7. テーマ別研究会 7.1 研究会A「電子自治体の構築と地域情報化への対応」 ●概 要:  情報通信技術(IT)の急速な普及は、社会・経済の構造に大きな変化を及ぼそうとしている。自治体においては、総務省から行政改革と情報化を目指す電子自治体の構築に向けて早急に取り組むべき事業にその対応を要請されている。また、地域情報化の推進にあたっても、電子自治体の基盤をベースに行政サービスは情報提供から住民が自治の主体である視点へシフトをしている。  一方、情報化まちづくりの実現には、自治体規模、地域情報連携、行政改革、首長方針、財政、人材・スキル、投資・運営コストなどの面から厳しく複雑になってきており、自治体の対応にも温度差がみられる。  これら自治体の状況を踏まえて本研究会では、新しい社会経済の枠組みにおける地域的優位性を目指して取り組まれている識者によるプレゼンテーションと研究会参加者との情報交換を通じて、解決に必要な示唆やアドバイスなどにより相互のレベルアップや交流を図る。 ◆司会:鈴木邦彦 情報化フェスタ実行事務局 ◆パネルディスカッション参加者(発言順)  ・新谷 文夫氏 日本総合研究所創発戦略センター所長(コーディネータ)  ・岸本 建男氏 名護市長  ・中司  宏氏 枚方市長  ・廣川 聡美氏 横須賀市企画調整部参事情報政策課長  ・茶谷 達雄氏 都市情報システム研究所長  ・三田  啓氏 経済産業省通商政策局通商調査官、商務情報政策局ICカード担当 鈴木:ただ今より「全国地域情報化推進会議〜情報化フェスタ2001〜」の2日目のテーマ別研究会A「電子自治体の構築と地域情報化への対応」についてパネルディスカッションを開催します。皆様、お忙しい中多数ご参加いただきまして、大変ありがとうございます。私は、ニューメディア開発協会の鈴木と申します。本日のパネルディスカッションの進行役を務めさせていただきます。どうぞよろしくお願い申し上げます。当初のプログラムのご案内の中から、経済産業省にも参加をしていただくことになりましたので、よろしくお願い申し上げます。  それではパネルディスカッションの進行に当たりまして、ショートプレゼンテーションを開催させていただきます。まず、コーディネータ、各パネリストの順にお願いしたいと思っております。  最初に、本日コーディネータを務めていただきます、株式会社日本総合研究所創発戦略センター所長新谷文夫様、よろしくお願い申し上げます。 新谷:ただいまご紹介いただきました、日本総合研究所の新谷でございます。本日は、これから12時までの間、ディスカッションのコーディネータの役割を負わせていただいております。皆様どうかよろしくお願いいたします。  さて、私のほうからのショートプレゼンテーション、極めてショートに行いたいと思っております。  今日、こちらに私がコーディネータとして招かれた理由というのが、今皆様ご覧いただいております、日本総合研究所で始めさせていただきました「電子自治体フォーラム」、こちらの関係でお招きをいただいているのかなと考えております。勝手に「日本最大のNPO」というふうに名付けさせていただいているのですが、私どもがスポンサーをさせていただきまして、全国の自治体様、2001年の9月現在で248の現場の職員の方に集まっていただきまして、今後、いかに電子自治体を進めていくかと、このあたりを議論させていただく母体を運営させている関係で、今日のお話をさせていただくことになっております。  まず「電子自治体フォーラム」というものがどういう活動をやっているか、何を目指しているかということだけ、冒頭に簡単にお話を申し上げたいと思います。皆様よくご存じのとおりで、今日もまたさまざまな専門の方のお立場からお話をいただくことになっていますが、「e−Japan構想」、e−Japan2002のプログラムというのが、着々と今日本全体では動いていると思っています。ただ、一方で「e−Japan構想」という極めて大きな国レベルの方針が、いかにその地域の中で具体的に根ざしていくかと、このあたりを我々としては皆様とともに追求していきたい、この気持ちがありまして「電子自治体フォーラム」を始めさせていただいたということでございます。  何よりも大事なものは何かというと、明確なビジョンであろうということで、後ほどエフィシャンシー、エマージェンシー、エコロジーと、カタカナ文字で恐縮ですが、このあたり詳しくお話し申し上げますが、一言で言いますと、自治体が電子化を推進することによりまして、いかに、これまでにない地域の新しい住民サービスとか、地域の中での新しい企業サービスを創出するか、このあたりをビジョンの最上段に掲げて活動させていただいています。  具体的にこちらの会場にいらっしゃる方も、ぜひこの「電子自治体フォーラム」の活動をご利用いただきたいと思います。極めて具体的に申し上げますと、ビジョンの実現のために、まず皆様に、一体こういう電子行政とか電子自治体の分野、世界中、それから日本中で何が起きているかということを、インターネットを通して提供するというようなことをさせていただいております。  こちらに書いてございますとおりで、インターネット上にフォーカスレポートを掲載させていただきまして、一体、アメリカの調達分野で何が起きているかとか、日本全国、そちらに書いてありますような事例のところで何が起きているか、私どもとしては、このあたりから提供させていただいているということです。  ただ一方で、先ほども申し上げましたとおりで、「e−Japan構想」という極めて大きな目標に向かって歩くときに、実を言うと、現場の一つ一つを見ていくと、この大きな構想に対して、現場としてはどういう具体策を打てばいいか、どう対処していくべきかを、やはり生の声で議論していただくことが必要だろうと思っています。これは、なかなか構想とかビジョンのレベルでは見えてこない、本当に今の仕事のやり方はどうにかしないといけないとか、そういうレベルでの議論をしていかなくてはいけないと思っております。  先ほど申し上げました248の会員の方と、インターネット上でそういう知恵を深めるという意味で、テーマごとに、こちらに書いてありますような議論を深めさせていただいています。結構おもしろいのが、今日は三田補佐もいらっしゃっていますけれども、地域でICカードを使っていこうというようなときに、うーん、国が何を考えているのかということがもうちょっと明らかになると、我々も手が打てるのだけどなあというような話が結構生々しく出てきたりするのが、このワークショップです。  一方で、私どもといたしましては、ビジョンだけではなく具体的なアクションにつなげていこうということも考えておりますが、先ほどのスライドでお見せしましたように、インターネット上でいろいろな議論をするとともに、具体的にそのビジョンをアクションのレベルまで落していこうということで、特定の分野でいくつかの活動をさせていただいております。  例えば、公共電子調達をどう考えていくかということで言えば、アメリカの極めて優れた事例を日本に持ち込んできたときに、一体何ができるのかと、このあたりにフォーカスをしながら、今プロジェクトを動かしています。  それから2つ目でございますけれども、やはり地域の情報を地域の方々にきちっと届けていくというようなことも重要であろうということで、その地域ポータルサイトのような動きもさせていただいています。  この会場にいらっしゃる方々、行政の方と民間企業の方がいらっしゃると思うのですが、例えば、こういうふうに問題を設定していただけると、地域の情報を地域住民の方にお届けすることの重要性というのでしょうか、極めて深く理解をしていただけるのではないかと思います。わかりやすく言ってしまうと、行政にとっての住民は民間企業にとっての顧客なのですね。この住民と顧客というのが、実は生活者という意味では1人の方ということになります。  そういう意味で申し上げますと、こういう地域ポータルサイトのようなものを検討するときに、重要なものは何かと言えば、行政と民間がいかに相乗りをしながら、うまく生活者の方に情報を提供していけるかということだと思っております。こんなようなプロジェクトも推進させていただいております。  それから、地域ICカードという意味では、私どもの会社はもともとクレジットカードとかデビットカードとか、そのあたりのことを追っかけてきておりますので、このあたりのカードが、果たして地域でどういうふうに融合して使われていくのかということをテーマに、プロジェクトを動かしております。具体的に申し上げますと、極めて優れた技術が今日本には出てきていると思っています。この優れた技術を使って官と民がいかにうまく調整をしながら、新しいサービスを住民に提供していけるかと、このような視点を持っております。  それから4つ目ですけれども、「eラーニングのあり方」ということで考えております。ご存じのとおり、そのIT講習が日本全国各地で行われておりますけれども、やはり講習を講習だけで終わらせない。実質的にITのリテラシーを高めるためにはどうしていったらいいかということをテーマに、私どもの言葉で申し上げますと、スマートランニングというようなことで話を進めさせていただいていると。お時間の関係で簡単に申し上げると、ビジョンとアクション、このような形で結びつけていきたいということを考えているわけです。  最後に一言だけ、先ほど申し上げると言ったことをここでご披露したいと思います。「e−Japan」という極めて大きな国レベルの構想というのを、やはり地域でも「eコミュニティ」という形で実現されていくべきではないかと、こんなふうに考えています。ただそのときに重要なのは3つです。効率を追求すること、それから2つ目が創発的な動きをしていくこと、3番目が調和をとりながらやっていくということです。  効率は、よくご存じのとおり、例えばITというものを導入したときに何が起きるかといえば、まず真っ先に今までやっていた仕事のやり方を、もっともっと効率的にしていきましょう。人が10人かかるのであれば5人にしていきましょう。あるいは予算を減らしていきましょう。そういうことが追求されていくということですけれども、これはもちろん言うまでもないことです。  ただ重要なのは、2番目の創発だと思っています。例えば、インターネットというのはどういうツールかというのを、この会場の皆さんはよくご理解いただけていると思うのですけれども、これは以前、情報化、情報化と言っていた時代とは一つだけ異なることがあります。どういうことかというと、インターネットを使うと、物理的な空間とか時間的な距離というのを縮めることができ、かつ、また双方向で議論をすることができるということになります。ここで重要なのは、例えば地域の産業でありますとか、地域の経済の活性化、地域の住民への新しいサービスを考える上で、そのインターネットというのをフルに活用しながら、やはり新しい何かを生み出していく活動だと思うわけです。効率だけ追求していっては、これはどんどん経済という意味でもしぼんでいってしまう。したがって、新しいものを同時に生み出していくという創発が重要だろうと思っています。  その上で、3番目の調和ですけれども、一言、地域の中で行政だけが情報化されてもだめ、民間企業だけが情報化されてもだめ、住民がどんどん進んで、この地域はなかなか情報化が進まないんだよなといって、自分だけリテラシーを高めていってもだめ。そういう意味では、こちらに書いてありますとおり、行政・民間・教育、そして住民が共に手に手をとりあって相互進化していくのが、地域の情報化の本当の意味ではないかと考えているところです。  少しコンセプトペースでお話を差し上げましたけれども、今日はパネリストの方々の貴重なご意見をいただいて、少しでも具体的な課題が見えてくるように努力をしてまいりたいというふうにお伝えいたしまして、私からのプレゼンを終了させていただきます。  どうもありがとうございました。 鈴木:新谷様、どうもありがとうございました。どうぞ席へお座りください。  次に、各パネリストからお話をいただきます。開催地である岸本建男名護市長、よろしくお願い申し上げます。 岸本:ただいまご紹介をいただきました、名護市長の岸本建男です。共催者でもありますので、一言ごあいさつを申し上げたいと思います。  今回の開催に当たり、情報化に向けた名護市の取り組みについてお話をさせていただきたいと思います。  まず21世紀のIT戦略「豊かなネットワーク型社会新時代を探る」というテーマで、「全国地域情報化推進会議、情報化フェスタ2001年」を本市で開催していただきましたことに対し、主催者であります経済産業省、共催の沖縄県、実行事務局の財団法人ニューメディア開発協会に感謝を申し上げます。