなサービスを複合して自動的に行うということがあります。この中で、電子的に本人の識別を行うという作業も出て来るわけです。 【スライド「オンラインサービス − 多くの質問」より】  しかし、多くの疑問も同時に上がってきます。 まず、カード所有者の強い本人識別、それから、電子署名はどのような時に必要なのかということです。電話や郵送で情報の伝達が済むという場合もあります。ですから、どのような時にこの電子署名というのが必要になるのかということです。場合によって電子署名が必要になってくる場合とそうでない場合があるということです。  次に、電子様式。これを作成する最善の方法は何かということです。電子様式たけではまだ足りない部分もあります。パソコンを家庭に持たない市民ももちろんいるわけです。パソコンの利用ができないという人もいます。このカードがあってもPCと共に使えないという人もいます。その辺の対応をしていかなくてはいけません。  それから、このような様式を必要とする人は一体誰なのかということです。様式というのは本当にいるのかどうかということを考えなくてはなりません。ですから、市民はいろいろな文書を必要としていますけれども、電子的にそれが本当に必要かどうかということです。  また、このような電子的なサービスと従来やってきたサービス、これをどういう風に組み合わせていこうかという問題もあります。一番いいのは同じ文書をインターネットでも公開することです。そして従来型のサービスも続けていくということでしょう。  メタファイルの使い方も重要です。フィンランドではどのようにして、電子記録の保存、管理を行うかということで、いろいろな計画を持っています。  それから、電子文書、電子署名の申請システムを考えなくてはなりませんし、手続全体をもう一度明らかにして見ていく必要があります。そして、文書を申請して送ると、いつその文書に対して決定が下りるのかということも分かっておかなくてはなりません。それをきっちり知るシステムを作る必要があります。 【スライド「オンラインサービス」より】  ということで、各家庭からあるいは公共のワークステーションから、あるいはその図書館の端末などからこういうサービス、アプリケーションに到達できるようにしなくてはなりません。インフォメーションキオスクと呼ばれる設備もあります。このようなオンラインインフォメーションキオスクを持っている市もいくつかあります。 【スライド「電子政府ソリューション」より】  では、この電子政府のソリューションとは一体どういうふうに行われているのでしょうか。まず、家庭で市民がカードリーダーを持たなくてはなりません。また、国民電子IDカードを持っておかなくてはいけませんし、そして、この行政カードというものが必要です。この行政カードにこのIDカードが格納されるということになります。 【スライド「電子政府ソリューション」より】  画面の左側にあるカードのうち、真中のものは社会保険庁が発行しているケラーと呼ばれるカードです。マクロシステムと呼ばれるパイロットシステム上で使われています。病院の情報ですとかそういうものが使われています。これを用いまして、各家庭でカードリーダーにより読み込んでいくわけです。  インターネットを通じましてサーバーにこれがつながる。家庭のパソコンに例えば文章が送られてきます。それに署名をして、書き込みをして送ります。それが、e−メールの形で市の職員の方に送られてくるわけです。そして、カードを持ちまして、インターネットを通じてサーバーにコネクトするということです。  この市の職員も市民の方も同じカードを利用していくわけです。それから、国民登録センターがこの間に入っていますので、本人の識別も可能ですし、もし、カードが利用できない、あるいは使用不可能という場合は、ここに連絡をすることができます。 【スライド「国民IDカードの電子的本人識別は市の行政カードに包含される予定」より】  ということで、この電子識別カード、つまり行政カードと国民IDカードをいつか統合して、一つにできるのではないかと我々は期待しています。  フィンランドでは、今、電子識別カードが一万種類も作られています。さまざまな所でこれを入手することができるので、それに伴って問題も発生しています。サービスが上手くいかないとか、そのためにそのカードが利用できなくなる、ややこしい問題が起きています。 【スライド「銀行カードによる本人識別」より】  そこで、銀行による、銀行カードによる本人識別が主流になってきています。フィンランドの銀行では全てこのようなカードが発行されますが、銀行間の協定がありまして、同じようなカードを同じように使えるように協定が結ばれています。 【スライド「銀行の本人識別の利用」より】  銀行の本人識別の利用も先程のe電子政府によるソリューションに似たような形態になっています。