報道資料 |
平成9年8月7日
財団法人ニューメディア開発協会
世界初のISO/IEC10536準拠非接触ICカード開発に成功 =エレクトロニック・コマースの実用化に貢献= |
財団法人ニューメディア開発協会(会長:亀井正夫)は、通商産業省からの出資を受けて情報処理振興事業協会が実施する「エレクトロニック・コマース推進事業」の一環として、エレクトロニック・コマース(電子商取引)用非接触ICカードの技術開発を行ってきたが、開発に成功したので公表する。この非接触ICカードは、国際規格ISO/IEC10536(〜2mm程度離して使用することができる密着型と呼ばれるICカードの国際規格)に準拠した世界初のICカードである。
1.非接触ICカードの利点
電子マネーなどICカードを用いた、電子商取引の実験が各地で行われている。これらの実験で主として用いられるICカードは、外部端子がカードの表面に設けられた端子付きICカードである。端子付きICカードでは、読出し/書込み装置の接触ピンと機械的に接触することによりデータの読出し/書込みを行うために、使用頻度が高いと機械的破損による故障、長期間保管する住民カードなどでは電気的接触不良、屋外で使用する用途では埃り・雨水などによる障害が問題点としてあげられている。
これに対して、非接触ICカードは機械的接触がないので、上記の問題点から解放され、さらに従来は困難であった悪環境下での使用が可能となるなどの利点がある。
2.非接触ICカードの開発
財団法人ニューメディア開発協会では、通商産業省からの出資を受けて情報処理振興事業協会が実施する「エレクトロニック・コマース推進事業」の一環として、上記の問題点を解決するため、エレクトロニック・コマース(電子商取引)用非接触ICカードの技術開発を、ICカードメーカなどの協力を得て実施してきたが、試作カードが完全に動作することを確認したので、読出し/書込み装置メーカなどに評価サンプルの提供を開始した。今後、このカードに関する実証テストと仕様書の公開を行い、わが国における相互運用性を重視した次世代ICカードとして位置付られるように務める。
仕様書の作成は、大日本印刷株式会社、株式会社日立製作所、株式会社デンソー、三菱電機株式会社、株式会社富士総合研究所の協力を得た。カードの開発は、ICチップ開発を株式会社日立製作所が行い、送信受信機能のコイル開発と処理プログラムROMを含むカード化を大日本印刷株式会社が担当した。
3.開発したICカードの特長
今回開発した非接触ICカードは、国際規格ISO/IEC10536(〜2mm程度離して使用することができる密着型と呼ばれるICカードの国際規格)に準拠した世界初のICカードである。
特長としては、電磁誘導によってデータ通信などを行うので端子が存在しないことの他に、広く使用され始めている端子付きICカード(ISO/IEC7816シリーズ)とも応用ソフトウェアから見た互換性があり、国際クレジットカード仕様EMV(ユーロペイ/マスターカード/ビザカード)のセキュリティ部に規定されている暗号処理についても、DES暗号(鍵の長さ 64ビット)および、RSA暗号(鍵の長さ 576ビット)の2方式を使用することができる。このため、電子マネーなどICカードを用いた電子商取引の実用化に大きく貢献することが期待される。
項目 | 技術的仕様 |
1. カードの形状 | 54×86×0.76 mm |
2. 温度安定性 | −20℃〜90℃ |
3. 耐静電気 | 10KV以上 |
4. 読出し/書込み耐久性 | 10年又は10万回以上 |
5. 電磁的妨害 | 有害電磁波は発生しない |
6. 交信周波数 | 4.9157 MHz |
7. 電力伝送 | 交流磁界(コイル部)により励起 |
8. 通信方式 | 電磁誘導による通信 |
9. 信号の交信距離 | 2mm以下 |
10. 符号化方式 | NRZ方式 |
11. 記憶容量 | 8KバイトEEPROM |
12. 剰余計算機能 | RSA576ビット長の鍵で1秒弱 |
13. CPU機能 | 8ビットマイコン |
14. データ伝送処理 | 半二重ブロック伝送プロトコル (T=1) |
15. データ伝送速度 | 9600 bps 最大38400 bps |
16. コマンド、ファイル生成 | ISO/IEC7816-4 |
17. 電池の有無 | 無し |
18. その他 | 保守は殆ど不要 カードの表・裏の2方向差込み可 |
今回開発した密着型非接触ICカードの内部構成は、以下の通り。
(サンプル写真参照、倍率は実物の約1.4倍)
以上