7.2 研究会B「ブロードバンド時代の地域コンテンツ流通の在り方」 ●概 要:  情報通信技術の急速な普及は、社会・経済の構造に大きな変革をもたらし、そのような中、政府においては「e-Japan戦略」及び「計画」を発表し、全ての国民が情報通信技術を積極的に活用し、その恩恵を最大限に享受出来る社会の実現に向けた取組が行われている。  今後、日本がIT先進国という地位を確立するためには、Net-workインフラの整備とコンテンツの質・量の拡充を同時並行かつ飛躍的に発展させることが重要であり、コンテンツ産業を「情報の容量」という制約から解放するNet-workのブロードバンド化はその最たるものである。  一方、コンテンツ産業におけるデジタル化の波も急速に進展しつつあるが、流通にかかるビジネスモデルの確立など、今後の更なる発展が重要となってきている。  このような状況を踏まえ、本研究会ではブロードバンド時代における地域のコンテンツ流通の在り方について、コンテンツ産業に携わる有識者によるプレゼンテーションと情報交流等により、今後の展望を探るものである。 ◆司会:沖縄総合事務局経済産業部 濱川 均氏 ◆パネルディスカッション参加者(発言順)  ・稲垣 純一氏 国際電子ビジネス専門学校校長(コーディネータ)  ・佐々木守彦氏(株)三菱総合研究所デジタル情報流通研究チームリーダー  ・鈴木 邦治氏 名護市IT推進室長  ・岸本 周平氏 経済産業省商務情報政策局文化情報関連産業課長  ・稲泉  誠氏 (株)デジタルメディアファクトリー社長  ・中村  一氏 (株)アンフィニ・ドットコム代表取締役 濱川:本日は全国情報化推進会「情報化フェスタ2001」、テーマ別研究会Bのほうにお越しくださいましてありがとうございます。私は本日司会を務めさせていただきます、内閣府沖縄総合事務局経済産業部の濱川と申します。よろしくお願いいたします。  本日はコーディネータに、国際電子ビジネス専門学校校長稲垣純一先生を、パネリストとしては株式会社三菱総合研究所佐々木様、名護市IT推進室長鈴木様、経済産業省から岸本様、株式会社デジタルメディアファクトリーから稲泉様、株式会社アンフィニ・ドットコムから中村様、以上6名をお招きいたしまして、「ブロードバンド時代の地域コンテンツ流通のあり方」の現状と課題をプレゼンテーションしていただきまして、その後に課題の解決方策や今後の展望、いろいろご討議いただきたいと思っております。9時半から12時までの2時間半の時間ですが、皆さん方よろしくお願いいたします。  それではこれから稲垣先生のほうにマイクをお渡したいと思います。先生、よろしくお願いいたします。 稲垣:皆さん、おはようございます。朝早くからお集まりいただきましてありがとうございます。ご紹介いただきました稲垣純一でございます。私は専修学校の校長という立場で、沖縄の情報化人材の育成ということをテーマにしておりますが、一方で来年復帰30周年を迎えます沖縄県の、更に向こう十年間の振興計画を考えます審議会の情報通信部会の副部会長を承っております。そういった立場から今日の司会進行を仰せつかっております。どうぞよろしくお願いいたします。 コーディネータ 稲垣 純一氏  本日は、司会者の方からご案内がありましたように、5人のお客様をお迎えしてこれから12時までの2時間半、少し長い時間になりますけれども、「ブロードバンド時代の地域コンテンツ流通のあり方」というテーマで話し合いを進めていきたいと思っております。  進め方でございますけれども、最初に佐々木守彦さん、鈴木邦治さん、岸本周平さんのお三方に、プレゼンテーションということでそれぞれ20分ずつお時間を差しあげてございます。  佐々木さんは三菱総合研究所デジタル情報流通研究チームのリーダーでいらっしゃいますが、ブロードバンド時代の地域コンテンツ、一般的なブロードバンドの動向、事例といったことについて、主に技術面、事例面からお話をいただいて、まず基礎知識を共有したいというように考えます。  続きまして、今度は地域ということで、特にこの万国津梁館がございます沖縄北部地域、この地域の情報化の先頭に立っておられます名護市IT推進室の鈴木室長に、沖縄北部地域という事例に基づいて、現状がどうなっているのか、これからどちらに向かっていくのかといったお話をしていただきたいと思います。  さらにそれをバックアップする、先に立っては引っ張り後ろに回っては後押しをするというお国の立場、岸本周平経済産業省文化情報関連産業課長のほうから国の取り組みについてお話をいただきます。  このお三方で20分ずつですから、ここで1時間経過いたします。そのお三方のプレゼンテーションを受けまして、今度は産業界の沖縄でIT関連のビジネスを立ち上げて、実業としてぐいぐい引っ張っていらっしゃるお二人、デジタルメディアファクトリー稲泉社長と、アンフィニ・ドットコム中村社長のお二人に現状のお仕事のご説明をしていただいた後で、先のお三方との関連でディスカッションに移っていきたいと考えております。  それでは、トップバッターの佐々木守彦様からプレゼンテーションを頂戴いたしたいと思います。よろしくお願いいたします。 佐々木:皆様、こんにちは。三菱総合研究所の佐々木です。私のプレゼンテーションは、イントロダクションとして、これからキーワードとなる「ブロードバンド」の現状と今後という点と、今後コンテンツ事業者に活性化していただきたいというときに、ブロードバンドをうまく使ったビジネスモデルという観点、最後に注目すべきブロードバンド・コンテンツ流通技術という技術面、の三つをポイントに話題提供させていただきたいと思います。  まず一つ目の観点。ブロードバンドという言葉は、いろいろな方が使っていますけれども、言葉の定義をして、今はどうなっているんだろうかということをレビューしたいと思います。アメリカの規制当局(FCC)は結構シンプルな定義で、通信をやりとりするときに比較的ハイスピードな200Kbps以上の通信インフラのことをブロードバンドと呼んでいます。今、日本でブロードバンドというと、ブロードバンド・アクセスサービスを指している場合が多いです。すなわちケーブルテレビを使ってインターネットを高速化しましょう、とか、最近急速に伸びているADSL(電話線を高度化してスピードアップしたもの)、また、地域が限られておりますけれども、Fiber to the home(FTTH)など高速なインターネットサービスをしていくというアクセスサービスが中心です。しかし、ここでは、単にアクセスだけではなく、ネットワーク全体という形でこれから考えてみようと思います。  コンテンツ事業者、一般企業、自治体、サービスプロバイダという方達はこのブロードバンドというのをキーワードにさまざまな事業・サービスをトライアル中です。コンテンツ事業者の視点からブロードバンドを見ると、例えば音楽というコンテンツは今、CDパッケージというものを中心に流通していますけれども、もともとはデジタルコンテンツですので、ブロードバンドでやっていこうということになると、新たな販売チャネルが生まれるということになると思います。  一般企業、自治体もかなりホームページを立ち上げていらっしゃいますけれども、うまく顧客や国民とインタラクティブにやっていくツールがやっと出たのではないかと思います。インターネットの特長である双方向性、インタラクティブにいろいろやりとりできますよ!ということは重要なポイントです。今までのいわゆるダイヤルアップ接続だと、ユーザーは電話料金を気にしてすぐに切ってしまう。そうすると双方向な関係といってもなかなか難しかったものが、常時接続が可能なブロードバンドによって、やっと双方向ということが機能しだしそうだということです。  ISP等のサービスプロバイダにとっては、最近IT不況という言い方がされますけれど、なかなか苦しい中で新たにブロードバンドを引き金にしてこれからビジネスを拡大していこうという立場があるのかなと思います。  このように、各立場でブロードバンドの意味するものは異なりますが、ここでは、ブロードバンドとは、アクセスに限らない伝送インフラネットワークで、特に、新たなインタラクティブ(双方向)なメディアとしてうまく使えるツールとして位置付けたいと思います。  ここではブロードバンドの現状動向をまとめています。今の日本のブロードバンド、先ほどのADSL、FTTH、ケーブルなどのアクセスユーザ数は、先月時点で150万ユーザーです。大体日本のインターネットユーザー世帯の8%弱くらいにもうなっているのが現状です。今はケーブルが多いですけれども、ADSLが非常に伸びているという状況ですね。絶対数でいうと、お隣の韓国がもう600万世帯(2001.9時点)くらい。アメリカは国土も広くて人口も多いですけれど、約800万世帯(2001.3時点)というところです。その2国と比べると、まだまだこれから伸びるというところだと思います。  日本でブロードバンドアクセスが急速に伸びているのは、先ほど申し上げた通り、比較的安いサービスを提供するアクセス事業者がいろいろ出てきていて需要を伸ばしているということと、XSPって横文字を書いていますけれど、新たなサービスプロバイダが出てきてインターネットビジネスを支援・促進している。こういう環境をおさえる必要があると思います。今までインターネットを使う場合、キャリア等ネットワーク事業者がいて、それをつなげるISPというのが中心でした。最近は、iDC(インターネットデータセンター)ですとか、CDN(コンテンツデリバリーネットワーク)というような情報流通インフラの事業者がどんどん出てきて、このようなXSPの出現により映像・音楽等のリッチコンテンツ流通の環境ができつつあるということを指摘したいと思います。  ブロードバンドは、いろいろな方たちの期待とともにユーザー数も今どんどん伸びている、サービスプロバイダの環境も整いつつあるというなかで、今後どうなっていくのだろうかという見通しを私ども三菱総研が行った調査をもとにまとめます。これはIT戦略会議の戦略目標、2005年で3,000万世帯というのになるというのに比べ低い見通しを出しているのですが、それでも2005年で約1,500万世帯の方には確実に使っていただける非常に大きなチャネルとなると考えています。市民、コンシューマーとの新しいチャネルとして日本には根付いていくのではないかと想定しています。この見積りは、ややe−JAPAN戦略の目標から低いのですけど、今日のテーマであるコンテンツ事業がどんどん活性化して、ビジネスがうまくまわっていくことによって、ブロードバンドに合った素晴らしいコンテンツが流通されれば、当然のことながらe−JAPANジャパン戦略が目標として掲げているこれより大きなブロードバンド世帯への普及が期待できると考えています。  今後も伸びるということを今申し上げましたが、本日のテーマの一つであるブロードバンド時代が本当にくるためには、今課題というのはどんなところにあるのかをまとめたのがこちらの資料です。  ここにコンテンツが流れるブロードバンドネットワークの流れが書いてあります。ここに書いてある4つの課題をうまく解決していくのが重要かと思います。特に一番右上に書いてあるブロードバンドネットワークを使ってコンテンツ事業者さんが儲かるビジネスモデルはどんなものだろうかということが最大のポイントと思います。コンテンツ流通を促進するための、事業者の立場、それを支援するサービスプロバイダの立場、行政、自治体、国の立場を具体化できればと思います。  当然ブロードバンドを引っ張っていくのはユーザーのニーズです。これについて2つの事例をあげます。まず日本の事例。これは昨年12月ですからもうかなり古いデータですけれど、三菱総研が行ったものです。もう一つは、アメリカでのブロードバンドに対する一般の人達のニーズ調査結果(SBC社)です。  これを見ると、日本のユーザーニーズは、現時点では電話料金を気にしながらインターネットをしていた人達が、常時接続になって、メール等も早くなる、固定料金になる、ネットサーフィンが速くなるという、常時接続で高速アクセスが出来ることが中心です。基本的に今までのインターネット利用のイライラ感の解消ということだったと思います。  ただし右側のアメリカの事例で見ていくと、本当にいわゆるリッチコンテンツというふうにいわれている写真、映像、音楽、あるいは自分の顔。人っていうのはある種最大のコンテンツですけれど、そういうものの流通が求められるということになっております。  日本は今年が実質的にブロードバンド元年だと思いますけれど、これがどんどん熟成されるとこれからはリッチコンテンツに対するニーズが高まっていくと考えます。  これから2枚ほど、もうすでに日本でもブロードバンドのコンテンツビジネスが始まっていますよという一例をあげています。これは日経新聞の情報を元にまとめていますけれど、映像、音楽の分野、あるいはスポーツ、教育研修という分野でいろいろ始まっています。  一つの方向性としては、エンドユーザーから直接お金をとる有料課金モデルでビジネスを仕掛けていこうというトライアルが出てきたことが特徴的です。いろいろなサービス、例えばこの表でいうと今人気がある歌手のライブをやるというところですと、ネット上でS席というのを配置して1,600円という値をつけています。こういう人気がある歌手などのコンテンツをうまくキープして料金をつけていこうというところがポイントになっています。事業者は、先ほどもiDC、CDNといういろいろな事業者が出てきたと申し上げましたが、そういう事業者さんがうまくサポートしてコンテンツ事業者さんとともにビジネスを展開している事例です。  