これをソロ識別と呼んでいるのですけれど、市民にとってはカードリーダーがなくても使えるので、導入がしやすい仕組みになっています。  今日では、市民は殆どの人がこのような形で請求書の支払いを行っていますので今でも既に普及している仕組みです。先程と同じようにサーバーがありまして、又市役所の職員がいます。しかし、先程のように、国民登録センターに識別の確認をするのではなく、銀行がその識別を行います。  市の職員は情報を得たら、場合によっては、バックグランドプログラムにアクセスして処理を行います。 【スライド「署名がない場合」より】  様式によっては、署名をしなくてもよいものがあります。 ですから、市民がアプリケーションを使わなくても、書類を入手することができます。通常はユーザーコードとパスワードさえあれば接続することができます。署名が必要ない場合、パスワードがいらなくて、ただ単に書類を送るだけというようなこともできるわけです。サインが必要な書類もありますけれども、これは後から送るというような仕組みもとれるわけです。ですから、この仕組みで、市の方に直接書類を送っておいて、後から署名をするというようなこともできるわけです。  そうしますと書類が早く処理されて、決定が早く行われるという仕組みになっています。さまざまな方法がありますので、どのような方法で処理をするかということを、市民が選ぶことができるわけです。 【スライド「新しい電子取引システムの市民にとっての便益」より】  では、新しい電子取引システムは市民にとってどのように良いものなのでしょうか。どのような利益があるのでしょうか。  まず、公共部門と民間部門双方が将来提供できるさまざまなサービスを、市民が利用できるようになります。これらのサービスは、年中無休で利用することができます。  また、時間と費用が節約できます。何処にも行かなくても、自宅からさまざまな情報がアクセスできます。わざわざ出かけて行かなくても、ケラーカードなどを使って情報を得ることができます。 【スライド「課題」より】  もちろん、さまざまな課題もあります。カードを通して幅広い電子取引サービスができます。そのためにはさまざまなソリューションが必要です。  大切なことは標準化されたソリューションがあること、そして、市民の自由な選択があることです。このようなことを実現するためにはもちろん、法制度の整備も必要です。 【スライド「法制度」より】  あまり細かく申し上げる必要はないと思いますが、フィンランドではさまざまな法律が施行されています。たとえば、個人データ法、データ保護法、政府活動公開法、国民登録法、国民IDカード法、そして最後に電子行政サービス法などといった法律が施行されています。  また、新しい法律が2つ予定されておりまして、電子サービスの問題が起きた時のために対処するための法律などが考えられています。本人識別ですとか、署名において問題がある場合にどのように対処するかということが検討されており、来年から施行される予定になっています。 (5)バンター市における行政カードの現状と今後の課題 【スライド「2000年現在のバンター市の状況」より】  バンターの市の2000年現在の状況をご説明します。 左側にご覧いただけるさまざまな用途、さまざまな機能を数少ないカードに集約することができます。このような機能が全て一つのカードに集約できれば、皆様のポケットの中のカード5枚位は減らすことができます。  フィンランドではさまざまな機関がそれぞれのカードを発行しています。それぞれが電子識別を行っています。バンター市は市の行政カードがありますし、銀行は銀行のカードがあります。社会保険機関はケラーカードと呼ばれるカードがあります。そしてもちろん、国民登録センターは国民IDカードがあるわけです。 【スライド「サービスの統合」より】  このようなカードを、それぞれ他のカードの機能も持たせられるようにしたいと考えています。例えば、自分の持っている国民IDカードを持って、銀行カードの機能もそれに載せることができる。あるいはシティカードの機能を載せることができるというように、市民が選べるようにしていきたいと考えています。ですから、銀行カードに国民登録センターの情報がのるというようになります。  これはまだまだ進行中なのですが、徐々にケラーカードと国民登録センターが発行している国民IDカードが一つのカードになっていきます。これが来年施行される予定です。そうすると、カードのデサインが変わるのかも知れませんけれども、来年にはケラーカードと国民IDカードが統合される予定です。 【スライド「個別のカードから統合カードへ」より】  図のように、ばらばらにいくつもカードがあるわけですけれど、いずれ統合カードへ移行できると期待しています。  