また、ここにお集まりの皆様には、サミットが開催されましたこの場所からいろいろな情報をお持ち帰りになるとともに、名護市の持つ将来性を感じていただきますようお願いを申し上げます。  名護市では、昨年のサミットの取り組みで培われました「市民参加型の行政」を積極的に推進しているところですが、その中で、ITの果たす役割は大きなものがあると考えております。現在、IT推進の先進市町村に学び、追いつくように努めているところであります。それではプレゼンテーションを行います。  名護市は北部地域の拠点都市として、活力ある都市を形成するため、産業経済基盤の整備、生活環境の整備、教育環境の整備及び長寿福祉社会の実現に向けた市政運営に全力を傾注してまいりました。その中でも、1999年4月に開館した人材育成、企業育成を担うインキュベーター施設としての名護市マルチメディア館では、IT関連企業の社員約40人がアニメやゲームソフト、CG作品の制作に取り組み、またパソコン研修では年間80講座が開校され、月に400人から500人の利用者があります。  パソコンや周辺機器が那覇をはじめ、首都圏ともギガビットと呼ばれる大容量超高速通信回線で結ばれ、ネット上では首都圏と変わらない環境にあり、2000年9月には通信放送機構、いわゆるTAOの沖縄情報通信研究開発支援センターも併設され、研究開発用ギガビットが接続されました。  雇用の状況としては、2001年3月、マルチメディア館だけで約150人の新規雇用が実現し、情報通信関連産業の高度化と研究開発拠点として、北部拠点都市としての一部を形成しております。  昨年12月には名護市マルチメディア館を中心に、名護市役所、中央図書館、観光協会、北部医師会病院、名桜大学、やんばる物産センターの情報発信7センターを設置いたしまして、名護市55行政区と市内26の小中学校及び公共施設等を、光ファイバーケーブル・無線LAN等で結んだ名護市地域イントラネット基盤整備も完成し、行政・教育・医療福祉・観光・防災等の関連情報を発信、受信することにより、インターネット利用を促進しているところであります。  名護市マルチメディア館は、今年整備拡充を行い、外資系企業2社を含む6社、約45人の入居が決定いたしました。来月からこの増築した2階の部分に6社が入居することになっております。また、同敷地には地球環境に関するデータを収集、蓄積・確保し、国内外の研究機関、研究者及び一般国民に海洋環境情報を公開する国際海洋環境情報センターも建設中であり、さらに新規雇用の創出が見込まれているところでございます。これは来月オープンをいたします。  次に、本市では一般市民への情報技術リテラシー向上に努力しておりますが、市職員をはじめ市民の情報技術リテラシーの向上も、さらに図る必要があります。行政のIT化においては、IT推進の有効な行政改革案を、いかに提案し施策を推進していくかがポイントであり、市職員全体がITを考えていかなければいけない状況にあると思っております。  さらに、本市職員が市民に対しどのようなサービスが提供できるのか、各種サービスについての意識の高揚が課題でありまして、解決に向けて努力をしていかなければいけないと思っております。IT化を推進することで、市民にとって、情報通信は電気・水道と同じライフライン化していくということになると思いますが、その際、個人情報の保護をはじめとするセキュリティの問題が、重要な課題となってくるというふうに思っております。  次に、本市においては、イントラネット基盤整備事業でインフラは整備されました。もと郵政の補助事業でイントラネット整備が行われました。さらに行政の情報ネットワーク基盤整備の3つの側面、1つは1人1台のパソコン導入、これについてはほぼ完了いたしました。また本庁内のLANが整備され、インターネットへの接続も完了しております。残りの2つ、ITの活用で必要な情報を必要な人へどれだけ提供できるかというアウトプットのレベル、さらに効率性・経済性が図られ、住民満足度の向上あるいは産業活性化などに、今後どういうふうに寄与していくかということが大きな課題だと思っております。  それには、市職員の情報化に対する意識をいかに改革するか、情報化についての理解不足を解消することで、各部門の仕事の仕方を変え、市民に対してよりよい行政サービスを提供していくために、行政として情報化のコンセプトを明確にしていく必要があるというふうに考えております。そのため本市では、私を本部長とした「名護市IT推進本部」を発足し、各作業部会を設け、積極的に行政改革を推進して、市職員の意識改革をはじめ、市民に対する行政サービスに至る情報化施策を講じていく考えでございます。  国が推進している「e−Japan基本計画」や地域IT推進のためのアクションプログラム等において、電子自治体に向けて急速な対応が迫られている中で、前に取り上げましたとおり、情報化推進における人材の育成も急務でありまして、本市においても、名護市マルチメディア館をはじめ、名護市役所4支所、名桜大学及び公民館等を利用したパソコン講座を設け、今、情報技術リテラシー向上に努力をしているところでございます。  しかし、IT化は何のために、誰のためにという観点から、行政の基盤づくりの目的を明確にしていく必要があり、1つに住民満足度、2つ目に行政の効率化、3つ目には住民参加型による地域の活性化、振興を図るためにも、コミュニケーションの仕組みづくりをしていかなければいけないと思っております。今後、さらなる市民サービスの充実を目指し、重点的に教育・医療福祉・行政の情報公開に向けたコンテンツの充実を図り、ライフサイクルサービスとして、市民に焦点を当てたバリアフリー的な、市民参加型の市政づくりを目指していきたいと思っております。  今後の地域における情報化と電子自治体ということについて申し上げますならば、北部中核都市、名護市は沖縄県の本島の北部、約12万人の小さな人口しかありませんけれども、沖縄県の地域としては非常に広域な地域でございます。この北部広域の中核都市を目指している本市においては、近隣町村との密接な連携を強化し、相互の情報化を推進していくことで、産業経済の基盤整備、生活環境の整備、教育環境の整備及び長寿福祉社会の実現に向け、北部広域を視野に入れた活性化を図っていく考えであります。今後、地理情報システム、ポイント気象情報システム等を取り入れた地域情報の、行政での活用を北部地域住民へ提供し、防災等に生かしていくこと、あるいはそのシステムを利用することによって、農林水産業の情報化を推進する。若者の第一次産業への就業機会の拡大等を図りながら、北部広域の活性化を進めていきたいと思っております。  そのためには、北部広域におけるデジタルデバイドを解消していかなければいけません。その上で、行政として、個人情報及びセキュリティ問題についてのルールづくりも重要であり、早急に取り組まなければいけないと考えております。  今後も多様化する行政課題の解決や、少子・高齢化社会に対応していくためにも、情報技術の活用が不可欠と考えております。市職員の共通認識のもとで情報化が進められ、市民ボランティアの協力を最大限に活用しながら、市民参加型のシステムを構築することによって、電子自治体実現への第一歩を図りたいと思っております。  ちなみに申し上げますならば、9月に名護市の定例市議会がございました。地域ボランティアの活動によりまして、名護市には55の行政区があると先ほど申し上げましたけれども、55の行政区にネットで市議会の様子を放送いたしました。市民が公民館で市議会をリアルタイムで見ることができたと、実はこういうこともスタートをしております。そういう意味で、地域のボランティア活動を最大限に生かしながら、そして市職員の意識を改革しながら、何とか情報化を進めていきたいなというふうに思っております。 どうもありがとうございました。 鈴木:岸本市長、ありがとうございました。どうぞ、お席のほうへお移りください。  次に、名護市と姉妹都市である大阪府枚方市長中司 宏様、よろしくお願い申し上げます。 中司:皆さん、おはようございます。ただいまご紹介いただきました大阪府枚方市長の中司でございます。今お話にありましたように、地元の名護市さんとは5年前から友好都市の関係を築かせていただいています。  枚方市は、大阪市と京都市のちょうど中間に位置する、いわゆるベッドタウンという形で成長してきた人口40万のまちで、特色づくりに努力しています。その中で環境保全とか福祉の充実、また、生涯学習のまちづくり、これは6大学の学園都市構想というものを中心にしているのですが、そうしたさまざまな課題に加えて、IT化を21世紀のまちづくりの柱の一つにしていきたいと考えているところです。  今お話がありました名護市さん、そしてこの後でお話があります横須賀市さん、それぞれのIT先進自治体に、学んでいきたい、またIT先進自治体の仲間入りをしたいということで、努力を重ねているところでございます。時間に限りがありますが、今日は都市経営の観点から、少しお話をさせていただきたいと思います。  都市経営は、これからの自治体運営のキーワードと言えるものであります。行政では、行政サービスが商品であり、売上げは市民の満足度に当たると言えると思います。収支のバランスを図りながら、市民の満足度をいかに向上させていくか、これが行政の務めであると考えます。しかしながら、高度なサービスの提供には、当然のことながら人と金がかかります。  本市は、現在赤字再建団体になりかねないと、赤字再建団体の一歩手前にあるという大変厳しい財政状況の中で、行財政改革を必死で進めているところです。したがいまして、新たなサービスにつきましては相当の費用対効果が見込めなければ、人もお金も、新たな市民サービスの向上にはつぎ込めないというのが、実際のところでございます。  少ない経費で最大の効果を上げるためには、職員の意識改革、やる気とアイデアが求められると思います。これを解決できる新たな可能性として、行政のIT化がクローズアップされてきたと思います。  本市のIT戦略の「e−枚方」のイメージは先ほど紹介をさせていただきましたが、行政のIT化がクローズアップされている中で、このIT化を取り入れて、本市が目指すモットーといたしまして、小さくても仕事のできる市役所の実現を図るために、電子市役所の構築に取り組んでいきたいと考えています。その枚方市の電子化推進の目的は住民満足度の向上、そして行政事務の効率化・簡素化・迅速化を図ることだと考えています。  基本的な考え方としましては、従来の市役所の機能に加えまして、1つ目として、インターネットを利用して行政情報や届け出、申請手続などの行政サービスの提供を行っていく。2つ目といたしまして、IT技術を活用して行政事務の見直し、BPRを図りまして、行政組織のスリム化の実現に努めていく。3つ目といたしましては、市民にいろいろな行政内容を知ってもらうために、情報の道としてのインフラ整備が欠かせないと考えているところです。  さて、昨年、地方分権の一括法が施行されまして、地方の時代が始まりました。自治体の力量いかんによっては、市民サービスに当然格差が生じてまいります。いわば都市経営の手腕が問われる時代だと思います。そして市民が自治体を選ぶ時代でもあると言えます。そこでITの技術の活用により行政の透明性を確保し、そして無駄を省いて、市民のニーズに合った業務プロセスの再構築を行うべきだと思います。そうしたIT戦略の意識改革がなければ、地方自治体、地方分権時代の都市経営は成り立っていかないと思います。  本市では、ITのツールを活用いたしまして、その取り組みを始めたところですが、情報は使えば使うほどそのコストが下がるので、例えば共通で使うデータベースを集中管理して広い分野で使用すること。また、いつでも、どこでも、時間・場所を問わずに、誰もがサービスを受けられるよう、行政サービスの環境整備を進めているところです。その際には「簡単で早い」ということをモットーにしなければならないと思います。  しかしながら、現実にIT化を推進するに当たりましては、これを阻む課題もたくさん山積していまして、一つは縦割り行政といいますか、各分野のセクショナリズム、これが弊害となります。そして情報化についての理解不足や仕事の仕方を変えたくないといったマンネリズム、業務のマンネリ化ですね。それから人材とか能力の不足、そして多額の開発費や維持管理費がかかる、そうした財源不足などの要因があると思います。  これらを打破するための改善と工夫は、ぜひとも必要であると考えています。そしてその一つが組織の改革だと思います。そこで、本市では庁内横断的で協力的な推進体制を築くために、市長の私を本部長といたしまして、昨年9月に「情報化推進本部」を発足いたしました。その本部のもとに、幹事会、専門部会を設けて活動しております。