これはスポーツ、ビジネス、教育分野ですけれども、ここで一つ指摘したいのは、教育の単金、料金の高さです。当然教育はユーザーもしっかり勉強したいっていうニーズが高いし、そのコンテンツの魅力ゆえに高い料金設定が可能なので、今eラーニングが注目されていると思います。日本でもこういうトライアルがされてきたというところを指摘したいと思います。  これ以降は具体的な先進事例を見ながら、今日本では有料課金を含めたトライアルが始まっているけれども、今後どのようなブロードバンド・コンテンツ流通のビジネスモデルがでてくるか考えたいと思います。  ブロードバンド・コンテンツは、ストリーミングなどリッチコンテンツを流すだけなのだろうかというと、もっといろいろな事例があります。例えばアメリカのYahooはファイナンスビジョンという金融サービスを行っています。これ、どんなサービスかというと、ちょうどストリーミング画面では女性が金融ニュースを放送のようにお話しています。例えばある会社の株は、テロの問題でこういうインパクトがあってこう下がっている、というようなニュースを映像で流している。そうすると他の画面では、例えばインターネット検索によりその会社の株価を調べ、その会社の情報をいろいろ収集できるような仕掛けを同時にできるような環境にしています。  キーワードとしてインタラクティブというのを申し上げたいわけですが、こういうコンテンツを流しながら、ユーザーはカチャカチャとキーボードを打っていろいろ情報収集したり、そういうインタラクティブな関係を作れる。こういうコンテンツの流し方の仕掛けも考えどころだと思います。  次に韓国の事例です。ご紹介したいのは韓国のエンタテイメントサイトの事例です。ここではキーワードとしてコミュニティというものをあげたいと思います。これ、どのようにやっているかというと、音楽サイトで、一つ画面で歌手のビデオクリップがストリーミングで流れている。すなわち歌手が映像クリップ付きで音楽が流れていて、ある部分までただで視聴できる。これは今日本でも行われています。  それと同時にネット上でいろいろチャットができる。すなわちコミュニケーションしながらネット上にいる友達同士で「この曲、いいね」っていうように感想を述べ合いながらコミュニケーションして、一緒に同じコンテンツを見ている、こういうようなサイトの例です。当然このサイトではこの歌手のCDを売るとか、あるいはデジタルコンテンツとして売るというような仕掛けを持っているわけです。コミュニケーションも無く家でひとり暗くコンテンツを視聴しているとなかなかe-コマースで買おうとかということにはなりにくいですけど、友達が集まっていろいろ情報交換する中で、「この歌手、ここがいいね」とか、「ちょっとここがね」というようなコミュニケーションしながら、じゃあ誰か買ったらっていうような話題で、どんどん音楽コンテンツのe−コマースが進んでいく。そういうときに音楽という共通の関心がある人達が集まってそこでコミュニティができて、そこに音楽関連のコンテンツが流れていく仕掛け、こういうのもひとつの方向性かなというふうに思います。  ブロードバンド・コンテンツ流通モデルとしては、コンテンツ・プロバイダとエンドユーザーの間に、例えばストリーミングの一方的な垂れ流しを越えて、うまくインタラクティブな関係をつくっていくことですとか、コミュニティのようなものをつくっていく。そのなかのコミュニティ・インターラクティブの核となるのが、リッチコンテンツというような形で、ブロードバンドのインタラクティブ性を使ったコンテンツ流通の形を作っていくのがポイントになると考えます。先ほどの米国の事例、韓国の事例などから、このような仕掛けでコンテンツ事業者が儲かるビジネスモデルをどんどん作っていただければなというのが一つのメッセージです。  そんなコンテンツ流通のモデルをコンテンツ事業者だけが頑張っていけばできるのかというと決してそうではなくて、さまざまな技術を提供するいろいろなサービスプロバイダと連動してやっていくという流れが中心です。コンテンツ流通のために、どんな技術に注目すべきだろうかというところを最後に何点か申し上げたいと思います。  ここに書いてあるのは、いわゆるコンテンツ事業者さんの悩みということですね。上の2つというのはコンテンツ配信技術に関するものです。「俺はコンテンツのプロだけど、別にネットワークのプロじゃない。それにいろいろネットワークの運用管理ってややこしい」という観点ですとか、「少なくとも今までのナローバンドは、あれは見るに耐えない映像ストリーミングしかできない。本当に品質の高いきれいな映像を流したい」というニーズ。あと、「ブロードバンドに合った映像コンテンツ作りを支援するシステム」。そういうところについていろいろ問題がある。最大の課題は、やはり一番下に書いてある、ほんとに儲かるの?ということですね。このへんがコンテンツ事業を進める上での悩みかと思います。  1つ目の注文技術、これは先ほど申し上げたコンテンツデリバリーネットワーク、インターネットデータセンターですけれども、これはリッチコンテンツをきれいに配信する技術です。これは積極的に使っていこうというのが1つの提案です。  時間の関係で細かい説明は省きますが、ブロードバンドのネットワークができたら本当に映像とか音楽のリッチコンテンツがきれいに流れるかっていうと、まだまだ現状ではそうなっていません。これは日本もアメリカも韓国もそうです。そのためにCDNは、コンテンツをユーザーのすぐ近くに置くネットワークの仕掛けで、コンテンツをきれいに流す技術として注目されています。  それからもう一つは、DAM(デジタル・アセット・マネージメント)といわれているものです。先ほど申し上げたとおり、本当にブロードバンドに合ったコンテンツって何か?はまだまだ手探りの状況だと思うのです。  あるコンテンツ事業者は立派な映像作品を持っており、1時間近くの作品を放送したりDVDを作っている。ただ、1時間のコンテンツをパソコンが中心のブロードバンドで見るのはなかなかしんどいですよ。  ここに米国のニュースケーブル放送局であるCNNの事例を出しましたけれども、CNNはこのDAMという技術を使って新しい試みをしています。すなわち今テロの事件が出ていますが、CNNはニュース専門のチャネルで、大体15分とか30分で1つの放送パッケージ、すなわち番組を編成しています。30分、15分のなかにテロの問題でアフガニスタンに関連するもの、パキスタンに関連するもの、日本を含めて全世界の動きに関連するもの、ブッシュ大統領に関連するもの、仮にそういうようなテーマで5分ずつ6個のもので30分の番組を作ったというふうにしてみると、テレビでは5分のものが6個続いて30分の番組になっているわけです。  インターネット上では、ブッシュ大統領の動き、日本政府、フランス、ドイツなど外国の動きという形のテーマに切り出して、各テーマをカタログ化して流しています。  そうすると、エンドユーザーとしてはテロには関心があるけれども特に諸外国の動きを知りたいという自分のニーズに合ったところだけの5分間の映像ファイルを見ることができる。このようにコンテンツを切ったり貼ったりしてコンテンツ資産価値を高めていくDAMという技術が出てきています。こういうものが注目すべき技術としてあるかなと思います。  最後にもう1つ注目すべき技術として、コンテンツ流通ビジネスが儲かるか?ということですが、いろいろなサービスプロバイダがコンテンツ事業者のビジネス自体を支援する仕掛けを作るトライアルをしています。キーワードとしてパーソナル・インターネットサービスをあげます。インターネットって、エンドユーザーの顔が見えないなかでやっているサービスですね。今後、例えば音楽サイトであれば、ユーザーの顔が見えて、1対1の(One to Oneの)関係を作って、そのエンドユーザーの嗜好に合った動画広告を挿入していくとか、そのエンドユーザーの嗜好に合って、その人独自の、ここではパーソナルライズと書いてありますけれども、そういう仕掛けを持ってOne to Oneの関係をつくっていく。それによってコンテンツ事業者サイドのほうに動画広告の媒体収入を計上することが出来るようになります。また、1対1の関係が作れるようになることで、よりコンテンツ事業者が自分のコンテンツ資産を高めるような仕掛けができる。こういうようなコンテンツ事業自体を支援するネットワークサービスが出てきています。  最後に私のメッセージをまとめます。ブロードバンドは今もどんどん急成長しているし、今後も伸びていく。コンテンツ事業者の事業モデルとしては、単なるストリーミングの垂れ流しというよりも、インタラクティブやコミュニティとセットにしたコンテンツ価値を高めることが重要になる。最後に3つほどあげましたが、コンテンツ流通を促進する新たな技術が出てきている。ブロードバンドでコンテンツが流れる仕掛けはかなり整備されつつあり、あとは人間の知恵の勝負に入っているとお伝えして私のプレゼンは終わりたいと思います。 稲垣:はい、どうもありがとうございました。大変わかりやすく、ブロードバンドの日本における現状、それから海外で進んでいる部分のご紹介をしていただきましてありがとうございました。3人のプレゼンテーション、続けて次々と進めていきたいと思います。  続きまして、名護市IT推進室長の鈴木邦治さん、沖縄北部地域、どうなっているか、どうしていくのか、よろしくお願いします。 鈴木:おはようございます。私は、目線をもっと下の市民レベルの話という形になってお話をしたいと思います。時計を毎日持ってなくて、腹時計でいくものですから、時間20分を守れるかどうか分からないのですけど、そのへんはよろしくお願いいたします。  昨日の夜、この資料を作りましたので、できたてのほやほやです。準備不足というところがあるのですが、ブロードバンド時代の地域コンテンツ流通のあり方、地域の中でのコンテンツ流通というのは将来どのような形にしていったほうがいいのかというような話をさせていただきたいと思います。  注意書きが下にありまして、この資料は現在個人的な構想ということで私が勝手に話しているだけで、名護市の考え方というところまでいっていません。名護市の考え方は研究会Aで、うちの市長が堅い話をすると思いますので、こちらは柔らかい話をしたいと思います。  本題に入る前にまずはPRということで、名護市マルチメディア館の秘密を、ここに来られた方だけに内緒で教えたいという部分があります。  今写真に出ている名護市マルチメディア館、今回やっと2階の部分に住むことができまして、11月1日から新規企業が6社ほど入ってくるようになっています。「マルチメディア館をなんで作ったの」とよく聞かれますが、うちの市長と酒を飲みながら話していたら、「鈴木君よ、若い人が住めるようなまちづくりやってみないか」というのです。私は去年10月採用で、やっと1年たったばかりの公務員ホヤホヤなのです。それまで自分で会社を持ってシステムインテグレ−トやコンサルをしたりして、小さい4人ほどの会社を経営していました。市長が「面白いことがあるから行政に入らんか」という言葉に、給料は数分の1になってしまったという生活をしています。  基本的なコンセプトとして、地域に若者が住むには仕事が必要でしょう。「では仕事を作りましょう」ということで、作るか誘致するかということになるわけです。ですが、何もないところにそういうものを持って来て仕事があるかというと、まずないわけです。優秀な人材がいるかって、いるわけないです。業務上に必要な環境があるか、通信インフラ等があるかっていうと、それもない。ないない尽くしで最初はスタートしたわけです。地域に優秀な人材をつくるのは時間がかかりすぎますから、「企業が進出しやすい環境をつくろう」ということで、手っ取り早く通信環境という部分にお金をかければすぐにできるだろうということで、通信インフラの部分から始めました。  今現在、役所から年間1億円近い金額が、情報処理の費用として毎年計上されています。それを外に出さないで地域に少しでも落としたらどうか。そうすればそういう地域の仕事、産業もいくらかは成り立つでしょう。市役所の仕事は極力地域に発注する。あと、住む人のための住環境整備等もやっていかなければいうことが今取り組んでいる部分です。目標としては、地域に企業自体を根付かせてしまう。コンテンツとかIT産業といわれている部分を根付かせる。そうすることによって若者が地元に就職できる。人口増加につながり税収が増加して、そのお金を使って福祉が充実する。その結果として老後も安心というハッピーな世界をつくろうと、安易な考え方でしようが現在こういう仕事をやっています。  スタートは平成12年の4月28日、2年ほど前です。この翌日、サミットの開催が決定しました。増築が今月の初めに完成しました。なんで増築したかというと、下の1階のフロアには11ブースあるんですけど、そこがずっと満杯状態なのです。待ち企業が十何社おられたものですから、じゃあ早く作ろうかということで作ったという経緯があるわけです。  入居企業は今現在9社、11月から15社ということで、6社が新規に入ってきます。そのうちの2社は外資系です。外資系といいましてもコリアンテレフォン、つまり韓国の電電公社と香港の証券会社が入って来ます。今現在170名が、働いています。予定の入居企業を加えると、11月から220名になります。ここで50名ほど増えて、来年の今頃に300人くらいになっていると思います。北部で300人の雇用というと、オリオンビールを抜いて、働く場として断トツの職場となります。  