災害対応総合情報ネットワークシステム外部仕様検討報告書
第3部 稼働システムの概要

     目 次

1. コンセプト

2. 情報の流れ

3. 県システム

  3.1 通信システム

  3.2 情報交換システム

  3.3 情報収集と情報処理システム

4. モデル市町システム

  4.1 モデル市町システムの目的

  4.2 システム概要

  4.3 システム構成図
 

 

1. コンセプト

 兵庫県及びモデル市町の稼働システムは、第1部と第2部において検討された外部仕様に基づき設計、開発された一体となったシステムである。

 兵庫県は、阪神・淡路大震災で得た教訓を踏まえ、「災害対策活動の強化」を主たる目的とし、「初動体制の確保」、「迅速な復旧支援」を実現するシステムの構築を図った。

 さらに、本システムには災害時の緊急対応の迅速性・的確性をより強化するため、平常時からの住民等との「情報の共有化」、「市町や関係機関との連携強化」、「行政活動の支援」に活用できる機能を有している。

2. 情報の流れ

 災害発生時には、震度計等からのデータをもとに被害予測を行い、市町、消防本部、警察本部、警察署、自衛隊、第五管区海上保安本部、県関係機関および県庁に設置された防災ワークステーション(以下WSとする)により、行政の意思決定、初動体制、復旧活動を支援する。

 また、平常時からこれらの機関との情報共有による連携強化、住民とのネットワークによる情報交換を行う。

 下図に情報の流れの概要を示す。


図表3.2.1 情報の流れ

3. 県システム

 以下に、県庁内および県の関係機関を主としたシステム構成図を示す。


図表3.3.1 システム構成

3.1 通信システム

(1) 兵庫県ネットワーク

 兵庫県全域に張り巡らされたWAN(以下「兵庫県ネットワーク」)の基幹伝送路は、県庁舎、県総合庁舎、県地方機関等の拠点を高速ディジタル専用線で結ぶループ構成である。また、各拠点から市町、消防本部等との接続をディジタル専用線やISDNによるブランチ構成にて実現している。さらにバックアップ伝送路として、兵庫衛星通信ネットワークシステムを利用している。

 下図に、県内プライベートネットワークの全体構成を示す。


図表3.3.2 県内プライベートネットワークの全体構成図

(2) 県庁LAN

 県庁LANはATM-LANとFDDIを組み合わせて、高速大容量かつ高速信頼性の通信を実現している。

 下図に、県庁LANの全体構成を示す。


図表3.3.3 県庁LANの全体構成図

3.2 情報交換システム

 インターネットサーバ、パソコン通信サーバ等により構成される。

 平常時および災害時に、インターネットとパソコン通信による情報発信、および住民やボランティア等との情報交換を行う。

3.3 情報収集と情報処理システム

 クライアントサーバ構成の以下のサブシステムにより平常時および災害時に行政業務を支援する。災害時の情報入力端末となる防災WS(ディスクトップ型PC)約300台を、県庁、県の地方機関、91の市町、32の消防本部、警察本部、52の警察署、自衛隊等に設置している。さらに、平常時の行政業務支援に活用できる防災支援WS(ノート型PC)約350台を県庁に設置している。