いくつかの市では統合カード、コンビカードと呼ばれるカードが既に実験的に使われています。このコンビカード、統合カードですね、これがこれから広げていけるのではないかと期待しています。接触が必要のものと接触が必要でない部分の2つの種類の用途があるので、更に用途が広がると期待されています。  現在、このような一番右下にある乗車カードという非接触型カードを使っている人が、国内では約100万人いますので、これも統合カード、コンビカードに載せていくことができればと思っています。この行政カードプロジェクトには、多くの機関が関わってきています。国の通信省が大きな役割を果たしています。  こちらの3つは、アプリケーションを提供する供給業者としての役割を果たしています。こちら側はアヴァント、銀行、電話会社、タクシー会社、バス会社そして国民登録センターなどがそれぞれ協力してこのような仕組みを作っています。ある意味で、さまざまな機関がパートナーとして活動していかなければなりません。もちろんさまざまな問題もあるため、交渉したり、相談したりしながら話が進められています。 【スライド「行政カードプロジェクト」より】  電子IDの技術的な部分についてちょっとお話します。 まず、フィンランド国民IDカードとしての機能、そしてもう一方でその他の機能としてさまざまな証明のためのアプリケーション、機能を持つことができます。従業員のための従業員証明であるとか、組織の会員証明証であるとか、さまざまな機能を持つことができます。このような機能を持たせるためにはこの行政カードのオーナーが同意しなければ、このようなアプリケーションを追加することはできません。ですから行政カードにこのようなアプリケーションをつけることになれば、このような機能を持たせることができるわけです。 【スライド「市の行政カード」より】  行政カードには、技術的な面でもさまざまな機能があります。カードの構成としてはこのようになっておりまして、行政カード、アプリケーションの部分と電子財布の部分と電子本人識別の部分、その他のアプリケーションとして、ポイントですとかチケットなどの発行などを行うことができます。 【スライド「フィンランド電子国民IDカード:FINEIDと支援技術」より】  新しい技術をどのように活用して、電子国民IDカードを更に発展させていけるかということをいつも考えています。  最近では、デジタルテレビ、衛星テレビ、モバイル、ケーブルテレビ、さまざまな問題に対してのソリューションとしてモバイルに対して、非常に期待が寄せられています。自宅のテレビやコンピューターだけではなく、モバイル携帯電話の普及率が今は大変高いので、非常に期待がされています。モバイルでのアプリケーションも非常に広がっていくでしょう。  また、情報キオスクなどもありますし、こういったものも増えていくと思いますので活用されるようになると思います。  エンドユーザー向けカードリーダーやソフトパッケージもますます必要になっていきます。これ以外にもさまざまなアプリケーションが可能ですし、これからも用途は広がっていくことと思います。 【スライド「フィンランド電子国民IDカード:学んだこと」より】  これまで学んだこと、教訓として得たことを上げてみたいと思います。 まず、互換性がとても重要だということです。国際的なコラボレーションがぜひとも必要です。  次にサービスが何よりも大切な部分であるということです。ですから、市民のために考えていかないと計画が上手くいきません。市民の役に立たないプログラムは何の意味もありません。サービス提供者のための簡単なパッケージも必要です。基本的なソフトパッケージの利用が可能になることも大切です。  エンドユーザーへの支援は組織的に行われる必要があります。自宅で使っている時に、さまざまな問題に直面するユーザーがどのように支援を受けられるかと、このサポートシステムを発展させることが大切です。インターネットにアクセスして情報を検索するとかコールセンターがあって問い合わせができるとかこういった仕組みが必要です。  利用の統合が重要です。認証やデジタルの仕組みがしっかりしていること、そして、暗号などが必要です。  カードリーダーの提供、そして広報が、組織的に行われなければなりません。カードリーダーをどこで入手できるのかなどといった情報を市民が皆わかるようにならなければいけません。  国民電子IDカードを使うにあたってこのカードリーダーが必要なのですが、今はカードリーダーが非常に高価ですので、なかなか普及させることができません。提供するべきだと思います。 