年間の利用者は、平成12年度で延べ7,000人。マルチメディア館に営業で来られたり、教室を使われたりとか、見学に来られたり、機材を使われたりというので7,000名です。  パソコン教室の受講者は1年間で延べ約1,380名です。  具体的になぜこんな形で結構使われているかというと、実際はハローワークとか再就職を求めている方々がメインになっているのです。技術修得のためにマルチメディア館のパソコン教室に来られると、無料でワープロだけでも3日間、計18時間利用できます。基本コース、応用コースもありますし、エクセル、インターネット、いろいろなコースがありまして、すべて受けると約1カ月かかります。それとか3カ月コースというのも作ってありまして、ホームページの作り方等、すべて無料で受講できるような形になっています。  優秀な生徒さんは、そのままマルチメディア館に入居されている企業に人材ということで供給されていくわけです。マルチメディア館の入居企業は、ベンチャー企業という性格からお金をあまり持っていません。人が増えたからといってすぐに機材を自分たちで買うわけにいかないものですから、マルチメディア館に入っているTAOの共同利用センターの機材を使ったり、うちのスタジオとかいろんなものを使う。そうすると利用頻度がとてもアップするわけです。アップすると、世の中からは成功事例だと誉めていただけるという流れになっているのです。  ここでポイントして覚えていただきたいのは、物事は流れがすべてあるということです。まちづくりにしても流れを作らないと、なかなかうまくいかないという部分がございます。名護市全体のまちづくりの流れをどのように作っていくかというところで、今現在やっている部分ですが、名護市ファイバーシティ事業を行っています。平成12年度の補正事業の「域イントラネット基盤整備事業」というのをとらせていただいて、約6億円かけて名護市全域に光ファイバー網と無線LANにより、公的な場所をすべて接続しました。幹線・光ファイバーの部分は、ギガビットイ−サを使っております。1ギガの回線を使ってマルチメディア館とか行政施設、今度できることになっています国立高専、あと公民館、支所等を結びます。55の公民館全部を接続しています。役所内のLANから医師会病院、観光協会、物産センター、道の駅、図書館とか名桜大学がつながっていまして、あと小中学校26校のすべてに接続されています。小中学校には大手企業さんから寄付をいただいて、ネットワークコンピューターを270台ほどいただき、それを各学校に配って、子供達はそれを休み時間に自由に使えます。それを使うことによって、子供達の情報についての教育的な部分、リテラシーの向上に役立っているのではないでしょうか。  これをやるにあたって当然ながら先生の教育も必要なわけで、名桜大学の一教室を借りて半年ほど先生のための先生を置いて、先生方が空いている時間に自由に来られて勉強ができる環境を作り、名桜で教えている方々を昼間は小中学校に行っていただいて、現場で直接の話等を、ヒヤリング等を行ってきたというのもあります。  現在、名桜大学の図書館に行かなくてもこのイントラから本の検索をして予約することも可能になっていますし、さらに名桜大学の大きなホールを使って行う客員教授の講演を、このネットワーク上に流すということを今準備中です。  北部医師会では、岸本課長が手掛けられたIT装備都市(の委託事業)を実施しています。そこでは電子カルテを用いて、患者のいろんな検査データを映像データベース化し、CTで撮ったものとかいろんなものをデータベース化されて、北部全域の会員の開業医の皆さんが回線を使ってその映像を見たり、北部全体で一つのカルテを使うという実験を現在準備をされております。  そういう形でブロードバンドにおけるコンテンツは、本当に地域に根ざしたものをどんどん作っていかないといけないでしょう。この前の9月議会は、名護市のボランティアの方々が、役所の中に流れている議会中継の映像をそのままネットワーク上に流し、公民館からそれを見ることができるというようなことをされているのです。私達行政側がしなくても地域の方々がいろんな実験をされてこられて、徐々にそういう芽が出てきています。公民館も中心になる人がおられるところは「IT友の会」という会を作られています。そこでは会社を定年された方々とか、そういう方々が中心になって活動されているわけです。ホームページの作り方とかを、自分たちで勉強しています。その友の会のメンバーが交代で先生になって自分たちで力をつけている形をとっているところもございます。  「IT友の会」では、地域の運動会なんかをビデオで撮って配信するのだっていって頑張っているわけで、そういう形で、コンテンツっていうのは本当に市民の人たちが作るところまできていると思っています。  このファイバーシティ事業で構築した回線を、名護市自体もそのまま利用しています。マルチメディア館からの回線が切れると、名護市の行政的な部分と小中学校すべてのインターネットが利用できなくなりますが、そのほうが安上がりです。サーバーセキュリティもそこでかければいいし、有害画像が見られないようにフィルターもそこで一括してかければいいわけですから、とてもそのほうが安上がりかなと思っています。  ファイバーシティ事業を核にして、徐々に名護市自体の地域情報化を進めています。イメージ的には現在サーバーの置かれている7つの拠点があって、その拠点自体では自分たちでコンテンツが作られる、ホームページが作られて自分たちで流しているというようなことをしております。  本年度、エディマートという実験事業を名護市ですることになっています。エディマートという名前は、琉球新報の記事からとりました。小中学校の授業で使える映像やソフト、教育コンテンツを集めた教育情報のコンビニエンスストアをインターネット上に作る総務省のエディマート構想で、全国展開に先駆けた実験運用が2002年1月から沖縄県内で始まります。沖縄県内は名護市でございます。  教育用コンテンツを学校にいながら自由に選び、支払いはネット上で使える擬似貨幣で行える計画ということになっていますが、まだそこまでいかないですよね。企業と学校が双方向でコンテンツの充実に向けて、意見を交わすなど教育情報化を推進するということで、一応教育委員会の方と企業さんとで今勉強会自体を開いておる最中です。  その中のコンテンツには、宇宙開発事業団とかマルチメディア館のところに建てている国際情報海洋センターのコンテンツが予定されています。そこは何なのかといいますと、深海6,500とか2,000が海底で撮ってきた映像をそこでデジタル映像化しデータベースするというところで、そのデータの中には、撮ったときの気象状態・海流の流れ等、いろんな情報も一緒にそこにデータベース化されるものですから、使い方としてはいろんな使い方ができるでしょう。海で仕事をされている方がそのまま使うこともできるでしょう。小中学校では深海がどういう状態なのか、例えば伊平屋のところにトラフがあり温水が海底から出ている、いろんな映像がその中にデータベースされているものですから、それを子供達が自分達で検索をかけて見たいときに動画で見ることができます。そういうデータをイントラネット上で流しましょうということで、今年実験することになりました。政府の研究機関等の組織からデータをいただいてそれをサーバーに全部登録し、それを動画配信して見せていくということです。アクセスがあったものに対しての課金方法についてもその中で実験していこうということです。  今年そういう実験をしていくわけですが、名護市だけが情報化してもしょうがないですから、北部12市町村全体をやっていこうと、今北部12市町村の方々と毎月1回集まって情報化についての勉強会を行っている最中でございます。今北部広域圏のIT推進全体イメージを検討し、北部イントラネットを作ろうと考えています。名護のイントラネットは行政しか使えない、公的な部分しか使えない線ですが、北部イントラネットは民間の方々、個人の人、企業、行政、すべての方々が使えるような線をひきましょうかということで、現在計画しているところです。国と現在これを調整中です。今年できれば調査に入れたらなというところまでは考えています。これをすることによって、北部全体の産業の振興、それと人材育成、行政サービスの向上という3本柱が達成出来ます。  現在国が進めております電子自治体、これも市町村は15年までにやらないといけないという話になっております。申請業務はすべてネット上できるようにとか、いろいろな住民サービスをするような形になっております。隣のA研究会の方で、そのへんの話を今日討議しているわけでございまして、そのへんは向こうに任せて、あと人材育成にふれます。  北部全域でこういうことを始めますと、どうしてもコンテンツを作る人材とかネットを管理する人材、IT関係のいろんな産業で働くいろんな人材が必要になってくるわけです。それが産業振興とつながってくる部分があります。現在、国頭村は嫁不足と言われています。若い人達がいないというので、北部自体がどんどん高年齢化しているということです。沖縄はよく日本全国で長寿県といわれていますが、沖縄県内でも長寿地域は国頭、大宜味、その近辺に老人が多いわけです。  なぜそういう方々が長生きしているかというと、のんびり暮らしているというのもあるのですが、本当は嫁不足で過疎になりつつあるっていうので困っている部分があります。それを食いとめるためには広域ネットがあれば止めることができるのではないか。地域の既存産業を活性化することによってそこで作物を売る。売るためには個人ひとりひとりがホームページ作って売ってもどうしょうもないわけで、そのために地域のためのコールセンターを作る。そこに高校を出た女の子が就職して地域の方々と結婚されて、そこで嫁不足の解消と実際的に住みつく若い人達が増えてくるといううまいことができるのではないかという甘い考えで現在進めてきているところもあります。  ITの人材育成構想を、ない知恵を10人ほどでしぼりあげましてこれを作りました。ビギナーというこの下の部分では、小中高校とかIT講習を国が主導権を握って市町村でやられているのがあります。このビギナーとは、ワープロが使える、インターネットを見ることができる、表計算が使えるというレベルの方々を裾野でいっぱいつくりましょうという部分です。  その上にジェネラリストが、ビギナーよりも技術を持った人を、この部分を名桜大学とか国立高専、ポリテクカレッジ等でうまく養成していきましょうかと。  問題はその上の部分の2つです。エキスパートっていうのはよく新聞とかマスコミでいわれている大学院、大学レベルのことをしないといけないでしょう。ということは、この頂点の部分の数十人の人間を年間につくることが可能になれば、ピラミッドはできてくるのではないか。  スペシャリストの部分は名桜大学さんにもうちょっと頑張ってもらう。そういうIT関連の研究所とか企業さんに来ていただいて、ある程度、名桜とか国立高専を出た人達をそこで教育してもらえたらなんとかなるのかなというふうには思っているのです。こういう形で人材育成もやっていかないと地域としてはやっていけない。  一番の問題は、既存産業との整合性です。日本全国の地域、自治体の方々もそうですし、名護市もそうなのですけど、IT企業の誘致というのにとても力を入れてやっているわけですが、それは一部の人間がそこで働くだけの話であって、地域の人がみんなそこで働くわけじゃないわけです。さっき人材育成でピラミッドがありましたけど、そのピラミッドの頂点の2つくらいの部分が、IT産業がくればいいのかなという部分であるわけです。既存産業は、産業の裾野を占めている一番多い部分です。  その既存産業がITの恩恵を受ける必要がないのかというとそうではありません。ここに農業を例にあげていますけれど、人間、食っていかないといけないわけで、農家がいなくなっちゃったら、海外から全部輸入するしかないわけです。今現在、自給自足をすると日本というところは40%しか供給できない状態にまできています。その既存産業を活性化するためのIT研究所的なものを作ったらどうかと考えています。農業をやっている人たちというのは、なかなかITの高度な技術というのはわからない。ITの技術を持っている人は、農業とか漁業とかいろんな既存の産業がよくわからない。ノウハウがないわけです。それを融合させるような研究所を作って、そのなかでシステム開発を両方が力を合わせてすることによって、もっと大きな成果が期待できるのではないでしょうか。ITハードウエア企業がこちらにこられて研究所を作られて、地域の産業の代表の方々と力を合わせて、ここでしたら一番農業が考えやすいのですけれど、農業としていちいち毎日畑に行って水をまくのか、温室だったら毎日一定の時間になったら温室の窓を閉めに行くのか、そのことを全部IT化すれば行かなくてもいいわけです。それとか携帯電話で1番を押せば水をまく、2番を押せば閉めるとかそういう実験をして実際に使えるようにしてしまえばもっと農業が楽になるわけです。そうすることによって農家の人の労働力っていうのも当然ながら軽減されるわけです。  あと、IT技術を使うことによって品質の向上をさせることも可能です。今北海道で実験的に使われています衛星写真を撮ることによって、どの稲田がまっ黄色になって熟しているから今刈ったらいいぞ、この田んぼはまだだぞというような実験を現在やっています。そういうことをすることによって、最良の時期に刈り取りができるという品質の向上ができるわけです。そうすることによってランクがアップするわけですから、収入がアップするという流れも作れる。