今年の機構改革の中で、情報化推進部門を企画財政部門に統合して、情報化施策のコントロールタワーとして位置づけいたしました。  また、職員の意識改革を図るということも大事な課題でありまして、現在研修なども進めております。今後は、民間や学識経験者を交えた、産・官・学が一体化した情報化の戦略会議を組織していきたいと考えています。  現在の主な取り組みとしましては、一つは地域イントラネット基盤整備事業、IT装備都市の研究事業、そして市民総合窓口の整備事業の取り組みを進めております。  その中で、まず地域イントラネット基盤整備事業でありますけれども、市役所と市の支所、そして社会体育施設などの公共施設を結ぶネットワークの基盤整備を図り、本市の情報通信基盤の一部を整備するものであります。これは本年12月からスタートする予定ですが、これによりまして、例えば体育館や議会の傍聴、こうした予約ができることになるなど、市民サービスの向上につながってくると思います。また一課に一つのホームページをつくりますが、当面は22課でリアルタイムの情報提供を行っていきます。  それから、各種届け出や申請書類のダウンロードなどができるようなシステムを考えております。  次に、IT装備都市の研究事業ですが、これは今後予定されております住民基本台帳のカードに連携する取り組みといたしまして、ICカードの活用により行政サービスの提供を行います。住民票の自動交付や施設の予約サービスなどについて、来年の1月から3月にかけまして実証実験を行う予定です。また、次年度以降にも、市民に利用してもらえるサービスについて研究を進めていきたいと考えております。  次に総合窓口の整備事業ですけれども、これは1カ所で複数の行政サービスができる「市民総合窓口」の一環といたしまして、まず、今年の12月から各種証明コーナーの設置を行います。こうしたハード、ソフト両面の整備によりまして、公共サービスの充実に努めて、住民満足度の向上を図りたいと考えています。  あらゆる分野で変革が求められていますが、行政改革や少子・高齢化など、課題も山積しております。これらの課題を解決するためには、ITの活用は不可欠と考えます。しかしながら、これも使い方を誤りますともろ刃の剣となるかもしれない。そこで行政改革にITを活用していくという共通の認識のもとに、職員の意識改革を進めなければならないと思います。そしてITを使いこなせる環境をつくることが不可欠です。こうしたことが電子自治体への第一歩であり、さらなる市民サービスの向上につなげていきたいと考えております。  そこでIT基盤の整備によります業務の効率化・簡素化・迅速化での人員削減効果でありますけれども、本市では、平成14年度、図書館ネットワークシステムの確立や税制課のシステム管理委託、証明書の発行窓口開設などにより、10数名の減員を予定しております。さらに15年度から17年度の間におきまして、業務システムの再構築を考えております。業務改善や組織改革により、庶務担当の削減などを行っていきたい。その中で17年度までに合計で約80人の減員を目標として、現在計画を進めているところです。 これで枚方市の活動内容につきまして報告を終わらせていただきます。  どうもご静聴ありがとうございました。 鈴木:中司市長、ありがとうございました。どうぞお席のほうへ移ってください。  続きまして、全国自治体のモデルといたしまして高く評価され、また、全国自治体の情報化支援につきまして活躍されておられます、神奈川県横須賀市企画調整部参事情報政策課長の廣川聡美様、よろしくお願い申し上げます。 廣川:おはようございます。横須賀市の廣川でございます、お時間をちょうだいしましたので、私どもが進めている事例のご報告をさせていただきます。  まず、最初にちょっとだけ考え方をご報告いたしますけれども、私どもが電子市役所を、どういう目的で、どういうビジョンを持っているのかを7項目で整理をしてございます。これを全部お話すると大変時間がかかりますので、最初の1番、2番だけ簡単に触れさせていただきます。  まず、行政手続の住民負担の軽減、これは「e−Japan戦略」の中では、住民と行政の接点の情報化という表現になっておりますけれども、私どもでいろいろ試算をしてみました。市内でたくさんの方が手続あるいは届け出等されますけれども、仮にその60%がインターネット経由で手続をされたと仮定をしてみました。60%という数字はそんなに無理な数字じゃなくて、テニスコートの予約は50%ぐらいインターネットで行われておりまして、そんな無理な数字ではないと思うのですが、仮定をいたしますと、大体年間2億円ぐらいの住民負担の軽減になります。  2億円という数字はどういう数字かといいますと、市役所の窓口まで片道30分ぐらい、往復で1時間、それから電車賃やバス代が片道170円ぐらい、このように仮定をいたしまして計算をした結果でございます。この1時間に、市役所職員給与の平均時間単価をかけて計算をいたしますとそのくらいになります。今までは市民の方に窓口に来ていただくのは仕方なかったんですね。来ていただかないことには手続ができなかったわけですけれども、インターネットの普及、それからICカードで本人確認ができるということになってまいりますと、市役所に来ていただかなくても良いということになります。  さらに2番目でございますが、市民の方が市役所に来られて、住民票の写しあるいは納税証明書とかをお取りになるのは、それが欲しいわけではないです。記念に欲しいという方も中にはおられるかもわかりませんけれども、そういうことは滅多になくて、銀行にお持ちになるとかあるいはパスポートセンターにお持ちになるとか、そういうことにお使いになる。したがって、さらに行政、民間がシームレスに同じような基盤整備ができて、紙で持って行かなくてもいいということになれば、さらにその効果は広がると考えておりまして、それが2番でございます。3番以降は省略をさせていただきます。  電子入札の事例をご報告いたします。電子入札は去る10月10日、いよいよ全部ウェブ上で入札書を送信し、それから契約課がパソコンで入札書を開札するというところまでいきました。うまくいかなかったらどうしようかなと思っておりまして、もしうまくいかなかったら、今日はとても来られないなというふうに考えていたのですが、お蔭様でうまくいったわけでございます。どんなフローでやってきたかということはこのページに書いてございますので、後ほどご覧をいただきたいと思います。  入札というのは、単に電子入札にしたから効果があったということではないのです。電子入札にしたこと、それから入札制度そのものの見直しをしました。入札制度は、以前は指名競争入札という姿で、大体平均9社ぐらいの事業者をあらかじめ指名をいたしまして、札を入れてもらっていたわけですけれども、平成11年4月から条件付き一般競争入札に変更いたしました。そのことによりまして、大変入札参加事業者の数が増えまして、その結果、事務量が増えましたので、それを軽減するために、電子入札に切り替えたと、こういったような事情でございます。  効果はどうかということでございますけれども、平均の落札率、以前は95.7%、これは100円のものが95円70銭で買えたということでございますが、これは11年度の4月から始めましたけれども、11年度全体では85.7%、以前から比べますと10%落札額が落ちたということになります。金額にしますとどのくらいになるかということでございますけれども、平成11年度の公共工事の総額が約224億円、これに対しまして落札差金が32億円、平成12年度は331億円の工事に対しまして、約42億円の差金が出ております。  しかし、これを不用額として残したわけではなくて、ほかの工事の発注をするとかあるいは用地買収を行うとか、ですから決して業界全体のパイが減ったわけではないということでございます。市民にとっては、同じ税金で安い買い物ができてよかったなと、このような効果があったわけでございます。  この電子入札に切り替えるということはどういうことかと申しますと、以前は入札書を郵便で送ってもらっていました。郵便局は市役所のすぐ前にございまして、局留めで送ってもらっていたわけです。局留めというのはどういうことかと申しますと、市役所の契約課にパラパラと郵便が届きますと、職員があらかじめ見てしまったのではないかとか、そんな職員はいないのですが、そういうことを言われても困りますし、またいつ届いたかという証明、これも郵便局でやってもらっていたわけです。これを公証局という、これはサーバーでございまして、同じ市役所の中の私どもの課の、サーバー室の中に厳重に管理してございますけれども、こちらで日付の管理あるいは運用の管理を行うと、このようなことにしてございます。  なお、あらかじめ業者の方から送信をしていただいた際に、入札書の原本(平文)を、ちょっと難しいのですけれども、ハッシュという関数がございまして、数学的な処理をいたします。ハッシュというのはハッシュドビーフ、これは、通常ハヤシライスという言い方で親しまれていますけれども、細かく刻んで短い数字に変えてしまう、そういう処理をしまして、もし原本(平文)を書き換えるとハッシュ値は全然違う数字になってしまいます。あらかじめ札を開ける前にそのハッシュ値を公開しておきます。また札を開いた後に、その札のハッシュ値を取り直しまして、事前に公開したハッシュ値と比較して同一であれば原本と相違ないという証明になります。その結果もすべてインターネットで公開をしてございます。  これがフローでございます。工事を決めまして、ウェブ上でこのように公開をしております。その後、参加申請もネットで行います。この画面にはIDとパスワードで入っていただいておりますけれども、送信をする際の鍵はあらかじめフロッピーディスクで配っております。それから暗号化のためのプログラム、アルゴリズムと言いますけれども、これはCD−ROMで配付をしてございます。これらはもちろん無料で配付してございまして、それで送信をしてもらう。入札書の送信をしてもらったものを、最終的にこのように開けまして、札を開いたものを公開していく、このようなフローでございます。  入札制度の改革は、最初のうちは業界の方の皆さんのご理解を得るのに時間がかかりまして、平成11年の4月から始めたのですが、その11年の9月の議会のちょうど始まった日に市役所のまわりに大きなスピーカーをつけた車がたくさんきまして、大騒ぎをされて大変困りました。  またその次の年、12年1月のときには、業界の新年会に市長が呼ばれて行ったのですが、その時はすごく冷たい雰囲気だったと市長が嘆いていました。そんなこともありましたが、市長が毅然とした態度で貫いて今日まで至った訳でございます。  またもう一つ「まちづくり総合カードシステム」という事業も進めております。これは経済産業省様からIT装備都市研究事業のご指定をちょうだいいたしまして、進めておりますが、行政、民間、様々なサービスを1枚のカードで本人確認ができるようにしていこうという発想で進めております。  時間がなくなってまいりましたので、私どもが、今後進めようと思っているサービスのコンセプトを少しだけふれさせていただきます。今後の行政サービス、どうやってグレードアップをしていこうかというコンセプトが3つございます。  まずひとつはポータルサービス。ポータルというのは玄関という意味でございます。従来、縦割り、ばらばらであったものを統合型に変える。それからプッシュ型、従来は市役所の窓口で座って市民の方が来ていただくのを待っていたわけですが、そうではなくて、御用聞きに行き出前に行く。これも従来できなかったのです。そんなに職員がいませんからできなかったのですが、インターネットを使えば可能になります。  それからOne to Oneサービス。これはお仕着せ型からオーダーメイド型に変えていこうということでございます。どんなふうにしていこうかというモデルを今日持ってまいりましたので、ちょっとだけ見ていただきます。  これは今後のサービスを、こんなふうにしていこうというプロトタイプでございましてまったく今のところ中身はございません。見た感じこんなふうにしたらいいんじゃないかなという見本でございます。  このサイトは、市民ひとり1ホームページ。これはもちろん希望される方でございます。ここに入るためには先ほど見ていただいたICカードで本人確認をしてここに入ってもらいます。入っていただきますと、「○○さん、おはようございます。本日市役所は平常通り24時間営業しています」というようなことが出まして、防災情報、これは消防から逐次提供されます。どこが火事だというようなことが提供されます。あるいは今日の天気これは単に天気予報のサイトにつながっているだけでございますが・・・。