(1) 震度情報ネットワークシステム

 県内に設置した震度計からの情報を収集する。

(2) 観測情報集配信システム

 気象庁、気象情報配信事業者からの気象情報および河川情報を収集・蓄積し、情報処理システムにて処理・集計した結果を防災WSに提供する。

(3) 被害予測システム

 地震・気象情報をトリガとし、地盤情報、建物家屋情報、人口統計情報等をもとに被害予測を行い、防災WSの地図上に表示する。

(4) 危機管理システム

 注警報をもとに、所定の活動手順を防災WS上でガイダンスし、担当職員の一斉招集を行う。

(5) 地図情報システム

 地図を管理し、被害地域等の各種情報を付加して提供する。

(6) 災害情報システム

 市町などから報告される各種被害状況(文字・ディジタルカメラ画像等)を蓄積処理し、防災WSに表示する。

(7) 映像情報システム

 リアルタイム編集機能、ビデオオンディマンド機能により、報道機関映像、災害情報等の映像および防災WS上の表示内容を、災害対策本部室の大型スクリーンに表示する。

(8) 防災コミュニケーション支援システム

 電子メール機能、電子掲示板機能、ファイル共有機能を提供する。

(9) バックアップセンタ

 観測情報集配信、被害予測、職員一斉招集機能を提供する。

4. モデル市町システム

 災害時に兵庫県のシステムと一体となって初動体制の確保や迅速な復旧支援を行う、モデル市町システムを洲本市、宝塚市、三木市、五色町で検討、構築を図っている。

 市町モデルシステムの概要を以下に示す。

4.1 モデル市町システムの目的

 災害対応総合ネットワークシステムにおけるモデル市町システムのねらいは、

(1) 災害耐性の高い公共情報ネットワークシステムの構築

(2) ICカード等を用いた弱者対応型システムの構築

が柱となっている。

 各市町のモデルシステム開発の目的を整理すると以下の通りである。

(1) 災害耐性の高い公共情報ネットワークシステムの構築

  ・災害時の初動体制の迅速な確立を支援するため、いち早い情報収集を可能とする

  ・被災した住民に対し、必要な情報を充分且つ平等に提供し、行政サービスの充実を図る

  ・被災住民が必要とする情報をきめ細かく把握し、行政主体と避難所及び関係機関との情報交流を促進する

  ・収集された災害情報をもとに、行政主体が的確な意思決定を行える

  ・インターネット、ICカードそしてCATVシステムなどの活用により市民相互交流の促進や近隣市町とも連携した情報交流を活発に行える

  ・兵庫県システムとモデル市町システムを接続し、災害発生時等の情報連携強化を図る(検討中)


図3.4.1 県とモデル市町の接続方式

(2) ICカード等を用いた弱者対応型システムの構築

  ・カードに管理されている医療情報を医療支援、福祉支援に活用し災害弱者を守り支えていく

  ・ICカードの広域利用を図るべく、個人基本情報、救急情報が洲本市、三木市、五色町の2市1町では相互に読み取ることが出来る

 その他、各市町とも災害時にシステムが十分機能するために、通常時に利用が可能な地域医療システム、健康福祉情報システム、市の窓口サービス、学校教育情報システムなどのシステムの検討も行われている。

4.2 システム概要

 災害時における各市町のシステムの概要を整理する。

4.2.1 洲本市のシステム

 洲本市のシステムは、「災害対策本部支援システム」と「被災者支援システム」とに大別される。基幹のネットワークシステムにはマルチメディア通信を実現可能にするための基盤として、信頼性・拡張性に優れた、155Mbpsの高速基幹LANと100Mbps / 10Mbpsの支援系LANで構成しているのが特徴である。

 災害時のシステム概要は以下の通りである。

(1) 災害情報システム

 災害時、ボランティア等からの被災地の被害・復旧状況を収集し、収集した情報をサーバに蓄積、管理することにより、被害・復旧状況の把握を行う。

(2) 地図情報システム

 地図をベースに地域の実態を把握した情報を整理したシステム。災害時には、効率的な復旧工事や救援物資の調達・配送等を支援し、防災端末からの被害情報を基に各種統計処理を行った結果データを地図上にマッピングし、分析を行う。

(3) ICカードシステム

 避難所や救急車内において被災者の本人性確認及び安否確認を容易に行い、迅速な救援活動を行う。

 将来的には被災者の健康情報、福祉サービス情報を把握することにより災害弱者(高齢者、外国人等)に対する適切な救援活動を支援する。

 本システムは、JIS準拠ICカードとCAM(内容アクセスマネージャ)を用いている。

(4) 電話情報案内・職員一斉通報システム

 既設機器により、あらかじめ登録された緊急時の連絡先に自動的に電話をかけ、連絡事項を伝えると共に、連絡結果(出動可否等)を集計する。また、電話とFAXを利用して市民に対して災害情報等を提供する。

(5) グループウェアシステム

 災害時にインターネット・パソコン通信・電話やFAX等、の手段によって収集する情報を一元管理し、情報の整理・意思決定を支援する。

(6) インターネット

 災害発生時は、外部機関や洲本市内外の情報ボランティアからインターネットを介して災害情報を収集し、蓄積・交換する。また、WWW(World Wide Web)サーバにより国内を始め世界中に向けて洲本市の災害情報を含む公開情報を発信できる。

(7) パソコン通信システム

 市民・ボランティア情報団等が、電子メール・電子掲示板等の機能を利用して、情報提供・情報収集を行う。

4.2.2 宝塚市のシステム

 宝塚市のシステムでは、ATM-LANを利用した高速ネットワークにより災害発生時に収集されたマルチメディア情報(写真・データ等)を地図上に表示し、状況の把握、対処方法の確立を迅速に行えるようにする。また、インターネット、パソコンを利用し、個人レベルの情報の活用を図り、さらに災害弱者への情報支援が迅速に行える等情報のやりとりが円滑に行えるシステムが特徴となっている。

 災害時のシステム概要は以下の通りである。

(1) 危機管理情報システム

 本システムは、非常時に対する日常的な分析、計画、定期的防災模擬訓練のための手段であり、非常事態発生時の意志決定支援、また災害復旧時の被害査定と、被害のすべての局面で活用できる総合的機能を具備する。