それとか、先ほど途中で話を切ってしまったのですが、IT企業は、農業に対してシステムで売ることができるわけです。ということになれば、この沖縄北部だけではなくて日本の各地域、アジアに対しても世界に対しても提案していけるようなものも作れるのではないかと。内容的にそこにセンサーをもう少し自動化するとか、農作業をデータベース化することによって、今までは熟練した人がこの季節になったから種をまくというような勘でやっていた部分をデータベース化することによって、若い人達、学校を出たての人達でもプロの熟練されている方々と同様にできるんじゃないか。あと、気象情報とか、台風がどうのとか先にわかるのだったらそれに対処する方法というのもまた作ることもできるでしょう。あと、畑の映像監視ですね。カラスがくるとか害虫がきているとか、そういうのは家にいても見ることができるのではないですか。  こういうことになれば、実際的にブロードバンド、太い回線、光ファイバーが畑まで必要になってくるわけです。そのシステムを作るコンテンツとかハードウエアにしてもそうですが、そういう企業さんもまたそこに生きる道が出てくる。企業をこっちに呼ぶためには、仕事が必要でしょうと書いてあったと思うんですが、仕事を作ることができるのですよ、田舎でも。私は名護に住んでいますけど、都会は都会なりのITのやり方があるのですよ。田舎は田舎なりのITの技術を使った街のつくり方っていうのもあるでしょう。うちは田舎だから田舎のやり方を自分なりにいろいろと考えながら、こういう情報化を進めてきています。そうすることによって産業もまた新たに興すこともできるし、いろんな方々がそこで就職するという、最初にうちの市長と話したことがまた生きてくるわけです。  そこの絵のようにITの技術を使うことによって、それとブロードバンド、光ファイバーを使うことによって、公共施設だけじゃなくてハウス管理から在宅医療から、いろんな農家が使ったり、学校が使ったり、防災に使ったり、そこで作られたものを都市型IT施設という、市場に送り出すということもそれを使えばできることです。そうするとこの中にすべてのコンテンツが必要です。ハードがあってもどうしょうもないですから、その中身を作り上げないといけない。コンテンツを作り上げないといけない。ですから田舎なりのコンテンツ流通のイメージは、いろんな産業、いろんなものに対して必要になってくるでしょう。一般的によく言われているのは、教育とか医療とかいろんなコンテンツが言われておりますけれど、徐々にそういうひとりひとりの農家の身近なところ、漁業をやっている人たち、地域に住んでいる人達の身近なところのコンテンツの流通が必要になってくるという部分が、地域から考えてくると本当に必要になってくるのです。  これで私のコンテンツ流通についての話を終わります、どうもありがとうございます。 稲垣:どうもありがとうございました。大変面白いお話で、ブロードバンドとカラスと嫁不足がすぐ隣り合わせの場所にいるっていうのが、非常によくわかったのですけど。  三人目は経済産業省の岸本課長ですけれども、岸本課長には「ブロードバンド時代のコンテンツのあり方」ということで、コンテンツ産業の現状、それを取り巻く環境、そして政策の方向性ということでお話をいただくことになっています。よろしくお願いします。 岸本:二人の発表をとても面白く聞かせていただきましたが、佐々木さんの話は、要するにブロードバンドは相当のスピードで、いわゆる管(伝送路)はできます、という話のヒントを与えていただいたと思います。鈴木さんの話も、地域によって、行政によってはものすごく先進的になさっているところがあると、したがって、これもブロードバンドのインフラを整備するのは相当速いスピードで進むであろうということです。  しかし、これは地域によります。大体3,000以上ある地方公共団体で先進的にITをやっていらっしゃるところは、首長さんがユニークか、あるいは担当者が鈴木さんのようにユニークかどちらかであって、そんなに数は多くありません。従いまして、全国津々浦々というわけにはいかないと思います。したがって、日本の人口1億2,000万人のうち地域的にブロードバンドをエンジョイできる人は当面は少ないだろうと思います。それは仕方がないのであって、これからは地方公共団体の競争ですから、首長さんがボーッとしてまともな担当者を置けないような地方公共団体は競争に負けていきます。  ブロードバンドの時代が来ますと、なんとなくみんな薔薇色という感じがしてしまいがちなのですが、全然薔薇色ではありません。私はコンテンツ産業を見ているものですから、後ほど、スライドでコンテンツ産業が今や日本の構造不況業種となっている姿を示しますが、人間には時間制約と予算制約があります。皆さんは自分のことを考えれば明らかですが、時間には限りがあります。お金にも限りがあります。したがって、ブロードバンドになろうともコンテンツを楽しむ時間というのは増えません。ドメスティックだけ見ていた場合には、時間は増えません。どうなるかというと、アナログがデジタルに振り替わるわけですから、ゼロサムです。コンテンツ業界はゼロサムです。  それから、予算制約があります。皆さんのお小遣いは増えません。それから日本経済はこれから右肩下がりが続きます。つまり今は不況ではありません、好況です。今くらい景気のいいときはなかなかきません。来年は今年より悪くなります。再来年は今年よりもっともっと悪くなります。これは覚悟してください。これが普通の状況です。  今、国・地方合わせて約660兆円も借金があり、財政政策は打てません。金利はゼロです。金融政策も打てません。経済構造改革も進めなければいけない一方で、経済構造改革が行われれば、リストラが増えて、失業者が増えて、景気がますます悪くなるということです。ただ、経済構造改革をしなければ全く日本に未来はありませんから、とりあえず5年くらいは右肩下がりを覚悟したうえで、5年くらいたってから徐々に少しはよくなる、あるいはそこで底を打つというのを期待して生きていくというのが私どもの懸命な生き方です。私は政府に奉職している者ですから、何を無責任なことを言うのかとお叱りを受けると思いますが、経済官僚として、本当に経済政策、打つべき手を持っておりません。財政も金融政策も打てません。とにかく経済構造改革をして、厳しい自由競争の下で、みんなで歯を食いしばって闘っていくしかないと考えています。  そういうことを前提にお話をいたしますが、時間制約、予算制約で、コンテンツ産業は喰い合いをしていかなければなりません。1社1社、一人一人が勝ち抜くだけで、10社いれば5社は倒産して5社残る。ここにいらっしゃるパネラーのお二人は必ず生き残ると思いますが、そうでないところは大変、という時代がくるのです。国としてコンテンツ政策を、あるいはコンテンツ産業をどうやって支持するのか、支援するのかということですが、国が今までやってきたことは「小さな親切、大きなお世話」と言うことができるかもしれません。国が支援してきた産業は、例えば農業然り、通信業も最近なんとかなりかけてはいますが、通信、運輸、国が規制をしているところはまともに国際競争力を持っていません。国が保護したり育成したりするところは絶対に国際的な競争力を持ち得ません。したがって、私どもは直接コンテンツ産業を育成するという偉そうな態度はとらないつもりです。ただ、それでは私の給料分が出ませんので、2つだけやることはあるんだろうと思います。ちょっとそれについてスライドショーでご説明したいと思います。  まず、申し上げましたようにコンテンツ産業は、今大変な不況業種です。映画については、日本は世界第二の映画大国ですが、売上げは3年連続でマイナスです。テレビ産業、テレビだけは儲かっています。これはテレビ地上波5局、NHK1局、ここが映像産業に大きな影響力を持っているからです。昨年、民放は市場最高の高収益をあげています。ただCS、BSはさっぱりですし、テレビ局もそのつもりで全然力を入れていません。どうされるのでしょうか。  それから、アニメーション産業です。世界に冠たるアニメーションですが、もはやぼろぼろの状況です。幸い「千と千尋の神隠し」が200億円を超える史上最高の興行収入をあげました。これは良いニュースです。しかし残念ながら、突貫工事で「千と千尋の神隠し」が作られた場所はお隣の国、韓国です。日本では一気にあの映画を作るだけの総合力を失っているのです。  ディズニーが今年から2Dのアニメの外注を日本からすべて韓国に切り替えました。もともとアニメは内生もしていたのですけれども、ディズニーは今年からすべて外注に変えました。すべて外注の先は韓国です。安いのはもともと安かったのですが、技術的にも韓国製で大丈夫だということになったのです。日本のアニメーターの気のきいた人はかなり初期からハリウッドに進出していますし、韓国にも行っています。  いずれにしても日本のアニメ産業は相当しんどいと思います。もう一度言いますと、テレビ局が強い。そして広告代理店がものすごく強い。これも彼らがファンディングしてスポンサーを集めてくるから仕方がないのです。何かあると15%もらうというビジネスモデルになっていまして、実際の制作側は非常に厳しい状況にあります。  例えば30分のアニメですが、今1週間に60〜70本やっています。私が研究会をやっている人たちですと、大手を中心に1本あたり800〜1,200万くらいとなっており、これで黒字を出すのは難しい状況です。アメリカでは大体30分のアニメで4,000万円から5,000万円です。最近はもっとたたかれて、300万とか400万という話もないこともありません。どうやって作るのか私にはよく分からないのですが、ものすごく悲惨な状態で、こんなところで素晴らしい人材が育つわけがない。実際に人材も流出しますし、人も集まらない。  唯一コンテンツの関係で人材が集まるのは、これまではゲームでした。ゲームは1社1社がリスク管理が上手でしたし、成功したときのあがりも大きかったものですから、それでゲームのクリエータは金持ちになれる。業界では「ゲームで成功すればいい車に乗れる」みたいな話があって、みんなゲーム業界に流れてきたのです。  音楽のほうもCDの生産額はずっと連続で減少傾向にあります。メガヒットと売れない商品の二極化が進んでいるからです。  ゲーム産業も、ソフトとハードで1兆円のマーケットなのですが、これが98年から3年連続で減少傾向ということになっています。たまたま本年は機種の変更がありましたのでハードがなんとか支えていますけれども、ハードを買う人はソフトを買いません。これを、実は業界では「27歳現象」といっておりまして、任天堂のゲームで育ってきた子供達が象徴的にいうと、今、山が27歳なのです。27歳になりますと、恋人もできますし、仕事をしていると残業もしますし、ゲームをしている暇はありません。しかしながら、彼ら、彼女達には懐かしい思い出がありますからプレステ2は買うのです。働いていますから3万円とか4万円くらいは小遣いで買えますが、ソフトをやる時間がない、だからソフトを買わないということです。  その次の世代、今の中高大くらいは次の山になるのですけれども、その下はまったく期待ができません。なぜならゆとり教育をやっていますから。ゲームというのは知的忍耐力がいります。特にロールプレイなどはそうです。今の子供はゆとり教育の影響で5分以上集中ができません。したがって、パッケージソフトはこれからは売れません。  ただモバイルを利用して月300円でダウンロードするゲームは5分くらいで遊べますから、今バカ売れしています。老舗のイマジニアさんは今年からパッケージソフトの販売を中止しました。すべてモバイル系に転換しています。  問題は著作権です。私ども、ここは何かお手伝いできるところがあるかと思いますが、我々日本人は著作権に対する意識がものすごく薄いのです。例えば小学校の先生も著作権に対する意識がありません。子供の作文を勝手に市のコンペティションに応募したりします。これは著作権法違反です。大阪で問題になっています。先生が勝手に子供の作文を市のコンクールに出して一等賞をとった。これは完全に子供の著作権を無視しています。子供が怒りまして、私は先生だけに見せようと思って作文を出したのに、それが1等賞だと新聞に載ってしまった。私の著作権はどうしてくれるのですかということで、裁判になるそうです。このような場合、アメリカでは学校あるいは先生と子供が必ず契約します。著作権者は子供なのですから、勝手にそれを人に見せたりしてはいけないのです。必ず許諾が必要なのですが、そういうことが非常に感覚として薄いのです。  次の問題は、不正コピーをされると、いわゆるクリエイターサイドにインセンティブがなくなってしまうということです。しかもデジタルコンテンツは1万回コピーしても劣化しません。それはアナログと違うところですから、被害が大きくなるという問題があります。私ども政府がなんとかコンテンツ制作者を応援できるやり方としては、とにかく不正コピーを防止する技術を確立することだと思っています。コンテンツIDというユニークな番号を付与します。これを、権利者の情報もメタデータで入れ込み、暗号化して電子透かしのような形で埋め込んでいくのです。そうしますと、それが流通している場合にモニターができます。それを最終的には課金をしていくという技術をなんとか作れないかと考えています。もちろん、これはいたちごっこになり、100%ということはあり得ないかもしれません。しかし、少なくとも95%くらいはそれでカバーできるようにしなければ、誰もコンテンツを出さないということになると思います。  