これは本日のお知らせということで、ちょっと前に保健所で健康診断をしていただいた結果です。飲み過ぎに注意しましょうとか、これは私のことかもしれませんが、出てくるわけでございます。これはもちろん郵便でお知らせしてもいいのですが、このような形でお知らせをする。  それから、例えば、お子さんで、お姉ちゃんが恭子さんで妹が美香さんというのですが、これは叶姉妹の名前なのですが、お姉ちゃんがそろそろ学校に入る時期がきて、小学校を選べる学区で、どっちを選びますかと。それから保育園に通っておられる妹さん、こんな病気が流行していますから気をつけてくださいというお知らせをいたします。  それから例えば税金を納めてくださいというようなことでこのように連絡がきます。いずれは納税通知書もこうやって送れるといいなと思っています。納める場合には銀行のサイトにすぐにつながる。こういうふうにしたらいいなと思っております。  それから「暮らしのページ」でございますけれど、例えば行き付けのお店、レストランからこんなふうに連絡がくるとか、歯医者さんから連絡がくるとか、最後に、こういうのもないと寂しいので加えましたが、行きつけのバーのママからこうやって連絡がくると、ついふらふらと行ってしまうという、こんなふうになります。  行政のサービスっていうのは年中必要なものじゃないのですね。必要なときにアクセスができればよくて、普段は生活のためのサービスがふんだんに提供できる、このようなことにしていったらいいのではないかなと思っております。  以上で終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手) 鈴木:廣川課長、ありがとうございました。  続きまして東京都OBであり、わが国におきまして自治体情報化の先駆者である都市情報システム研究所長の茶谷達雄様、よろしくお願いいたします。 茶谷:大変自然の美しい、しかも由緒のあるところでお話をさせていただくことを大変光栄に存じております。この沖縄にまいりまして、美しいのは自然だけではないことを知りました。実は那覇空港からこちらに高速バスでまいりましたときに、那覇北インターチェンジでおじいさんが待っておられまして手を挙げられました。そうしたら運転手さんがボディランゲージじゃありませんけども、お待たせしましたね、さあ、気をつけてあがってくださいねっていう雰囲気で手を挙げられたのです。これには感激いたしました。  それから高速バスを降りられるお客さんがお金をはらって運転手さんに「ありがとうございました」「ありがとうございました」って降りていくのです。運転手さんも「ありがとう、ありがとう」と言っているのです。沖縄の人の心の美しさには本当に打たれました。これこそまさに地域情報化の心だと打たれた次第です。ぜひこのような美しさを、全国に情報発信してほしいという感じを持ったわけでございます。  限られた時間でございますので、3点についてお話をさせていただきます。まず第1点は電子自治体への実現のための課題。それから2番目は、ITというのは地域情報化の最適ツールということ。先ほどお話がございましたように、従来のコンピューターはその点ではまったく機能が違うと思います。以前にOA学会で地方自治体の情報化をお話させていただいたときに、住民の方から質問がありました。情報化を市役所は進めているけれど、住民のためになるデータベースがひとつもないじゃないかと。まさにその通りです。内部の効率化のためにやってきたわけです。もしそれをそのときのコンピューターでやったら、膨大な金がかかってちっとも使われないということになります。そういうようなことをお話した。税金、いくらあったって足りませんよって言いましたけれど、今、もしそういうお話を承れば、頭を下げて、頑張ります、ともにつくりましょう。応援してください。そのかわりデータも送ってください、飲み屋のデータものせるホームページも提供しますよって言うかもしれません。要するに生活者のための情報化がITだなと思っているわけです。  お手元の資料をごらんいただきたいと思いますけれど、地域情報化への対応の方向。特にポイントは情報交流と地域のASP、これをぜひ進めていただきたいなというふうに感じているところで、それについてお話をさせていただきます。  まず第1の電子自治体、これは四面体と思っておりますが、一番下にある、高度情報、通信ネットワーク社会へ地方自治体は対応していく。先ほどございましたように経済活動の1団体ございますので、民間の経済活動の情報化に対応して電子取引等、やれるようにしていく、その動向とアンバランスにならないように。民間ではインターネットを使って商取引が行われる。役所だけがペーパーというわけにいかないわけでございまして、そういう意味でのバランス。  それから住民生活の質の向上。今市長さん、それぞれお話しされましたけれど、そのようなことをやっていく。IT講習会などもこの中のひとつ。それからイントラネット等をお作りになって敬服いたしておりますが、そういう情報基盤を構成していく。これが高度情報通信ネットワーク社会の対応のひとつ。  2番目は行政改革。ご案内の通りでございます。  3番目は、電子政府との一体性の確保。これは総合行政ネットワークとか、住民基本台帳ネットワークとか、あるいは申請の手続き、歳入歳出、電子調達。さらにはやや複雑だと思いますが、一部横須賀市の例で出てまいりました電子認証の関係です。こういうものも政府とのインターフェースを図り、それから標準化を待って、これを導入していく。だから先進自治体とは別に一般的には標準化、あるいはモデルシステムの完成を待って半歩遅れて作っていっていいものがこの電子政府との一体性の確保で、うっかり先にやってしまいますと後でまた手直しをしなきゃいけなくなる。こういうような性質のものがございます。電子自治体っていうとこの1番上のものが非常に多く語られますが、やはり地方自治体は電子政府と違いまして、右のほうに、地域特性を生かした行政の展開というのが基本でございまして、生活者の視点に立ってサービスの再編成をしていくというのがポイントと、あとひとつ、多様な交流機会を作り上げ、インターネットを使って市民との交流を深めてもらえるようにする。さらに情報のように4つの顔を持ったものであると。発信を大いにしていただくという施策も求められるのではないか。電子自治体というのはこのように4つの顔をもっていると見ることができます。  最近論評に出ているのは、行政改革について少し弱いのではないか。ややもするとインターネットを使って電子政府の関係、あるいは地域情報化に偏りすぎているのではないかという論説があります。傾聴しておくべきことであろうと考えております。  2番目のIT問題ですけども、いみじくも前にお話ございましたけれど、従来のコンピューターは生産効率を上げる。大量生産、大量消費の時代に大量定型業務を処理してきたものでございます。  しかしご案内の、インターネットを中心とする技術は、生活者のための情報化といえると思います。その基本は電子メールとホームページ、これがキラーソフトでございまして、コミュニケーションの機器としてのパソコンの使い方です。これにプラス、ウイルス対策。これが今後のキラーソフトになります。だからIT講習会でぜひ進めていただきたいのは、決してエクセルの計算の仕方、ワープロのワードの打ち方とかではなくて、電子メール、ホームページ、それにプラス、ウイルス対策です。それを今後IT講習会でやってもらいたいなと思っているところでございます。  この「生活者のための情報化」というのはなぜ言えるのかということですが、上から順次見ていただきたいと思いますけど、情報は、飲み屋の情報じゃあございませんけれど、生活に役立つものが扱える。使用は生活のリズムに合わせていつでもどこでも誰でも見られる。道具としてはご案内のパソコン等ですが、家庭でも容易に利用できる。経費も大変安くなりまして、自分で組み立てる気になれば10万円でパソコンの高性能なものができる時代になりまして、一般のものでも家庭経済での可能性も入ってきた。  それから、インターネットの利用価値は当初は地域であまり利用されませんが、徐々に徐々に増えて二乗に比例して増えていくという法則が適用できると見られております。メトカーフの法則といわれておりますが。こういうように、前の情報化と根本的に内容が変わってきているということでございます。  3番目、地域情報化について申しますが、実は私、勉強不足で、沖縄のご当地には1回しか来たことがない。それで今回このお話をせよとニューメディア開発協会さんから言われたときに、幸い私の親しい友人で、沖縄出身の人間がおりまして、ちょっと聞きたいからっていうので一献傾けて、沖縄の状況を教えてもらった。何が物足りないのかといったら、こう言っていました。沖縄の非常に伝統ある文化、そういうものが本州の方にちっとも伝わってこない。もっともっと沖縄から他の県に対して情報発信をすべきじゃないか、そういうことを伝えてほしいと、こう言っておりました。一杯飲んだときの話ですから半分にしても、その後ホームページを見てみましても、あれだけの立派な文化を持っていらっしゃりながら、なかなかわからないっていうところがありますね。  オーストラリアに高齢者が定年後住まいを移して、温暖の地を求めて住んでらっしゃるのですけれど、オーストラリアに行きましたら、帰ってこられる方もあると聞いています。どうしてかというと、病気になったときに医者とのコミュニケーションがとてもできない。片言の英語くらいじゃあ、頭のここが痛いんだとか、ここが痛いんだとかですね、膵臓とかがちょっとチクチクするとか、そんなことを英語で言うには英語で喧嘩できるくらいの力がないとできないわけでございまして、そういうコミュニケーションがなかなかできない。  そういうことを考えましてふっと思ったのは、この暖かいハワイのような雰囲気のところの地で高齢の方がお住まいになるにはむしろ外国に行くよりいいんじゃないか、そう思ったところです。これは私のひとり合点ですけれど。そういう情報をどんどんお出しになられることが必要じゃないか。地域情報化っていうのは、コミュニケーションそのものです。そしてそれを内部にとどめないで情報発信していただく。ここに書かさしていただきました右の方ですが、「住民による文化、伝統の情報交流とその発信」これが必要なことではなかろうか、こういうふうに考えているところです。  2番目に右下のコミュニティ情報の寄る辺づくり。寄る辺というのは、お互いにそこによって話し合ったり助け合ったりという、お互いに頼りにしあって寄るというところでございますが、先ほどもお話にありましたように、インターネットで地域の情報発信をしたりコミュニケーションをとるときに、ボランティアの方を中心にしてお互いに助け合って、さらにIT講習会を受けられた第2段階で、この寄る辺によって情報発信したり、フォローアップをしたり、ということが必要ではなかろうか。場合によっては市役所の代わりにホームページをボランティアの方がお作りになって情報発信するところのものはみな寄る辺づくりで達成されるんじゃないか、こういうように考えているところです。  それからボランティアサークルの育成もこれにつながっておりまして、そういうことができるということはボランティアの育成。名護市長さん、おっしゃいましたけども、ほんとに大賛成でございまして、ボランティアをいかに育成するかというのが今後の地域情報化を支える鍵になるだろうと。フランスのビデオテックス、テレテルというのが、インターネットの時代、今でも厳然として活用されておりますけれども、ある市役所にまいりましたら、ボランティアの方が画面を一生懸命に作っておられる。市長さんに、紹介していただいたのですけれど、ここでやっておられる方はどういう方なんですかって言ったら、ボランティアなんですよと言われたのですね。そのような例から地域情報の真の情報発信はボランティアだろうと考えられるところでございます。  最後、地域ASPの利用。これは経済規模がそれなりにまとまっていかないとソフトウェアの開発、コンピューターの導入等は経済的に成り立たないわけですけども、お互いに寄りそって手をつなぎながら進めて行くことによって非常に効率的な運用ができるわけですが、これがアプリケーションサービスプロバイダ。インターネットを通じてプログラムを自治体、団体、企業等に提供して有料で使っていただく。そのかわりコンピュ−ター等は買わなくていいというような制度があって、運用がなかなか難しい点がありますけども、今後、地方自治体では地域にそれぞれコミュニティのASPを育成しながら地域情報化を進め、そして地域の核となって全体のコミュニケーションを進めていただくということが有効ではなかろうか。