報道資料

平成9年8月1日
電子ネットワーク協議会

インターネットにおけるフィルタリング機能の構築開始
=受信者による自主選択を可能にするサービスの実現=

 電子ネットワーク協議会(注1)(会長:関本忠弘)は、インタ−ネットを利用する際に、受信者が設定するレベルに合わせて、選択的かつ主体的に情報を受信できるようにするための「フィルタリング機能の普及」を推進している。
 これまで、当協議会の事務局を務める財団法人ニューメディア開発協会がフィルタリングソフトの開発を実施し、その配布を行えるようになったところであるが、本日から、さらにインターネットの各ホームページをレイティングしたデータベースの構築に着手し、9月からこのデータベースに基づくラベルビューロの運用サービスを開始する。
 各ホームページに対するレイティング基準は、国際対応の観点からRSACiをベースとし、わが国におけるパッケージメディアの業界自主基準などを参照しながら暫定的に実現した。
 フィルタリング機能の普及により、利用者の「知りたい」という権利と、「見たくない」または「(子供達に)見せたくない」という利用者の意思を、それぞれ尊重することができる利用者主体の情報システムが確立されることになる。

1.背景と経緯
 インターネットは、社会インフラとしての普及、世界規模での広がりによって、学術研究や産業活動の効率化のみならず、個人の利便性を高めることに多大な寄与をしている。しかし、情報発信が容易であり、発信情報が直ちに世界をかけめぐる特性を有しているため、誹謗中傷などの倫理的に問題な情報や、猥褻、暴力などの非合法情報もネット上を広く流通し、大きな社会問題となっている。これに対処するためには、法的規制による対応も考えられるが、政府による新たな法的規制ではなく、情報技術を活用した情報の選択的受信などに基づく利用者による自主的対応が、現実的な解決策として、国際的な潮流になっている。
 当協議会は、昨年11月に「インターネットにおけるフィルタリング機能普及の検討開始」を報道発表し、国際的に広く使われているRSACiなどに準拠したレイティング基準によるPICS準拠のフィルタリング機能の利用を、個々の利用者からの要望に応じて行えるようにするための協力・支援を検討してきた。

2.フィルタリング機能の構築開始
 当協議会の事務局を務める財団法人ニューメディア開発協会では、通商産業省からの出資を受けて情報処理振興事業協会が実施する「創造的ソフトウェア育成事業」の一環として、インターネットにおけるPICS準拠のフィルタリングソフトの開発を実施し、広く利用者に配布できるようになったところである。
 本日から、インターネットの各ホームページをレイティングしたデータベースの構築に着手し、9月からこのデータベースに基づくわが国初のラベルビューロの運用サービスを実験的に開始する。ラベルビューロにおけるデータベースは、主として複数の検索サービスから採集した検索結果に対して、ラベル付加作業を実施することによって構築・更新するが、データベースにさらに追加すべきページについての利用者からの情報提供などの協力も期待している。
 ラベル付加の際のレイティング基準は、青少年向けを想定して国際対応の観点からRSACiをベースとし、その中に、わが国におけるパッケージメディアの業界自主基準の一つである「フォトCDパブリケイション制作における倫理基準」などを参照しながら暫定的に実現した。
 本日から、Windows95 フィルタリングソフトをオンラインで配布できるようにしているが、このソフトは、セルフレイティング(内容に対応するラベル付けを発信者自身がホームページの記述中で行うこと)とローカルデータベース(パソコン内に利用者が作成するデータベース)によるフィルタリングのみに対応する機能限定版である。
 ラベルビューロへのアクセス機能を搭載した正式版は、ラベルビューロの運用サービス開始に合わせて、Windows95 フィルタリングソフトを9月初め、Macintosh フィルタリングソフトを10月初めに配布する。配布ソフトは、OS機能の一部を置き換えるもので、Netscape Navigator などのブラウザに依存しない特長を有する。

3.フィルタリング機能の普及啓発
 通商産業省による新100校プロジェクト(全国の小・中・高校100校余りにインターネットへの接続環境を提供し教育利用の実証を行う事業)への協力を通じて、教育現場での利用を推進すると共に、国内における他のラベルビューロの構築に対して技術的な支援を行うことにより、異なる価値基準に基づく複数のラベルビューロの運用サービスが実現されるよう務める。
 さらに、フィルタリングに関して豊富な機能を備えた米国製品を日本語環境でも使用できるようにしたソフトや、国内で開発されたフィルタリングソフトが市販されるようになってきたので、フィルタリング機能普及の観点から、情報提供のためのホームページ(http://www.nmda.or.jp/enc/rating/)を開設すると共に、それらのソフトのうち、PICS準拠のものについては、当協議会のラベルビューロを利用できるようにする。
 本報道資料は、報道関係者などの他に、47都道府県の青少年関係課にフィルタリング機能の普及啓発のために参考として本日送付した。当協議会としては、フィルタリングに関する相談への対応やセルフ・レイティング実施の呼びかけなど、今後も普及啓発及びフォローアップを推進していく。