最後の段に書いてありますが、今のはバーチャルの話ですけれども、リアルに海外における海賊版の防止対策について、私どもは、今、真剣に取り組んでおります。これは国がやる仕事だと明らかに定義ができます。  私どもがやりたいことの2つ目は、権利処理の問題です。さきほども言いましたように、日本人は著作権に対しての意識が薄いのですが、放送事業者さんも著作権の処理がまずいものですから、例えば2次利用、3次利用ができないのです。放送で1回流したものは、放送としての契約しかしていないものですから再放送すらできませんし、ビデオにもできません。それらをこれから契約する場合には、マルチユースのための契約を何とかしていただきたいと思っております。そうしないとブロードバンドにも乗せられないということになります。  ところが、当然ですが、テレビ局さんはそういうことは分かっていますので、例えばアニメの制作者に対して、今はないにもかかわらず、例えばインターネットでの配信というようなものについて、あらかじめ契約でしばろうというようなことを考えています。つまり「インターネットの配信権は俺によこせ」ということです。もともとテレビ局によっては、著作権全部をとってしまうような契約をとっているところもありますが、我々は、それはできるだけやめるように頑張ろうとしています。そのような標準契約書を作ろうと思って、私どものほうで研究会をやっていますが、役所が標準契約書を作っても仕方がなく、力関係がある以上はこれがなかなか使われないということになります。  一方で、面白いコンテンツがないのでコンテンツ業界の売上げが減っているということがあります。一部にモバイルの、携帯電話の料金が高いから、予算制約のなかで他のCDとか映画とかコンテンツが売れないのだという人がいますが、これは間違いです。予算制約があるのはそのとおりなのですが、携帯電話で友達や恋人とメールを送ったり、「よし子、元気」とか「今から学校に行くのよ」とか、くだらないことをメールでやるほうが楽しいのです。  私も子供と一緒にメールをやっていますが、楽しいです。それを越えるだけのコンテンツを提供できない。なぜかというと人材がいない、面白いものを作れる人がいない。何故か。お金が入ってこない。お金さえ入ってくればいい人材がくるわけで、この悪循環が起きているのです。結局いい人材ができなくて、いいコンテンツが提供できなければ、実は番組提供者達も困るのですが、そのあたりをなんとか良い状況にしていきたいと思っています。そういう意味では、流通事業者の優越的な地位の乱用を防止したり、なんとか制作者に資金調達を直接していただくような仕組み、これを作っていきたいということです。  もう一度整理いたしますと、私どもの目標は、まずさっき言いましたように、時間制約はドメスティックにはございますから、なんとか国際的に売っていく必要がある。国際的に競争力をつけていかなければならないということ。それからできるだけブロードバンドでも使えるようなマルチユースに対応した流通環境を整備すること。そのことによって2005年度までに市場規模を倍にしたい。そのためには下の3つの方法があります。  1つ、不正コピーの防止をする。そのためにはコンテンツIDをつける技術を国で開発をする。  2つ目は明確な権利処理をする。クリエータに有利なような契約書を作っていく。マルチユースを正確にできるような権利処理をしていく。さらにはファンドを直接制作者にまわすような、そういうサクセスストーリーを作っていくことによって、強いテレビ局、強い広告代理店と交渉していただく、そういうビジネスモデルを作っていくお手伝いをする。これが、少なくとも私の給料分はやらなければならないことだと思っています。しかもこれは経済産業省だけではできません。今、総務省、文化庁さんと一緒になってやろうとしています。  昨日、日本の政府は調達面で愚かな発注者であると言いましたが、アジアで情報と通信の役所を分けているところはありません。中国でも韓国でも台湾でも全部情報通信省です。情報と通信を分ける必要は全くありませんから、情報通信省なり情報通信庁でやっています。私は課長として、総務省の課長と一緒になって二人でやっています。そのことによって同じ効果を出そうと思ってやっています。さらに文化庁さんと一緒になって、来年、コンテンツIDの実験をやります。それぞれ今予算要求をしていまして、3省集めて5億円くらいになる。それで、例えば放送番組で1回できるかどうか実験をしてみます。できればそれを普及していきたいと考えています。今年度も私、2億円の予算を持っておりまして、この2億円で、いわゆるコンテンツIDのレジストレーションオーソリティの実験をやろうとしています。経済産業省の予算なのですけれども、そんなケチなことを言わずに、総務省さん、文化庁さんと一緒になって実験を始めたいと思っています。時間はあまりないのです。三菱総研さんの控えめな予測でも、1,400万世帯くらいがあっという間にブロードバンドをお使いになるわけですから、それまでにコンテンツIDを普及させなければならない、ということで焦っております。  政府調達の観点で申し上げますと、2億円の私のプロジェクトは、残念ながら入札方式をとれません。スペシフィックな技術なものですから、随意契約になりますので、契約書と附属する資料はすべてホームページに載せます。デジタルコンテンツ協会のホームページと経済産業省のホームページに全ての契約書の細目を載せますし、バブリックコメントもとります。さらに、終了後にも自己評価を載せて、パブリックコメントを求めていくようにしたいと思っています。  また、私の予算で170億円のICカードの予算も持っています。これも今実施していますが、これも同じようにスペシフィックな技術で入札できませんので、170億円の契約書をホームページにすべて載せます。そしてすべての附属資料もホームページに載せますので、ぜひ見ていただいてご批判を賜りたいと思います。以上です。 稲垣:どうもありがとうございました。ブロードバンド時代におけるコンテンツの問題点、非常に鋭く切りとってお話いただきましてありがとうございました。  今お話いただきましたお三方のお話、総合して考えてみますと、これだけ時代の変化が激しいわけでございますけど、日本がこれまでアメリカを中心とした基礎技術を追いかけてその上でその商品化をすれば、それが国際競争力を生むのだという時代は終わってしまっていて、アジアからはどんどん追いつかれたどころか、とっくに追い越されている。基礎的な技術なり、あるいはビジネスのモデルなりというのをいまだ確立していない。ちょうど日本がスコンと落っこちかけている。  ところが日本はこれまでの蓄積があるものですから、見た目は何事もなかったような社会を構成して、我々は生活し、こうして名護で集まることができているわけですけれど、これがあと何年続けられるのか。先ほどの嫁不足の問題も極めて地域にとって重要ですけれど、国全体として考えた場合はさらに大きな問題としているのではないか。この地域が将来に期待を持てなくなってしまった時代、そういう地域が集まって日本ができているわけです。「先に豊かになれる者から豊かになれ」って言ったのは中国ですけれど、そう言っていられないわけですね。そうするといかに地域地域が一つ一つ自分達の責任と決断でもって未来を切り開いていくかということより仕方がないと思うのですが、そういう意味では先ほどの鈴木室長のお話というのもそういう意味では大変力強いお話と逆に思ってわけであります。  ビジネスの現場からということで今日お二人においでいただいておりますが、稲泉さんは皆さんご承知の通り、沖縄でデジタルのコンテンツ業界を最初に立ち上げた方といってもいいのではないでしょうか。そしてわずか数年の間に、例えば今年でいいますと、ブルーリメインというフルデジタルの映画を完成されまして、夏に公開されたというところまでお仕事を広げていらっしゃいます。もともと沖縄の企業にお勤めでしたから、沖縄の社会というのも大変よくご存知なわけです。  もう一方の中村一さん、東京の渋谷にプロダクションをお持ちであったわけですけれど、かつてはアメリカ西海岸でお仕事をされていた。ご縁があって沖縄で次のビジネスを広げていこうとおいでになったのが2年ほど前だと思うんですが、今北谷のほうで事務所をお持ちになって、もう1つは糸満ということで、もともとアニメーションの業界、あるいはゲームの業界のお仕事をされていた方ですが、今北谷では世界で7台しかないというモーションコントロールカメラを使ったお仕事もされているし、糸満のほうでは地元の若い人たちにアニメーションの仕事場を提供しているというお二人です。言ってみれば沖縄で生まれて、沖縄でデジタルコンテンツビジネスを始められた稲泉さんと、あるいは東京にいて、アメリカにいて、それで沖縄にこられたコンテンツビジネスの中村さんという、そういう意味では好対照ではなかろうかと思っております。  まず、稲泉さんから自己紹介をかねて今のお考えをプレゼンテーションしていただきます。 稲泉:こんにちは。デジタルメディアファクトリー代表の稲泉でございます。隣の岸本さんがおっしゃいましたように、大変構造的に儲からない業界にいて、どうして沖縄でコンテンツビジネスをやっているのだということをちょっとこだわって話をしたいと思います。結論から言いますと、今は儲かりません、はっきり言いまして。デジタルコンテンツビジネスは装置産業でありまして、コンピューターへ投資を行い、それを回収し再投資をする財務的な戦略、絶対必要です。コンテンツビジネスはビジネスモデルがなければ成立しません。ビジネスモデルはコンテンツを作るだけでは絶対に成立しません。このような業界の色々な事業分野の中で、どうやってコンテンツビジネスを成立させるのかと言うのが私の目標であり、これが失敗すれば僕は大借金を抱えて、また那覇空港ビルの企画課長に戻れたら戻りたいなと思っているんですけども、多分戻らずに成功すると思いますので、その成功のあり方について一緒に考えていただければなと思います。  ちょっと1分だけ会社の紹介をさせていただきますと、私どもの会社はコンテンツの中でも特化しております。沖縄の海をテーマにして、陳腐化しない、肖像権のない魚を、実は魚は肖像権があるんですけど、魚は何も言わないので、無事にさっきの著作権法の問題はクリアをしています。また、全てコンピューターグラフィックスで海洋生物をテーマにしたコンテンツの蓄積をしています。お蔭様で来週の22日で丸4年になりました。それからコンテンツビジネスは権利が全てですのでその権利を自分達で持つために、いろんな仕組みを行政と一緒になって構築をこの4年間行って来た結果が生き延びた理由です。この詳細についてはどうぞ沖縄県に聞いてください。私はビジネスについて皆さんにご説明したいと思います。  コンテンツビジネスと言うのはいろんなテーマがありますから、我々は海をテーマにして、ベスト1ではなく、たった一つしかない会社を目指すということにしました。 私の考え方は、コンテンツビジネスは専門性、グローバル性、ローカル、地域性、それからオリジナル、独立性ですね。そういったものを持っていかないと絶対成功しないと思っています。そしていつでも、ヒットできるような形ではなく、海の魚っていつ見てもいいですから、陳腐化しないような長期で回収できるようなものを事業ドメインに置いて、そして新しいマーケットを構築していくということが我々の目標になっております。そのために4つのPを重要にしています。P・パーソン、人。P・プロダクト。P・プロパティ、財産ですね。それからそれがP・プロフィットになっていくだろうと言うような4つのPを我々は理念にあげています。  先ほどからコンテンツ制作の現状はメタメタに説明がありました通り、本当に儲かりません。装置産業であり投資が大きい。したがってお金はどうするんだと。コンテンツ、これも作るのにはお金が必要です。ビジネスモデル。先ほど投資ファンドのお話もありました。こういったことも私はやって来ました。しかしながら、やっぱりコンテンツっていうのは業界的な構造の問題がありますので、新たなビジネスモデルを確立しない限り非常に難しいということが言えると思います。しかしながら、2005年には1,500万人のブロードバンドユーザーが成立するであろうということは、逆に我々みたいな小さな企業、専門性の高い企業にとってはチャンスであるというふうに思っております。  ちなみに私どもの資本金は、1,000万から始めまして、現状3億3,200万まで膨らんでおります。それはお金が必要な事業だからです。それをすべてコンテンツの開発と製造業ですから、生産性を上げるためのプログラム開発、両面でやっています。そのお金はすべて資本金の中から使っているというような状況です。  コンテンツビジネスは、絶対にインフラが成熟しない限り成り立たないビジネスであり、そのためにはブロードバンドインフラの成熟が絶対になければならないビジネスです。これがなければ我々はコンテンツを作っても配信できないというような状況になります。したがってポイントしては、インフラの成熟が我々のビジネスの成功にあるそれが、必須の条件のビジネスです。  それからマーケットの話ですが、韓国、米国に比べるとまだまだ日本は遅れておりまして、ADSLを中心に急成長してきたということです。しかしながら地域格差がありますから、ナローバンドからブロードバンドに行くまでにやはりビジネスのあり方みたいなものをコンテンツ制作会社は考えていかなければいけません。現状のインターネットでもビジネスモデルを作りながらナローバンドのほうにマーケティングプロセスを得て、新たなビジネスモデルを自分達で作っていくというのが我々の企業としての経営戦略です。