全体として焦点を絞ってお話しさせていただいたために、なにか部分的なことを取り上げたような感じがいたしますけれども、ぜひ皆様方のご発展をご期待申し上げて、簡単でございますが最初のプレゼンテーションにさせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手) 鈴木:茶谷様、ありがとうございました。  続きまして三田啓、経済産業省通商政策局通商調査官、商務情報政策局ICカードご担当の三田様、よろしくお願いいたします。(拍手) 三田:おはようございます。情報政策課の三田です。私は、自治省の課長補佐を経験したことがありますので、経済産業省の方よりも地域の方々との接点が多いように思います。  本日は、「電子自治体の構築と地域情報化への対応」ということですので、私がご用意させていただきました資料は、主に国の取り組みについてご説明しているものでございます。  まず、1ページ目ですが、電子自治体に向けた主な計画等として、平成9年の行政情報化推進計画、平成11年のミレニアムプロジェクト、平成13年のe−Japan重点計画などがあり、国では、電子政府を実現するために様々な取組みを実施しております。  次に、1ページ目のスケジュールを表した資料をご覧ください。このうち、住民基本台帳では、高機能なICカードを活用し、本人確認等、様々なアプリケーションを高いセキュリティ環境で実現しようとしています。ICカードにつきましては、内閣官房IT担当室に「公的分野におけるICカードの普及に関する関係府庁連絡会議」が設置されており、共通的に国が活用するICカードのスペックについて検討を重ねております。  次のページは、私が担当しております「ICカードの普及等によるIT装備都市研究事業」の一覧でございます。「21の地域」「総額170億円」「ICカードの配布予定枚数は現在約120万枚」となっておりまして、マルチアプリケーション、PKI対応の非接触ICカードに係る実証実験といたしましては、世界初、日本最大の取組みとなっております。この名護市を中心とした沖縄の北部地域においても、特に医療福祉の関係のアプリケーションを複数搭載したICカードをお配りして実験をすることとしております。  次からのページを見ていただけますでしょうか。これは全くの私の個人的な私論であります。  近年、行政情報化と地域情報化の重なる部分が非常に増えてまいりましたので、両者を別々に議論することは、あまり意味を持たなくなってきたように思います。また、この重なる部分は、制度に必ずしも縛られる訳でもありませんが、逆に、全くコマーシャルベースの話でもありません。したがって、その分野は、制度にとらわれない経済産業省マタ−の領域ということで、経済産業省がその分野で頑張るのかなということを描いた絵がこちらでございます。  さらに、その次のページをご覧ください。これまでの地域コミュニティの考え方についてです。「行政情報化」あるいは「地域情報化」を考えたときに、「広域」と言うと、従来は、「近隣の市町村が単純にまとまったもの」を想定してきました。  しかしながら、実際には、地域の住民、企業、行政は、相互に非常に複雑に結びついているにもかかわらず、それに対する分析がこれまでは足りなかったように思います。従って、従来の地域連携あるいは広域化は、どうしても行政主導の大ざっぱなものが多く、本来、地域の主たるプレイヤーである住民、企業等のマトリクス連関が十分に分析されておらず、結果として効果が十分に発現されていないものが多く見受けられます。  このため、私は、地域の本質を十分に分析し、地域を構成する全てのプレイヤーによる主体的な取組みに期待しているところでございます。  今後ともよろしくお願いいたします。 鈴木:ありがとうございました。それではこれよりパネルディスカッションに移らせていただきます。ここからの進行は、コーディネータを務めていただきます、新谷様にお願いいたします。 新谷:パネリストの方々、プレゼンテーション、ありがとうございました。時間があと1時間ということになりまして、これからプレゼンテーションのときにはなかなか言っていただけなかった“生の声”というのをぜひまたうかがいたいなというところでございます。会場の方々には、30分ほどいたしましたらぜひご質問をいただきたいと思いますので、メモなどをとっていただきながら、お願いしたいと思います。  これからのパネルで、皆さんにはこういうことを私はうかがってみたいなと思っています。どういうことかというと、一言で言ってしまうと、極めて多くの課題が電子自治体を推進するためには出てきていると思います。これは後ほど、パネリストの方々がおっしゃったことをひとつずつ私のほうでご紹介したいと思います。ただし、財政的に決して大きな余裕があるわけではないということがあります。さらにそのなかで効果を極めて明確に上げていかなければいけないという課題にもなっているかと思われます。  今申し上げた3つのことが、それぞれのお立場から考えたときに、私だったらこういうように進めればいいのではないか、もしくはそういうように進めるためにはここらへんにまだ課題があるのではないかというあたりを、ぜひご意見としてうかがいたいと思います。  その上で、会場の皆さんに、私のほうで今おっしゃっていただいたことをまとめさせていただきますと、両市長からは3つのことを明確にお示しいただいていると思います。まずはIT戦略の推進組織というものをきちっと市長が指導されてつくられていると。これは、余計なことを申し上げるようですが、民間でも極めて重要な役割を担っているのが、CIO、チーフインフォメーションオフィサーということになっていますけれども、この動きをなさるということが極めて首長様としてはすぐれた動きだと私は理解しておりますが。それが1番目ですね。  それから2番目です。電子自治体、電子行政を進めるにあたって前提となるのが行政の効率化であり行政改革であるということですね。それを実現するためには職員のITのリテラシーを徹底的に上げておかなくてはいけないということも言っていただいたと思います。これが2番目です。  3番目としては、地域の情報化に対応するために地域のイントラネットというのをきちんと整備していかなくてはいけない。そのことによって住民の満足度の向上を図っていくんだと。当然のことながら生活者の視点に立ってということを両市長ともおっしゃっていたと思いますが、さらにその先にもう一歩あるのが、イントラネット、それから住民満足度の向上というのを図りながら、住民参加型の地域経営を実施していかなくてはいけないということだと思いますね。両市長とも共通のことをおっしゃっていただいていると思いますので、恐縮ながらまとめてお話しさせていただきました。  それから廣川課長でございますけれど、実は私は廣川課長の話は何度もうかがっておりまして、今日また新たにひとつ加わっていることに感激をしているところなのですが、最初にお手元の資料で確認していただければと思いますが、7つの横須賀市のビジョン、目標というのをお示しいただきました。そのうえで重要なのは、ビジョンを具現化するという意味で、具体的に3つの活動をご紹介していただいたわけです。電子入札、ICカードの導入、さらにはポータルサイトということでございますね。この3つのアプリケーションというのが、今ここまでいっていますよというのがなかなか廣川課長以外にはうかがえる話ではないのですが、このことを具体的にお話しいただいたのが廣川課長です。  それから茶谷先生の話は住民のサイドに立ったお話だったように思います。あまり簡素化してしまうと失礼に当たるかもしれませんけれども、最終的には住民が受益者ということで情報化を進めなければいけないということを強調されていたというふうに理解をしております。そのために重要なのは何かといえば、地域情報化の基本にあるのはコミュニケーションだということを明確におっしゃっていただいたということでございます。  さて、時間の関係もありますので、三田補佐のおっしゃったことですが、国のスケジュールはお立場上、お示しいただいたと思います。そして、2つ目として、本人確認、ICカードのところで申し上げますと、12月に、もしかすると政府が共通的に使うような、ICカードのアプリケーションの方針が出てくるかもしれないということ。それから最後の3番目におっしゃったことで重要だったのは、行政の情報化と地域の情報化の領域が、どんどん重なってきてしまっているということをおっしゃっていただきました。これは今日のシンポジウムの、この分科会の全体のテーマに触れていただいたと理解をしておりますけれども、その行政の情報化と地域情報化の重なりが増えるにつれて、地域のコミュニティの考え方、それから地域のコミュニティに則した情報化のソリューションというのをつくっていかなくちゃいけないということです。簡単にまとめて恐縮ですが、このことを明確におっしゃっていただいたというふうに理解をしております。  さて、ここまでおっしゃっていただいたところまでは、まずは皆さんに伝わっていようかと思うのですが、具体的に三田補佐それから中司市長、廣川課長にまず伺いたいのですけれども、先ほど私申し上げましたように、多くの課題を少ない予算で効果的にやっていくということが、極めて重要な話になっていると思いますが、このあたりについて具体的に、どういうふうに問題を設定していったらいいのか、あるいはこういうふうにやっていったらいいのではいうことがあれば、三田補佐からご意見を賜りたいと思うのですけれども。 三田:共通的な課題の一つとして、情報化施策に係る適正な費用は、一体どうやって算出されるのかということがあると思います。もともと行政の仕事は、住民の方々から税金をいただいて事業を実施し、住民にサービスを提供するということになると思います。しかしながら、ITの活用により、定量的に何がどれだけコストが下がったのか、あるいはどれだけサービスの質が向上したのかいうことについては、従来、なかなか明確化できなかったように思います。  その点、廣川課長からのお話は非常に分かり易いと思います。しかも、廣川課長は、予算が少なくなったからといっても「そのお金はちゃんと使っています」と、いろいろな会社の皆さんにご迷惑はおかけしていないというフォローまでしているわけです。これは、有効にお金を使っているということの証左であると思います。  ところで、一つだけみなさんへのお願いがございます。地方のみなさんが、地域のIT化のために国のお金を活用していただくことは結構なことですが、やはり、自分の体力は考えたほうがよいということです。例えば、1団体当たり5億円のお金がもらえるからといって、5億円のお金をそのままもらって喜んでいるようでは素人であると思います。そのお金に関連して、翌年からどれだけのコストが必要になるのかというようなことを考えなければならないということです。以上です。 新谷:ありがとうございました。続けて、中司市長、よろしくお願い申し上げます。 中司:先ほど問題点の整理をしていたわけですが、枚方市としてこれから大事なことは、推進本部を立ち上げましたけれども、その組織の点検を常にやっていかなければならない。単に組織を立ち上げただけでは、それがうまく機能しているかどうかということが言えませんので、常に組織の点検、それから、個人としての職員の人材の開発ということが大事だと思います。先ほど言われましたように、国の財源を引っ張ってくる努力、これもやはり人材の開発ということにつながってくると思います。  それから、効率化の部分では行革の進行管理、これを組織の点検とともにIT部門と行革部門が常に連携をとってやらなければ、絵に描いた餅になるといいますか、効率化の実は上がっていかないと思います。それともう一つは、市民の満足度の検証、これをどうやるかということが大事だと思います。本市の場合、縦割りという中で弊害が出てきましたのは、ホストコンピータに互換性がない、先ほども話がありましたが、互換性がないということで、そのために年間1億円以上の無駄があると言われているんですが、そこでシステム監査をこれからやらなければならない。ですから、それが例えば総合窓口をこれからつくっていくときの弊害にもなっておりますし、そうしたことを考えますと、もっと総合的な戦略を先に立てるべきだったと思います。それが本市としての問題点であり反省点だと思います。 新谷:ありがとうございました。  それでは、続けて廣川課長にも伺いたいんですが、廣川課長に伺った後で、岸本市長に一言コメントをいただきたいと思っておりますので、よろしくお願いします。それでは廣川課長、まずお願いできますでしょうか。 廣川 3点ほど話をしたいと思いますけれども、まずは、先ほど皆さん方のお話の中にもございましたが、できる限り広域で取り組む、規模のメリットを生かしていくということがポイントではないかなというように思います。