1. 実装規約の背景・目的

1.1 背景

国際標準化機構/国際電気標準会議(以下、ISO/IECという)において、密着型ICカード及びそれに対応したリード・ライト・ユニットに関する国際標準規格ISO/IEC10536シリーズの制定作業がほぼ完了した状況にあり、現在、カード製造メーカ各社が製品化に向けた研究開発作業を進めている状況にある。

一般に国際標準規格は、工業関連分野における基礎技術から応用技術に至る様々な技術を対象にそのプラットフォームを標準化、公開することを目的として制定される規格である。しかしながら、外部端子付ICカードを対象に制定されている国際標準規格ISO/IEC7816シリーズは、通信プロトコル、インターインダストリコマンドなどにおいて複数の仕様が選択肢として設定されており、カード製造メーカ毎に選択可能であるため、ISO/IEC7816シリーズに準拠した外部端子付ICカードでありながら、カード製造メーカ各社間における互換性、相互運用性が確保されない事態が発生すると懸念されていた。ISO/IEC7816シリーズに準拠した外部端子付ICカードが国際的に様々な業種・分野において試験的導入、実用化されている状況にある現在、上記のような課題、弊害が顕在化している状況にある。

一方、密着型ICカードに関する国際標準規格であるISO/IEC10536シリーズに関しても、カップリングフィールドなどにおいて複数の仕様が選択肢として設定されており、カード製造メーカ毎に選択可能な規格となっているため、ISO/IEC7816シリーズと同様の事態が発生することが懸念される。このような事態を回避するために、ISO/IEC10536シリーズでは、付録としてテスト用のリード・ライト・ユニットに関する回路仕様を策定し、それに準拠したテスト用のリード・ライト・ユニットの開発及び動作確認を規定しているが、実際にテスト用の密着型ICカードとそれに対応したリード・ライト・ユニットによる動作確認、検証評価が行われておらず、カード製造メーカ各社より提供される密着型ICカードとそれに対応したリード・ライト・ユニットの互換性、相互運用性が確保される保証がない状況にある。

従って、今後、日本国内において密着型ICカード及びそれに対応したリード・ライト・ユニットの普及促進を図っていくためには、カード製造メーカ各社間において互換性及び相互運用性が確保される、国際標準規格ISO/IEC10536シリーズに準拠した密着型ICカード及びそれに対応したリード・ライト・ユニットに関する実装規約を策定することが肝要であると指摘されている。

1.2 目的

以上に示す背景を踏まえ、カード製造メーカ各社間における互換性及び相互運用性を確保するのみならず、カード製造メーカ各社固有の差別化技術を活用可能とする、国際標準規格ISO/IEC10536シリーズに準拠した密着型ICカード及びそれに対応したリード・ライト・ユニットに関する実装規約を策定する。

ただし、本実装規約は、財団法人ニューメディア開発協会とICカード取引システム研究開発事業組合の共同作業により策定されることとする。

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