それを若干ですがご紹介しましょう。  我々のマーケットポジションはここに書いてありますように、ブロードバンドのインターネットという分野で放送事業の分野とインターネットの分野に大きく分断されております。それをブロードバンドという形で、ブロードバンドインターネットというように我々は理解しております。将来はブローバンドTVということで、放送まわりの形の事業に発展していくというように考えています。  ブロードバンドインターネットの分野というのは、次の4つの事業からなっておりまして、インフラ事業、サービスツール、光ファイバーやADSLの上に乗っていくストレ−ジですね。そして課金のツール事業があります。その上にやっとコンテンツという事業が入る。しかしそれだけでは売れませんので、非常にアナログの世界ですが4番目に、営業です。コンテンツを売るために営業がなければ売れないわけでして、この4番目の営業も非常に重要です。それで初めてエンドユーザーまで届いていくというような構造になっています。  私どもは3番目のコンテンツから始めておりまして、これはいかんなということで、2番のツール開発もやってまいりました。しかしこれもいかんなと言うことで、2番、3番、4番をやっていかないとビジネスにならないなというふうに考えまして、現状インフラは選ばずに、2番、3番、4番の事業を展開しています。簡単に言えば、ビジネスモデルは、1番から4番までエンドユーザーに届けるのに一体いくらですかと言うことでございます。  コンテンツの中身のほうは、先ほど三菱総研の方からご説明があったようにいろいろな試みが放送まわりの事業者さん中心にやられています。その競争の中でデジタルメディアファクトリーは右側のように、魚を中心に専門性を特化した事業領域でこの4つの事業の中の2、3、4とやっているということです。したがって、この垂直統合型の1〜4までのビジネスモデルを早期に作ることがコンテンツビジネス事業者にとって非常に重要であるということから、我々はソフトバンクグループと提携を行うと言うのが私の戦略です。したがいまして、もう競争の時代に入っていますから、そういう戦略を考えながらコンテンツ事業者がどうやって生きていくかということを真剣に考えているひとりです。  その次に、コンテンツビジネスの成立要因は何かというのがありますが、インフラ中心に考えていますが、我々は次世代のメディア領域としては、やはりブロードバンド、YahooBB、NTT、有線、AII、アットホーム、そう言うインフラを利用し、どういったコンテンツを設計していったらいいのか。  コンテンツは映像もあり、付加価値ばっかり、高品位なものばっかり作りますと、携帯にまた乗せられません。したがって、コンテンツをどのようにメディアミックスしていくかという設計が非常に重要になります。そういうことを一言申し上げたいです。  それから携帯ですね。これは、現在ゲーム業界の方々も携帯にシフトしております。今すぐに儲かるのは携帯しかありません。したがいまして、携帯は我々の間ではコンテンツ自体が株式公開をすると私は言っております。なぜかといいますと、1回コンテンツを出しますと携帯のユーザーが面白かったら課金するわけですから、それが何万人と集まることによって当然コンテンツの株式相場が上がっていくと我々は考えていますので、携帯からまずコンテンツビジネスのマーケティングを考えたアプローチをしていくと言うことです。携帯というのはまだまだナローバンドでございまして、携帯とPCのナローバンド、それから移りゆくブロードバンドのプロセスをどうやってコンテンツを設計したら我々は儲かるのかということに僕らは力を入れて考えているというのが、企業の戦略のです。  そしてコンテンツの中身としては、我々の会社というのは映像制作をする会社でございまして、例えばCGアニメ作品をこういった市場を背景にメディアミックしていくというのがポイントでございます。通常アニメのでも1年間くらい上映しないと、マーチャンダイジングでは売れないと言われておりまして、既存の放送事業者とどうやって受託をとりながら自分達の著作権を持ったコンテンツを配信できるかというのが今の状況にあるわけです。  今後の展望としては、コンテンツ会社というのはやはりブロードバンドの時代が来るまであと4年、どうやって生き残って行くのか?これはまさに今の放送事業者、いろんな方々と受託、アライアンスを組みながら、安定収益の確保に努め、自分達の持っているコンテンツを売っていくというような実制作のバランスが重要で、そのためには投資ファンドとか、コンテンツの新たなビジネスモデルのファンド等を積極的に行政にやって頂きそれを我々みたいなベンチャーが利用し、かつ先ほど申し上げた戦略に乗った形で戦術展開するというのが今後の展望です。  その面におきましては唯一沖縄っていうのは、基地問題、沖縄の観光問題等々いろいろありますので、やりやすいテストベットとしての沖縄というものがあろうかと思います。これはなにも沖縄の方々だけが傍受できるものではなく、コンテンツビジネスの問題は日本全体の構造的な問題でありますので、東京の企業と連携してぜひこの事業分野を確立したいと考えています。  課題問題点は、ここに書いてありますように、まさに垂直統合型のビジネスモデルをどうやって作るかというのが我々の問題点であります。それから課題については、コンテンツ流通に必要なインフラ・プラットフォーム側との連携、提携。例えばお客さんはもう1,000円、1,500円と時間とコストは決まっております。私どものコンテンツは一体何百円でしょうか。インフラが8割でしょうか、コンテンツが2割なんでしょうか、そういったことを積極的にこのプラットフォーム側、インフラ側の事業者と一体となって垂直統合型のビジネスモデルの中で、我々は、これは売れるから400円でしょというようなアナログ的な交渉を積極的にやっていくのが現状でございます。  先ほど岸本さんからお話がありましたように、アナログをデジタルに変えるゼロサムというのがありましたけれど、我々は逆にデジタルをアナログに変えるということによってビジネスをしたいということを展開しております。  まだ売れていませんが、私の正面にある泡盛ありますけども、これは今年の夏に公開しました「ブルーリメイン」という映画の主人公、アマミクという女の子を泡盛のラベルにしたボトルのマーチャンダイジングでございます。これはネットで売っております。7月から売り始めまして、東京で沢本商店という、ネット上で沖縄の泡盛を月売っている会社がございます。そこに我々は独占的にネットで販売をしております。  沖縄では当然地域のモデルですから、私がよく行く飲み屋にお願いをして、60本くらい飲みましたかね、売上げにかなり個人的に貢献をしている次第です。  そうやって自分が支えるのがコンテンツビジネスの醍醐味でもあるということを言っておきたいなと思います。ぜひネットで沢本商店、皆さん、検索していただいて、買っていただければ幸いで、私どもも1日生き延びることができるかというふうに考えております。  それから他者との差別化戦略としては、やはりグローバルに出していくと。それからローカルコンテンツをどうやって出していくかと。それから独自性、オリジナリティを持っていく事。そのためにどういった技術を開発するのか、あるいは持ってくるのか。それから昨今ではウェブ3Dという技術に着目しています。インターネット上にいろんな3Dのモデルがコンパニオンとなって紹介していくとか、そういったことができます。そういったことも積極的にやっていく技術面での積極的なアプローチ。  それから最後に問題になるのは人材確保、教育でございます。これは現在の優秀なアーティストとか、技術者のコミュニティを作りながら、さらにユーザーでありますコンシューマーとのコミュニティを作っていくということがビジネスモデルの早期の確立だということでございます。我々は海をテーマにした会社でございますので、ダイビング人口30万、40万人に対して我々のコンテンツをどのように売るのだということを考えています。そのために必要なプロデューサ、コンテンツプログラマー、クリエイタ等の育成等々をどういう形でやっていくかということが我々の最大の課題となっております。現状、40名くらいの会社に成長しております。  それからちょっとお見せしますが、これが我々の世界戦略図でございまして、日本国内はコンテンツの囲い込みをやっております。しかもコンテンツ不足です。先ほども言いましたように、装置産業であり、ビジネスモデルを確立しないとやっていけません。お金が必要です。非常に国内は構造的な不況であります。そういったなかで地域としてのどういったポータルを作っていくかということが我々の課題になっております。そのために私どもはブロードバンド・コンテンツのポータルサイトとして、琉球王国TVというものを作っております。  最後にどんなコンテンツだということをちょっとお見せしますけれど、これはあるアーティストとコラボレーションしたコンテンツです。これは沖縄のシーサーですね。シーサーをモデルにしたコンテンツで、これは着ぐるみでして、3メートルある着ぐるみです。なんと箱代が25,000円かかりまして、倉庫代も我が家の四畳半に全部入っているというような状況で、これは東京のアーティストが沖縄のシーサーを見たときに、こういうような感じだろうということで作ったコンテンツです。つまり優秀なアーティストとコラボレーションすることによって、こういう沖縄の新たなコンテンツを作っていくというようなことです。  これがCSの番組で、「ムーピルシーサーのお魚大好き」と言う番組で、11月の1日から流れます。16時59分から17時までの約1分間の番組で、時報という形でお魚のこういった生態を教えながらこのムーピルシーサーが図鑑としてCS放送から流れていく。当然これもYahooブロードバンドを含めたブロードバンドコンテンツとして我々は課金モデルとして出していく予定です。  こういうように地域の自分たちのコンテンツを売っていく。いくらで売っていくのか、それを交渉していくというような状況に今なっております。  もう一つ面白いものを紹介しますと、これはお酒が飲めない泡盛を主体とした沖縄マン。これは2Dでありまして、ナローバンドで今配信を予定しているところです。これも東京のアーティストとコラボレーションしながら作っているコンテンツでありまして、腹に泡盛のカメがございまして、こいつはお酒が飲めないんですが、中身は泡盛でございまして、顔もまさにウチナンチュの顔をしており、これがいろんな地域のおそばとかいろんなものを宣伝して、ブロードバンドを宣伝して、おそばをアナログ的にしっかり物流させて売っていくというようなことをやって行きたいと考えています。つまりアナログ情報をデジタル化して、デジタル情報をまたアナログ化していくというようなことで、マーチャンダイズを含めたビジネス展開をするというのが我々の考え方です。  以上でございます。ありがとうございました。 稲垣:どうもありがとうございました。やっぱり作品を見せていただくと具体的にわかりますね。あと、先のお三方に対する意見、要望というものもちょっと用意していただけるとありがたいなと思います。  では続いて中村さん、お願いいたします。 中村:アンフィニ・ドットコムの中村でございます。私が、何を目的に沖縄に来たかということですが、10年ほどコンテンツ事業をやっていくなかで一番大きな問題点はやはりお金が足りないということでした。かなり効率を図らなければいけないということで、米国にもいた経験、東京でいろいろな仕事を進めていく中で、やはり適所分業化を考えようということになりました。市場のある東京で営業と企画をやり、制作に関しては地方で出来るんではないかと。その中の選択肢の一つに沖縄というのがあるかなということで、沖縄にまいりました。  そういう状況のなかで今回、デジタルコンテンツ業界というところを第三者的に見まして、短時間でプレゼンしたいと思います。  コンテンツ分野は、皆さんプロフェッショナルですからたくさんご存知だと思うのですが、こんな分け方があるかと思うのです。私の考えるコンテンツ業界っていうのは、どんな風になっていくのかなと考えますと、映像が主体になりそうだと。市場が大きくなれば、そのなかで新たな仕組みを構築し、新たな流通を構築して、一番大事な権利を尊重しつつ、「ここがたくさんの方が言われている著作権の問題になるのですが」コンテンツを大量に供給する。大量に供給するという意味は何かというと、生産性を高めるということを考えるということです。これはコスト意識ということも含めて大量に供給すると言う事です。  ちょっとひいて見てみると、コンテンツ業界は、これまでパッケージメディアであるDVD、CD-ROM、それから放送業界のCATV、サテライトなどがあったわけです。そこにこのようなネットワーク業界が出てきた訳ですから我々から見ればメディアが増えたという見方をしているわけです。そのなかにちょこちょこと下から出てきたのは、それぞれのメディアに対してそれぞれインフラがありメディアというものが存在して、そこにマッチングしたオーサリング作業が必要で、その上に乗るデータがあり、更にその上にデータの集合体ということでアプリケーション・コンテンツということが、それぞれに必要になって仕事が増えたということがまずあると思います。  市場の移動が始まっているわけですけれど、パッケージメディアから、まだまだネットワーク市場に十分に移行おりません、ネットワーク市場に移行する1つのポイントとしては映像品質の向上があるかと考えます。