一つ一つやっていったのでは、お金がいくらあっても足りませんので、みんなでやるかあるいは先ほどのASPという手法もございますので、そういうのを使っていくというようなことが大事ではないかと思います。  パソコンなどを購入する場合、例えば横須賀が100台買うとか、別のところで500台買うとかっていうような、そのくらいの数ですとなかなか割引率も余り下がらないのですが、まとめて1万台になれば、もしかするとメーカーさんも少しはまけてくれるかもわかりませんから、そんなようなことも、もう既にアメリカではやっていますので、考えていったらどうかというように思っています。  それからいろんなアプリケーションを導入する際に、できるだけカスタマイズはしないということです。しかし、各担当部局の皆さん方は、いや、今までこうやっているのだから、仕事のやり方にあわせてカスタマイズをしてくれって必ず言うのですけれども、少しはしようがないのですが、できる限りしないようにすべきです。そのためには情報を担当している部門が、強くそのようにコントロールするというか、言わないといけない。そのためには、情報部門に権限を委譲していただいて、多少強く言えるようにしていくという方法もあるのではないかなと思います。  それからもう一つですが、やっぱり職員が目利きしないといけないのですね。メーカーの皆さんが今日もいっぱいお出でになっていると思うので失礼で申しわけないのですけれども、お持ちになられる見積書は、最初の段階では多分高い。私どもは職員の養成、研修をやっていまして、データベース作成等をとにかく自分たちでやらせてみるのですね。例えば自分でやったら10日かかるとか、1週間でできたとかというようなことを経験させて、その際に、みんな一体給料いくらもらっているのか、でもメーカーから出てくる見積書はいくらになると思うというような話をすると、びっくりするのです。  しかし、メーカーさんの場合はSEさんの報酬だけではなくて、バックヤードの部隊のお金も当然入っていますから、市職員の給料と単純比較はできません。ただ工数とか見ると職員がやるよりは、はるかにかかっているケースもあるような気がします。そういうようなことの目利きをつくっていくというのも大事です。私どもの職員はいつもやっていますから、見当がつくのですけれど、それぞれの各担当部局の職員は、メーカーさんから見積書をもらうとそのとおり予算要求に出してきてしまいますので、そのあたりがポイントかなというように思います。以上でございます。 新谷:ありがとうございました。  それでは名護市長のコメントをいただく前に、今ご三方におっしゃっていただいたことを、私のほうで簡単にちょっとまとめさせていただきますと、まず三田補佐から3つ、それから中司市長さんからも3つ、廣川課長からも3つと、ちょうど3つずつ言っていただいたという形になります。  三田補佐からおっしゃっていただいたのは、やったことをわかりやすく情報発信していかなくちゃいけないということですね。これは廣川課長のなさっているところの事例を引いていただきました。2つ目がコーディネートできる人材というのを、やはり自分の中に持っていなくちゃいけない。それで3番目が自分の体力を考えて、国からの補助金なりを取ってこなくちゃいけない、この3つをおっしゃっていただいたと思います。  それから、中司市長様からは、組織の点検、組織をつくっただけではなくて、その組織というのを常に点検しておかなくてはいけないということをおっしゃっていただきました。それから2つ目としてプロジェクトが進行していくときに、きちっとプロジェクトの効果というのを進捗管理していかなくちゃいけないと。その2つに共通するのかもしれませんが、やはり監査能力というのをきちっと持っておかないといけないんだということを言っていただいたわけです。  それから廣川課長からは、基本的に自分たちの実際の力を上げていくために、またその力をうまく使っていくために、広域で取り組むということが必要ではないか。2点目として、やはり従来の仕事のやり方をITにそのまま持ち込むのではなくて、権限委譲などを含めて、なるべくアプリケーションをいじらないようにしていこうということ、それから3点目に、やっぱり職員そのものがITに対して少しリテラシーを高めていく、目利きの力をつけていくということをおっしゃっていただいたと思います。  このあたりのようなことが今出てきております。このようなことに対するコメントでも結構ですし、また少し広いお立場からでも結構でございますので、岸本市長、お願いできますでしょうか。 岸本:先ほども三田さんからお話がありました。国の補助金をいかにうまく使うかということもありましたけれども、私どもこれまでやってきたのは、国の補助金でITの基盤整備について、全力を挙げてやってきたという感じがしております。先ほどの中司枚方市長のお話にあったように、もう少し私ども名護市としては、コンセプトをしっかりと立てて、これからどうしていくんだという方向性を、もう一度立て直す段階にきているなというふうな気がしているわけでございます。そのためには、当然職員の意識変革といいましょうか、革命といいましょうか、この辺が非常に大事なことだと思うのですけれども、どうも名護市の場合、これまで、いわば組織で上のほうから下のほうへ意識変革を求める側面が強かった。これではなかなかやっていけないなと思っております。幸い、ここにきまして、逆にボトムアップといいましょうか、下のほうから、実は職員の中から新しい電子市役所への対応をしていくためにはどうすればいいかと、チームが生まれてまいりました。30人ぐらいのチームでありますが、これはもう、私非常にびっくりいたしまして、来週は、私にそこで話をしてくれというふうな状況が出てまいりました。  本当は、ITとかそういう情報とかということについて、市役所の中では私が一番うといのかもしれないのです。しかし、何とか意識変革と言ってきたのですが、下のほうからそういうものが出てきたということで、これが地域住民の方達とのコーディネートがうまくいく一つの状況ができてきた、そういうことで、私は今非常にうれしく思っているところでございます。 新谷:今のお話ですね、皆さんにはどう聞こえたかということですが、実は私は今のお話を聞いていて、こういうふうに聞こえています。先ほど、最初にプレゼンテーションしていただいたときに、住民のボランティアということをおっしゃっていただいたと思います。かつまた、極めて重要なのが、民間のほうでもそうですが、情報化を進めようと思ったときに、トップダウンのコンセプトは極めて重要だと思うわけです。これがしっかりしないとなかなか進まないということは事実ですけれども、その中から生まれてくるボトムアップの活動というのが相まってこないと、これもまたうまくいかないのです。そういう意味で名護市長のおっしゃっていた、住民の中からボランティアが生まれてくる、これを望まれているという話と、今まさにおっしゃった職員の方々がそういうふうに動こうじゃないかといって、これもちょっと言葉は違うかもしれませんが、ボランタリーにそういう組織を立ち上げてくるということは、極めて優れたことだというふうに思います。  そのあたり、廣川さんにも一言コメントをいただいて、最後にまた茶谷先生にまとめていただければと思いますが、廣川さん、今のあたりいかがでございますか。 廣川:トップダウンは本当に大事です。誰が邪魔するかというと、多分部長たちです。部長さんがお出でになったら大変恐縮ですけれども、そのくらいの方々が問題です。私どももそうでした。情報化推進を話しに行くと「俺、後2年でやめるのだからもう勘弁してくれ」と言われ、大変難儀をしたのです。やっぱりそれは市長から言ってもらえば、これ以上言いようがないわけですから、それが非常にポイントだと思います。  それからボランティアの件ですけれども、役所だけでできることって限られていまして、また民間企業にお任せするほどでないその間のものがあるんですね。そこは従来の地域コミュニティあるいは新たな姿のコミュニティを、ぜひ一緒にみんなで手を携えてやっていこう。住民にしてみれば、誰からサービスを受けても同じなのですね。別に役所がやらなくても誰でもいい、民間にやっていただいても誰にやっていただいてもいいのかなと。結果的にいいサービスがバランスよくうまく提供できれはいいのかなと、こんなふうに思っています。 新谷:ありがとうございました。  それでは茶谷先生、一言お願いできますか。 茶谷:今、だめ管理職の話がありましたけれども、私は楽観的に見ているのは、最近の動向では、各地方自治体で管理職に対する研修が非常に多くなりました。私は頭がはげているものですから、よくお招きいただくのですが、大変熱心に聞かれています。問題はその技術だとかそういうことじゃなくて、情報政策と情報化の進め方について理解をしていただければいいわけです。かねがね思っているのは車の両輪でして、行政の深い経験とそれからITで何ができるかと、この2つが相まって初めて行政なり地域の情報化ができるわけでございまして、ITだけ勉強したからといって行政の情報化が進むわけじゃないわけで、仮説があって初めてあるべき姿が描かれるわけですね。  地域のあるべき姿、これは誰が描くかというと、市長さんをはじめとする幹部の方々ですね。これは行政の経験があって、地元の住民の方々と膝を交えて日々活躍されているご苦労の中から出てくるわけです。それがあって、初めて地域の情報化等ができるわけでございまして、その意味では、管理職に期待するところは非常に大きいわけです。管理職の理解のあるところは、また非常に発展されると、そのお尻を押すのがトップの市長さんたちと、こういう関係だろうと思って、余り心配することではなさそうな気がいたします。だめなのかはだめですから、これはもう切り捨てるよりほかない。何で見るかというと、電子メールを使うか使わないかでわかるのですね。  組織を動かすには共通の目的とそれから協同の意志、いわゆるチームワークの精神、もう一つ大事なことは、コミュニケーションですね。この3つがあって初めて組織は動いていくわけです。電子メールを使わない人たちの特性を調べてみると、キーボードアレルギーとかそういうことではなくて、もともとコミュニケーションに対して不熱心な、抵抗する人たちが電子メールを使わないというのが、調査の結果わかっているわけです。管理職が電子メールを使わないということは、コミュニケーションを軽視している方ですから、管理能力なしというふうに判断して、電子メールでテストして、普段使わないのは窓際に行ってもらうと、そういうような方向でいけば、非常に明るい感じがするわけです。  それから、ついでにほかの点、ちょっと感想を述べさせていただきますと、IT講習会550億円かけてやっておりますけれども、うっかりすると、そのまま霞のごとく消えていくお金になりそうですね。実際に聞いてみますと、IT講習会を受けた、そして電子メールのやり方を教わってきた、さて帰ってきた、電子メールやる相手がいない。そういう場面が多いんです。それでIT講習会の成果をどういう場面で生かすか、これは電子メールでコミュニケーションできる場づくりが必要ですね。その意味では名護市長さんがお話しになられた場づくりというのは非常に重要なことで、これがあって、初めてIT講習会が生きたIT講習会になるのです。  さらにバージョンアップして、もっと高度なことを知りたいというのは、これは本来のIT講習会の精神と違うんですね。やはり電子メールとホームページが使えるという、コミュニケーション機器としてのパソコンのキラーソフト、キラープログラムがとりあえずできればいいわけです。現在のキラープログラムは、ワードとかエクセルとかではないんですね。あくまでもコミュニケーションの道具としてのコンピータを身につけていただくことが中心なわけです。ですから、IT講習会のアフター講習会は場づくり、そしてボランティアの方のサジェスチョンによって地域づくりに何か役立っていただく、そういうことではなかろうかと思っているわけです。  それから、ちょっと違うことですが、当初の問題ですけれども、行政改革と情報化、やはりエンジンがないと自動車は走らないわけですので、初期投資はどうしても必要です。そこのところを最初からお金を削ろうといってもこれは無理です。情報のインフラ、いわゆるネットワークは電話とか道路と同じでございまして、広い意味での経済効果は出せますけれども、それがどうしたという数字になってしまって、大体外れること間違いないのです。日本に多くの有名な橋が架かっていますけれども、みんな赤字で困っている。みんな黒字になることを試算してやったんだろうと思いますけれども、みんな赤字で困っている。