(2) 災害弱者救援システム

 高齢者・障害者福祉事業の施設は災害時には、高齢者・障害者の避難所として機能し、一元化された情報とボランティア情報等を連携させることにより、有効な救済活動が実現される。

(3) 防災コミュニケーション支援システム

 電子メール・電子キャビネット・電子掲示板・スケジュール管理等の機能を利用し、災害発生時には出先機関・避難所の各端末より現地の情報(被災状況・避難状況・安否状況等)を受信することによって、災害対策本部での速やかな意思決定を支援するとともに、災害対策本部で決定したことを出先機関・避難所等へ速やかでかつ正確な情報伝達を可能とする。

(4) 防災地図情報システム

 本システムは、防災対策の基礎データを展開・集約することによって、管轄区域内の状況をわかりやすい地図の形式で検索表示するインタフェースを提供する。

(5) インタネットサーバシステム

 災害時には、被害・復旧情報の収集、避難所からの不足物品等の連絡、ボランティアの登録等に利用される。

4.2.3 三木市のシステム

 三木市のシステムの特徴をまとめると、市役所と外郭の施設(消防署、市民病院、水道ガス事業所、教育センター、公共施設、福祉施設、各学校等)をWAN / LAN等で結ぶネットワークシステム、そしてJIS準拠ICカードとCAM(内容アクセスマネージャ)を用いた安心カードを平常時には市民カードや健康福祉情報システムと連動させ災害時システムとの連携・有効利用を図っていることが上げられる。

 災害時のシステム概要は以下の通りである。

(1) 発災前支援システム(一斉通報)

 災害発生時、監視態勢時、警戒態勢時等レベルごとの初動態勢確立のための職員召集及び関連機関への自動電話呼応(音声合成で行い、出動可否を確認できる)とFAX・ポケベル送信を行う。

(2) 災害情報管理システム

 市民の避難している所在場所、負傷状況、建物被害状況等のデータを収集して、被害総括情報(人的被害、住家被害等)の管理や地区別の被害詳細情報管理を行う。また、避難所から対策本部への支援要請情報の管理、措置情報の管理を行う。

(3) 災害応急復旧支援サブシステム

 安否情報照会、生活情報提供、行政支援情報提供を行う。また、各種ボランティア団体を随時登録したり、協力を要請するためのボランティア情報管理を行う。

(4) 防災基礎情報管理システム

 災害時のために平常時から管理する情報で、ライフラインやダム・ため池等の管理や、食料種別、医療機関、避難所等の各種コード群の管理を行う。さらに、災害履歴管理、防災訓練支援、システム運用支援などを行う。

(5) 情報表示システム

 基本地図をベースに防災基礎情報や住民基本台帳の情報を地図上に位置づけ、災害情報や住民の人的・建物被害情報を地図上に示す地図情報システムと各種災害・被害情報を文字情報や地図情報を大型スクリーンに表示するAVシステムとより構成される。

(6) 防災LAN / WAN

 今回のシステムを稼働させるために必要なネットワーク。

(7) 安心カード(愛称:みっきぃカード)システム

 ICカードには個人基本情報(氏名、住所、生年月日等)、救急情報(血液型、持病、緊急連絡先等)、基本検診情報や各種ガン検診(過去3回分)の情報を持ち、その個人基本情報や救急情報を利用して災害・救急時に1人でも多くの命を守るための活動を支援するとともに、避難所での業務を支援する。

4.2.4 五色町のシステム

 五色町では、既に稼働しているICカードシステムやCATVシステムなどをフルに活用して、都会部のようなインフラの集積がされていない町の観点からの防災措置を検討しているのが特徴である。

 災害時のシステム概要は以下の通りである。

(1) ICカードシステム

 より広域的に活用するために、JIS準拠ICカード、CAM(内容アクセスマネージャ)の導入を行い、また腎臓透析や投薬状況等を追加し、より災害時に対応できるシステムにするとともに診療所等での受付を支援する。

 災害時には安否確認システムや避難状況確認、救援物資配布確認などに活用する。

(2) 庁内LANシステム

 LANシステムにより、庁内はもとより町内どこからでも必要な情報の把握ができる。災害時の指揮系統の統一や避難所間の情報交換をはじめ、平常時にも各種行政に活用する。

(3) CATVシステム

 現有の双方向機能を備えたCATV情報ネットワークシステムは、高齢者に対しても十分なシステムになっているが、防災の観点からよりグレードの高いシステムとする。

(4) 地図情報システム

 上水道、下水道、道路、河川、ため池、地滑り地区、消火栓、防火水槽、有線ケーブル、公共施設などの情報を1/1000の地図より入力することにより、水害時などの避難地区の設定やそこに含まれる高齢者世帯、独居世帯などの情報が確認でき、消防団員等の派遣も素早くでき、安否確認にも威力を発揮するものと思われる。

                                                       第3部終わり


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