これは私どもにとってナローバンドもブロードバンドも特に区別はなくて、映像品質が我々の供給するコンテンツに合っているかどうかというポイントだけで考えていますが、そろそろなってきたかなと思います。品質適正が始まると相当数パッケージメディアからネットワークメディアに移行するだろうと考えています。(ビデオ)レンタルショップっていうのも消えていくのかなとも思います。これで新しい1つのビジネスモデルが出てくると思います。  次に放送からネットワークにいくのかと考えますと、インフラの整備がポイントになるでしょう、ここでインフラといっているのは単に光ケーブルがひくということではなくて、例えばセットトップボックスとかパソコンとか、そういうものが必要であればそれらを含めて普及していく必要があると言う事です。  ここで、私の絵の中でブルーの丸があるのは、これがコンテンツ業者というか、コンテンツ制作に関わり合っている意味です。ブロードバンド時代といっても高品位の映像配信という映像だけを見ていくと、既にデジタル放送は、デジタルテレビがあってそれにブロードキャストしているわけですけれど、ネットワークになると何が違うのかと言いますと、ピアTOピアっていうことも含めて、相手をねらって配信できるという事です。いわゆるシャワーのように出すのではなくて、あの人に届けたいという考え方ができます。それからもう一つは対話性、インタラクティビティーと言っていますが、双方向メディアゆえの対話性です。こういうところの新たな切り口があるだろうと考えています。  コンテンツ制作者から見て、今までテレビ局では、社内で内部制作しているというものを含めて、コンテンツを編成して視聴者にお届けする。それがネットワークに関してはどのようになるかと考えますと、大きく分けるとこんなふうに我々から見ると考えられるのです。インフラ業者とeビジネスを考えていく人達がいるわけですが、そのなかで当然コンテンツ制作需要が出てくる。これは自分の会社は違うぞということで、差別化のためにコンテンツ供給をしなきゃだめだと思っているわけです。当然これは、1つの我々のターゲットになっているわけです。もう1つは、クライアントと思っていた人達がタイムリーなコンテンツを出したいということで、自分達の中でもコンテンツを作っていくことです。今までは制作会社に発注していたものが、「間に合わないぞ」と、もっとインタラクティブに、タイムリーに出していくためには、自分の中に制作部分を持たなければならないと考えることです。これは、1つの競合相手にもなるわけですけれど、こういう流れが出てきているのかなと思っております。  ネットワーク・インフラは、こんなにたくさんあるわけですが、過渡的なものを含めて何が残っていくかというのがあるかと思います。我々にとっては、これらはすべて市場だと思っております。「で、なんとなくコンテンツ需要が増えるかな」と。インターネットや衛星放送の普及でコンテンツ需要が増大したと思われるわけですが、これがすべての方がおっしゃられている有料視聴者が急に増えないってことなのです。無料で見る人は、いくら増えても意味ないですね。やはりお金を払って見ていただけるという方がどれだけ増えるか。これは当然、今の段階でネットワーク・コンテンツに関してはテスト、実験、いろんな言葉を使いながらほとんど無償で見せているわけですけれど、これを誰が負担しているかというと、先ほどのインフラの方であり、eビジネスの方であるわけです。 結果、メディアが増えても有料視聴者が増えなということは、お互いに視聴率が下がって損益点が上がりますから、当然制作費が下がって、作っても儲からないと言うことになります。マルチユースだと言われているんですけれど、権利主張の問題があります。これは話し始めると長くなるのですが、岸本課長のほうからお話があったようなことかと思いますけど、そういうものも含めてマルチユースの方向は目指しているのですけど、権利主張の問題があります。  デジタルコンテンツ制作者、どうしたら儲けられるかと言いますと、やはり制作ツールかと考えます。CG、アニメ、映像、特撮、音源、JAVAと書いてあります。ここはプログラミングという意味なのですが、こういうものを、独自制作ツールを持っていかに低価格化、コストダウンしていくか、というところなのです。 ハードウエアはだいぶ安くなりました。私が会社を立ち上げたのが7年前なのですが、その頃CGを作るというと1,500万くらいのSGIという機械を買わないと3Dの良い物ができなかったのです、今では数十万円の機械でもできます。これは機器がだいぶ高性能になってきた。ソフトウエア・ツールに関してもだいぶ低価格になってまいりました。これ(ソフトウエア・ツール)があることによってかなりスキルの補完ができます。これで人材の採用枠が多少は広がるなど双方に相乗効果がありまして、制作コストが改善できるという方向に向かっていくわけです。しかし、そこは、企業ですから、他社との競争があり、右側にある「制作者が独自開発する制作ツール」これは必要になってくると思います。ここがポイントになるかと思うのですが、この話の部分はあまり同業者の皆さんはしないようです。  どんどん話が飛ぶのですが、ブロードバンド時代を迎えて、需要が増大すると言うことで作品が足りなくなるということがおこります。30分のアニメーションの映画を作るのに3週間くらいはかかるのです。そこで既に有る旧作でなんとか間に合わせようということで、今動いているわけですけれど、旧作再生に目を向けるとメディア変換、デジタルリメイク、これは旧作をデジタル方式で全部リメイクしていくものです。それを蓄積して配信するということで、以前よりも関連業務は間違いなく増えているなと考えられます。いわゆるビジネス・ポイントは増えているという気がします。  ということで、コンテンツ業界ですが、我々から見て各企業のどういう部分に対して一緒に仕事ができるかとか、どこの企業に対して仕事を、ターゲット(顧客)としてやっていくか等、これまでは、コンテンツ制作者、放送事業者、「代理店という言葉も入れていますが」でしたが、これらがかなり一気にネット社会になって、増えています。ネットワーク・インフラ業、コンテンツ・プロバイダ、これは重複しているので色を変えてありますが、それからデータ変換をする、データ保管をする。エンターテイメント・コンテンツの場合は補修という作業が必要になってきます。ただ保管するだけではだめなので、データ保管・補修事業者となり、それから配信する。当然それに対して著作権を守るためのデータ・セキュリティ業、こういう広範囲な技術と事業が必要になってきています。  広範囲な技術ノウハウと人材が必要になるなかで、ブロードバンド・コンテンツをいかに出していくかというところと、単独ですべてをカバーできるかっていうこと、これは非常に無理があります。なぜかと言いますと、ネットワーク・テクノロジー、コンバージョン・クオリティ(変換品質)、これは単に変換すれば良いわけではなくて、色味が変わり、色々なことが起きますから、それらについてクオリティをどう守れるかという必要があります。それからデータベース・テクノロジーです、DAMという形でご紹介されておりますけど、いかに効率よくデータベースを作っておくかです。  それからインタラクティブ・エクスペアリアンスと書いてありますけれど、これはやはりインタラクティビティのことを非常に意識する必要があるだろうと。ピアTOピア、それから光ケーブルも含めて、直接結ばれた場合に、ADSLは別ですが、 上り下りの情報対話の考え方をしておく必要があるという意味です。  これらのモデルを、地方でも実現できないかと当然考えるわけですが、これが、私が冒頭で申し上げた、沖縄でこういうことができないかということです。東京ではインタラクティブ・エクスペアランスということで、これはゲーム分野のほうで何十本も作ってまいりましたので、インタラクティブ技術に関する色々な知識を持っています。沖縄ではコンバージョン・クオリティとのことで、そういうものを作業モデルとして持てないか、ということで人材も含めて構築しているわけです。  それからネットワーク・テクノロジーに関しては、別に日本だけじゃなくてもいいじゃないかということで、米国の会社とやることも考えられます。こういう形で、地方にいても、ここの色が違った線がありますけれども、これがまさにネットワーク化と思っておりまして、これらがブロードバンド時代になったところで非常に現実味が出てきています。  私の経験の中でも、10年ほど前ですけど、カリフォルニアの会社とあるCGの制作をしたのですが、ネットワークを使い協業することに関しては、かなり前からありました、それが今度ブロードバンドになったことでもっともっと効率が上がっていくかなということを考えております。  これが今、沖縄で進めていることなのですが、ハイビジョン用のアニメ番組ということで、企画、原画制作を東京でやり、音声収録も東京ですけど、動画と仕上げという部分を沖縄に持ってこられないかということで準備をしています。糸満市内に、最終的に120名位のコンテンツ制作者を収容する施設ができております。ここでは、現在47名位が動いております、ここは色々な人材の難しい問題がスキルも含めてあるんですが、徐々に形ができてきています。  ツールに関しては、良いツールを入れていく。独特のツールを入れていく事も必要だと思います。さらに映像編集作業まで沖縄でやり、ここでポイントなんですが、図の下のほうにあります映像配信は沖縄から直接やろうじゃないかと。HDTVに関しては、仕事ですから編集をして依頼先に返すわけですけれど、あるツールを使いまして、配信に関しては、ここ沖縄からやろうということで、来年の春に向けて映像配信ができる設備を構築しております。これは著作権利の問題がありますけれど、これをクリアすることによってこの新しいモデルを作り上げていこうとするものです。 ブロードバンド時代になり、伝送効率がアップすると同時に、コンテンツ業界と視聴者がネットで結ばれてきているわけですけれど、その結果、コンテンツ業界のあり方も変わっていくというふうに思っております。  私の考える流通のあり方というのは、ローカルエリア・サービスで、このローカルを何処と見るか、というのはあるのですが、コンテンツ・インターフェィスによってまずお客さんをつかんでいく。これは佐々木さんがコミュニティという言い方をしておりましたが、まさにこれになると思います。効率よく伝えるコンテンツを特定地域に出していく。ローカル・エリアは日本全体であるかもしれません。ワイドエリア・サービスを、最初から自分の中で、すべて構築するっていうのは非常に難しいことです。  例えば教育ソフトで考えると、教育ソフトをナレッジベースみたいな形で作り上げたとするとインターフェィスだけは我々のほうで作っていきます。知識ベースは、すでにある、例えば今お話しをしているフランスの会社なのですが、そこの持っている知識データベースで非常にいいものがありまして、これをなんとか使えないかと。こういう考えもありまして、すべてを全部作る必要はないのでないかな、というふうに思っておりまして、コンテンツ・インターフェースという言い方しています。  デジタルコンテンツは、今までのように単にアーティストを集めて作っていれば良いのではなくて、やはりネットワークとデータベースということを念頭に置きながらビジネスを作っていかなければならないという意味では、非常にタレント性を要求するような職業になっているわけですけれど、そこで重要なのが、とにかく人材だと思っております。国の事業のハードの整備もあるのですが、単年度では整備できないものが人材でありまして、コンテンツ業界の継続的な人材育成はぜひやっていただきたいなと思っております。以上です。 稲垣:どうもありがとうございました。フロアの皆さんからもご質問を受けたいということもありますので、パネリスト同士、あるいはフロアから、構わず、早いもの順で話を加えていきたいと思います。まずパネリストの方のほうで何かご質問のある方、いらっしゃいますか。よろしいですか。  私は今年の4月からインターネットのテレビ局をやっています。非営利なんですけど、沖縄のニュースを毎日放送しているのです。私は週に1回、「1週間の沖縄のニュースから」ということでニュース解説をやらせていただいているのですけど、64kbps でも見えないことはないです。ちょっと絵がカクカク動くだけで。情報を知りたいという人にとってはそれでも大丈夫です。ただ200kbps以上のブロードバンドになりますと、お祭りの絵も非常に印象を持ってご覧いただけると思います。  どれくらいの方が見ていらっしゃるのかなと思って、この間私が書いたばっかりの本があったものですから、こんなものを作りましたけど、ほしい方があったらどうぞメールくださいって言ったら、10人くらいしかこなかったですけど、全部本土からきました。滋賀県からきたり、大分県からきたり。ご存知のように、地上局のほうでも私、番組を持っています。あそこでも「プレゼントがあります」って言うと、大体1,000人、2,000人に1人くらいがわざわざはがきを書いて送ってくださるものですから、それである程度視聴者の数の推計ができるんじゃないかと思ってやってみたんですけど。沖縄のなかで相互に番組が流通するのかな、見ていただけるのかなと思ったら、意外や意外、本土にいて沖縄ファンの方に熱狂的に支持されているという意外なマーケットが見つかってしまったっていう1つの例です。非営利でやるということは、半分アマチュア的にやっているわけです。  