そういうことで、やはりインフラというものの中から経済効果を求めようといっても、これはちょっと無理かなという感じがいたします。だから最初は投資をしていだたいて、そしてサービスの拡大と増収増益をねらう。  具体的な例で申しますと、手数料、使用料等の消し込み事務のコンピータ化をやったときには、やはりお金かかるのですけれども、だんだん収納率がアップして、そしてその収入金額はコンピータを投資した金額を上回ると、こういうふうになってきているわけですね。だからそういうねらいで、この例は数量化できるものですから、簡単に計算できるんですが、サービスというのはなかなか数量化しにくい定性的なものです。しかしサービスについてもいろいろお話がありましたように、拡大再生産をして、より住民満足度を高めていくという方向で見ていただく。余り最初から費用対効果、費用対効果ということになると、遅れた日本の10年になってしまうわけですね。  それからもう1点、行政の情報化と地域情報化の関係ですが、私は廣川さんのお話などを伺っておりまして、地域情報化と行政の情報化というのは縦と表の関係かなと思っているのです。例えば、入札制度を10月から見事に発足されていらっしゃいますが、これはお話伺ってみますと、地域の産業をいかに育成するかという発想から出ていらっしゃるのですね。それで指名競争入札から一般競争入札にされて、そして多くの地域の企業の方が参加できるようにする。そのためにはホームページで公開し、最終的には認証制度を含めた入札制度という形に花が咲くわけでございまして、これはすなわち地域の情報化を進めていくと行政の情報化に至る例と思います。そういう形で別のものではないのではないかと。防災関係を横須賀市さんは大変熱心にやっていらっしゃるけれども、このITが横須賀市さんの牽引者になっているきっかけというのは、防災情報システムはどうあったらいいかというところから入ったというのを、ご担当の方から伺っておりまして、未だに頭に残っているんですが。要するに同じなのですね、だから余り無理して分けないと、ただ顔が違うだけ、切り口が違うだけと、こういうふうに理解していったらいいんじゃないだろうかと、こう思っているところでございます。以上です。 新谷:最後におっしゃっていただいたことって、実は、三田補佐がプレゼンテーションの中ておっしゃっていたことと、極めて近いことをおっしゃっているのかなと思います。重なりがどんどん増えてきているということは、おそらくここの場の共通認識になってこようかなと思います。三田補佐、そこら辺はそういう理解をさせていただいてよろしゅうございますか。 三田:全くそのとおりです。特にコメントすることはございませんが、一つだけ申し上げるとすれば、ネットワークの中に取り込んでいる主体が、「行政」「地域」というように単純にくくることは非常に難しいということです。地域の「何」と「誰」というようなことまで、きめ細かく分析する必要があると思います。そのような意味で、「行政情報化」と「地域情報化」という区分は、そもそも、概念上、意味を成さなくなってきているのではないかと私は理解しております。 新谷:ありがとうございました。  今ディスカッションいただいている多くの課題を、少ない予算でどう効果を上げていくかと、ちょっと横道に逸れたように聞こえているかもしれませんが、実は極めて重要なことが、茶谷先生からは出ております。最後に行政の情報化と地域の情報化というところの問題を言っていただいたのですが、その前に、2つ極めて重要なことをおっしゃっているので、ここにちょっと話を戻させていただくと、一つは多くの課題を少ない予算で効果を上げていこうと思ったら、まずその自治体さんの中の管理職のリテラシーを高めていかなくちゃいけませんよねということを、明確にこれはおっしゃっていただいているのです。そのあたりは、実は先ほど岸本市長から出ていた話と極めて深くリンクしてくるのですけれども、ボトムアップ、ミドルアップでどんどんそういう動きが出てくるということに、やはり評価をつくっていかなくちゃいけないだろうというのが一つです。  それからもう1点、今日、余り深く議論されているわけじゃないんですが、地域のあるべき姿というのは想定しておかなくちゃいけないということですね。実は、これは何気なく茶谷先生おっしゃっているのですが、ITがありきじゃなくて地域のあるべき姿があって、それにITをどうあてはめていくかということを本当によく考えないと、最終的にその効果が上がったかどうかということは、極めて見にくいということだというふうに理解をさせていただきます。  さて、時間も残り30分弱になってまいりまして、今、各先生からいただいたことは、取り立ててこちらでまとめるというよりも、皆さんの心の中に一つ一つ収めていただいて、今度は自分の課題として、引き上げていただければと思います。  その上で、お約束どおり会場からのご質問をとらせていただこうと思いますが、ご質問がある方挙手を願いますでしょうか。お一方でよろしいですか、ほかにはありませんか。  それではお名前と所属などをおっしゃって、お願いいたします。 会場:東京三鷹市役所、情報推進室の後藤と申します。大変貴重なお話ありがとうございました。2点質問させていただきたいと思います。  まず1点目、自治体におけるCIOの在り方ということについてお伺いをしたいと思います。今日のお話の中でもCIOの位置づけというような話が出ておりましたが、民間企業におけるCIOの位置づけほど、自治体の中ではまだ明確な位置づけがされていない、あるいは適切な人材がいないというようなことがあろうかと思います。特に行政事務の内容を知りつつ、なおかつ、細かい技術は必要ないと思いますが、ITの本質のところをきちんと理解をしている責任者が、どうしても必要だというふうに思うわけですけれども。三鷹市の場合にも、具体的には市民の皆さんの中から、どうせ行政の中にはそういう人間はいないだろうから、民間から起用したらどうかというようなことまで言われているようなそういう始末でございますが、このあたり、ぜひ茶谷先生あるいは廣川さんのほうからコメントをいただけたらというふうに思います。  それから2点目ですけれども、三田さんのお話の中で、最後のスライドで、地域における情報化施策の今後の方向性というところを、特に行政区域にとらわれないコミュニティの概念を、これからきちんとつくるべきだというお話がありまして、私も非常に感心をしたわけですけれども。逆にこのあたり、市民の皆さんの感覚からいきますと、ある程度当たり前になっているのかなというふうにも思うのですが、このあたりを一番気がついていないのが、行政の中にいる自治体の首長さんであるとか、職員であるとかということなのかなというふうに思います。  一方で、例えば事務の協同組合であるとか、あるいは市町村合併というような形でこれを大きくするというふうな流れが今ありますけれども、単純にそういう形で進めばいいということでもないというふうにも思いますが、このあたりは地域の経営者として、ぜひお2人の市長さんのほうから、お考えを聞かせていただければというふうに思います。よろしくお願いいたします。 新谷:ありがとうございました。三鷹市の後藤さんでいらっしゃいましたですね。2つ出していただきました。その行政のCIOというのは一体どういう方なのかと、仮に人材がそこになければ外から持ってくるべきなのかという、極めて簡潔明快なご質問が一つ、それからもう一つが、行政区域にとらわれないというのは一体どういうことだと、地域コミュニティを考えるのはどうやって考えていったらいいのだというご質問だったと思います。  後藤さんのほうからこの方にというご指名もあったのですが、私はぜひ全員にこの2つの質問をお答えいただきたいなと思っておりまして、大変恐縮ながら三田補佐から順に2つの問題について、もし問題として余り考えていませんというのであれば、一つどちらか選んでいただいても結構です。お答えをいただければと思います。  お時間も押しておりますので、大体1人3、4分をめどにお願いできればと思います。 三田:たしかに、標準的な自治体の組織図の中には見当たらないということですので、おそらく、部長あるいは助役がそのような立場にあるのではないか思います。例えば、法制度にとらわれないで、もう一度、組織運営を考えてみたり、あるいは謙虚に民間事業者の方々に話を聞いたりすることによって、「これは、やはりそのような機能があったほうが効果的である」ということを理解することが重要であると思います。そのような意味では、もちろん住民の方々との意見交換も必要であると思います。  それから、先ほどのコミュニティの話につきましては、法制度どおりにやらないといけないという考え方にとらわれないことであると思います。そのままですと絶対に成功しません。  IT装備都市研究事業のICカードについても、やはり、その地方自治体の首長をはじめとした地域の方々の工夫がアプリケーションに反映されない限りは絶対に成功しません。これは、「公的なアプリケーションしか入っていないからいけない」「民間のアプリケーションが入っていないからいけない」ということではありません。「制度を前提として、その範囲でしか使うことができない」というような窮屈な考え方で成功した事例は無いと思います。私は、まずは、このような考え方を見直すことからはじめる必要があるものと考えております。 新谷:それでは茶谷先生お願いいたします。 茶谷:CIOに関連して所感を述べさせていただきますけれども。民間の事例を拝見しますと、大抵副社長にすごいやり手の方がいて、そして進んでいるみたいですね。例えば花王のIT化を見ますと、副社長さんが非常に熱心にやられたと聞いています。これを市町村にあてはめてみますと助役になるのですけれども、助役はちょっと無理かなという感じはしますよね。仕事が多すぎるのですよ。  やっぱり役にとらわれないで、まずトップの方に非常に信頼されている人物で管理職の方、これはもう必要最小限だと思いますね。彼に頼んだら危なくてしようがないというのでは、とてもやってもらえない。しかも、いきなり効果を期待するというのではなくて、相当大きな初期投資をして、やがて長い目で見て効果を生み出していくという、そういうロングレンジの事業については、まず信頼されているという人物が条件だと思うのですね。  それから、真剣に地域の課題を自らの課題としてとらえると、自分の課題だけ考えているような人もおりますけれども、やっぱり地域の課題を真剣に考えてもらっている人、これが条件だと思いますね。言葉の問題なんていうのはカタカナでたくさんあって、我々がほんとに役所にいた時からやっていても、まだわからないことがたくさんあるぐらい、言葉がわからないというのはマイナスにならない。わからなかったら聞けばいいんですよね。カタカナで言っている人間が本当に知っているのかというと、わからないでしゃべっている場合も多いのですよ。だから、私、いつもアドバイスするんですが、トップの方は、部下がカタカナ言葉で言ったら、「君、それ何だ」と聞いてちっとも恥ずかしくないと思う。うっかりすると、向こうもわかりませんよと、自己啓発させればいいんだと、こういうふうにお話ししているのですけれども。技術用語というのは、それほど心配は要らない。むしろ重要なのは、調整力だと思いますね。いろんな利害得失、例えば今統合型GISというのが取り組まれていますけれども、総論賛成、各論反対の最たるもんです。部分になりますと本当に調整がつかない。そういうときに腕をふるっていただけるというのが重要なので、CIOですから、どこか役付けをしなきゃいけないとすれば、部長級で今言ったような条件の方に腕をふるっていだたく。例えば企画調整部長がこういう機能を果たすべきだといっても、これは実際問題として無理なような気がしますね。どうもいいかげんなお答えになりましたけれども、日頃思っております。以上です。 新谷:それでは廣川さん、お願いいたします。 廣川:CIOの話をさせていただきます。ITというのは単なる道具ですから、これは市長さん方もおっしゃられているように、ITで何かというわけじゃないんですね。実際には何をするかというと、経営なのです。経営を改革しよう。したがって、CIOは経営者が当然なるべきものというふうに理解をしています。  ITをどうやって使うかというのは、担当がやるのですけれども、そうした中で民間から起用したらどうかと、これはなかなかいいアイデアだと思います。そうされているところも、これは都道府県の例でございます、聞いております。ですから一時的に期間を限定して、そういう民間の方にお願いするというのもいいのかもしれません。ただ、メーカーですと、その方の会社の製品が調達しにくくなってしまうかもわかりませんから、コンサルさんにお願いするという方法もあるのかなという気がいたします。  