(注1)「電子ネットワーク協議会」  パソコンネットなどの振興を目的に平成4年10月に発足した組織で、商用パソコンネットおよびインターネット事業者、コンピュータメーカ、通信ソフトハウス、アプリケーション事業者などの法人会員92社、学識経験者などの特別・個人会員15名、公共ネットワークなどに関心を有する協賛自治体51団体から構成されている。
 

問い合わせ・連絡先 〒108 東京都港区三田1-4-28 三田国際ビル23F
                  (財)ニューメディア開発協会内
          電子ネットワーク協議会事務局
          担当 清水、太田
          Tel   03-3457-0671
          Fax  03-3451-9604


付録

1.PICS(the Platform for Internet Content Selection)とは
 WWWコンソーシアム(W3Cと略す)は、インターネットの社会的責任を技術的に解決するために、平成7年夏から、規制なしでインターネットアクセスをコントロールするためのPICS(the Platform for Internet Content Selection の略称)の開発を進めてきた。PICSの特徴は、インターネットにおける情報発信を制限することなく、受信者が設定するレベルに合わせて、選択的に情報を受信(フィルタリング)できるようにするところにある。
 W3Cは、実現するためのフォーマット等に関する標準仕様を規定するのみで、ソフトウェアやレイティングシステムを提供する訳ではない。それらは、外部の活動にまかせられている。例えば、マイクロソフト社のブラウザソフトウェアである「インターネットエクスプローラ3.0」にはPICS準拠のフィルタリング機能が組み込まれている。
 フィルタリングを実現するためには、そのようなソフトウェアやレイティング基準の他に、発信者自身が情報に対してレイティングする(セルフ・レイティング)か、流通している情報に第三者が付加的なレイティングを行う(サードパーティ・レイティング)ことによるレイティングデータベースが必要である。サードパーティ・レイティングのデータベースは、異なる価値観に基づき複数種類存在しても良い。
 そのような多様な入手源からのレイティングデータをフィルタリングソフトウェアが設定に基づいて参照することによって、受信者が受信する情報、または両親や教師が監督下の子供たちに与える情報をコントロールすることを可能にする。
 PICSで用いられる用語の意味は、以下の通りである。
(1)レイティングとラベル付加は、同じ意味で用いられる。
(2)レイティングシステムまたはレイティングボキャブラリは、レイティングまたはラベル付加の際に用いられる基準や尺度のことである。本資料では、レイティング基準と訳している。
(3)レイティングサービスは、ラベルを提供するサービスのことをいう。
(4)ラベルビューロは、サードパーティ・レイティングのデータ要求に対して応答する、ネットワーク上のHTTP(Hyper Text Transfer Protocol)サーバをいう。

2.WWWコンソーシアム(W3C)とは
 インターネットと言えば ワールドワイドウェブ(WWW)を意味するようになり、名刺に電子メールアドレスだけでなく、WWWのホームページアドレスであるURL(ユニフォーム・リソース・ロケータ)を記載する人々が増えつつある現在、インターネットと同様にWWWは米国生まれと誤解されている方々も多いようであるが、WWWは欧州生まれ、正確にはジュネーブ郊外のフランスとスイスにまたがって存在するCERN(ヨーロッパ原子核共同研究機関)で誕生したものである。
 W3Cは、WWWを発展させるための共通プロトコルと標準ソフトウェアを開発するために存在しており、CERNでWWWを生み出したTim Berners Lee 氏が、この組織のディレクタになっている。W3Cには、世界規模で170以上の企業が参加している。これまで、米国のMIT(マサチューセッツ工科大学)とフランスのINRIA(国立情報自動化研究所)がホストを務めており、平成8年9月に慶応大学湘南藤沢キャンパスが新たなホストとして加わっている。

3.RSACiについて
 RSAC(Recreational Software Advisory Council、娯楽ソフト諮問会議)は、公共、特に両親が電子メディアについて必要な決定をする際に、オープンで客観的なコンテンツ諮問システムによる支援を行う、非営利団体である。
 RSACi(RSACによるインターネット・レイティングシステム)は、スタンフォード大学で20年以上にわたり、メディアが子供に与える影響を研究してきたDonald F. Roberts 博士の研究成果に基づいている。基準としては、以下の項目があげられている。各項目の数字はレイティング値を表している。

暴力ヌード
0 すべての暴力を制限   0 なし
1 闘争1 露出的な服装      
2 殺害2 部分的なヌード
3 流血を伴う殺人3 全裸
4 残忍で過激な暴力4 刺激的な全裸

セックス言葉
0 なし0 不快感を与えない俗語
1 情熱的キス1 穏やかな悪口
2 着衣のままの性的接触2 悪口
3 性的接触の不鮮明な描写 3 性的なジェスチャー
4 性行為の鮮明な描写4 不快感を与える露骨な表現

以上


電子ネットワーク協議会のページに戻る

(c)1997 ELECTRONIC NETWORK CONSORTIUM