先ほど中村さんから、プロとしてはとにかく映像品質が問題だ、ブロードバンド云々ではないというお話もあったんですが、この映像というマルチメディアからのある1つの行き着いたところで、アマチュアがいろんなことができるようになってきた。かつてコンシューマーであると同時にプロデューサである、プロシューマーっていう言葉を使った方もありましたけど、そうなってくると、いろんな人がいろんなコンテンツを、アマチュアが作り始める。これを束ねるというようなコミュニティがあり得て、そのプロというのがまた出てきてというようなことがあるのかなって、このへんは佐々木さんにお話をしていただけたらと思います。 鈴木:先ほども私の話の中で言いましたように、地域の公民館では「IT友の会」作られて、そこでは定年された方々が地域のいろんな情報を映像化して、そのなかでホームページをつくって配信しています。若い人たちのボランティアで、議会とかいろんな情報を市民に対して出していこうということで、そういう人たちがどんどん増えてきているのです。  そういう方々が今名護市役所に陳情に来られるのですけど、太い回線をあちこちに整備してくれないかと。自分たちは、そういう映像関係を作ってどんどん配信するのはいいけど、結局、小さな画面で送るしかない。ある程度の年とった人がパソコン上で見るくらいの大きさで配信できるには太ければ太いほどいいっていうのです。ただ今のところ役所として財政面とかいろんな問題があるものですから、うちのインターネットの回線は、OCNの1.5メガしかないものですから、これで当分我慢してくださいという状態になっているというところです。 稲垣:佐々木さん、お願いできますか。 佐々木:稲垣さんのご質問は、コンテンツを誰が作るのかということですけど、やはりプロとアマ双方があると思うのです。先ほど他のパネリストの方のお話を聞いていて、私は非常に元気が出たました。  ではプロはどういう風に考えるかといったら、コンテンツ事業者は自分を「権利ビジネスの事業者」であると考える、プロダクションは「私はプロダクション」でというふうに考える。制作コストを下げて韓国ともコスト競争で頑張っていこうという世界でしょう。私は権利ビジネスであるというふうに考えると、アナログ的にどんどんやっていく。そうするとそういうなかで、権利の問題が非常に重要だということのご指摘もあったと思います。そういうプロの方達は儲けるためにブロードバンドを作っていこうという視点が当然あると思います。  一方、ブロードバンド時代のコンテンツ流通を考えると、プロとアマというのは作品の質じゃなくてお金をとるかとらないかの問題ですけれど、アマチュアの方々もどんどん出てきてネットワーク上で流通させていく。そういう仕掛けっていうのは特に地域のコンテンツの中にあります。  一つの例をあげると、最近ウェブジャーナリストっていう言葉がよく出てきますね。映像特派員っていうような形で、それをインターネットの放送局のようなところで流していく、いわゆる素人です。それを集めてビジネス、すなわちプロとしてお金をとる仕組みを考えています。コンテンツを誰が作るかという観点で見ると、これからいわゆるアマチュアの人たちが出てきて、結果として、視聴者が非常に面白いコンテンツが見れる環境が出てきたら全員がハッピーになれるかなと思います。 稲垣:どうもありがとうございます。どなたか。聞いてみたいという方、ありますか。はい、どうぞ。 稲泉:岸本課長に。  来年放送事業者とも実験をするということがありましたけども、ぜひベンチャー企業たちがコンテンツを作る意味でも、投資ファンドみたいなものをからめて作ったやつをそこに投げて、実際にマーケットの反応として儲かっていくようなビジネスモデルまでのところまでをやられるのか、権利ビジネスのそういうところだけで終わるのかという質問したいんですが。 岸本:私ども経済産業省でやる来年の実験は、あくまでもその技術なのです。要するにコンテンツIDを振って、それをモニターするというような技術として、もちろん各民間企業はそれぞれに開発を始めてはいるのですけれども、いたちごっことはいうものの、どれだけの信頼性があるのかという技術面の実験なのです。ですから、例えば放送番組でやってみようということなのです。IDもどういうIDを振るのか、どういう国際情報を入れるのかというところから整理をするものです。今は全くそれがないのです。デジタルコンテンツをブロードバンドで流通させるためには、実は映像だけあってもなんの意味もないのです。すべてのデジタルコンテンツにその属性情報、メタ情報と呼んでいますけれども、それをテキストで落とし込んでおかないと検索できないという問題があります。ですから、そのデジタルコンテンツを全て、過去のものも含めて、過去のアニメをデジタル化していくのもそうですし、これから作るものもそうですが、全てのデジタルコンテンツを誰が作って、俳優さんは誰が出て、ということを場面ごとに全てテキストで落とし込んでいく必要があります。テキストという意味は文章で各データベースでやるわけです。これはすごい力仕事なのです。そういうこととコンテンツIDとイコールになってくるのですけれども、実は相当気の遠くなるような作業が片方であって、逆にそれはビジネスになるということでもあるのですけれども。それが1つです。  それから申し上げたいのは、ハリウッドであれば映画ファンドがあって、もちろん個人の投資家も年金基金もお金を出して数百億円がさっと集まって、ものにもよりますが、ノウハウが蓄積している結果として、大体20%くらいのリターンが得られるというようなものがあり、それを使うプロデューサがリーダーシップを発揮して、いい映画が作れる。このようなビジネスモデルが確立しています。日本ではいろいろトライはありましたけれども、額も小さいですし、なかなか成功していない。ぜひサクセスストーリーを作っていきたいと思っています。日本では1,400兆円のお金がありますけれども、ほとんどが金利のつかない、0.0何%の郵便貯金と預貯金にいっています。もちろん国としては、だからといってリスクをとれなんて勧めるわけにはいきません。しかし、何がしか、その中からリスクマネーが出てきて、それもハイリスク、ハイリターンのファンドもあれば、ミドルリスク、ミドルリターンのプライベートファンドがあってもいいし、実はコンテンツもリスキーなように見えますけども、ノウハウさえ蓄積すればミドルリスク、ミドルリターンのファンドも作れるはずです。ぜひ、ベンチャーを育てる意味でもサクセスストーリーを作りたいと思っていますので、またお知恵を借りたいと思います。 稲垣:そこのところはぜひよろしくお願いしたいと思うのですが、岸本課長に私から一つですね、著作権の考え方をきちっと確立していかなきゃいけないという話があったんですが、あまり著作権者に厚すぎる保護を与えますと、例えばソフトでいえば基本ソフト、ハードでいえば中核部品のプログラムですね。こういったものが強く保護されすぎて、強者がより強者になる、貧富の差が広がると。これは国ごとにもそうですし、企業ごとにもそうですし、という問題も指摘されるのですが、この点はいかがでしょうか。 岸本:少なくとも、貧富の差ということについては所得再分配の問題ですので、それはまた政治の問題として置いておいて、著作権もいろいろあります。もともとのアニメでいうと原作者の著作権がありますし、あるいは、例えばCDならCDの例えば貸与権という世界がある。映画には頒布権というものすごく強い権利が認められていて、メディアごとにずいぶん違います。それぞれに権利が違う。強弱があります。  これは多分歴史的なものもあるわけです。一方で日本の著作権法は、実はWIPO著作権条約を非常に丹念にフォローしているものですから、インターネットの配信権まで法律まで規定されていまして、ナップスターもヌーテラも日本では著作権上違法なのです。世界でも日本とオーストラリアの2カ国しかこの法律は作っていません。アメリカではインターネットの配信権の規定がないものですから裁判が起きたくらいです。したがいまして、そういう意味でそれぞれにやや濃淡はあるのですが、基本的な従来型の考えでいくと、やはり権利者の権利を保護しないと、要するにものを作る人たちが作らなくなりますよ、インセンティブがなくなりますよ、という考え方があります。  一方で、おっしゃるとおりで、例えばCGというのは最もコピーされやすいわけです。そうすると、例えば、今著作権は50年なのですけれども、本当に50年の著作権を保護したところで、それが守られるのかという話もあるし、もちろんこれからいろいろな方がいろいろな音楽とか映像を合成してどんどん新しいものを作っていく。それがまた、作られたものをまた合成して作られていく。そうするとものすごく複雑な権利関係になっていくことも事実です。したがって、私どもがやろうとしているコンテンツIDというのは、技術的には可能なのですが、気の遠くなるような、何度も合成されたときにどうするのか、という問題もあります。これは私の個人的意見ですが、ひょっとしたら私達はブロードバンドの世界に踊り込んだ瞬間、従来型の著作権の考え方を変えなければいけない、パンドラの箱を実は開けてしまったのかもしれないというおそれも感じております。これは、多分、これからこういった関係者が集まる中で実際に現場が進んでいくことでしょうから、考えていくべきことであろうと思います。 稲垣:どうもありがとうございました。質問できる方は、多分あとお一人ですよ。よろしいですか。中村さん、言いたいことがあればもう一言どうぞ。 中村:特にありません。 岸本:逆に私が一つ質問していいですか。 稲垣:どうぞ。 岸本:稲泉さんと中村さんに一言ずつで結構です。確かに我々も人材育成というか、問題意識は持っているのですが、私はファンドまでしか申し上げなかったのは、人材育成もお手伝いしたいのですけれども、何をしていいのか分からないのです。本当に、その人材育成というのは何であって、仮に我々が政策としてお手伝いできるとすれば何なのか。一言ずつ教えてください。 中村:そうですね、私も10年ほど前から人材育成のほうで、通産省時代からやっていたのですが、非常に難しいと思います。コンテンツを作るのは個人ですから、個人にお金を注ぎ込んでも、その方がいきなり寿司屋さんになっちゃうかもしれないんで、これは非常に難しいことだと思います。やはりそれを育て上げる企業に対して何かの支援をしていくというほうがいいのかなと。職を選ぶという人が増えてきまして、社を選ぶ。要するに会社に入ることよりも、これをしたいからここにいくっていう人が多いので、そういうところに対して何かの支援ができていくっていうことのほうが効果あると思います。  例えば著作権のなかで数%とって、それがファンドとして戻っていく形でもいいのですが、そういう形で、いわゆる企業を育てることによって、例えば代理店さんなんかたくさんいますけど、その中でやはり実際に作業しているのは小さな中小企業が多いわけで、そこを育てないと人は育たないんじゃないかと思っております。よろしくお願いします。 稲泉:僕はちょっとアイデアがあって、国に、まずブロードバンドコンテンツマーケットっていうフリーマーケットを作って、そこに企業がお金を出すんですね。そこで優秀なコンテンツを作りなさいというようなところで組織にあてて、実際に面白いコンテンツの企画で、OJTでやらないとだめなんですね。  ただしこれはビジネスになるかどうかわかんないんで、リスクマネーは育成マネーというように考え直して、そしてコンテンツ重視のビジネスモデルとしての実験をやったらいいんじゃないか。それに参画する企業は、人が作るビジネスですから、どんな人を抱えてビジネスをやるかっていうことを公募でチャレンジして公平に競争してやっていくと。そういう仕組みと企業からの、これから日本の制作、コンテンツ業界を育成していく上でのお声かけというかそういったものをやってほしいなと思います。 稲垣:私も学校をやっているので一言。学校からの要望云々っていうのはあえてここでは申しませんけれども、やはり今お二方がおっしゃったように、この業界はOJTといいますか、制作の現場で人は育ってまいります。今日のテーマであるコンテンツ流通の確立というのを進めていただくことが、イコール人材育成につながってくる。学校としてもそう思っております。  かつて日本の映画界が盛んだった頃、世界にたくさんの映画や人が紹介され、作品も出ていきましたけれど、これは撮影所という1つの場があって、そこに監督を中心にした何々組という組が5つも6つも入って、お互いに切磋琢磨しながらその中で若い人が育っていった。親分子分の良くないところもあったかもしれませんが、良いところというのは今のデジタルの時代にもう1回再現できないものかと私は思っております。  最後に一番印象に残ったのは、課長がおっしゃった「時代は変わるけれども、この業界、ゼロサムですよ」というお一言でした。世界はゼロサムかもしれません。日本のマーケットもゼロサムかもしれません。しかし地域はそうではないかもしれません。地域が発展していく可能性は、私はここにあると思います。  もう一つ、ブロードバンド化という変化をどう利用するか。ブロードバンドそのものではなくて、ブロードバンドへの変化を利用する産業、企業、地域というものが生き残り、伸びていくのではないかという気がいたしました。  今日はブロードバンド化についての様々な要素が指摘されまして、必ずしも話は一つに収束しなかったかもしれませんけれど、ここをスタートとして、皆さんお帰りになって、それぞれの場で議論を進めていただくと大変ありがたいと思います。 (文責:情報化フェスタ実行事務局)