私どもは、市長が市役所の中のCIOであると同時に、都市全体のCIOという位置づけにもしています。横須賀市では産・官・学で「IT戦略会議」というものをつくっておりまして、都市全体で同じビジョンを共有して戦略的に進めるための組織です。その議長が市長、したがってCIOという位置づけでございます。市役所の中ではどうかというと、これは三田補佐もおっしゃられたように、別に自治法上の何かがあるわけではなくて、電子市役所推進本部という要綱で設置してございますけれども、そこの座長という位置づけにしてございます。  もう一つだけ申し上げますと、実務者のほうのお話をしますと、担当部局にある程度の権限を与えませんと、なかなか実際には回らない。それも、できれば従来の情報システム部門、メインフレームのコンピータを管理している部門ではなく、企画もしくは長の直轄の部門に位置づけをする必要があると思います。従来のシステム部門は、長い間できるだけ各担当部局の言うとおりにしてやるのが、いいシステム部門だという位置づけでやってきましたから、急に手の平を返したように、「いや、業務のほうを変えろ」とはなかなか言いにくい。したがって新たな部門に位置づけをしていくと、うまく回るのではないかなと思っております。以上でございます。 新谷:コミュニティのほうはよろしいですか。そうですか、もしありましたら、また後で。では、中司市長、お願いいたします。 中司:先ほど組織としての点検、それから人材の開発ということが大きな課題だと申しましたが、本市でも、電子市役所から市民参加型の電子自治体へと脱皮していかなければならないと思います。  商工会議所との連携あるいは大学との連携ということを考えておりますけれども、今日、最前列に会議所の担当者、それから大学の担当者、市の職員と3人来ていますけれども、そうした産・官・学の戦略づくりということが非常に大事だと思っています。まず商工会議所あるいは経済界との連携、それから市内にあります6つの大学との連携を図って、産・官・学の戦略づくりをやっていきたい。それと同時に市民参加ということで、市民ボランティアとかNPOの団体、これらとの連携が大事だと思います。  9月に、小学校の校舎の再活用で、NPOセンターというのをつくりまして、そこでたくさんのボランティアの育成とか、NPO団体の育成をやっているのですけれども、そうしたところとも連携をしながら、IT化を進めていきたい。それが非常にいい形になってくると期待しております。  それからもう一つ、広域化のコミュニティの広がりという中で、本市でも、近隣の市との合併問題が浮上しておりますが、それとは別に枚方市は大阪と京都のちょうど中間にありまして、奈良県とも接しておりますので、3府県の6市で「サミット協議会」をつくっておりまして、その中でもIT化ということがこれからテーマとなってくると思います。そうした意味で、市を超えた枠組みでIT化が広がっていくんじゃないかと思いますし、それがさらに活性化につながっていくと思っています。  それと同時に、先ほど申しましたように、名護市さんと友好都市の関係にありますし、また、北海道の別海町とも友好都市の提携をしておりまして、合わせて3市2町でサミット協議会をつくっております。その中で、先般もITを活用した会議というものも行いましたし、そうした活用によってこれからさらに連携が深まっていくのではないかと思っています。これからも名護市の岸本市長さんとも一緒になりながら努力したいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。 新谷:ありがとうございました。それでは岸本市長、お願いいたします。 岸本:名護市のITということを今考えているわけですが、名護市とITの関係というのは、最初、私がIT関連の企業を名護市に誘致したいというところから、実はスタートしているんですね。それはどうしてかといいますと、実は名護市の20代、30代の失業率が大体15%ぐらいいっているという状況がございます。そういう中で、若い者の新しい雇用機会の拡大をしなきゃいけないだろうということで、IT関連産業を、どうしても名護市に誘致したいと、そこからスタートしました。  その際に、かなり優秀な市民が民間企業にいまして、実はこのIT関連産業を誘致するのに非常に有能な市民、それを逆に名護市のほうに「IT推進室」というのをつくりまして、名護市に引っ張ってきた。今彼に任せてやらせている。こういう状況です。ですから企業誘致からスタートして、今言った電子自治体のほうに、逆に視点も広がってきたという状況で、これから後も私は、大学もありますし、あるいは新しく国立高専をつくる計画もありますので、そういう中司市長がおっしゃった産・官・学というスタイルは、私どもも確立していきたいというふうに考えております。  それから行政区域コミュニティの話ですけれども、多分これは全国の風土あるいは文化・歴史、それによって随分違うのではないかというふうな気がしております。実は、名護市は30年前に5つの町村の合併で市に昇格した、そういう所であります。ただ5つ合併してもまだ人口が5万6,000人しかいないのです。30年前の合併の後遺症みたいなものが依然として残っていますね。ですから今言ったITとコミュニティというのを考える場合に、行政の地域が持っている、多分これは文化とか歴史とかそういうことと、今言ったITとコミュニティの問題、こういうのとどういうふうに関わってくるのかということについては、やっぱり相当慎重に考えた上で進めないといけないのかなと、私は逆に思っております。30年前に5町村が合併したという経験を踏まえてです。 新谷:茶谷先生、何か? 茶谷:コミュニティのことについて、今市長おっしゃったことで、少し触れなければと思っていました。こういう事例があります。茨城県の古河市が公共施設の利用申し込みシステムを導入しました。担当の方のお話によると近隣の市町村にだんだん広げていったら、昔の徳川藩、徳川の親藩の古河藩の地域になっていったのです。明治維新のときに古河藩がばらばらに小さく切られたんです。ところが地勢学的にも、それから住民意識も生活行動圏も、依然として明治と同じような地域での動きがあったのです。ところが行政が別々ですから、細切れになっていった。このインターネットのお蔭でだんだんつなげていって、でき上がってみたら、古河藩が復活したというような、そんな例がございます。  そこでやはり行政区画というよりも生活行動圏とか住民意識とか、そういうのがまとまっていくと。今まで道具がなかったからそれがつながっていくことができなかったのですが、このITによってそれが堂々と、今の制度の壁をらくらくと超えて、三田補佐のお話ですが、制度はもう関係ない、どんどん実質的に情報の交流が進んでいくという実態になってきております。  ですから広域行政で市町村合併という前に、どんどんネットワークで一体化しているというのが単に古河だけではございません。いろんなところで挑戦されている動向だと思って敬服しているところです。以上です。 廣川:それじゃあコミュニティの話を一言だけ。ひとつは、地域のコミュニティを、もう1度再生をしないといけないだろうと本当に切実に思っています。これは先ほど、茶谷先生がふれられたコミュニケーションのやり方が下手な人が増えているのです。道具はすごくうまく使える。携帯電話なんか子供たちはものすごい勢いでキーを扱います。うちの子供もやっていますが、何を送信しているのかと思えば、授業がつまんないとか、そんなメールを交換している。一方、コミュニケーションの上手な人、ITが使えなくても上手な人がいます。例えば絵手紙をまめに書いて送られる方もいます。だんだんコミュニケーションが上手にできない子供が増えているのも一方では事実です。  これを誰がどうやっていくかというと、やっぱり地域ですね。家庭と学校と地域。近所のおじさんが他の家の子供を叱りつけるということがだんだんなくなってきていますが、地域全体で子供を育てていかないといけない。コミュニティも、そういう地縁的なコミュニティもありますけども、もっと広く学ぶ縁のコミュニティもあるし、いろんなコミュニティがあると思います。それはもちろん行政区画にしばられるものではない。このへんはとても大事で、いろんな重層的なコミュニティがたくさんあって、いろんなコミュニティに所属ができるというのが心地よい都市の姿だろうなと思います。別のところに普段は働きにいっていて昼間は会えなくても、ITを使うと、もしかするともうちょっとコミュニケーションがよくできるという使い方だろうと思います。コミュニティがないところにコミュニケーションはないのです。先に道具を入れて、はい、これでやってくださいといってそれでうまくいくものではないと思っています。 新谷:ありがとうございました。重層的なコミュニティっていうのは、考え方としては素晴らしいなと思いました。そろそろお時間がやってまいりました。正直申しますと、最後にご質問をいただいたのは、今日のテーマをまとめるのに極めてふさわしいご質問をいただいたと思っています。あまり余計な口出しをしてもいけないのですが、最後にコーディネータの立場から一言、二言、申し上げて終了したいと思います。  まずCIOに関しまして。これはやはりCEOとCIOという概念をきちんと持っておかれたほうがいいと思うのです。時と場合によってはCEOイコールCIOということで運営される組織がありますけれども、ただ本当に片腕となるCIOがいたらCEOはもっともっと多くのことに目も配れるということもございますので、ここは是非ご留意をいただきたいというのがCIOに関する1点目です。  それから地域の情報化と実際の情報化という2つのテーマで今日は議論してきたわけですけれど、やはり自治体のCIOというのは地域のCIOであるという認識も極めて強く持っておかなくてはいけないことだろうなというふうに思います。言葉を言いかえると、自治体さんというのは地域のマネージャーであられるべきだろうと考えているところです。これがCIOに関する私のコメントですが、この話がコミュニティ論と重なってきます。私は先ほどからおっしゃっていただいている意見には大賛成のところが多いです。各先生がおっしゃっていることに大賛成でございまして、まず行政区域にとらわれて生活しにくいのであればそれは直さなくちゃいけないっていうのはその通りだと思いますし、文化とか風土が合わないのに強引に一つの地域と考える、コミュニティと考えるというのもまずいだろうというのもその通りだと思うのですね。そういう意味で、先ほどのCIO論と重ねて見ていただきたいのですが、あるコミュニティに立っているCIOがしっかりしている。そして別のコミュニティに立っているCIOがしっかりしていて、そのお二方が、文化とか風土というものを共有できるんだというのであれば、広域でコミュニティというものを捉えていくということがこれからの発想で重要になっていくだろうと思います。  まさに最後に廣川さんの言葉を引用させていただきますと、実はネットワークというのはそれを可能にするための最大のツールになっているのです。民間企業の立場でいうと、あそこに陰の部長がいるとか、陰の部長がいるという現状が起き得るわけです。これは、自分の直属の部長が気に入らなかったら、その陰の部長にいつも相談するみたいな話が実はあり得るのですが、こういう話を支えるのはネットワークの一番得意とするところだろうと思います。  ただ、最後に、今日はほんとに岸本市長と中司市長に来ていただいてありがたいと思っておりますのは、そういうステップアップをしていくために、やはり現在行政を守っていらっしゃる方が地域全体のCIOの役割を果たして、強めていかれるべき、まとめていかれるべきだと私は正直に思います。なぜならば、非常に簡単な理由でして、やはり力と実行力を持ったところがきちんとしたコミュニケーションを起こすということをやっていかないと、あまりナイーブにあちこちでやりましょうという話では進まないだろうと思うのです。  そういう意味では今日お越しいただいた両市長には、地域の情報化、実際の情報化ということをおまとめいただく大変な責務を負っていただくということでエールを送らせていただきながら、また残りの3名の先生に今日、貴重なご発言をいただいたことを感謝してパネルディスカッションを終了させていただこうと思っています。会場の皆さん、5名の先生に盛大な拍手をお願いいたします。(拍手) 鈴木:どうもありがとうございました。これにてテーマ別研究会Aのプログラムを終わりにさせていただきます。皆様、お疲れさまでした。  ありがとうございました。 (文責:情報化フェスタ実行事務局) 写真 左から岸本 建男氏・中司  宏氏・廣川 聡美氏・茶谷 達雄氏・三田  啓氏