【スライド「FINEIDカードを利用するサービス」より】  国民電子IDカード(FINEIDカード)を利用するサービスとしては、銀行ですとか、雇用年金基金、相互保険会社、バンター市、ツースラ市議会、フィンランド自治体協会などさまざまな機関が、サービスを利用しています。これらの機関は市民のためだけに使っているとは限らず、機関内で情報処理のためにカードを使っている場合もあります。 【スライド「FINEIDカードを利用する将来のサービス」より】  このカードを利用できる将来のサービスとしてさまざまな可能性があります。 このような機関が、これから可能性があると名乗りをあげているわけですが、今、ここに上げている全ての機関が本当にサービスを提供するようになれば、市民にとってはますます便利になっていくことでしょう。 【スライド「情報社会が必要とするもの」より】  今の時代、インターネットを使って、さまざまな取引が急速に増加しています。どの人もインターネットを使ってさまざまなことを行っています。情報の検索だけではなく、もっとあらゆるサービスに活用できるようになると思います。  これを安全に行うためにはデータ・セキュリティ−、暗号の高度化、信頼できるデジタル本人識別、デジタル署名などが必要です。これらは急速に開発されていますので、情報社会の重要な部分になっていくと思います。 【スライド「電子サービスの発展」より】  電子サービスの発展についてですが、初めの方を見ますと、ぐっと興味があがって、で一時の盛り上がりから少し下がって、現在は少し盛り上がりに欠けている部分があります。非常に残念なことですが、初めはこのカードに期待が寄せられるのですが、いざ、施行してみると意外と成長しなかったり、伸びなかったり、というような問題があります。もちろん、新しいものが導入される時というのは、いつもこのようなことがあると思います。新しいサービス文化が構築されて発展されていることを望みます。 【スライド「段階的な政府サービスの実現」より】  政府のサービスも、さまざまなサービスが段階的に実現されていきます。今は、そうですね、この表の半ば辺りにいるのではないかと思います。  一番上の方に、ネットワーク民主主義という言葉がありますけれども、若い人達に非常に人気のあるサービスです。しかし、まだまだ活用されていないというのが現状です。 【スライド「市の計画1」より】  主な市町村について、1993年、1995年、そして今年、公共交通輸送についての調査が行われました。公共交通輸送におけるこのシティカードなどのサービスの導入具合が、表に表されています。未検討のところももちろんありますが、以前には39%もあったのが今は未検討のところはたった16%しかありません。公共交通輸送というのは非常に重要なもので、行政カードの利用がもっとも一般的に使われる分野だと思います。 【スライド「市の計画2」より】  この調査では、将来カード発行者となるのは誰であるべきかという質問もされました。この調査の回答としては、市町村が圧倒的に多く発行者であるべきだという回答が得られました。80%が市町村と答えているわけです。2番目に銀行、3番目にマトカホートというバス会社の組合、その次にケラー、その次に交通輸送機関、その次にその他と言う回答が得られました。 【スライド「今後の活動計画」より】  今後の活動計画についてですが、今後はデュアルインタフェースカードを利用したアプリケーションを導入していきたいと思っています。そのような中には、交通輸送機関の関与があると、多くの人に普及させられることができる非常に良い用途だと思います。交通輸送機関というのは多くの人が使いますので行政カードですとか、銀行カードなどで皆さんが使う非常に良い機会だと思います。  本人識別がしっかりした仕組みを作るということもとても大切になっていきます。また、アプリケーションの拡充としてカードからモバイルへと拡大していきたいと思っています。今年、そして来年の初めにこのようなものの試験的な取り組みが行われています。 【スライド「フィンランドにおける行政カード施策1993-2000」より】  フィンランドにおける行政カード施策としましては、バンター市とポーリ市で行われていますが、最終報告書には2002年1月に、以下のホームページからダウンロードが可能です。さまざまな問い合わせに答えることもできますし、説明も行われる予定です。 【スライド「情報源」より】  こちらのホームページではさまざまな情報を提供していますので、関心のある方見ていただきたいと思います。バンター市のホームページ、エスポー−市のホームページ、ディスティンクトのホームページ、国民登録センターのホームページ、アヴァントは電子財布のホームページですね。ケラーは私どもの国の健康保険の機関です。  ご清聴ありがとうございました。 (文責:情報化フェスタ実行事務局)